iPad Proをテザー撮影用の外部モニターとして考えてみる。

冬は服が重くて疲れて大変です。夏は暑いから大変です。春は花粉が飛ぶので大変だし、信じられるのは秋だけですよ。山崎將方です。

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今日はAppleから発売中のiPad Proは果たしてフォトグラファーにとって撮影に活用するに値するかを考えてみたいと思います。

ちなみに私はWindowsデスクトップとMac Book Pro、iPhoneユーザーですが、テザー撮影を行う場合はMacBook Proを使用しています。iPad ProとノートPC、それぞれテザー撮影用の外部モニターとして使用した場合のメリットやデメリットについてお話ししたいと思います。



■iPad Proの携帯性


iPad Proを撮影に活用しようとした場合、まず気になるのが他のiPadシリーズとの比較です。他のiPadシリーズと比較してiPad Proの魅力は如何ほどなのか?比較してみたいと思います。

大きさと重さ
型番 MacBook Pro 15 MacBook Air 13 iPad Pro iPad Air 2 iPad Air iPad mini 4 iPad mini 2
高さ 358.9mm 325mm 305.7mm 240mm 240mm 203.2mm 200mm
247.1mm 227mm 220.6mm 169.5mm 169.5mm 134.8mm 134.7mm
暑さ 18mm 17mm 6.9mm 6.1mm 6.1mm 6.1mm 7.5mm
重量 2040g 1350g 713g 437g 437g 298.8g 331g

iPad Proの大きさは他のiPadシリーズと比較すると圧倒的に大きくなっています。

しかしながら流石に重さに関しては723gとMacBook Airと比較してもはっきりと軽く、テザー撮影用モニターとして持ち運ぶには従来のノートPCよりも携帯性は明確に上がります。もちろんお部屋でごろ寝しながらネットサーフィンをするには重すぎるためオススメしませんが、テザー撮影用モニターとしてノートPCから買い替える、あるいは新規に追加するという意味では少なくとも携帯性の面で不満は出ることは少ないでしょう。

 

■iPad Proのディスプレイ凄さと欠点


iPad Proをテザリング用のモニターとして使用したいと考える最大の理由はその液晶画面サイズにあると言っても良いでしょう。Retinaディスプレイは当然として、画面サイズでは他のiPadモデルを圧倒しMacBook 13inchモデルと比較しても表示領域(ピクセル数)・画素密度ともに勝っています。

ちなみにフルラミネーションとは、液晶ディスプレイからカバーガラスまでを圧着して一体化させたディスプレイのことで、ディスプレイとカバーガラスの隙間を無くすことで余分な反射が抑え、画面をより大きく見せる効果があります。カメラマンにとってiPad Proの使用環境を考えるとメリットの高い構造と言えるでしょう。

ディスプレイ
型番 MacBook Pro 15 MacBook Air 13 iPad Pro iPad Air 2 iPad Air iPad mini 4 iPad mini 2
画面サイズ 15.4インチ 13.3インチ 12.9インチ 9.7インチ 9.7インチ 7.9インチ 7.9インチ
解像度 2,880 x 1,800pixl 1,440 x 900 pixl 2,732 x 2,048pixl 2,048 x 1,536pixl 2,048 x 1,536pixl 2,048 x 1,536pixl 2,048 x 1,536pixl
画素密度 220ppi 127ppi 264ppi 264ppi 264ppi 326ppi 326ppi
コーティング 耐指紋性撥油 耐指紋性撥油 耐指紋性撥油 耐指紋性撥油 耐指紋性撥油 耐指紋性撥油 耐指紋性撥油
フルラミネーション あり あり あり あり あり
反射防止コート あり あり あり あり あり

画面サイズや液晶品質で比較すると、iPad ProはもはやiPadと言うよりもMacBook Proシリーズとの比較の方が適切で、フォトグラファーとして仕事や趣味での画質確認として外に持ち出した場合、画面サイズによるノートPC対するネガティブポイントは殆どないと言って良いでしょう。仕事でお客さまに確認してもらう際にも、MacBookシリーズ以上に普及しているiPhoneと同じ操作性はPC操作そのものの説明を省けるシーンが多く、iPad Proを相手に渡して勝手に見て頂くということが可能になります。

しかしそのiPad Proにも大きな欠点があります。それはデフォルトでピクセル等倍表示が出来ないという点です。基本的にiPadは画像のピクセル等倍表示に対応しておらず、これはフォトグラファーにとってはかなりの痛手です。等倍表示でシビアなピントやブレのチェックに使いたいからこその外部モニターだからです。

しかし拡大が全く出来ない訳ではありませんし、そもそもがかなりの解像度を持ったディスプレイを採用している事もあり、ピントずれやブレが起きていれば殆どの場合iPad Proで確認時に気づく事が可能です。

このピクセル等倍表示に関してはプロカメラマンがテザー撮影時に、持ち運びやすいiPadではなくMacBookやノートPCを使用してきた大きな理由の一つです。しかし従来の画面サイズ・解像度を大きく上回るiPad Proの登場で「仕事でもiPad Proで必要十分」というカメラマンが増える事は確実と思われます。

 

■iPad Proの表示処理能力


iPad Proに搭載されているA9Xチップには12個のGPUコアが搭載されており、これはiPhone6s/6s Plus用A9チップの2倍に相当します。表示に関する処理速度を考えた場合、iPad Proは他のiPadシリーズを圧倒し、ベンチマークではMacBook Proにさえ引けをとらない程の数値を出しています。Wi-Fiでの転送時もその表示速度の向上は目覚しく、転送・表示でストレスを感じる事は殆どないといって良いでしょう。

プロセッサ性能
型番 MacBook Pro 15 MacBook  Air 13 iPad Pro iPad Air 2 iPad Air

iPad mini 4

iPad mini 2
CPU Intel Core i7 Intel Core i5

A9Xチップ

A8Xチップ

A7チップ

A8チップ

A7チップ

A7比

CPU:2.5倍
GRAPHIC:5倍

CPU:1.4倍
GRAPHIC:2.5倍

CPU:1.3倍
GRAPHIC:1.6倍

幾らiPad ProのA9Xプロセッサーが高速といっても、当然ながらアプリケーションがiOS用しか使用出来ないためMacBookシリーズのようにPhotoshopをバリバリ使ったレタッチなどには向きません。しかし、画像の確認や簡単なレタッチ程度であればAdobe Photoshop Lightroom mobile、Photoshop Fixなど、iOSデバイス対応アプリケーションが多数ありますからそちらを利用する事が可能です。Apple Pencilもその役に立つでしょう。

 

■iPad Proでテザー撮影する際の接続方法


Macbookシリーズの場合、テザー撮影にはUSBケーブルやWi-Fiを使用しますがiPad ProにはUSB端子がありません。

LHC-UALS12WH

Logitecから発売されているデータ転送対応USB→Lightning変換ケーブルLHC-UALS12WHなどを使用する事で有線接続自体は可能ですが、iOSで動いているiPad Proではテザリング接続可能な代表的なアプリケーションであるLightroom(PC版)やCamera Control Pro 2、Canon EOS Utilityなどが使用出来ません。

有力な方法として、折角MacBookのようなノートPCを使わずにiPad Proを使うなら、Eye-FiカードやFlash Airなどを使用してカメラとiPad ProをWi-Fiで無線接続するのがオススメです。いずれにしても撮影後転送された画像を確認することは可能ですが、ライブビュー映像を表示しながら撮影する訳ではありませんから、その点はNikon Camera Control Pro 2やCanon EOS Utilityのようなリアルタイム映像を出力しながら撮影したい場合はMacBookシリーズを使用しましょう。

転送速度や確実性を考えて有線でiPadに転送したいという場合、iPad Air/iPad Air 2であれば、Manfrottoから発売されているDigital Directorという商品を使用する方法もありますが、今の所完成度が低く評判は今ひとつです。

 

■iPad ProをEye-FiカードからWi-Fi経由で転送した場合の使い勝手


カメラ側で撮影した画像をEye-Fiカードなどを使用してWi-Fi接続したiPad Proに転送していく場合、気になるのが表示遅延やバッテリーの持ちでしょう。AppleによるとiPad ProのWi-Fi接続時の連続駆動時間は10時間となっています。

一度の撮影で10時間撮り続けるという撮影は大量の商品撮影であってもそうそうある訳ではないのでこの点はまず心配いりません。仮にそのような撮影があったとしても、モバイルチャージャーかACで電源を取ることが容易なiPad Proなら苦労することはないでしょう。

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次に転送速度ですが、Eye-FiカードはEyefi Mobi Proを使用しましょう。JPEGとRAW、更には動画まで対応しているためさまざまな形式で撮影することが可能です。iPad Pro本体に関しては非常に処理が早く、Wi-Fi接続による転送でも表示でストレスになることは少ないでしょう。

 

■Eyefi Mobi Proで無線テザー撮影を行う手順


では具体的にEyefi Mobi Proを使ってカメラとiPad Proをテザリングし画像を転送する方法をご説明します。

1.まず初めにiPad ProでApp Storeにアクセスし、「Eyefi Mobi」アプリをダウンロードしましょう。
2.次にiPad Proでアプリを起動させます。
3.「設定してみましょう」をタップします。

4.次に「Mobiカードを設定」をタップし、画面上の手順に従いMobi Proカードの10桁のアクティベーションカードを入力して下さい。

5.RAWファイルを転送するには、Mobiアプリの設定画面からワイヤレスRAW転送を有効にしてください。モバイル端末の初期設定ではこの設定がオフになっています。

RAW転送を有効にする方法

・「メニューボタン」をタップ
・「設定アイコン」をタップ
・「インポート」をタップ
・「受信RAW」をタップ

6.カメラにEyefi Mobiカードを挿入して写真を数枚撮影しましょう。その後カメラの電源を入れたままにしてください。

7.iPad Proのホームボタンを押してEyefi Mobiアプリを閉じます。

8.iPad Proの「設定」アイコンを選びます。

9.「Wi-Fi」メニューをタップします。少しお待ち頂くとEye-Fiカードのネットワークがリストに表示されます。

10.ネットワークリストの中から「Eye-Fi Card」と書かれている接続をタップし、Eyefi MobiカードをWi-Fiネットワークとして選択します。

11.「Eyefi Mobiカードは、iPadに接続されました」と表示が出れば成功です。Eyefi Mobiカードはご使用の端末にペアリングされました。

Eyefi Mobiアプリを再度開き、少しお待ち頂くと写真が転送されてきます。

 

■Apple PencilとiPad Proによる写真のレタッチについて


Apple Pencil

iPad ProではApple PencilというiPad Pro専用のスタイラスペンを使用することが出来ます。Apple Pencilの特徴はその反応速度と自然な反応です。力を込めれば濃く、傾ければ太く、まさに色エンピンツで描くかのように自在に描くことが出来、また表示までのラグが非常に少ないため、細い線を何本も描いてデッサンするような場合にも違和感なく使用することが出来ます。

iOS向けにPhotoshop Fixというアプリがリリースされており、スポット修復、ゆがみ、ブラシでの明暗補正といった、スマホアプリで一般的な補正より一歩踏み込んだレタッチツールを搭載しています。これらを使用する際にApple Pencilを使用することで、PC+Photoshopほどではありませんが、iPad Pro上でかなりのレタッチを行うことが可能となっています。

ただプロカメラマンやレタッチャーが本格的なレタッチをiPad Proだけで納品まで完成させられるかと言うと、少なくとも現状では難しいというのが正直な感想です。これだけの広大な画面と処理速度、Apple Pencilの使い勝手があればPC版のBridge&Camera Raw&Photoshopさえ動けばと思うのですが、残念ながらiOSではPC版のPhotoshopを動作させることが出来ません。

しかし簡単なレタッチであれば現状でも十分にこなすことが出来、iPad ProでPC並みのレタッチをしたいという需要は相当にあると思われるため、そのスペックと合わせて今後の進化に十分な期待がもてます。

 

■まとめ 〜iPad Proはコマーシャルフォトグラファーのマストアイテムとなるか?〜


iPad Proは表示能力・処理速度ともに従来のiPadを大幅に上回り、MacBook Proにさえ匹敵する能力を手に入れました。自宅でMacBook Proの代わりになるかと言われれば答えはノーです。等倍拡大がし辛いことや操作性、レタッチソフトなどiPad Proは本格的にレタッチを行うにはまだまだMacBook Proには及びません。出張先で本格的なレタッチが必要な場合も同様でしょう。

しかし仕事でお客さまにリアルタイムで画像を確認してもらう場合などはMacBookを置く場所を見つけて有線で繋いで見てもらうより、iPad Proを手渡して見てもらう方がはるかにスマートで簡単でしょう。

また自宅はデスクトップPCでレタッチを行う方にもiPad Proはオススメです。従来のiPadシリーズとは比較にならないほどの表示領域を持ち、別売りのApple Pencilを使えば一般的な基準でみて十分なレタッチが行えます。

そして大きくて重いiPad Proですが、MacBook Airと比較してさえ明確に軽く、カメラバッグに入れられる表示デバイスとしては最高クラスの表示能力をもっていることに間違う余地はありません。

ぜひ皆さんの撮影にiPad Proの導入をご検討されてみてはいかがでしょうか?

 

画像引用:Apple,Logitec,Eyefi,cheero

Reported by 山崎將方