オリンピックカメラマンの撮影機材をご紹介!ニコンvsキヤノンの行方は!?

D5 vs EOS-1D X Mark II

今日はオリンピック撮影カメラマンを目指す皆さんのために、オリンピックを撮影するプロカメラマンの撮影機材をご紹介したいと思います。

これを読んでおけば、突然上司に「来週からリオでオリンピック撮影してきて」と言われたり、朝出勤したらデスクの上に「オリンピック撮影第一課への出向を命ずる」なんて紙が置かれていても慌てずに済むわけです。



■オリンピックカメラマンにも色々


オリンピックのカメラマンと一口に言っても、競技や撮影スタイルでかなり違ってきます。

撮影の多くは超望遠レンズでの撮影になりますが、現在はカメラを設置して無線や有線でのリモート撮影も頻繁に行われており、リモート撮影の場合はフィッシュアイ、超広角、標準、300mm程度までの望遠レンズが中心になります。

この記事でご紹介するのは、屋外競技・室内競技を手持ち(一脚などを使用しつつ)行うカメラマンの機材です。もちろんそういった撮影を行いつつリモート操作のカメラでも同時進行で一つの競技を追う場合もあり、オリンピックのカメラマンは大変ですね。

ちなみにオリンピックカメラマンには新聞社、テレビ局、ネットメディア、雑誌社、フォトエージェンシー、フリーカメラマンなど、実にさまざまなカメラマンが撮影を行っています。

オリンピックで撮影するにはIOC(International Olympic Committee:国際オリンピック委員会)から発行される取材用IDが必要ですが、国ごとに発行数が決まっており、これをJOC(Japanese Olympic Committee:日本オリンピック委員会)が管理・配布しています。

■ニコン vs キヤノン、オリンピック砲列対決


オリンピックと言えば世界最大のスポーツの祭典であり、その報道にかける各メディアの力の入れようも世界一と言って良いでしょう。

最高峰の場で、しかも最高の注目度を誇るオリンピックは、ニコン・キヤノンのカメラ業界二大メーカーとって、非常に大きな宣伝の場でもあります。

オリンピックで使用されるということは、世界中のトップクラスのプロスポーツ・報道カメラマンがそのメーカーを「スポーツ撮影で最も優れたカメラである」と判断したと見なされ、またその砲列が並ぶ様子も全世界に発信されます。

そのためニコン・キヤノンともその宣伝効果を数十年も前から知っており、力を入れてきました。オリンピックの各会場にはニコン(NPS:Nikon Professional Service)とキヤノン(CPS:Canon Professional Support)のメーカーブースがあり、途方もない、まさに途方もない数のカメラ・レンズ機材を持ち込み、加えてサポートスタッフを常駐させています。

これによってオリンピックを取材する各メディアのカメラマンをサポートするわけです。機材の修理・メンテナンス・代替機などあらゆる体制を整え、自社の製品を使用しやすい環境を整えています。

1959年、ニコンがフィルム一眼レフカメラNikon Fを発売し、以来ニコンFシリーズは報道系カメラの頂点として君臨していました。キヤノンがそのニコンFシリーズの巨大な牙城を切り崩すべく1971年にキヤノンF-1を投入。その時からこの2大ブランドのオリンピック対決は現在に至るまで続いています。

また今回のオリンピックでどちらのメーカーの機材が多く使われていたか、白(キヤノン超望遠)が多かった、黒(ニコン超望遠)が多かったと、超望遠レンズの砲列をカウントするといったファンまで巻き込んだ戦いが繰り広げられています。

■オリンピック撮影機材/キヤノン編


まずはキヤノンから見ていきましょう。ロンドンオリンピックののプロカメラマン数名のデータを元に、リオ・デ・ジャネイロオリンピックで今回使われることが予想されるキヤノンのカメラとレンズをリストアップしてみます。

オリンピックと言えば超望遠レンズばかりが注目されますが、実際は広角・標準・望遠(超望遠以外の)も頻繁に使用され、時には魚眼レンズまで使用されます。

機材種別 製品名 個数
カメラ EOS-1D X Mark II 5
カメラは当然プロスポーツ用キヤノンフラッグシップ一眼レフEOS-1D Mark II。オリンピックカメラマンは一般的に4〜5台のボディを持ち込みます。
魚眼レンズ EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM 1
槍投げの投てき位置やハードル、走り幅跳びなどの足元に設置しリモートで撮影。面白い画を撮影するために使用します。
広角レンズ EF11-24mm F4L USM 1
会場の全景や雰囲気を伝えるのがこのレンズの役目となります。
標準レンズ EF24-70mm F2.8L II USM 1
ゴール後の雑感や引きの構図を撮影するために使用します。
望遠レンズ 1 EF70-200mm F2.8L IS II USM 1
ゴールラインを正面から撮影するためのリモート撮影や、競技初日のスタートシーン、応援の様子、また表彰式後カメラマン席の前を通過するメダリストの表情などさまざまな撮影に使用されます。
望遠レンズ 2 EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4× 1
このレンズはサッカーなど広い競技場の両サイドで決定的な瞬間が起こる撮影で重宝されます。

サッカーであれば通常どちらかのゴール付近で撮影することになるのだが、ゴール前では200mm、中間距離では300〜400mmとレンズを持ち替えずに撮影することが出来る。

更に手元のレバー一つで内蔵の1.4倍のエクステンダーが使用できるので反対サイドゴール前のプレーにも対応できるというわけです。

超望遠レンズ 1 EF400mm F2.8L IS II USM 1
通常の競技撮影でメインに使用する組み合わせ。オリンピックカメラマンにとっての標準レンズと言っても過言ではありません。
超望遠レンズ 2 EF600mm F4L IS II USM 1
投てき競技やスタジアムの高層階から撮影する場合に使用されます。
コンバージョンレンズ EXTENDER EF1.4×III 1
広い会場での競技で選手の表情をクローズアップで撮影したい場合に600mm/F4.0に装着して使用する。
スピードライト スピードライト600EX II-RT 4
ストロボは室内競技・屋外競技共に主に競技終了後の選手の表情を撮影する場合などに使用します。
一脚 GM4542 2
超望遠レンズを支える際に使用します。カメラマン向けのブースは混雑するため大型の三脚はあまり使用されません。
ミニ三脚 ULTRA 553mini 3
現在のオリンピックは様々な場所にカメラを設置してのリモート撮影も頻繁に行われるため、その際に機材を設置するのにミニ三脚を使用します。ミニ三脚と言ってもフラッグシップ一眼レフと望遠レンズを載せることが出来るガッチリしたものを使用します。

■オリンピック撮影機材/ニコン編


続いてニコンを機材をリストアップしてみます。こちらも実際のオリンピック撮影カメラマンによるチョイスを参考に今年使用されるモデルをご紹介していきます。

機材種別 製品名 個数
カメラ D5 5
こちらもカメラはニコンフラッグシップ一眼レフD5。オリンピックカメラマンは一般的に4〜5台のボディを持ち込みます。
魚眼レンズ AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D 1
槍投げの投てき位置やハードル、走り幅跳びなどの足元に設置しリモートで撮影。面白い画を撮影するために使用します。
広角レンズ AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 1
会場の全景や雰囲気を伝えるのがこのレンズの役目となります。
標準レンズ AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 1
ゴール後の雑感や引きの構図を撮影するために使用します。
望遠レンズ AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II 1
ゴールラインを正面から撮影するためのリモート撮影や、競技初日のスタートシーン、応援の様子、また表彰式後カメラマン席の前を通過するメダリストの表情などさまざまな撮影に使用されます。
超望遠レンズ 1 AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR 1
通常の競技撮影でメインに使用する組み合わせ。オリンピックカメラマンにとっての標準レンズと言っても過言ではありません。
超望遠レンズ 2 AF-S NIKKOR 600mm f/4E FL ED VR 1
投てき競技やスタジアムの高層階から撮影する場合に使用されます。
コンバージョンレンズ AF-S TELECONVERTER TC-14E III 1
広い会場での競技で選手の表情をクローズアップで撮影したい場合に600mm/F4.0に装着して使用する。
スピードライト スピードライトSB-5000 4
ストロボは室内競技・屋外競技共に主に競技終了後の選手の表情を撮影する場合などに使用します。
一脚 GM4542 2
超望遠レンズを支える際に使用します。カメラマン向けのブースは混雑するため大型の三脚はあまり使用されません。
ミニ三脚 ULTRA 553mini 3
現在のオリンピックは様々な場所にカメラを設置してのリモート撮影も頻繁に行われるため、その際に機材を設置するのにミニ三脚を使用します。ミニ三脚と言ってもフラッグシップ一眼レフと望遠レンズを載せることが出来るガッチリしたものを使用します。

■ニコン(黒レンズ) vs キヤノン(白レンズ)どちらが多い!?カメラメーカーのオリンピック!


オリンピックのスポーツカメラマンの撮影機材、ご覧頂いていかがだったでしょうか?

ファッションや商品撮影カメラマンのような高額なライティング機材は基本的に使用されないとは言え、ボディ&レンズの総額たるや他のジャンルでは考えられないほど高価な機材を大量に会場に持ち込んでいます。

多くは会社で所有している機材、個人所有機材、レンタル、メーカー貸出しなどを利用して機材を揃え、機材に保険をかけてオリンピック会場入りするわけです。

今年のリオ・デ・ジャネイロオリンピック、そして2020年の東京オリンピック、選手だけではない、カメラマンだけではない、もう一つの戦い、カメラメーカーの威信をかけた機材対決からも目が離せません。オリンピックでは毎回、白レンズ(キヤノン)が多かった、黒レンズ(ニコン)が多かったとファンの間で論争が繰り広げられます。

そして今年はまだ難しいと思いますが、2020年東京オリンピック、果たしてSONYはミラーレスでこの2大ブランドの牙城に切り込んでいけるのか、今から注目ですね。

画像:Quesabesde

Reported by 正隆