次のカメラのイノベーションはAI搭載か。未来のカメラは知識不要に!?

ARSENAL

AIファンの皆さんこんにちは。

現在カメラの新たな進化として、AI(人工知能)の搭載が考えられています。

米国のベンチャー企業が発表したArsenal(アーセナル)は、一眼レフのアクセサリシューに取り付ける小さなデバイスは人工知能によって撮影データを機械学習し、設定を変更してくれるとのこと。

現時点ではまだまだ万能なものではないものの、いずれは複雑な設定などは完全にカメラ任せとし、撮影者はカメラの設定を気にせず感性のままにシャッターを切るだけでイメージ通りの撮影が可能になるのかも知れません。

そこで今回は、AIの搭載によるカメラの次の進化の形について考えてみたいと思います。



■デジタルカメラの現在


デジタルカメラの出荷台数推移

皆さんもご存知のように、現在のデジタルカメラ業界は厳しい状況が続いています。まずは2004年以降のデジタルカメラの出荷台数の推移を見ていきましょう。

レンズ一体式 前年比 レンズ交換式 前年比
2004 57,290,010台 134.6% 2,475,758台 292.9%
2005 60,975,613台 106.4% 3,791,310台 153.1%
2006 73,717,388台 120.9% 5,264,041台 138.8%
2007 92,899,202台 126.0% 7,467,854台 141.9%
2008 110,070,168台 118.5% 9,686,640台 129.7%
2009 95,952,937台 87.2% 9,910,695台 102.3%
2010 108,576,298台 113.2% 12,886,936台 130.0%
2011 99,830,469台 91.9% 15,693,781台 121.8%
2012 77,982,104台 78.1% 20,157,053台 128.4%
2013 45,708,286台 58.6% 17,131,367台 85.0%
2014 29,595,240台 64.7% 13,839,168台 80.8%
2015 22,341,458台 75.5% 13,053,999台 94.3%
2016 12,582,092台 56.3% 11,607,778台 88.9%

レンズ一体型(いわゆるコンパクトデジタルカメラ)に関しては、2011年以降凄まじい勢いで減少、最盛期の2008年と比較すると2016年は約1/8.4にまで減少、レンズ交換式に関しては、最盛期の2012年と比較すると2016年は約1/1.73までに減少しています。

見えない進化の方向性

カメラは何度もイノベーションを起こしながら成長を続けてきましたが、デジタル化、ミラーレスの登場以降は大きな技術革新がなく現在に至ります。

その間にスマートフォンの登場によって、急速なデジタルカメラ離れが続いていますが、デジタルカメラ離れを加速させた理由の一つがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及でした。

そこで多くのカメラメーカーがWi-FiやBluetoothをカメラに搭載することで、スマートフォンとの連携を図ることでSNSとの親和性を上げることに配慮してきましたが、結局のところダイレクトにSNSに画像やコメントを上げられるスマートフォンにはその利便性で遠く及びませんでした。

次のデータは、カシオ計算機が10代~40代女性655名を対象にアンケートを行い、インスタグラムに投稿する写真をどのような機材で撮影しているかを聞いたものです。

回答
スマートフォン
一眼レフ
ミラーレス
コンパクトデジタルカメラ
インスタントカメラ
その他
人数
227
39
23
35
15
2
割合
80.27%
13.8%
8.1%
12.4%
5.3%
0.7%

約8割の女性がインスタグラムへの投稿にスマートフォンを使用しているという結果になりました。

またスマートフォンのカメラ性能の進化に加えて、そのカメラ性能を生かすためのアプリケーションでもスマートフォンの進化は著しく、その点でもデジタルカメラは大きな差を付けられ、若い世代のデジタルカメラ離れを加速させる結果となりました。

カメラはこれまで多くの技術革新を起こして進化を続けてきましたが、近年では一眼レフカメラの発明、オートフォーカスの実現、デジタル化、ミラーレスの登場といった進化を続けてきたものの、最初のミラーレスカメラの登場が2008年09月12日ですから、既に約9年が経過しています。

デジタルカメラの技術進化が停滞している間、スマートフォンはあらゆるAV機器を飲み込むかのような進化を遂げ、デジタルカメラもその流れに飲まれる形で出荷台数を落としていきました。

 

■次のイノベーションはAI(人工知能)の搭載か?


専用機ゆえのメリットと苦悩

デジタルカメラ、特にデジタル一眼レフやミラーレスカメラといったレンズ交換式カメラは原理的にはスマートフォンよりも画質・機能面共に有利です。

それは画質面においては大型のイメージセンサーを搭載しやすいことやレンズ設計の自由度が高いこと、また機能面では倍率の高いズームレンズや望遠レンズの使用が容易であること、またボディサイズの制限の少なさから撮影機能に特化したボタンやダイヤルを搭載しやすい点も専用機ならではのアドバンテージと言えるでしょう。

しかしながらこうしたレンズ交換式カメラはそのポテンシャルを十分に発揮するために、さまざまなカメラの知識や操作に対する慣れが必要になってきます。

  • スマートフォンのカメラ機能の向上
  • レンズ交換式カメラの性能を十分に発揮するためには知識と技術が必要になること

この二つの要素によって、多くの人がレンズ交換式カメラとスマートフォンとの性能差を十分に発揮することが出来ず、それゆえに「スマホで十分」という結論に至りやすいというわけです。

またスマートフォンのディスプレイにはデジタルカメラの背面ディスプレイよりも大型かつ高品質なディスプレイが使われていることが多く、そのことが一見した際のスマートフォンの画質をよく見せる原因となっています。

加えて先に上げたようなスマートフォンのSNSとの親和性や携帯性なども、デジタルカメラを使わなくなる理由となっています。

AI(人工知能)をカメラに搭載するメリット

さてそこでデジタルカメラにAIを搭載してみてはどうか?というアイデアが出ています。

スマートフォンの撮影は多くの人が気楽に撮れるということに配慮しているため、そもそも撮影時に設定できる領域がデジタルカメラほど多くありません。

露出やホワイトバランスといった操作はスマートフォンでも可能ですが、シャッタースピードや絞り値のコントロール、光学ズームによるパースペクティブのコントロールなど、通常のスマートフォンのカメラアプリでは操作できない、もしくは操作しても劇的な違いを出すことが出来ない部分があります。

そうした本来であれば撮影者が知識と経験を積むことで操作し作品の質を上げる要素を、AIによって肩代わりさせることで知識を習得する必要なく、ただ撮りたい場所でシャッターを切りさえすればイメージ通りの設定を行ってくれるカメラが実現可能と言われています。

これは適正露出や適正なホワイトバランスで撮影するという、従来のカメラにも既に搭載されているオートモードという意味ではありません。

画角や表現としての絞り値やシャッタースピードの設定といったことであり、例えば滝を撮れば三脚を使う人かどうかまで踏まえて長秒露光を行ったり、ドラマティックにホワイトバランスを変えて撮る、といった「どのような設定をすればより作品性を高められるか?」ということまで踏み込んでカメラ側を設定してくれるということです。

またそれが機械学習によって、撮れば撮るほど賢くなる、撮影者の好みを学んでくれる、あるいはプロの作品から学習しそれをユーザーの撮影時に反映させるといったことが想定されています。

 

■カメラの未来と写真愛好家の未来


未来のカメラは知識も技術も不要になる?

カメラは知識さえあれば良い作品が撮れるというわけではありませんが、感性だけではイメージ通りの撮影が出来ないという部分があります。

今後カメラにAIが搭載され、機械学習による進化を経てイメージ通りの撮影が容易になれば、新たなカメラブームのきっかけになっていくのかも知れません。

そうした際、プロカメラマンが不要になるというのは安易な発想で、実際のところプロカメラマンの技術の核心とは、カメラの操作というよりも「そのジャンルごとの被写体への理解と表現」にあります。

例えば人物撮影であれば、絞り値やシャッタースピード、ホワイトバランスといったカメラ側の操作がどうでも良いというわけではありませんが、それ以上に重要になるプロの技術とは、ポージングの知識であったり、適切にポージングを伝えるための声のかけ方、ライティングやロケーションの生かし方といった部分になります。

そのためAIによるカメラ側の設定がいかに優秀になったったとしても、それだけでプロカメラマンが絶滅するといったことはないと思いますが、AIが進化し続け、カメラ自身がモデルさんへの適切なポージングの指示や笑顔も引き出し、ライティング機材が自ら動いて適切なライティングを組むといったレベルまで進化すれば、もうプロカメラマンは本当に不要になるでしょう。

本当の意味でのカメラの進化とは?

今後カメラ業界が生き残っていくには、デジタル化やミラーレスカメラの発明に続く大きなイノベーションをカメラ業界に起こし、「カメラマニアではない一般人に波及していくムーブメント」を起こせるかどうかにかかっていると言えるでしょう。AIの搭載はその可能性の一つです。

AIをカメラに搭載する最大のメリットは、何と言っても「知識の習得を必要とせず、感性さえあれば良い写真を撮影できるようになる」という事でしょう。

それは本当の意味での写真文化の裾野を広げるということであり、カメラの本来目指すべき形と言えるのかも知れません。

 

参考:Arsenal,WEDGE Infinity,CASIO
画像:Arsenal

Reported by 山﨑将方