今超売れている、EOS Kiss Mの人気の秘密に迫る。

EOS Kiss M(ホワイト)

先日、キヤノンのEOS Kiss M が非常に売れており、「今年はミラーレスでもキヤノンがシェア1位を獲得するのでは無いか?」という話をさせて頂きました。

今回GfKランキングとBCNランキングを再度調べて見たところ、やはりEOS Kiss M ダブルズームキットが異様なほど売れており、GfKランキングで4週連続販売台数1位、それどころか、なんと1位〜3位までを、4週連続でEOS Kissシリーズが独占しています。

  1. EOS Kiss M ダブルズームキット
  2. EOS Kiss X9 ダブルズームキット
  3. EOS Kiss X9i ダブルズームキット

このようになっており、EOS Kissシリーズの中でもEOS Kiss Mは一際売れているようです。

ある人気機種が連続で1位を獲得することはあっても、4週連続で同じブランドが販売台数のTOP3を独占し続けるというような状況は見たことがありません。

しかもこれはBCNランキングでも同様で、TOP3をEOS Kissシリーズが連続で独占しています。

【目次】

  • 不動の王者「EOS Kiss」を超える、新たな「EOS Kiss」
    • GfKランキングから見るEOS Kiss Mの強さ
    • EOS Kiss Mの登場で、メーカーシェアは更に偏っていく?
    • BCNランキングでは更に強いキヤノン
  • EOS Kiss Mの魅力とは?
    • EOS Kiss MとEOS Kiss X9iの性能比較
    • ブランド力だけではない、EOS Kiss Mの魅力
    • EOS Kiss Mの優れる点
    • EOS Kiss X9iが優れる点
    • カメラとしての総合力はほぼ互角?
  • 「EOS Kiss」というブランドが一眼レフとミラーレスを繋ぐ
    • 一瞬でブランド力を手にしたEF-Mマウント
    • 自分で選んだと思わせて、本当は選択肢を与えないキヤノンの上手さ
    • 渡せないはずのバトンを無理やり渡す「EOS Kiss」というマジックワード

そこで今回は、「なぜEOS Kiss Mのこれほどまでに売れるのか?」という点から、EOS Kiss Mのカメラとしての性能比較などと共に、キヤノンのブランディングの上手さについても考えてみたいと思います。



■不動の王者「EOS Kiss」を超える、新たな「EOS Kiss」


順位 前回 変動 メーカー 製品名
1位 1位 キヤノン EOS Kiss M ダブルズームキット
2位 2位 キヤノン EOS Kiss X9 ダブルズームキット
3位 3位 キヤノン EOS Kiss X9i ダブルズームキット
4位 6位 ニコン D5300 AF-P ダブルズームキット
5位 5位 ニコン D5600 ダブルズームキット
6位 4位 オリンパス PEN E-PL8 EZダブルズームキット
7位 6位 ソニー α6000 ダブルズームキット
8位 9位 ニコン D3400 ダブルズームキット
9位 10位 オリンパス OM-D E-M10 Mark III EZ ダブルズームキット
10位 12位 キヤノン EOS M100 ダブルズームキット
GfKランキングから見るEOS Kiss Mの強さ

あの「不動の1位である一眼レフEOS Kissシリーズ」を抑えて、EOS Kiss M ダブルズームキットが4週連続1位であるということは、EOS Kiss M ダブルズームキットがそれだけ凄まじい売れ方をしている、ということを意味しています。

  1. キヤノン:4機種(1位/2位/3位/10位)
  2. ニコン:3機種(4位/5位/8位)
  3. オリンパス:2機種(6位/9位)
  4. ソニー:1機種(7位)

となっています。

EOS Kiss Mの登場で、メーカーシェアは更に偏っていく?

これまでも一眼レフEOS Kissシリーズは、「日本(あるいは型番は違えど実質同じものが世界)で一番売れている一眼」として有名でしたが、どうやらこのままいくと、「今年日本で一番売れたレンズ交換式カメラはEOS Kiss M」ということになりそうです。

しかも、売上としては「一眼レフEOS Kissが消えて代わりにEOS Kiss M」ではなく、一眼レフEOS Kissに加える形、あるいはそれに上乗せする形でEOS Kiss Mが売れているのですから、他社からすればたまったものではないでしょう。

このままいくと、2018年キヤノンは、一眼レフ・ミラーレス・コンパクト・交換レンズの全てで、シェア1位となりそうです。

BCNランキングでは更に強いキヤノン

この傾向はGfKランキングだけでなく、BCNランクングでも同様で、TOP50(レンズキットのバリエーション含む)のうち、

  1. キヤノン:22機種
    • 1位/2位/3位/6位/8位/10位/11位/17位/23位/25位/26位/29位/30位/34位/35位/37位/38位/42位/44位/45位/47位/49位
  2. オリンパス:10機種
    • 9位/16位/18位/19位/21位/22位/27位/28位/41位/43位/
  3. ニコン:9機種
    • 4位/5位/7位/15位/20位/33位/40位/46位/48位
  4. ソニー:7機種
    • 12位/13位/24位/31位/32位/39位/50位
  5. パナソニック:1機種
    • 14位
  6. 富士フイルム:1機種
    • 36位

であり、なんとTOP50機種のうち、22機種がキヤノン製カメラとなっています。

これは、国内のレンズ交換式カメラのメーカーが主要7社であることを考えると、7社のうちの1社がレンズ交換式カメラ全体の約44%のシェアを持っているということになります。

この順位から、以下のような方法でシェアを概算してみます。

  • TOP50機種(レンズキット等バリエーション含む)をカウント
  • TOP50の売れ筋の1位であれば50点、2位なら49点、3位なら48点という風に、順位が上のものから高得点としてカウント
  • その合計点からシェアを概算

すると、

順位 メーカー 機種数 合計点 シェア
1位 キヤノン 22機種 560点 43.9%
2位 オリンパス 10機種 266点 20.9%
2位 ニコン 9機種 241点 18.9%
3位 ソニー 7機種 156点 12.2%
4位 パナソニック 1機種 37点 2.9%
5位 富士フイルム 1機種 15点 1.8%

このようになり、やはりキヤノンのシェアが圧倒的であることが伺えます。

世界的に見れば他のメーカーも、もう少しシェアを上げると思いますが、それでもキヤノンに台数シェアでは到底及ばないでしょう。

そしてカメラというのは利益率だけを一時的に上げても、シェアを落としていけば結局は行き詰まる、というのが現実です。

こうした極端なシェアの偏りは結果的に全体の活発な競争を阻害するため、カメラ業界にとって良い状態とは言えないと思いますが、キヤノンも一生懸命カメラを売っているだけなのですから、別にキヤノンがカメラ業界を悪くしているなどと言うつもりは全くありません。

それにしても、なぜこれほどまでにEOS Kissは売れるのでしょうか?まずは最も売れているEOS Kiss Mについて考えてみたいと思います。

 

■EOS Kiss Mの魅力とは?


EOS Kiss MとEOS Kiss X9iの性能比較

さて、「EOS Kissのブランド力が比類なく強力である」、という点に関しては、カメラファンの皆さんであれば周知の事だと思いますが、EOS Kiss Mカメラの性能としての魅力とはどこにあるのでしょうか?

そこで、EOS Kiss Mと価格帯が近いEOS Kiss X9iのスペックを比較してみましょう。

機種名 EOS Kiss M EOS Kiss X9i
撮像素子 高感度・高解像度大型単板CMOSセンサー
有効画素数 約2410万画素 約2420万画素
センサーサイズ 約22.3×14.9mm(APS-Cサイズ)
センサークリーニング あり
記録媒体 SD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I対応)
カードスロット 1
画像処理エンジン DIGIC 8 DIGIC 7
記録画素数
  • 6000×4000(JPEG L/RAW/C-RAW)
  • 3984×2656(JPEG M)
  • 2976×1984(JPEG S1)
  • 2400×1600(JPEG S2)
  • 6000×4000(JPEG L/RAW)
  • 3984×2656(JPEG M)
  • 2976×1984(JPEG S1)
  • 2400×1600(JPEG S2)
動画記録サイズ
  • 3840×2160(4K):25.00/23.98p
  • 1920×1080(Full HD):59.94/50.00/29.97/25.00/23.98p
  • 1280×720(HD):119.9/100.00/59.94/50.00p
  • 1920×1080(Full HD):59.94/50.00/29.97/25.00/23.98p
  • 1280×720(HD):59.94/50.00/29.97/25.00p
  • 640×480(VGA):29.97/25.00p
  • 4K(25.00p/23.98p):約120Mbps
  • Full HD(59.94p/50.00p):約60Mbps
  • Full HD(29.97p/25.00p/23.98p):約30Mbps
  • HD(119.9p/100.00p):約52Mbps
  • HD(59.94p/50.00p):約26Mbps
  • Full HD(59.94p/50.00p)/IPB(標準):約60Mbps
  • Full HD(29.97p/25.00p/23.98p)/IPB(標準):約30Mbps
  • Full HD(29.97p/25.00p)/IPB(軽量):約12Mbps
  • HD(59.94p/50.00p)/IPB(標準):約26Mbps
  • HD(29.97p/25.00p)/IPB(軽量):約4Mbps
  • VGA(29.97p/25.00p)/IPB(標準):約9Mbps
  • VGA(29.97p/25.00p)/IPB(軽量):約3Mbps
  • HDR動画撮影:約30Mbps
  • タイムラプス動画:約90Mbps
フォーカス
  • デュアルピクセルCMOS AF方式(顔+追尾優先AF、ゾーンAF、1点AF)
  • 手動ピント合わせ(約5倍/10倍拡大確認可能)
  • デュアルピクセルCMOS AF方式(顔+追尾優先AF、スムーズゾーンAF、ライブ1点AF)
  • 手動ピント合わせ(約5倍/10倍拡大確認可能)
測光方式
  • 撮像素子によるリアルタイム測光
  • 評価測光(384分割)
  • 部分測光(ライブビュー画面の約6.4%)
  • スポット測光(ライブビュー画面の約2.8%)
  • 中央部重点平均測光
  • 撮像素子によるリアルタイム測光
  • 評価測光(315分割)
  • 部分測光(ライブビュー画面の約6.0%)
  • スポット測光(ライブビュー画面の約2.6%)
  • 中央部重点平均測光
シャッター速度 1/4000~30秒、バルブ(すべての撮影モードを合わせて)
ストロボ同調 1/200秒
連続撮影速度
  • ワンショットAF時:最高約10.0コマ/秒
  • サーボAF時:最高約7.4コマ/秒
  • 最高約6.0コマ/秒
連続撮影可能枚数
  • JPEGラージ/ファイン:約33枚
  • RAW:約10枚
  • RAW+JPEGラージ/ファイン:約10枚
  • C-RAW:約16枚
  • C-RAW+JPEGラージ/ファイン:約15枚
  •  JPEGラージ/ファイン: 190枚(Card Full)
  • RAW: 21枚(27枚)
  • RAW+JPEGラージ/ファイン:19枚(23枚)
測光分割数 384 63
ISO感度
  • ISOオート(ISO100~6400自動設定)
  • ISO100~25600手動設定(1/3段ステップ)
  • ISOオート時の上限値設定可能
  • 「H」(ISO51200相当)の感度拡張が可能
  • かんたん撮影ゾーン:ISO100~12800自動設定
  • 応用撮影ゾーン:ISO100~25600任意設定(1段ステップ)
  • ISO100~25600自動設定
  • ISOオート時の上限値設定可能
  • 「H」(ISO51200相当)の感度拡張が可能
測距点 最大143点 45点
視野率 上下左右とも約100% 上下左右とも約95%
アイポイント 約22mm 約19mm
内蔵ストロボ 手動ポップアップストロボ オートポップアップストロボ
液晶モニター ワイド3.0型/TFT式カラー液晶モニター
ドット数 約104万ドット
HDMI タイプD タイプC
Wi-Fi 搭載
NFC 採用
Bluetooth 搭載
撮影可能枚数(ファインダー) 約235枚 約820枚
撮影可能枚数(ライブビュー) 約235枚 約310枚
動画撮影時間 約1時間25分 約1時間55分
外形寸法
  • 116.3mm(幅)
  • 88.1mm(高さ)
  • 58.7mm(奥行)
  • 131.0mm(幅)
  • 99.9mm(高さ)
  • 76.2mm(奥行)
質量
  • ブラック
    • 約351g(本体)
    • 約387g(CIPA準拠)
  • ホワイト
    • 約354g(本体)
    • 約390g(CIPA)
  • ブラック
    • 約485g(本体)
    • 約532g(CIPA準拠)
ブランド力だけではない、EOS Kiss Mの魅力

EOS Kiss MEOS Kiss X9iの性能を比較すると、

EOS Kiss Mの優れる点
  • 画像処理エンジンが新型
  • 動画が4K対応
  • 測光方式がより高精度
  • 連写性能が少し勝る(AIサーボ7.4コマ/秒)
  • 測距点が多くカバーエリアが広い
  • 視野率が100%(電子ビューファインダー)
  • アイポイントが長い
  • EOS Kiss X9iよりも劇的に小さい
  • EOS Kiss X9iよりも大幅に軽い
EOS Kiss X9iが優れる点
  • EOS Kiss Mよりも連続撮影可能枚数が圧倒的に多い
  • ファインダー使用時のバッテリー持ちが圧倒的に長い
  • 光学ファインダーを使用できる(※但しOVFとEVFどちらが良いかは好みによる)
  • 圧倒的なラインナップを誇るEFレンズをそのまま使える
  • グリップがEOS Kiss Mよりも大きいので持ちやすい
カメラとしての総合力はほぼ互角?

このようになっており、確かにEOS Kiss Mにはミラーレスならではの測距点の多さやオートフォーカスのカバーエリア、連写性能、また何と言ってもEOS Kiss X9iと比較して明確に小型軽量であるといった多くの魅力があります。

しかし、EOS Kiss X9iにはミラーレスにはない、マウントアダプター無しで付けられるEFレンズラインナップや光学ファインダーによるバッテリー持ちの良さ、また連続撮影可能枚数の多さなどがあります。

カメラとしての特徴は異なるものの、いずれがカメラとして総合的に魅力的であるか?と考えると、良い勝負と言えるのかも知れません。

 

■「EOS Kiss」というブランドが一眼レフとミラーレスを繋ぐ


一瞬でブランド力を手にしたEF-Mマウント

本来、同じ「EOS Kiss」というブランドであっても、EOS Kiss Mはこれまでの一眼レフのEOS Kissシリーズとはマウントが異なり、また一眼レフとミラーレスというシステムの違いもあります。

つまり、純正のEF→EF-M変換のマウントアダプター EF-EOS Mがあるとはいえ、マウントアダプターを使用すればミラーレスの携帯性を多少なりとも犠牲にするわけですから、EOS Kiss Mは同じ一眼レフのEOS Kissシリーズであっても、基本的には新規にレンズを揃えていく必要があるわけです。

ですから、これまでの一眼レフのEFマウントレンズの恩恵をそのまま受けられるわけでは無いのですが、「EOS Kiss」というブランド名をミラーレスでも使用することで、本来は異なるシステムでありながら、シームレスな関係であるかのような印象を与えています。

また、EOS Kiss MはEF-Mマウントで初の「EOS Kiss」であり、そこには「キヤノンである」ということ以外の実績は無いはずなのですが、あたかも、「あの有名なEOS Kissの内の1機種」と思わせることに成功しています。

特に日頃カメラに興味のない一般の方にとって、

  • キヤノン+EOS Kiss+ミラーレス

という、「ブランド力とトレンドの合わせ技」は、恐ろしいほど甘美なものとなっている、ということなのでしょう。

自分で選んだと思わせて、本当は選択肢を与えないキヤノンの上手さ

またEOS Kissシリーズは現行機だけでも、

以上の5機種がラインナップされています。

そのため、本来EOS Kiss Mの競合機は、他社の中級ミラーレス機であるはずなのですが、実際には、一眼レフのEOS KissとミラーレスのEOS Kissとで比較検討させ、「どのEOS Kissにしますか?」という選択にすり替えているわけです。

お客さんというのは、「製品を比較して選んだのだ」という過程を経ることで、納得してカメラを購入します。

特にカメラマニアでない初心者の方は、店頭、もしくはネット上で限定された時間の中でカメラを選ぶのですから、EOS、あるいはEOS Kissという括りの中でも十分に悩ませることが可能なのです。

しかし、そうして「一眼レフかミラーレスか?」あるいは「EOS Kissのどれにするか?」という風に検討したつもりでも、「結局キヤノンの中から選ばされている」ということに無自覚です。

そして、気付けばはEOS Kissのいずれかを買っていた、という事になるわけです。

渡せないはずのバトンを無理やり渡す「EOS Kiss」というマジックワード

キヤノン・ニコン以外のメーカーからすると、ミラーレスという新システムの登場によって、これまでのブランド力は通用しない、仕切り直しという状況を作りたいところでした。

しかし、キヤノンは「EOS Kiss」というブランドを上手く利用することで、本来繋がらないはずの一眼レフからミラーレスへのバトンを無理やり繋ぐことに成功しEOS Kiss Mによってミラーレスのシェアを急激に拡大しています。

本当にキヤノンというメーカーは、カメラを売ることの上手さにおいて比類ない力を持っていると言わざるを得ないでしょう。

 

参考:ITmedia,BCNランキング
画像:Amazon

Reported by 山﨑将方