ダブルスロット必須か?ダブルスロットの機能と役割を考える。

EOS-1D X Mark II

カードスロットファンの皆さんこんにちは。

デジタルカメラには主に、「ダブルカードスロット」又は「デュアルカードスロット」(※以下「ダブルスロット」と表記)と呼ばれる記録メディアを2枚挿し出来る機種と、シングルスロットと呼ばれる記録メディアを1枚のみ入れられる機種があります。

【目次】

  • ダブルスロットの機能
    • ダブルスロットが対応する機能
  • プロカメラマンにバックアップのためのダブルスロットは必要か?
    • プロカメラマンに必須と言われる同時記録を改めて疑ってみる
    • 本当にダブルスロットによる同時記録機能は必須なのか?
    • 仕事の上での同時記録の実用的なメリット
  • 写真愛好家にとってのダブルスロットの利便性
    • ダブルスロットの利点
  • ダブルスロットは必須なのか?
    • プロカメラマンにダブルスロットは必須か?
    • 趣味の撮影にダブルスロットは必要か?

そこで今回は、ダブルスロットの機能とその価値はどこになるのか?プロカメラマンにとってダブルスロットは本当に必須なのか?といった点について考えてみたいと思います。



■ダブルスロットの機能


ダブルスロットが対応する機能

まずダブルスロットと一口に言っても、全てのメーカーが同じ機能に対応しているわけではないという点に注意して頂ければと思います

それを踏まえて、ダブルスロットの代表的な機能には以下のようなものがあります。

  1. 順次記録
  2. 同時記録
  3. 分割記録
  4. データコピー

1.の「順次記録」は、一つのカードのデータが一杯になったらもう一枚のカードに続けて記録していくというもので、2枚のカードを1枚の大容量のカードに見立てて使用することが出来ます。

2.の「同時記録」は、撮影データのバックアップとして同じ画像や動画を2枚のカードに同時に記録するというもので、書き込みエラーなどによるデータの破損やカードの紛失などのリスクを抑える目的として利用されます。

3.の「分割記録」は、スロット1とスロット2で別々のデータを記録するというもので、代表的な例としては、RAW・JPEGで記録するカードを分ける、あるいは静止画・動画で記録するカードを分けるといった目的で使用されます。

4.の「データコピー」は、2つのスロットを利用してデータをコピーするもので、例えばデータを人に渡したい時にPCを使わずにメモリーカードのデータをコピーしたり、大容量のカードに切り替える際などに、データを移行するために利用されます。

 

■プロカメラマンにバックアップのためのダブルスロットは必要か?


プロカメラマンに必須と言われる同時記録を改めて疑ってみる

先にご紹介した、ダブルスロットの4つの機能のうち、「順次記録」「分割記録」「データコピー」は、言うなれば利便性を高めるための機能です。

そのため、プロカメラマンにとってのリスク回避としてダブルスロットが必須であるか?を考える際、専ら話題の中心となるのは「同時記録」、つまりバックアップ機能の重要性になってきます。

良く聞かれる意見に、「失敗の許されないプロカメラマンにとってダブルスロットは必須」という言われ方がされる場合があります。

私もダブルスロットの機種を使用していますが、しかし今回は様々な思い込みを捨てて、本当にプロカメラマンにとってダブルスロットは必須なのだろうか?という事を改めて考えてみたいと思います。

本当にダブルスロットによる同時記録機能は必須なのか?

データを保護するという意味では、確かにシングルスロットよりもダブルスロットの方が理論上データ破損や紛失リスクを下げられるわけですが、撮影者が人間である限り(あるいはロボットであっても)、完全にリスクを無くせるわけでありません。

現実にはカードエラーによって画像データが記録されていない確率よりも、それ以外の理由で撮影が困難になる確率の方が遥かに高いわけです。

実際の撮影では、逐一ピントチェックや構図チェックで撮影結果を確認しており、予備のメモリーカードも大量に持って行っていきます。

また、多くのカメラマンは撮影時には構図やピントチェックのために頻繁に画像を再生確認しているわけで、今までメモリーカードのせいで丸っ切り撮影出来ていなかったという経験は一度もありません。

そう考えると、果たして本当にプロカメラマンにとってデダブルスロットは必須なのか?というと「実は単なる気休め程度のものではないか?」という気がしてきます。

このようなことを言っていると、「プロ意識が足りない」と思われるかも知れませんが、現実には私もダブルスロットのカメラを常に使っているわけですし、大多数のプロカメラマンもそうでしょう。

しかし、「ではダブルスロットが存在しなかったフィルムカメラ時代はプロカメラマンは存在しなかったのか?」かと言えば、当然そうでは無いわけです(※フィルムカメラでも同じカットをバックアップ撮影する方法もありましたが、一般的とは言えませんでした)。

そして、現代においてもフィルムカメラで撮影を行なっているプロカメラマンは意外といて、それは写真家だけでなくコマーシャルフォト などの商業カメラマンの方にもおられます。

また、シングルスロットのM型ライカで撮影しているカメラマンもいるわけですから、要するにかなり有名なカメラマンでもダブルスロットではないカメラを使っているというケースは、今でもままあるわけです。

信頼性の高いメーカーのメモリーカードを使って、まめに撮影結果を確認していれば、データ復旧も出来ないほどのカードエラーで多くの撮影データを得られないような事故は基本的には起こらないと言って良いレベルになっていると思います。

それよりも、

  • 自分自身のトラブル
  • 交通機関のトラブル
  • 被写体側のトラブル
  • 依頼者側のトラブル
  • 撮影環境のトラブル

などによって撮影が困難になる事の方が、メモリーカードの不具合よりも確率としては遥かに高いはずで、そもそもシングルスロットであることよりも多くのリスクを抱えて撮影しているわけです。

私個人の経験では、「シングルスロットの機種しかないなら転職するしかない」というプロカメラマンや、「シングルスロットの機種を使っているカメラマンには依頼しない」というお客さんには会ったことがありません。(※学校写真、ブライダルなど一部の業界では、ダブルスロットの機種の使用を業者から要請されることがあるようです。)

そもそも本当にプロカメラマンにダブルスロットが必須であるなら、「シングルスロットのデジタルカメラ及びフィルムカメラでの商業撮影を禁ずる」と法律を定めるべきですが、そんな法律が必要だという話も全く聞きません。

ですから、「プロカメラマンは絶対に失敗できない」と言っても、現実にはそれはプロ意識からくる心構えのようなものに過ぎず、そうした気持ちはカメラマンでなくともあらゆる職業の方が持っているものです。

ただ、僅かでもリスクを下げる(あるいは下げている気になる)ために、ダブルスロットのカメラがカメラマンの多くに選ばれる傾向にある、というのも事実でしょう。

仕事の上での同時記録の実用的なメリット

バックアップのためのダブルスロットには実際は気休め程度の効果しかない、という話をさせて頂きましたが、次にダブルスロットの利便性について考えてみましょう。

プロカメラマンの場合、「撮影後にそのままメディアを渡して納品」というタイプの撮影がたまにあります(※勿論事前にそうした話があって、メモリーカード代を含めて見積もりを取って貰う必要があります)。

こうした撮影の場合、撮影→メモリーカードを渡して納品、までを一気に完了させます。

このような納品方法が取られる例としては、

  • イベント撮影などで、急いでWEBメディアにアップするので依頼者側が出来るだけ早くデータが欲しい
  • 代理店などが入る撮影で、別の会社にレタッチャーがいるので撮って出しのデータだけ貰えればいい

というような場合です。

こうした撮影では、記録メディアを相手に渡した時点で納品まで完了します。

しかし、依頼者側がカードを無くしてしまうとか、PCに取り込んだデータを間違って削除してしまうという場合があります。

そうしたケースは意外と多く、既に納品済みのお客さんから「データを無くしてしまったので、もう一度送って貰うことは可能ですか?」というようなことはままあります。

カメラマンがデータを紛失するケースより、依頼者側がデータを紛失するケースの方が遥かに多く、これはプロカメラマンであれば殆どの方に同意して頂けると思います。

そうした問題に対応するため、一応こちらでも納品後も一定期間はバックアップを取っておいたりするのですが、シングルスロットで記録メディアが1枚であれば、それを渡してしまうと当然カメラマンの手元にはデータが残っていませんから、後から「もう一度データ貰えませんか?」と言われても、対応のしようがありません。

撮影後に撮影現場でPCなどにデータを取り込めば良いのではないか?という意見もあると思いますが、そんな手間をかけるくらいであれば、最初からダブルスロットで同時記録しておけば良いという話になります。

そうした納品の方法に対する対応力という意味で、ダブルスロットの利便性が発揮されます。

 

■写真愛好家にとってのダブルスロットの利便性


ダブルスロットの利点

では次にプロカメラマン以外にとって、つまり圧倒的多数派である写真愛好家の方々にとっての、ダブルスロットの実用的な価値とは何か?を考えてみましょう。

先にご紹介したように、ダブルスロットには「同時記録」以外にも、

  • 順次記録
  • 分割記録
  • データコピー

というような機能があります。

「順次記録」は、例えば容量の少ないカードを複数枚使っている場合に、仮想的に1枚の容量の大きいカードとして利用できて便利でしょう。

「分割記録」は、例えば、基本的にはJPEGでいいけれど、良く撮れたものがあればRAWからレタッチしたいとか、静止画と動画が混在しているのは嫌だから分けて記録したい、というような利用の仕方があるでしょう。

また機種によって、1枚のカードには作品用や保存用としてRAWデータで記録し、もう1枚にはSNS用にJPEGの縮小した画像サイズで記録しておくというような事も出来ます。

 

■ダブルスロットは必須なのか?


プロカメラマンにダブルスロットは必須か?

先に詳しく説明したように、プロカメラマンにとってさえダブルスロットは「必須とまでは言えない」ように思います。

それは現代でもダブルスロットではない(フィルムカメラやライカなどの)カメラを使用している職業カメラマンがいて、そうしたカメラマンに依頼するお客さんがいて、そこでお互いが納得し仕事が成立しているという事実がそれを証明しています。

本当にダブルスロットが必須であれば、フィルム撮影を行うプロカメラマンが存在すること自体おかしいという事になります。

また、スタジオ撮影ではあらかじめカメラとPCを繋いでのテザー撮影の方法が取られるケースも多く、その場合は撮影した瞬間にバックアップが取られるのと同じことになりますので、こちらもダブルスロットの必要性が低くなると言えます。

さらに記録メディアの信頼性が向上していることや、Wi-FiやBluetoothなどを利用することで、シングルスロットのカメラでもバックアップを取ること可能であるというテクノロジーの進化という面もあります。

無線による転送の場合、RAWデータや動画は転送が難しいという面はあるものの、そもそもRAWデータでの撮影は商業撮影全体からすれば一部であり、割合で言えばJPEG撮影を行うケースの方が多いはずです。

ただ現状は、ダブルスロットには納品方法の選択肢の広さや、使い勝手の面で幾つもの利点がありますから、私自身はこれからも少なくとも当面は仕事用のカメラはダブルスロットの機種を選ぶだろうと思いますし、プロカメラマンの多くはダブルスロットの機種を選ぶでしょう。

しかし結論としては、プロカメラマンにとってダブルスロットは便利ではあるが、必須とまでは言えないと思います。

趣味の撮影でダブルスロットは必要か?

それこそ趣味なのですから、個人の好みでシングルスロットでもダブルスロットでも、気に入ったカメラを選んで頂ければ良いことだと思います。

ちなみに私は普段はiPhoneなので、SIMスロットしかありません。

 

画像:GANREF

Reported by 山﨑将方