カメラが正方形イメージセンサーを採用しない理由

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皆さんこんにちは。

カメラマニアの中で、縦位置の撮影時にカメラを構え直さなくて良い、三脚に横位置で固定したまま縦位置も撮影できるなどの理由から「正方形のイメージセンサーを採用してはどうか?」という意見が定期的に聞かれます。

実は正方形のイメージセンサーを搭載したデジタルカメラはレンズ一体型カメラなど一部で存在はしているのですが、一般的なレンズ交換式デジタルカメラで正方形イメージセンサーを採用している機種は私の知る限り現時点ではありません。

これはコスト面ということではなく、正方形のイメージセンサーを採用できない理由があるからです。

というわけで、今回はカメラメーカーはなぜ正方形イメージセンサーを採用しないのか?について解説したいと思います。



■なぜ正方形イメージセンサーは採用されないのか?


1.フルサイズセンサーを正方形にするとマウント径が足りない

フルフレームセンサーの大きさは約36.0×24.0mmとなるわけですが、これは長方形であるがゆえにマウントに収まるという場合が多く、正方形にしてしまうとマウントによっては長辺の36.0mmを確保することができません。

正方形イメージセンサーで縦横共に36.0mmの長さをもたせると、イメージセンサーの対角長は約50.9mmとなります。

一般的なフルサイズイメージセンサー36.0×24.0mmの対角長は約43.3mmですから、マウント内径の有効径が43.3mm以上あればセンサーを搭載しても一応問題ないのですが(実際にはもう少し余裕が必要になります)、対して正方形センサーで縦横共に36.0mmのフルサイズの画角を撮れるようにすると、マウント内径は最低でも51.0mm以上必要となるわけです。

そこで主要カメラメーカーのフルサイズ対応のレンズマウントの内径を見てみましょう。

マウント名 マウント径
外径 内径
ニコンZ 55.00mm
キヤノンEF 65.00mm 54.00mm
キヤノンRF 54.00mm
ライカL/パナソニックL 51.60mm
ソニーA 50.00mm
ペンタックスK 48.00mm
ニコンF 57.00mm 47.00mm
ソニーE 58.00mm 46.10mm
ライカM 43.90mm

こう見て頂くとお分かりになると思いますが、マウント内径で51.0mmを確保できているのは、ニコンのZマウント、キヤノンのEF・RFマウント、ライカLマウントだけとなっています。

つまり、そのほかのソニーA・EマウントやペンタックスKマウント、ニコンFマウント、ライカMマウントなどでは、そもそも縦横共にフルフレームの36.0mmを確保するセンサーを搭載してもマウントでケラれてしまうので意味がないわけです。

例えばマウント内径が46.10mmのソニーEマウントを見て頂ければわかるように、長方形であるからフルサイズセンサーの長辺36.0mmが入るわけで、正方形にするためにこの長辺の長さを縦方向にも伸ばしてもらえば、イメージセンサーの四隅がマウントでがっつりケラレてしまうのがお分りいただけると思います。

2.電子接点と干渉してしまいオートフォーカスも出来ない

正方形センサーが入らない場合が多いとしても「四隅は使わないから、縦横ともに長方形のセンサーであれば良い」という考え方もあると思います。

つまり「十字形センサー」や「円形センサー」というような考え方です。

仮にコストを度外視して、そのようなセンサーを作ったとしても、縦方向にセンサーを伸ばしてしまうと電子接点に干渉しオートフォーカスも出来ないため、長辺が縦横とも36.0mmのセンサーは搭載する価値はないでしょう。

縦位置横位置でカメラを動かさなくて良い、ただしオートフォーカスも出来ないし、レンズとボディ間の情報のやりとりもできない。そんなカメラが果たして総合的に利便性が高いと言えるでしょうか?

その他にも正方形センサーなどが無理である理由がありますが、次はそれを説明していきたいと思います。

3.そもそもレンズフードやフレアカッターでケラレてしまう

花形レンズフードや角形レンズフードは画角外からくる有害光を効果的にカットできるように、花形フードであれば上下方向を長く、角形フードであれば画面サイズに合わせて長方形に作られています。

そのため、イメージセンサーだけボディを横位置のまま縦位置でフルの画面サイズで撮影すると、花形レンズフードや角形レンズフードではケラレが生じてしまいます。

言ってみれば、花形や角形のレンズフードを90°取り付け位置をズラして付けているような状態と同様のことになってしまうわけです。

またレンズのマウント側にも有害光をカットするための「フレアカッター」と呼ばれる部分が設けられているレンズが多数あります。

画像引用:デジカメWatch(https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/lens_review_2/685181.html#003_s.jpg)

このレンズマウント側にある長方形の黒いマスクが「フレアカッター」です。

つまり、イメージセンサーだけ正方形にしたところで、これまで沢山発売したレンズの多くでレンズフードやフレアカッターが原因のケラレが生じてしまうために、レンズの互換性を担保できなくなってしまうというわけです。

極端な解決策としてマウント部分にレンズごと回転させる機構を搭載し、レンズフードやフレアカッターごと縦位置になるようにぐるっと回転させてはどうかという大胆な考えもあります。

しかし実際にそんなことをしたら、ボディはレンズ回転機構を盛り込みながら強度を確保するために劇的に大きく重くなるでしょうし、ボディ側で縦位置撮影に設定した時にレンズが自動でぐるっと90°も回転するのは危険すぎるでしょう。

対してレンズではなくセンサーにリボルビング機構を搭載してもレンズフードやフレアカッターの向きは変わらないのでやはりケラレてしまいますし、ボディの重量増や大型化も避けられません。

つまり、カメラを横位置に構えたまま縦位置もフルフレームで撮影しようとすれば、「イメージセンサーとレンズの双方を回転させなければいけない」というわけです。

それはつまり、今まで通りカメラを縦に構え直すということと実質的に同じことをやるというわけで、それでは意味がないというわけです。

4.その他色々な意味で現実的ではない

このようにそもそも正方形センサーでも十字形センサーでも円形センサーでもやる意味がないというか、これまで発売されたレンズとの互換性や電子接点を利用したオートフォーカスの利便性を考えると、むしろ「やってはダメ」というわけです。

また、仮にこれまで挙げた問題点を全て解消した新マウントを正方形センサーのためだけに立ち上げたとしても、例えばフルサイズセンサーであれば、36.0×24.0mm=864㎟だったのが、36.0×36.0mm=1,296㎟と1.5倍の面積になるわけですから、イメージセンサーのコストアップが生じるだけでなく、シャッターユニットや手ぶれ補正機構も大幅にスケールアップしなければなりません。

ちなみに富士フイルムのGFX 100Sのイメージセンサーが43.8×32.9mm=1,441㎟ですから、36.0×36.0mm=1,296㎟のイメージセンサーというのは、フルサイズというより、(中判の中では小さいとは言え)中判センサーに近いシャッターユニットや手ぶれ補正機構が必要になってきます。

レフ機でやろうとすればクイックリターンミラーやミラーボックスも大型化しますから、尚更大変です。

ゆえに正方形イメージセンサーは出来ないし仮にやっても売れない

その他にも細かい理由はあるのですが主に、

  1. 縦横36.0mmのセンサーの対角長51.0mm以上を確保できるマウントが少ない
  2. 縦にイメージセンサーを拡大すると電子接点と干渉しオートフォーカスもできない
  3. 既存レンズはフードやフレアカッターでケラレるためレンズの互換性がなくなる
  4. 解決のためにはレンズとセンサー双方を縦位置になるよう回転させる必要がある
  5. そのような機構を盛込むとボディが大幅に大型化してしまう
  6. またシャッターや手ぶれ補正の機構も大型化しコストアップが避けられない
  7. そこまでするくらいなら素直にカメラを縦に構える方が合理的

といったような理由から、正方形イメージセンサーや円形イメージセンサーというのは、既存マウントでは出来ないし、仮に縦位置撮影のためだけにマウントとレンズを新設計したとしても価格や大きさ・重量の大幅な増加を考えれば売れる見込みはほとんどないでしょう。

ゆえに少なくとも民生用レンズ交換式デジタルカメラでは今後も正方形センサーが実現する見込みは少ないと思われます。

Reported by 山﨑将方