ボディ平均価格42万円。カメラ業界の異常性

皆さんこんにちは。

すでに発売されたソニーのフラッグシップ機α1、そして開発発表されたニコンのフラッグシップ機Z 9とキヤノンのハイアマチュア機EOS R3と、この春は各社の高級ハイスペック機たちがカメラ業界の話題をさらっています。

しかし本当にこんなことで良いのでしょうか?

勿論この3機種は、東京2020がずれ込んでいるためにわかりにくくなっているものの、本来は2022年の冬季北京オリンピックや2022 FIFAワールドカップを見据えて開発されたカメラでしょうから、従来機であれば、EOS-1D X Mark IIID6のようなフラッグシップ(EOS R3は厳密にはフラッグシップではありませんが)とほぼ同等のカメラなので高価になるのも仕方がないでしょう。

しかし現在カメラ業界は縮小していく業界の中で生き残るため高付加価値化が急速に進み、発売される機種の多くが初心者が手を出せない(出しにくい)高級機ばかりになっています。

そこで今回はそんな話です。





■カメラ業界の傾向


2020年以降に発売&発表されたカメラたち

さて、最初に去年2020年1月1日以降、約1年5ヵ月の間に発表&発売されたレンズ交換式カメラたちの価格を見てみましょう。価格は記事執筆時の価格ドットコムでの「ボディ単体の最安値」です。

センサーサイズがフルサイズ以上のものは色付きで表示してみました。

登録日 センサー 機種名 ボディ単体最安値
2020/01/07 フルサイズ D780 214,381円
2020/01/07 フルサイズ EOS-1D X Mark III 728,700円
2020/01/21 フルサイズ M10 Typ 6376 979,900円
2020/02/12 フルサイズ D6 676,670円
2020/02/12 フォーサーズ OM-D E-M1 Mark III 166,555円
2020/02/13 APS-C EOS Kiss X10i 103,850円
2020/02/26 APS-C X-T4 169,899円
2020/03/23 中判 S3 2,403,500円
2020/07/10 フルサイズ EOS R5 442,247円
2020/07/10 フルサイズ EOS R6 299,000円
2020/07/17 フルサイズ M10-R Typ 6376 1,097,250円
2020/07/21 フルサイズ Z 5 138,000円
2020/07/29 フルサイズ α7S III 356,401円
2020/08/25 フォーサーズ OM-D E-M10 Mark IV 85,040円
2020/08/27 フルサイズ K-1 Mark II Silver Edition 224,231円
2020/09/03 フルサイズ LUMIX DC-S5 229,722円
2020/09/15 フルサイズ α7C 192,800円
2020/10/14 フルサイズ Z 7II 358,380円
2020/10/14 フォーサーズ LUMIX DC-BGH1 273,005円
2020/10/14 フルサイズ Z 6II 241,500円
2020/10/14 APS-C EOS Kiss M2 76,013円
2020/10/16 APS-C X-S10 110,000円
2020/10/27 APS-C PENTAX K-3 Mark III 251,820円
2020/12/14 フルサイズ SL2-S 627,000円
2021/01/27 フルサイズ α1 752,875円
2021/01/28 中判 GFX100S 692,010円
2021/01/28 APS-C X-E4 98,010円
2021/02/25 フルサイズ K-1 Mark II J limited 01 314,820円
2021/03/25 フルサイズ fp L 247,500円
2021/03/25 APS-C K-3 Mark III Premium Kit 287,820円

こう見ていただければお分かりのように、その多くがフルサイズ以上のセンサーを搭載しており、ボディ単体の最安値平均はなんと427,963円です。

もう一度言いましょう、ボディ単体最安値の平均が427,963円です。

これはかつてのフルサイズ上級機EOS 5D Mark IVD850の初値より高いのです。この時点ですでに異常です。

ほとんどの人に手の出し難い価格帯となってしまったカメラ業界

ボディ単体で427,963円。それだけでもう一般の人は手の出しづらい価格であるにも関わらず、例えばそんなカメラと同クラス標準ズームレンズを購入したとしましょう。

もうそれだけで70万円近くです。それに加えてそれらのカメラの性能を活かすにはCFExpressなど高価なメモリーカード、レンズ保護フィルターなども必要になってくるでしょう。あっという間に80万円です。

カメラマニアでもない一般の人や、これから写真趣味を始めたいという入門者、そうした人たちが果たして70万も80万も出して写真趣味を始めてくれるでしょうか?

フルサイズが当たり前、そんな風潮は本当に健全なのでしょうか?かつて写真愛好家にとってフルサイズ機といえば「プロが使うもの」あるいは「いつかはフルサイズ」という憧れの存在であったはずです。

それが安くなって誰もがフルサイズ機を気軽に購入できるようになったというのなら良いでしょう。しかし実際は違います。フルサイズ機は相変わらず(というよりも以前よりも)高価になっているにも関わらず、「写真撮るならフルサイズじゃないと」という風潮が蔓延しているのです。

高付加価値化、利益率の追及、そうしたものが加速した結果、もうカメラは完全に一般人とは縁遠い趣味となってしまいました。

カメラマニアを相手にした高級機ラインナップによって、一時的にはカメラ業界は販売台数の不振を補えるかもしれません。しかし今、全てのメーカーが入門機をおろそかにしています。

これでは写真趣味の裾野は狭まる一方で、カメラ業界はマニアしかいない少子高齢化社会のような不自然な逆ピラミッド構造になっていくでしょう(すでになっていると思いますが)。

たとえ大きな利益を産まなくとも、レンズキットで10万円程度で購入できるエントリークラスのカメラもコンスタントに常に作り続けるべきだと思いますし、それらもちゃんと進化させなければなりません。

しかしカメラメーカーのみならず、カメラマニアでさえカメラそのものよりメーカーの業績の方を語っている始末で「○○の決算報告がどうこう」「△△の株価がどうこう」という話が増えています。

そのため現在のカメラマニアの多くは、発売される機種のほとんどが超高級機、超ハイスペック機ばかりという現状に意義を唱えません。

  • どれだけ他社製品にマウンティングできるスペックか?
  • どれだけ利益率が高いか?

の方が大切になってしまっています。

しかしカメラ購入者の中で本当に「超高画素の秒間30コマ連写」や「8K動画」を必要としている人がどれだけいるのでしょう?

そして平均で42万円もするカメラに見合うレンズ、超高画素機の超高速連写や8K動画のような膨大なデータを記録するメモリーカード、それを処理するPC環境まで全て揃えることに負担を感じないのでしょうか?

始めるのに70万80万も必要な趣味はもうおかしいのです。みんな目を覚ましましょう。

その超高級ハイスペックカメラ、本当に我々が望むものですか?

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Reported by 山﨑将方