集合写真や自撮りで端の人が太って写るのはなぜ?

フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。

過去の各級の予想問題のまとめ

合格目指してさっそく問題です!

難易度:1級レベル

問:超広角レンズを使用して集合写真を撮影したところ、同じ列の人物でも画面周辺部に近い人ほど、引き延ばされたように実際よりも太く写ってしまった。この現象に最も強く関係していると思うものを次の中から選べ。

① 糸巻き収差
② ボリューム歪像
③ パースペクティブ

正解はこのあとすぐ!



■正解は②(ボリューム歪像)


糸巻き収差とは

まず①の「糸巻き収差」についてですが、これは広角レンズよりも望遠レンズで出やすく、画面の周辺が凹んで糸巻き状に歪む歪曲収差の一種です。

糸巻き収差のイメージ

こういった感じになります。レンズの解説やレビューでよく見ると思います。

糸巻き収差は四隅は伸びているものの、それ以外の周辺部はむしろ凹むため、問題のように画面周辺の人物が実物よりも太く見えるということにはならないため、①の「糸巻き収差」は不正解となります。

また覚えておいて欲しい点としては、「糸巻き収差は立体の被写体だけでなく平面の被写体でも発生する」ということで、これは後のボリューム歪像との違いの解説でも重要になってきます。

パースペクティブとは

選択肢③の「パースペクティブ」は遠近感のことで、「近くのものが大きく、遠くのものが小さく写る」現象のことです。

そしてこのパースペクティブは撮影距離が近いほど強調されます。

よく「広角レンズだとパースが付きやすい、望遠レンズだとパースが付きにくい」と表現されることがありますが、これは正確な表現ではありません。

パースペクティブは焦点距離ではなく撮影距離に依存するため、焦点距離の短いレンズと長いレンズでは「画角を揃えようとすると撮影距離が変わる」ことが原因です。

そのため被写体までの距離が同じ状態で撮影すれば、画角は異なるものの、広角レンズでも望遠レンズでもパースのつき方や圧縮効果は同じになります。

「広角レンズだとパースがつく」とか「望遠レンズだと圧縮効果が得られる」という風に雑に教えられる(教えている側も勘違いしていることもある)ために、初心者のうちに間違ったまま覚えてしまう人が多いので気をつけましょう。

  1. パースや圧縮効果は焦点距離ではなく「撮影距離」に依存する
  2. 焦点距離の異なるレンズで画角を揃えようとすると「撮影距離が変わるために」パースのつき方が変わる

この2点を覚えておいて頂ければと思います。

設問の内容に戻ると、パースペクティブは画面の中央部か周辺部かではなく、被写体との距離に依存する現象であるため、問題文が言うところの「画面周辺部に近い人物ほど」には該当しません。

横一列に並ぶような集合写真では、中央の人物も周辺の人物も同じ距離にいるため、パースのつき方が変わるということはないわけです。

カメラ位置からでは画面周辺部の人物の方が距離が遠くなるのではないか?と思われる方もおられるかもしれませんが、写真の場合、撮影距離とは「撮像面に対して平行に発生する距離」です。

つまりカメラの撮像面と平行になる直線上に並んでいる被写体は横に広がっていたとしても同じ撮影距離になります。

そのため、横一列に並んだ被写体は一様にピントが合うわけです。

例えばカメラの前に横一列に鉛筆を並べたとして、端の鉛筆ほどカメラボディからの距離は遠くなりますが、正面の鉛筆にピントを合わせれば、端の鉛筆までピントは一様に合うはずです。つまり、カメラの「ピント面」や「撮影距離」とは、撮像面に対して平行に発生する平面であるということがわかります。

そのためカメラの撮像面と平行になる形で横一列に並んでいる人物は、カメラにとっては同じ撮影距離であるため遠近感はつきません。そのため③の「パースペクティブ」も不正解となります。

そもそも、パースペクティブであれば物理的に遠い被写体は小さく写るはずですから、画面端の人物はカメラボディからは遠くなるわけですから、問題文のように横に引き伸ばされたように太く写るのではなく小さく写ることになるはずですが、そうはなりません。

この点からも、画面端の人物が引き伸ばされたように太く写る現象はパースペクティブとは関係がないということがわかります。

せっかくの機会なので、パースペクティブについてもう少し解説しておきましょう。

広角レンズを使って撮影した際に、

  • ポートレート撮影で鼻が実際よりも大きく写る
  • 物件の内観撮影で奥行きが強調されて写る

これらのケースは被写体との「撮影距離」によって生じている効果であるため、パースペクティブが原因となります。

画像引用:Dan Voitech BLOG(http://www.danvojtech.cz/blog/)

上の例ような、画角を揃えた際の焦点距離によるポートレートの写り方の違いは、パースペクティブに起因するものです。

カメラに近い鼻とカメラから遠い顔の輪郭部分では距離が異なるため、パースがつくというわけです。

また、不動産物件の内観写真などで広い部屋に見せたいということで超広角レンズを使って撮影されることがありますが、その際実際の見た目よりも不自然に部屋の奥がすぼまって奥行き感が強調されてしまっているケースなどをご覧になったことがあると思います。

そうした現象も画面周辺部にある撮影距離が近い壁と、画面中央部にある部屋の奥の壁とで撮影距離が異なることを原因としたパースペクティブが原因となります。

ボリューム歪像とパースペクティブは同じく立体の被写体で発生するために混同しやすく注意が必要です。

正解の「ボリューム歪像」とは

というわけで、正解は③の「ボリューム歪像」となるのですが、このボリューム歪像について説明していきましょう。

ボリューム歪像は、画面周辺部にいくほど立体物が伸びて写ってしまう現象で、経験則として皆さんが一番知っているボリューム歪像の例は、「友達と一緒に自撮り撮影をした際などに、画面の端にいる人が引っ張られたように伸びて顔が大きく写ってしまうケース」ではないかと思います。

同じく画面周辺部で目立ちやすい「糸巻き収差」や「樽型収差」とボリューム歪像が異なる点は、

  • 糸巻き収差→四隅に向かって引っ張られたように写り、辺の部分は凹んで写る
  • 樽型収差→辺の部分が膨らんで写る
  • ボリューム歪像→周辺部全体が伸びて写る

このような違いになります。そのため先ほどの集合写真の例でいうと、画面の端にいる人が顔も体も幅広に写ります。

そして歪曲収差とボリューム歪像の最も大きな違いは、

  • 歪曲収差→平面の画像でも発生する
  • ボリューム歪像→立体の被写体でしか発生しない

という点です。

ボリューム歪像は、「立体物」が「画面周辺にくる時」に起こる現象であるため、どちらかの要素がかけるとボリューム歪像は起こりません。

つまりボリューム歪像は以下のような場合は起きません。

  1. 被写体が平面像や点像
  2. 画面中央付近に配置される構図

ここを見ることによって像が伸びている原因を判別することが出来るというわけです。

発生位置 被写体形状
歪曲収差 画面周辺 立体物でも平面像でも発生
パースペクティブ 画面全域 立体物でのみ発生
ボリューム歪像 画面周辺 立体物でのみ発生

こうなります。

立体の被写体が画面周辺部にある場合には、パースペクティブとボリューム歪像が同時に起きてしまうとか、糸巻き収差や樽型収差のような歪曲収差とボリューム歪像が同時に起きてしまうという場合もあります。ややこしいですね。

またボリューム歪像が集合写真や複数人での自撮り撮影でよく起こるというのは、人間という立体の被写体が画面端まで配置されることが多く、中央の人との比較で大きさの差が目立ってしまうためにボリューム歪像が発生していることに気付きやすくなることが原因で、目立たない場合であってもボリューム歪像は頻繁に発生しています。

ボリューム歪像はなぜ起きる?

ではなぜボリューム歪像という現象が起きてしまうかということなのですが、ボリューム歪像は3次元の被写体を2次元の写真で表現しようとすることが原因で発生します。

ボリューム歪像が起こる原因を説明する方法として最も有名なのが、メルカトル図法の地図です。

球体(楕円体)の地球を平面の地図に表現しようとすると、部分的に引き延ばす必要があり、特に南北の極地にいくほど引き延ばさないと四角い地図に出来ないため、メルカトル図法の地図では歪みが大きくなり、赤道から離れた場所にある国ほど実際の面積よりも地図上の面積の方が大きくなってしまいます

こちらのTHE TRUE SIZE OF …というサイトで、左上の検索窓に「japan」と入力し、日本地図の部分をクリックして北のロシアの方に動かしてみましょう。すると日本地図が大きくなっていくと思います。それが実際のロシアと日本の大きさの違いになります。ロシアは北に位置するため、メルカトル図法では実際以上の大きく表記されています。

同様にアメリカ(united states)やオーストラリア(Australia)をロシアやグリーンランドの上に移動させてみると、アメリカやオーストラリアが地図のイメージ以上に実際は大きいということが分かるかと思います。

写真も同様で立体物を平面の画像に写そうとした時、画面周辺部にいくほど像を引き延ばさないと四角い平面画像にならないのです。

そのため広角レンズのような撮影画角が広いレンズを使って画面一杯に集合写真撮影や自撮りを行ってしまうと、画面端の人物はボリューム歪像によって引き延ばされて太って見えてしまうというわけです。

なので集合写真を撮影する際は、撮影出来るスペース余裕があれば、ある程度被写体から距離をとって撮影し、画面周辺に人物がこないようにすることで中央部と周辺部の人物をほぼ均等な大きさで写すことが出来ます。

その場合人物以外の余白のスペースも写ってしまうため、後からトリミングすると良いでしょう。または焦点距離がある程度長いレンズで撮影する方法もあります。

ボリューム歪像が気にならない焦点距離が何ミリか?というのは人によって異なるため一概に言うことは出来ませんが、集合写真であればフルサイズで35mm以上の焦点距離であれば多くの人は気にならないと思います。50mmあれば十分でしょう。

そういった面では、ボリューム歪像を緩和するためにはポートレートにおいて、鼻が大きく写ってしまうパースペクティブの除去ほど長い焦点距離は必要ありません(ポートレートのバストショットやクローズアップなどでは35mmや50mmではまだパースはそれなりに目立つので、85mmや100mm程度の中望遠レンズが使われることが多いというわけです)。

最後にまとめると、ポイントとしては「ボリューム歪像」とは、

  1. 画面周辺部で発生し、中心部では発生しない
  2. 立体の被写体を平面の画像にしようとすることが原因で発生する
  3. 星のような点像やイラストのような平面像の被写体では発生しない
  4. パースペクティブと混同しやすいが、原因が異なり発生する場所も周辺部に限られる

といった点です。

というわけで、今回は「ボリューム歪像」について解説させて頂きました。少し難しめの問題だったと思いますが、皆さん正解できましたでしょうか?

では!

Reported by 山﨑将方