今回は初心者のための、背景をボカしたい時のためのカメラの設定や撮影方法をご紹介します。
背景を大きくボカすことで、被写体が浮き立ちより印象的に被写体を写し出すことが出来ます。背景をボカすための5つのポイントを詳しく解説させて頂きたいと思います。
■背景がボケるかどうかは何に影響されるか?
まず、「背景が大きくボケるかどうかが何に影響されるか」を知る必要があります。
カメラはピントが合って見える範囲のことを「被写界深度」と呼びますが、この被写界深度が浅くなる、つまりピントが合って見える範囲が狭くなればなるほど、背景は大きくボケていきます。
では被写界深度を浅くするにはどうすれば良いのでしょうか?被写界深度は次の3つの要素に影響されます。
- 明るい(F値が小さい)レンズほど被写界深度は浅くなる
- 焦点距離が長いレンズほど被写界深度は浅くなる
- 被写体との距離が近いほど被写界深度は浅くなる
それに加えて、ピントが合っている被写体と背景の距離が離れるほど背景は大きくボケます。それぞれの要素を詳しく解説させて頂きます。
■POINT 1:明るい(F値が小さい)レンズほど大きくボケる!
背景を大きくボカすための1つめのポイントは、なるべく明るいレンズを使用して撮影する事です。明るいレンズかどうかを判断する方法ですが、レンズの名称から判別することが可能です。
レンズにはF値と呼ばれる数字が書いてあります。このF値(絞り値)が小さいほど明るいレンズということになります。
例えばこのレンズは、NikonのAF-S NIKKOR 50mm f:1.4Gですが、レンズ鏡筒の側面にレンズの名称が書かれているのがご覧頂けると思います。「AF-S NIKKOR 50mm 1:1.4G」と書かれています。この最後の1.4というのがこのレンズのF値(絞り値)ということになります。
F値は撮影意図に応じてカメラやレンズを操作することで数値を変えられるようになっていますが、開放F値と呼ばれる、一番小さい状態のF値はレンズごとに決まっています。
被写界深度を浅くして背景をボカすにはこのF値をなるべく小さくしたいわけですが、レンズごとに一番小さいF値は決まってしまっているため、なるべく明るい(F値の小さい)レンズを使用することが1つめのポイントとなります。
どんなレンズが大きくボカせるの?
基本的にズームレンズよりも単焦点レンズ(ズームが出来ないレンズ)の方が明るいレンズであることが多く、また高級なレンズほど明るい(F値が小さい)レンズとなる傾向にあります。
またズームレンズの場合、高級なレンズでは広角側でも望遠側でもF値が変わらないレンズもありますが、広角側と望遠側でF値が異なる場合も多くあり、この場合は望遠側のF値でなるべく明るいレンズを選ぶと良いでしょう。
■POINT 2:絞り優先モードで、F値を小さく設定する!
F値の小さい明るいレンズを使用する事でより大きくボカせることはご説明しましたが、単に明るいレンズを使用しただけでは不十分です。
毎回ボカしたい時ばかりではありませんから、カメラ側では絞りはある程度設定出来るようになっており、絞りの数字はレンズごとに決まっている範囲内で変更出来るようになっています。
そのため、カメラ側でレンズの開放F値(設定出来る範囲で一番小さい数字)にしてあげる事で、ボケやすい状態にしてあげる必要があります。
開放F値に設定する方法にはいくつかありますが、一般的な方法として「絞り優先モード」を使用するやり方があります。絞り優先モードはカメラによって違うものの、一眼レフやミラーレス機の多くでは、モードダイヤル上の「A」もしくは「Av」を選択する事で、絞り優先モードを選択します。
この絞り優先モードを選択したのち、ダイヤルやボタンを操作して、F◯◯という数字がなるべく小さくなるように設定します。これでレンズが開放F値に設定され、そのレンズで最も大きくボケる状態になります。
■POINT 3:焦点距離が長いレンズほど大きくボケる!
先ほどF値を小さく設定する事で、大きくボカすことが出来るというのをお話しました。次のポイントとして、焦点距離が長いレンズを使用するほど大きくボカすことが可能です。
焦点距離が長いというのは、より望遠のレンズということになります。
例えばこの二つのレンズは、
ですが、この二つのレンズを比較した場合、EF35mm F2 IS USMもEF200mm F2L IS USMもF値は同じF2となっています。
しかしながら焦点距離は35mmと200mmということで大きく異なるため、撮影距離とF値が同じであれば、EF200mm F2L IS USMのレンズの方がより大きく背景をボカすことが可能というわけです。
■POINT4:被写体との距離が近いほど大きくボケる!
4つめポイントですが、被写界深度(ピントが合う範囲)は、撮影距離が短いほど浅くなります。
つまり、同じF値・同じ焦点距離のレンズを使ったとしても、被写体に近づいて撮影すればするほどピントの合う範囲が狭まり、背景のボケは大きくなるというわけです。
しかしながら気をつけなければならないポイントがあります。それはレンズにはそれぞれ最短撮影距離と呼ばれるピントを合わせられる距離に制限があるということです。
いくら被写体に近づけば背景を大きくボカせると言っても、最短撮影距離以上に近づいてしまうと被写体にピントが合わせられません。レンズごとの最短撮影距離は説明書やカタログ、メーカーサイトのレンズ仕様表に記載されていますから、その点を意識して撮影に臨みましょう。
最短撮影距離って?
この最短撮影距離ですが、コンパクトデジタルカメラのセールストークには初心者の方にも分かりやすいように、レンズ先端から◯◯cmといった風に書かれている場合がありますが、一眼レフやミラーレス機のようなレンズ交換式カメラに使われるレンズでは、本来の意味の最短撮影距離が使われます。
最短撮影距離とは、レンズの先端から被写体までの距離ではなく、カメラボディの撮像面(イメージセンサー)からピントが合わせられる一番短い距離のことを言います。
例えばNikonのAF-S NIKKOR 35mm f/1.4Gは最短撮影距離が0.3mとなっています。これはレンズ先端からの距離ではなく、撮像素子面からの距離ですから、レンズのマウント面(レンズを取り付ける部分)からのレンズの長さと、マウント面から撮像素子面までの距離を最短撮影距離から引いた長さが、レンズ先端からの距離となります。
この最短撮影距離におけるレンズ先端からの距離のことを「ワーキングディスタンス」と呼んでいます。
ニコンFマウントのフランジバック長(マウント面から撮像素子までの距離)が46.5mm、レンズの長さが89.5mmですから、最短撮影距離の0.3m(300mm)から、レンズ長(89.5mm)とフランジバック長(46.5mm)を引いた数値(164mm)がレンズ先端からの距離であるワーキングディスタンスとなります。
ピントが合う範囲(最短撮影距離より遠い距離)の中で、なるべく被写体に近づいて撮影することで、より大きくボカすことが可能になります。
■POINT5:被写体と背景を離すほど大きくボケる!
背景を大きくボカすための最後のポイントは、被写体と背景との距離をなるべく大きくとることです。
被写体と背景の距離が近いと背景も被写界深度内に入ってしまうため大きくボカすことが出来ません。背景が遠いほど大きボカすことが出来るため、そうなるように被写体を動かしたり背景が遠い部分で構図をとると良いでしょう。
■センサーサイズに関する勘違い?
良く「イメージセンサーのサイズが大きいほど大きくボカすことが出来る」という意見が聞かれますが、これは間違いとも言えませんが、正確でもありません。
センサーサイズが大きいほど、同じ焦点距離のレンズを使用して撮影した場合には画角が広くなってしまいます。そのため、センサーサイズが小さいカメラと同じ範囲を撮影しようとすると、より焦点距離の長い望遠レンズを使用するか、被写体に近づいて撮影することになります。
先ほど申し上げたように、撮影距離が近いほど、あるいはレンズの焦点距離が長いほど大きくボケるわけですから、イメージセンサーが大きいカメラの方が、同じ画角で撮影する際、被写体に近づくか焦点距離の長いレンズを使用することになり、「結果的に」背景が大きくボケるのであって、センサーサイズそのもので大きくボケるわけではありません。
同じレンズを使って同じ場所から撮影すれば、センサーが大きくても小さくても、写る範囲(画角)が変わるだけでボケ量に変化はありません。
■大きくボカすためのポイントまとめ
さて、背景をボカすためのポイントをまとめると、
- なるべく明るい(F値の小さい)レンズを使って撮影する
- 絞りをなるべく小さい数字に設定する
- より焦点距離の長いレンズを使って撮影する
- 最短撮影距離の範囲内で被写体に出来るだけ近づいて撮影する
- 被写体と背景の距離を可能な限り離して撮影する
これらのポイントを意識して撮影することで背景を大きくボカした印象的な写真をとることが出来ます。
では皆さん頑張ってくださいね!
画像:Amazon
Reported by 正隆