梅雨が明ければお待ちかね、夏本番です。夏といえば日本が世界に誇る夜空のスペクタクルイベント、花火の季節ですね!
今回は花火撮影の様々なノウハウをまとめてお送りします。
花火をまったく撮ったことがない方も、去年うまくいかなかった方も、今年こそきれいな花火写真を撮ってみませんか?
花火くらい撮れるよーという方もお待ちください。ひと味違うテクニックをご紹介していきたいと思います。
■花火に必要な機材
まずは「花火撮影に必要なもの」をご紹介します。最初に用意していただきたいものは、最低限このような機材です。
・カメラ
コンパクトでも一眼でもOKですが、操作のしやすい一眼をおすすめします。
・レンズ
標準ズームレンズがお勧め。できるだけ手動でのズームやマニュアルフォーカスが可能なもの。
・三脚
風による三脚ブレを防ぐため、可能な限りしっかりしたもの。
・レリーズ
無線でも有線でも構いませんが、できれば有線のもの。
・NDフィルター
なくても撮れますが、あるとより便利です。
・予備バッテリー
ライブビューでの撮影は、普段よりバッテリー消費が早いので油断せずに!
カメラは皆さんお持ちだと思いますが、花火の撮影は一眼でのマニュアルフォーカスと手動でのズームの方がセッティングしやすく幅広い表現が可能です。
また三脚は軽視されがちですが、花火では風や観客の動き、花火の音による空気の振動などで非常に揺れやすくなります。面倒くさがらずにぜひしっかりした物を使いましょう。花火写真がビシッと決まるかどうかは三脚次第と言っても過言ではありません。
■花火撮影の基本セッティング
ここで花火会場での準備と、カメラの基本セッティングをおさらいしましょう。
まず家を出る前に…花火撮影ではカメラを三脚にセットし、背面モニターを基本に使いますので、バッテリーを消費します。フル充電しておくのはもちろん、予備バッテリーがあると安心です。
花火会場はできるだけ事前に情報を収集しておき、初めて行く場合は特に、まだ明るいうちに向かって場所を確保しましょう。
一度三脚をセットしてしまうと、花火大会が終わるまで動けないことを考えて、できるだけ快適に過ごせるようにレジャーシートや飲み物はあったほうがいいかもしれません。
川の土手の斜面が、前の人の邪魔にならず、後の人にも邪魔になりにくいというこで、良いと言われています。
まだ花火が上がっていないので、大体どの位置に上がるか予想しながら、三脚を立てカメラの向きを調整します。向きは他のお客さんの立て方を参考にしてもいいでしょう。
撮影モードはマニュアル、ISO感度はそのカメラの標準感度(一番画質が良くなる感度)に固定します。ISO100が多いかと思います。
絞りはF8~11くらいにします。絞りすぎると回折現象といって画質の低下を招くことがありますので、ほどほどに。前後する花火がどれも被写界深度内に入れば問題ありません。
シャッタースピードはバルブという、シャッターボタンを押している間中、シャッターが開きっぱなしになるモードにします。多くの機種では、シャッタースピードを一番遅い数値まで下げるとBと表示されます。
それ以外では、Bとダイアルに書いてある場合もありますので、その場合はダイアルをそちらに合わせてください。
フォーカスもマニュアルにして、無限遠にピントを合わせます。何m先から無限遠に入るかはレンズによりますが、遠くに見えるビルなど、100m以上距離があるものを狙えば無限遠になるはずです。
もしレンズに距離計があれば「∞」のマークがありますので、そこに合わせれば無限遠になるのですが、目一杯回してまってマークを行き過ぎてしまうとまたズレてしまいますので、ぴったり∞のマークで止めるように気をつけてください。
もし、うっかり花火より手前にピントが来たまま撮ってしまえば当然花火はボケてしまいます。
現代のズームレンズでは、焦点距離を変える度にピント合わせが必要ですので、この場合もズームして画角を変えたときには再度ピント合わせを忘れないよう、注意してくださいね!
以上で、ひとまず基本はOKです。こうした設定は少しややこしいですが慣れれば簡単なので、家で事前に試しておきましょう。
■花火撮影のテクニック変わり種
ここまで、花火を「見たまま美しく撮る」ための基本セッティングをご紹介しました。次はちょっと上級編。花火を面白く写すための、変わった演出をいくつかご紹介します。
・露光間ズーム
その名の通り、露光中にズームリングをぐるっと回して画角を変えてしまいます。望遠から広角でも、広角から望遠でも可能ですが、写したい範囲が決まっているのなら、広角から始めたほうがイメージに近い範囲が切り取れます。
これはタイミングが大切で、何度もやってみないとコツが掴めません。花火以外の被写体でできるようになってから試してみるのがオススメです。
・露光間デフォーカス
露光中に、フォーカスリングを回してわざとピントを外してしまいます。花火が芯から周囲に向かって広がるように見えます。
本来線の細いはずの花火が、太く広がって見えるのでゴージャスに見えます。
どのタイミングで、どの程度回すかによって効果が変わるのは露光間ズームと一緒なので、いろいろ試してみてくださいね。
・レンズを抑えながら、ぐるっと回す
シャッターを押した瞬間に、レンズを左手で固定するように持ちながら、カメラ自体をぐるっと回転させます。小型なミラーレス機のほうが扱いやすく、成功率が高いです。被写体がうずを巻いたようになります。
難易度は高くなりますが、露光間ズーム+露光間デフォーカスなど、2つ組み合わせることも可能です。慣れてきたらぜひ試してみてください。
こうしたテクニックが難しいという方も、撮影のときはぜひ花火だけでなく、周囲の風景も入れたカットを撮ってみてくださいね。
花火だけしか写っていないと、どこの花火大会かわからなくなってしまうものです。目立つ建物も記念に写し込めば、その時の思い出が蘇ります。
これだけバリエーションが付けられれば、花火撮影がもっと楽しくなりますね。見たままでも美しい花火に違う演出ができれば、二度楽しめます!
■線香花火を撮ってみよう
花火撮影のさまざまな情報をお送りしてきましたが、花火は大会だけではありません。好きな時に撮れる花火もあるんです。そう、それは手持ち花火!
次は落ち着いてじっくり向き合える「線香花火」の撮り方をご紹介します。
撮影に必要な物はほとんど同じ。基本のカメラ、レンズ、三脚、レリーズです。ただ花火大会と違って、レンズは接写ができるマクロレンズがオススメです。望遠レンズを使う場合は、最短撮影距離に注意して選びましょう。
そして接写するため、レンズには必ず保護フィルターを装着した上で、くれぐれも火花に近づけすぎないよう注意してくださいね。安全第一で行いましょう。
次は場所選びです。あまり風が強くない、暗めで安全な場所を探しましょう。もちろん、消火用のバケツに水を張っておくのを忘れずに!
花火大会と違って夜の公園などは足元が暗いと思いますので、懐中電灯があるとセッティングから撤収まで安心して行えます。
三脚にカメラを設置し、レリーズがあれば、一人でも撮影が行えます。とはいえ片手に線香花火、片手にレリーズですので、予め設定を確認しておきます。
まず、フォーカスはマニュアルで置きピンがオススメです。AFでも追えれば構わないのですが、線香花火のいいタイミングは短いので、切りたいタイミングで切れないのはちょっと難しいかもしれません。
あまり露光時間が長くても画面がうるさくなってしまうため、線香花火だとシャッタースピードは短めになります。連写モードにして、花火がいい雰囲気になってきたら連写してしまうのがオススメです。あとからお気に入りの一枚を探しましょう!
参考までに今回の写真は、絞りF3.5、シャッタースピード1/2、ISO100で撮影しました。シャッタースピードはいろいろ変えて試してみてくださいね。
ちなみに、線香花火の燃え方には起承転結があって、それぞれの閃光に名前が付いているそうです。
始めの赤い火玉は「蕾」、パチパチと次第に散りだす「牡丹」、勢い良く広がってゆく「松葉」、長い閃光を見せる「柳」、最後が「散り菊」…線香花火一本を人の一生に例えているんですね。名前を知るとよりいっそう情緒を感じて素敵です。
■必殺!花火ポートレート
私が一番むずかしいと思っている究極の花火撮影…それは「花火と一緒に写すポートレート」です。
花火の広がりをきれいに写すにはある程度の露光時間がいりますが、フラッシュで手前の人物を止めようとしても、露光時間が長いほど人物の周囲に「もやもや」が写ってしまいます。これは露光中に人物が微妙に動くため、フラッシュ以外の環境光で被写体が微妙に露光されてしまったものです。
これを防ぐのは難しいですが、まず被写体の人物に「じっとしていて」もらうこと、バルブでも短めに露光を終わらせることがポイントです。
また、AFはうまく効かないことが多いため、マニュアルフォーカスがオススメです。一度ピントが合い、動かないでいてもらえれば、あとは花火の開き方に集中できます!
ちょっと欲張って長めに露光すると「もやもや」が出てしまうので、何枚も何枚も撮ってみてください。検討を祈っています。
■あなたと見上げたあの花火
いかがでしたか?花火のコツはこれでおしまいです。
私は子供の頃、父のフイルムカメラで撮った花火写真がいつも上手くいかず、現像の時に失敗していたよと言われて少しがっかりしていました。
わけもわからずシャッターを押しただけなので当然なのですが…
花火は他の被写体よりちょっとコツと知識のいる分野ですが、だからこそ楽しいはず。
この夏はぜひ、花火撮影を楽しんでみてくださいね♪
Reported by ひらはらあい