毎年恒例、世界最大の三脚の祭典「World Tripod Award 2015」が開催されました。
世界中から集まった数多の三脚。果たして栄冠はどのプロダクトに与えらるのか?
各部門の受賞三脚をどこよりも早く一挙公開!!
■トラベラー部門
今年から新設されたトラベラー部門ですが、それ故に各社から意欲的な新作がこぞって出ており、激戦部門となりました。
第3位 Velbon UT-53Q
第3位を獲得したのはVelbon UT-53Q。驚きの縮長を維持しつつ、強度と剛性をワンランクアップさせたウルトレックの中型タイプ。27mmの脚径を採用しつつ、クイックシュー付きで重さは1400gに抑えられています。
段落ちの少なさや縮長の短さなど、ベルボン独自のウルトラロックを生かした作りが高く評価されました。
また脚を折り返すトラベラーでは脚のロック解除3箇所が収納時のスピードのネックになりますが、UTシリーズではセンターポールの根元を持ち上げてズラすという独自の方式で3箇所を一気にロック解除することが出来るようになっていることも評価されました。
独自の機構を次々と開発しているベルボンの勢いが勝ち取った受賞でした。
第2位 Mefoto A1340Q1
MefotoからA1340Q1が2位にランクイン。MefotoブランドでのWorld Tripod Award受賞は今回が初。
軽量でコンパクト。更に 選べる8色ものラインアップとリーズナブルな価格設定も魅力ですが、耐摩耗性に優れたアルマイト処理の高強度鍛造アルミを使用した点や、この価格帯では突出した滑らかな操作性が高く評価されました。
一脚にもなるマルチパーパス設計も面白い点ですが、実際触って脚を伸ばしたり縮めたりして頂ければその外装の仕上げと操作感に思わず唸るはず。
今後はもっと大きな三脚のラインアップが期待されます。
第1位 Gitzo GK2580TQD
トラベラータイプの大賞に輝いたのはやはりと言うか本命GK2580TQDでした。
洗練され尽くしたシンプルな構造、トラベラータイプでありながら重量級の機材も支える堅牢性など質実剛健な作りが高く評価されました。
クイックシュー部分が大きく折りたたみ時の脚の避け方に少し慣れが必要ですが、とてもトラベラータイプの雲台とは思えないほどしっかりしたクイックシュー付き雲台が付属しています。
強度を妥協して携帯性を優先した三脚、ではなく、強度を優先しつつ携帯性を工夫した三脚。Gitzoらしい伝統のトラベラー三脚となっています。
■軽量クラス部門
第3位 SLIK カーボンスプリント 634 FA
軽量三脚3位に入賞したのはSLIKのカーボンスプリント 634 FAでした。SLIKは過去にUltra 1シリーズで軽量部門の受賞がありましたが、今回はSLIKの定番シリーズカーボンスプリントでの受賞となりました。
細い脚ではありますが、ミラーレスからエントリークラスの一眼レフまでのダブルズームキットに対応し、精度感のあるナットロックと定評のあるバル式自由雲台の組み合わせは安心感があります。
またアイレベルを確保し長めのセンターポールやウレタングリップ、しっかりとした自由雲台を備えながらも1,190gに抑えた点などが高く評価されました。
第2位 Benro C0570TB0
軽量部門第2位に選ばれたのはBenroのC0570TB0でした。ダークホースでしたね。オーソドックスでシンプルな構造による飽きのこないデザインと普遍的な使い易さが評価されました。
こいった軽量タイプの三脚は各社縮長の短さをアピールするために段数が多くなる傾向にあり、細い脚径と段落ちによって安定性が落ちがちなのですが、C0570TB0は軽量を狙いつつも段数を減らすことで安定性と設置スピードを重視しており、売らんがための構造ではなく、三脚を分かっている人がサブで使う高級軽量三脚というコンセプトを貫いたことが高く評価されたポイントでした。
第1位 Gitzo GK2542-80QD
栄えある軽量部門を制したのはまたしてもGitzoでした。2型4段という絶妙のサイズ感と前モデルから数ミリサイズアップされた脚径のバランスによる安定感が高く評価されました。
雲台の評価は今ひとつで、2型3段に別の雲台を組み合わせた方がより良いという審査員のコメントもありましたが、デザインなどのマッチングも考えるとGK2542-80QDは魅力的ですね。
新しいアルカスイス互換のクイックシュー部分も重さこそあるものの、剛性感と安定感が高く本格的に使える軽量三脚に相応しいという評価を受けました。
■中量クラス部門
第3位 HUSKY #1003
中量級第3位に選ばれたのは言わずと知れたハスキー3段でした。
世界中のプロアマカメラマンの定番中の定番が5年連続受賞で今年も受賞しました。
ジュラルミンによる伸ばす際の滑りの良さ、安定感、メンテナンス性、評価の高いコマ締め方式の3way雲台など年月を経ても変わらぬ良さがあります。
しかしながら空転防止パイプになっていない、ゴムのナットリングが重いなど設計の古さも否めない部分があり、着々と進歩する各社のカーボン三脚を相手にするのが厳しくなっている部分もあります。
第2位 Manfrotto MK190CXPRO3T-3W
第2位に選ばれたのは有力視されていたManfrottoのMK190CXPRO3T-3Wでした。
レバーロックを主体に出していたManfrottoですが、世界の流行に乗るように人気シリーズの190ラインにナットロックモデルを出してきました。
コンパクトで軽量なナットで片手で複数のナットを回せること、3way雲台にも数々の新技術を盛り込み、収納式パン棒機構を取り入れ、3way雲台の悩みであったパン棒の収納性を劇的に改善しました。
またフリクションコントロールまで付けるという至れり尽くせりの設計。コマ締めこそ採用されていませんが、3way雲台としては屈指の多機能を誇りなが、重量を抑え3way雲台の弱点であった携帯性と収納性を大きく進歩させた意欲的なプロダクトであるという点が高く評価されました。
またデザイン的にも若々しく、三脚を使いたがらない若い世代に受けたことも受賞を後押ししました。
第1位 Fotopro T73C
World Tripod Award 2015で最大のサプライズと言えるのがこのFotopro T73Cではないでしょうか?
新興ブランドのフラグシップ三脚ですが、とても新興ブランドとは思えない上質な作りとなっています。
ナットロックの精度感と無駄のない動き、脚部基台の剛性感とアルマイト仕上げの質感など、非の打ち所のないほどの質感を持っており、審査員からは「品質はGitzoを超えている」というコメントもあり、その作りの良さは目を見張るものがあります。
雲台が別というネックはありますが、このクラスの三脚を買われる方であればお気に入りの雲台と組み合わせることも苦にする事ではないでしょう。
筆者も実物を何度が触りましたが、本当に高品質で一つ一つの動きが気持ち良く、縮める伸ばすという動作がこれほどまでに気持ちの良い三脚は見た事がありません。また畳んだ際も絶妙の逆三角形のシルエットになり、持ち運ぶ際も嬉しくなってしまうほどでした。
個人的にはエントリーした三脚の中でもっとも心に響いた三脚で、しかし知名度などを考えると受賞は難しいのかなという勝手な偏見をもっていましたが、新旧の名品が揃う超激戦と言える中量級部門で堂々の大賞獲得には驚きとともに感動を覚えました。
■重量クラス部門
第3位 Velbon ジオ・カルマーニュN830
ジオ・カルマーニュN830が重量級部門第3位に輝きました。
品質感の高いナットロック、脚部基台の剛性感、安定性、エレベーターの仕上げなど質感の高さがポイントとなりました。
可変石突きには賛否両論あり、このクラスでは要らないのではないかという意見もありましたが、全体のクオリティ感に関しては審査員一同が高いポイントを付けており、スタジオ据え置きでも屋外でもハードな使用に対して十分な信頼性をもって使用できるという評でした。
重量級部門は日本メーカーが苦手としているジャンルですので、この受賞は喜ばしいですね。
第2位 Gitzo GT5532S
Gitzoシステマティックの定番GT5532Sが第2位にランクインしました。圧倒的な安定性と拡張性の高さが評価され、2年連続の受賞となりました。
超望遠レンズ用の三脚としては定番中の定番となっており、Gitzo GT5532S+Sachtler FSB 8+超望遠レンズは使い易く信頼性のおけるシステムとして世界中のハイアマチュアやプロカメラマンに愛されています。
第1位 Gitzo GT5562GTS
重量級部門の1位を制したのは昨年に引き続きGT5562GTSでした。
何と言っても圧倒的な大きさ、全伸高277cm、アクセサリーのセンターポールGS5511XLS(伸高172.5cm)を装着すると約450cmにもなり、ポートレートの俯瞰撮影などにも使え、41mmの脚径は高い対荷重を誇ります。
Gitzoの威信をかけた三脚とも言えるGT5562GTSが今年も重量級部門を制しました。実際にこの三脚を必要とするカメラマンはほんの一握りでしょうが、逆にこの三脚があればこそ可能になる撮影もあり、そういう意味では写真を変える力を持つ三脚と言えるかも知れません。
■World Tripod Award 2015を振り返って
今年のWorld Tripod Awardを振り返ってみますと、新しい時代の風を感じさせた大会だったように思います。
トラベラー部門ではウルトラロックという革新で入賞を果たしたVelbon UT-53Qと、カラーバリエーションと意外なほどの質感の高さで入賞したA1340Q1。
軽量部門ではC0570TB0が王道路線で見事に受賞を果たし、Manfrotto MK190CXPRO3T-3Wは新構造の3way雲台で自由雲台に押され気味であった3way雲台のジャンルに新たな火をつけました。
そして何と言っても世界中が驚いたFotopro T73Cの受賞。
定番の作りを極め多数の受賞を果たした王者Gitzoは流石の一言でしたが、新興三脚メーカーの作り込みの高さは、驚くべきものがあり、コストパフォーマンスは勿論、作りこみで老舗メーカーを凌駕してやろうという凄まじい意気込みを感じました。
驚きと感動の大会三日間、来年のWorld Tripod Awardも今から楽しみですね!
※ World Tripod Awardは私の脳内だけで行われている世界最大の三脚の祭典です。お気をつけくださいね!
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Reported by 正隆