フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。
過去の各級の予想問題のまとめ
合格目指してさっそく問題です!
難易度:2級レベル
問:撮影時などで、「レンズ先端部から被写体までの距離」のことをなんと呼ぶか?次の中から選べ。
① 最短撮影距離
② カメラディスタンス
③ ワーキングディスタンス
正解はこのあとすぐ!
■正解は③(ワーキングディスタンス)
正解はワーキングディスタンス
正解は③の「ワーキングディスタンス」でした。今回はこの、
- 最短撮影距離
- カメラディスタンス
- ワーキングディスタンス
以上の3つの用語について、それぞれどのようなものであるのか?をご紹介します。
■最短撮影距離とは?
「最短撮影距離」とは?
最短撮影距離とは、「レンズが被写体にピントを合わせることができる時の、被写体からカメラ撮像面までの距離」のことです。
通常一眼レフカメラやミラーレスカメラの場合、最短撮影距離とは、カメラにある「距離基準マーク」(撮像素子面やフィルム面の位置を表すマーク)から、被写体までの距離をいいます。
つまり、最短撮影距離とは、「レンズが被写体にピントを合わせられる最短の距離に近づいた状態」での、「被写体からカメラの撮像面までの距離」をいいます。
最短撮影距離はレンズからの距離ではないことがポイント
最短撮影距離の注意点としては、「被写体からレンズまでの距離ではない」という点です。
また、最短撮影距離はカメラが同じであってもレンズが異なればピントが合わせられる距離が変わるため、最短撮影距離も変わります。
そのため「最短撮影距離」は、レンズの性能を表す際などに使われますが、コンパクトデジタルカメラの店頭POPなどでは、この「撮像面から」というニュアンスが伝わりづらいため、「マクロ○cm」といった表現がされ、レンズ先端部から被写体までどの程度近づいてもピントが合わせられるかを表示している場合もあります。
しかし例えコンパクトデジタルカメラであっても、最短撮影距離はあくまでも「ピントが合わせられる最近接時の被写体から撮像面までの距離であるため、例えばそうしたコンパクトデジタルカメラなどのキャッチコピーで「マクロ最短1cm」といった表現をされていたとしても、それは最短撮影距離のことではありません。
最短撮影距離のまとめ
というわけで、「最短撮影距離」とは、
ピントを合わせられる最短位置の被写体←→(カメラの)撮像面
この間の距離を表しています。
■カメラディスタンスとは?
「カメラディスタンス」とは?
次に「カメラディスタンス」ですが、カメラディスタンスは「被写体からカメラの撮像面までの距離」のことで、最短撮影距離のように、「ピントが合わせられる最短の」といった意味は含みません。
ただ、「カメラディスタンス」は「撮影距離」と言い換えても良く、カメラディスタンスも撮影距離も現代では、「被写体から撮像面まで」というような厳密な使われ方は減ってきています。
そのため多くの場合、「この写真を撮影した時のカメラディスタンス(撮影距離)は10m位だったよ」というような、単純に被写体までどのくらいの距離で撮影したかを説明する際に使われる傾向にあります。
また、最短撮影距離と異なり、カメラディスタンスはピントを浅瀬られる最短の、というような意味は含まないわけですから、もし同じレンズによる撮影であっても、例えば、5m先の動物を撮影しているのであれば、その時のカメラディスタンスは5mですし、極端な話をすると、同じレンズで月を撮影すれば、地球から月までの距離は約384,400 kmですから、その時のカメラディスタンスは約384,400 kmということになります。
カメラディスタンスのまとめ
というわけで、「カメラディスタンス」とは、
被写体←→カメラ(撮像面)
この間の距離を表しています。
■ワーキングディスタンスとは?
「ワーキングディスタンス」とは?
この問題の正解でもあった、「ワーキングディスタンス」は、「レンズ先端部から被写体までの距離」のことを言います。
ワーキングディスタンスはレンズ先端部から被写体までの距離ですから、レンズの焦点距離が変われば、被写体を同じ大きさで写そうとした時のワーキングディスタンスも変わってきます。
例えば、パースペクティブ(遠近感)などは無視して、単純に同じ被写体を同じ大きさで撮ろうとするような場合、望遠レンズでは被写体から引いて、広角レンズでは寄って撮影することになるわけですから、焦点距離が長いレンズの方がワーキングディスタンスも結果的に長くなる傾向にあります。
実はレンズによっては、同じ大きさで写そうとした時でも、焦点距離の短いレンズの方がワーキングディスタンス(あるいは撮影距離)が長くなる、といった逆転現象が起こる場合もあるのですが、これはややこしい話に入ってしまうため、また別の機会にご説明させて頂ければと思います。
さて、ワーキングディスタンスはこのあと解説するマクロレンズの話で良く出てくるため、「最短撮影距離時のレンズ先端から被写体までの距離」というイメージを持っている方が多いかもしれませんが、ワーキングディスタンスには本来そうした意味はなく、あくまでも「レンズ先端部から被写体までの距離」を示す言葉であるため、レンズの最短撮影距離ではない場合であっても、レンズ先端から被写体までの距離はワーキングディスタンスと呼んでいます。
また、「レンズ先端部」という意味にはレンズフードも含みます。
そのためワーキングディスタンスは、レンズフードを使用した場合にはレンズフード先端から被写体までの距離となるので、レンズフードを付ければワーキングディスタンスは短く、レンズフードを外せばワーキングディスタンスは長くなります。
マクロレンズでのワーキングディスタンスの影響
仮に昆虫を等倍でマクロ撮影しようとしたとします。撮影倍率が1.0倍のマクロレンズであれば、例えばニコンの、
- AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED(焦点距離60mm/最短撮影距離18.5cm)
- AI AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-ED(焦点距離200mm/最短撮影距離50.0cm)
上記の2本のレンズは、いずれも等倍撮影することが可能ですから、写せる最大の大きさは理論上同じなのですが、その際、焦点距離の短いAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDは最大撮影倍率で写そうとすると、被写体までのワーキングディスタンスは極端に短いものとなり、逆に焦点距離の長いAI AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-EDのワーキングディスタンスは長くなります。
大まかな計算としては、「最短撮影距離時のワーキングディスタンス」は、最短撮影距離からレンズの長さ(マウント面まで)とフランジバックの長さを引いたものになるため、等倍撮影を行なった際のワーキングディスタンスは、
というようになります。
このような場合、現実には、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDで昆虫に5cmまで寄るとなると、昆虫に逃げられてしまったり、そもそもそこまで立ち入ることが場所に居るといったケースがあるため、焦点距離が長いAI AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-EDの方がワーキングディスタンスが長く、昆虫撮影用のマクロレンズとしては大きく写し易いということがあります。
逆にテーブルに置いたジュエリーや、自分の指のネイルアートを撮影するような場合であれば、「最短撮影距離」が50cmもあるAI AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-EDのようなレンズはとても使い辛いものとなってしまいます。
ですからそうした撮影では、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDの方が撮りやすいだろうな、というような判断ができるわけです。
マクロ撮影以外でも重要なワーキングディスタンスという概念
ワーキングディスタンスは特にマクロレンズを語る際に話題になることの多い用語ですが、実は様々なレンズを選ぶ際に重要になります。
例えばポートレートで人物を同じ大きさに写そうとした時に、極端な例を挙げると、焦点距離85mm程度の中望遠レンズと焦点距離600mmの超望遠レンズでは、パースペクティブ(遠近感)は無視したとしても、同じ大きさで人物を撮ろうとした場合、600mmのレンズではワーキングディスタンスが極端に遠くなるために、被写体となる人物とのコミュニケーションが取り難くなってしまいます。
逆に近づくと逃げてしまうような野鳥や、あるいはオリンピックのような大規模スポーツの選手など、そもそも被写体に近づけない被写体を撮影するのであれば、焦点距離の短いレンズで超望遠レンズと同じような大きさで写そうとするのは、ワーキングディスタンスが短くなり過ぎるため撮影しやすいとは言えません。
というわけで、ポートレート撮影では中望遠程度まで、野鳥撮影やスポーツ撮影などでかつ被写体を大きく撮影したい場合には、超望遠レンズなどが一般的に使われるわけです。
こうしたことは感覚的に分かるため、多くの方が早い段階から気付いておられるとは思いますが、このように、被写体によって撮影しやすい距離が異なるため、ワーキングディスタンスという概念はレンズ選びの重要な要素の一つになります。
ワーキングディスタンスのまとめ
というわけで、「ワーキングディスタンス」とは、
被写体←→レンズ先端部
この間の距離を表しています。
■最短撮影距離、カメラディスタンス、ワーキングディスタンス
最短撮影距離、カメラディスタンス、ワーキングディスタンスのまとめ
というわけで、この3つの距離の意味を簡単にまとめると、
- 最短撮影距離:ピントが合う最短の被写体から撮像面までの距離
- カメラディスタンス:被写体からカメラ(撮像面)までの距離
- ワーキングディスタンス:被写体からレンズ先端部までの距離
となります。
画像:Amazon
Reported by 正隆