フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。
過去の各級の予想問題のまとめ
合格目指してさっそく問題です!
難易度:準1級レベル
問:1960年代から1970年代にかけて、アメリカの新世代の写真家たちがカラー写真で作品を発表し、それまでモノクロ写真が主流であった芸術写真の世界に新風を吹き込んだ。
70年代後半には多くの写真家がカラー写真を作品に使い始めるようになるきっかけとなったこのムーブメントは、写真評論家サリー・オークレアの著書「ザ・ニュー・カラー・フォトグラフィ」のタイトルをとって、「ニューカラー」と呼ばれるようになった。
このニューカラー世代を代表する写真家の一人で、上の写真を撮影した写真家を次の中から選べ。
① ティム・ウォーカー
② スティーブン・ショア
③ アンディ・チャオ
正解はこのあとすぐ!
■正解は②(スティーブン・ショア)
ニューカラー世代を代表する写真家たち
このニューカラー世代を代表する写真家としては、
- ウィリアム・エグルストン
- スティーブン・ショア
- ジョエル・スターンフェルド
- ジョエル・メイロウィッツ
- レン・ジェンシェル
などがいます。
その中でも特に有名なのが「ウィリアム・エグルストン」と「スティーブン・ショア」です。
ちなみに選択肢①のティム・ウォーカーと選択肢②のアンディ・チャオは、現代の著名なファッションカメラマンとポートレートカメラマンですが、ニューカラー世代ではありません。
そのため正解は選択肢②の「スティーブン・ショア」でした。
そこで今回は、そのニューカラー世代を代表する写真家、ウィリアム・エグルストンとスティーブン・ショアについてご紹介したいと思います。
■ニューカラー世代の巨匠、ウィリアム・エグルストン
ウィリアム・エグルストンの作品群
ウィリアム・エグルストンってどんな人?
アメリカンニューカラー世代を語る上で、まずはこのニューカラー世代で最も有名な写真家であろう、ウィリアム・エグルストンについてご紹介していきましょう。
ウィリアム・エングルストンは1939年7月27日テネシー州メンフィスで、エンジニアの父と地方裁判所判事の娘である母の元に生まれました。
少年時代のエグルストンは内向的な性格で、ピアノを弾くことや絵を描く、またハガキの購入や、雑誌から絵を切り抜いて収集することを楽しんでいたそうです。
学生時代になるとエグルストンは芸術に没頭するようになり、狩猟やスポーツを楽しむ伝統的な南部の男性の趣味とはかなり違っていたようです。
ただそうした趣味嗜好の違いはあったにせよ、エグルストン自身は同級生たちを理解しがたい人種のようには思っていなかったそうです。
大学には6年間も通いながら、エグルストンは一つの学位も修了せず、友人のヴァンダービルトに借りたライカのカメラで熱心に撮影していたそうです。
エグルストンの初期の頃の写真への取り組みとしては、スイスの写真家ロバート・フランクやフランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンを参考にしていたとのこと。
そして1960年代後半にカラーフィルムが主流になっていくと、エグルストンはカラー写真へと傾倒していきます。
エグルストンは1973年と1974年にハーバード大学で教鞭を執り、「14 Pictures(1974)」という初のポートフォリオを作成しましたが、エグルストンの名は暫くは無名でした。
しかし、MoMA(ニューヨーク近代美術館)の写真部のキュレーターであったジョン・シャーコフスキーの目に留まり、1976年にMoMAで個展が開催されることになります。
その際、当時は「退色が起きるカラー写真は芸術写真足り得ない」という考え方があったため、エグルストンのカラー写真の個展に対して、「カラー写真は芸術作品足り得るか?」という大きな論争が起きたことで、エグルストンの名前は非常に広く知られていくことになります。
その後ウィリアム・エグルストンは多くのカラー作品を発表、ニューカラー世代のパイオニアとなり、写真家としては勿論、カラー写真が芸術写真として認められていく上でも非常に大きな功績を残しました。
■写真界のスーパーエリート、スティーブン・ショア
スティーブン・ショアの作品群
スティーブン・ショアってどんな人?
ウィリアム・エグルストンともう一人ニューカラー世代を代表する写真家を挙げるとすれば、やはりスティーブン・ショア、この人をおいて他にはないでしょう。
スティーブン・ショアは1947年10月8日、 ニューヨーク市でハンドバック会社を経営するユダヤ人の両親の元に生まれました。
ショアは幼い頃から写真に興味を持っており、叔父から6歳の頃に暗室作業を教わり、その三年後には初めてのカラー写真を撮り始めます。
そしてショアは14歳で有名な写真家でありMoMA(ニューヨーク近代美術館)の写真部門の部長である、エドワード・スタイケンに写真を買って貰うなど、幼少の頃から非凡な才能を発揮していました。
1971年にはニューヨークのメトロポリタン美術館にショアの作品が展示され、これによってショアは僅か23歳でメトロポリタン美術館でカラー写真展を開催した、最年少のフォトグラファーとなりました(※但しこの時の個展はモノクロ作品)。
スティーブ・ショアはまさに写真界のエリート中のエリートであったわけです。
その後ショアはニューヨーク、テキサス、モンタナ、メキシコなどの風景写真を中心に、多数の作品を発表していくことになります。
この時のショアの撮影スタイルは、シノゴ(4×5インチ判)や35mm判を使ってロケハンを行い、最終的にはバイテン(8×10インチ判)を使って撮影するというものでした。
ショアは1982年にハーバード大学で写真に関する講義を始めますが、その内容をまとめて出版したのが「The Nature of Photographs」(邦題:「写真の本質」)です。
ショアは写真の表現方法においてはウィリアム・エグルストンと多くの共有点を持ちながらも、作品を発表する上での方法論や作品へのアプローチの仕方はエグルストンとはかなり異なります。
しかし、エグルストンとショアの間には交流があったそうで、カラー芸術写真の世界を開拓したこの二人は、ライバルであると同時に良き友人でもあったそうです。
画像:vantage,hm,artsy.net,SLEEPY JONES,HIGHSNOBIETY,OBSERVER,oneprivat elibrary.PHOTOGRAPHY,EnRedar.T Magazine
Reported by 正隆