皆さん花撮ってますか?季節は冬に向かっていますが、コスモスが旬ですし、植物園なら年中花を撮れますので、冬でも諦めずに行きましょう。
今日は本気で挑む花マクロ撮影について解説したいと思います。花は身近な被写体ですが、ネットで見るような綺麗な花のマクロ写真は実際やってみるとなかなか撮れないことが多いもの。
クオリティの高い花のマクロ写真は、根性と機材が要るジャンルで、写真の見た目とは裏腹に撮影はかなり大変です。
今日は花マクロ撮影のポイントと、それを手助けしてくれる機材達をご紹介します!これであなたも傑作花写真が撮れるはず!
※アイキャッチ画像はAmazing Graphひらはらあいさんによる撮影です。
■花のマクロ撮影はなぜ難しいのか?
マクロ撮影自体はマクロレンズさえあれば撮れるのですが、花のマクロ撮影では非常にシビアなピント合わせを屋外で行わなければいけません。そこで足を引っ張る要素がいくつかあります。
・花が風で動いて被写体ブレを起こしてしまう。
・中腰の無理な姿勢で撮影するためピントやフレーミングが甘くなる。
・屋外で液晶画面が見づらい。
・シビアなフレーミングやピント調整が難しい。
・マクロ撮影のため手ブレやシャッターショックでブレてしまう。
といったことが苦戦する原因かと思います。結果どうなるかというと、なかなかカッチリと思った通りに撮れないために妥協してしまうのです。それゆえただ撮っただけの花マクロになってしまって作品としてのクオリティが出せないこということが起こります。
■ではどうするのか?
そこで!どうするかと言うという事ですが、人間の弱点を機材で補うわけです。
- 風で花が動いてしまう→風よけをするか花を固定する。
- 中腰の姿勢を維持するのが大変→三脚を使う事で楽な姿勢で撮影出来るようにカメラを固定します。
- 液晶画面が見辛い→アングルファインダーを使います。
- シビアなフレーミングやピント合わせが難しい→マクロレールスライダーを使います。
- 手ブレやシャッターショックが起きる→三脚と雲台で固定したのち、ミラーアップしレリーズを使います。
1.風よけ
一つにはハレ切り用の板を三脚で固定する方法があります。
このような物で、写真はSLIKのセルフサンシェードというハレ切り用機材です。本来はハレ切りように使う物ですが、三脚に止められ、もう少し大きな板でも止められるのでこれで被写体の花に当たる風を防ぎます。
ハレ切り板より効果的な道具としてビニール傘やスタジオで使う透過タイプのアンブレラを使うという手もあります。
ビニール傘や透過アンブレラを使う事で、光は遮らず風だけ止めることが出来ます。しかし傘を片手で持って片手はレリーズを持ちますから、カメラは当然三脚で固定してください。
2.三脚
三脚は花のマクロ撮影必須のアイテムと言えますが、その中でも可倒式センターポールのモデルが使いやすいと思います。
可倒式センターポールというのは三脚のセンターポール部分を横に倒せる三脚で、花マクロでは花壇等で三脚を近づけることに制限がある場合に活躍します。
通常の三脚でもセンターポールの基台の部分に横付けできるセンターポールもありますからそちらを使われるのも良いでしょう。
いずれにせよマクロ撮影ではわずかな振動も影響してしまいますから、しっかりした脚でかつ最低高が低い三脚が必要です。そこでおすすめの三脚をご紹介します。
Gitzo GT2541EX
GitzoのGT2541EXは可倒式センターポールでもしっかりしたモデルで安定感が高く、フルサイズ超高画素機でもしっかりと止めることが出来ます。
また開脚角度が無段階であるため不整地での撮影が多くなる花撮影では水平に設置する際の設置性が他の三脚よりも格段に優れているのも特徴でます。まさに花マクロ撮影のためにあるような三脚と言えるでしょう。
加えてGitzoのオフセンターボール雲台、GH2750を組み合わせれば雲台の動きに制約が少なく、エクスプローラー三脚の横倒しのセンターポールの先でストレスなく自在にカメラを動かせるため鬼に金棒です。
Gitzo GH2750
まさに花撮影のために生まれたと言っても過言ではないGT2541EX+GH2750は花のマクロ撮影に本気で挑むなら最強の三脚となるでしょう。
3.アングルファインダー
最近はバリアングル液晶やチルト液晶も増えてきましたが、やはり日中屋外での視認性には難がある場合が多く、液晶画面用サンシェードを使えれば良いのですが、花マクロのようにカメラ位置が低く液晶が上を向いてしまう場合はサンシェードをつけても十分に確認できない場合があります。
そのため昔ながらの方法でもアングルファインダーがおすすめです。アングルファインダーは遮光性が高く、変倍アングルファインダーならシビアなピント合わせも正確に行うことが出来ます。
Canon一眼レフ→アングルファインダーC
Nikon一眼レフ→DR-5(丸窓ファインダー)、DR-6(角窓ファインダー)
PENTAX一眼レフ→レフコンバーターA
などが対応しています。KenkoからKF−001という各メーカー対応のアングルファインダーも発売されており、やや色付きが気になりますが、純正アングルファインダーが高すぎるという場合には選択肢として有力です。
ミラーレス機の場合は、外付け電子ビューファインダーが折り曲げられるタイプも多く重宝します。
4.マクロレールスライダー
マクロ撮影ではピント合わせやフレーミングが非常にシビアになります。またピント位置もカメラ任せでは花の適当な部分に合焦してしまい、雌しべなど狙ったところに合ってくれません。
そのため、ライブビューや変倍アングルファインダーで拡大し、マニュアルフォーカスで狙った位置にピントを合わせるのですが、その時ピントリングを回しているとピントの山にピッタリ合わせにくいということがあります。
またほんの少し横にフレーミングしたいといった場合も雲台で調整するのでは動きすぎたり締め付け時にズレが生じる場合があります。
それを防ぐためにマクロスライダーと呼ばれる微動装置を使用します。
マクロスライダーは前後左右(前後のみの物もあります)にノブを回すことで僅かずつ移動させる事が出来るため、マニュアルフォーカスでピントを合わせたり、僅かに左右に構図を動かす事が出来ます。
マクロスライダーでは、定番としてはVelbonのスーパーマグスライダー、お手頃な価格の物ではNEEWERのスライダーレールなどがあります。
高級品としてはスタジオJINのマクロ撮影用フォーカシング・レールなどがあります。花に限らずマクロ撮影全般に重宝しますから、一つあっても良いと思います。
5.レリーズ
シャッターを押す際に気をつけたいのはレリーズケーブルを使用する事です。せっかく三脚を使って安定させマクロスライダーで厳密なピント合わせやフレーミングを行っても、シャッターを切る瞬間にブレさせてしまっては意味がありません。
一眼レフであれば必ずミラーアップか露出ディレイモードなどを使用してミラーショックが収まってから露光するようにし、その際もレリーズを使ってカメラにシャッターを押した振動が伝わらないようにしましょう。
レリーズを使い、ファインダーを覗きながら花が揺れていない瞬間を狙ってシャッターを切りましょう。レリーズリモコンでも代用可能ですが、確実にシャッターが切れるという意味ではレリーズケーブルの方が望ましいと思います。
- Canon一眼レフ→TC-80N3,RS-80N3,RS-60E3
- Nikon一眼レフ→MC-36A,MC-30A,MC-DC2
- PENTAX一眼レフ→CS-205
- SONYミラーレス→RM-VPR1
- OLYMPUSミラーレス→RM-UC1
- Panasonicミラーレス→DMW-RSL1
- FUJIFILMミラーレス→RR-90
花火や夜景にも使いますから、レリーズケーブルはぜひ使用してみてくださいね。
■各マウント花撮影おすすめマクロレンズ
各メーカーごとの花マクロにおすすめのレンズをご紹介します。花のマクロ写真の場合、花壇に三脚を踏み入れてはいけませんから、短すぎる焦点距離では花に寄れません。
かといって昆虫撮影に使われるような焦点距離が長い望遠マクロレンズでは花から離れすぎてしまい、花の風よけ対策がし辛く、また下がりすぎるために混雑時には撮影が困難になります。
そのため35mm判換算で90〜100mm程度のマクロレンズがオススメです。
また花撮影用のマクロレンズでは、解像力よりもボケ味が重要になってくるケースが多く、その点を考慮して選んでみましょう。各マウント用のオススメマクロレンズを掲載しますので参考にしてみてくださいね。
Canon EFマウントおすすめマクロレンズ | ||||
ブランド | 焦点距離 | F値 | AF/MF | レンズ名 |
Canon | 100mm | F2.8 | AF | EF100mm F2.8L マクロ IS USM |
手持ちで高精度な等倍撮影が可能。カメラの角度ブレとシフトブレ、ふたつの手ブレを補正するハイブリッドIS搭載の中望遠マクロレンズです。
角速度センサーと加速度センサーが検知したカメラの動きを新アルゴリズムが分析し、ブレ量を算出。ふたつの手ブレを高精度に補正します。UDレンズ使用などLレンズならではの贅沢な光学系も魅力です。 |
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Tamron | 90mm | F2.8 | AF | SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD |
高級特殊硝材「XLD(Extra Low Dispersion)」レンズを2枚、「LD(異常低分散)」レンズを1枚使用し、諸収差を徹底的に補正しました。
また、先進の光学設計と円形絞りの採用により、美しいボケ味を実現。ピント位置のシャープな描写と、アウトフォーカス部のやわらかく自然なボケ味によって、美しい立体感を表現できるマクロレンズです。 |
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Zeiss | 100mm | F2.0 | MF | Makro Planar T* 2/100 ZE |
完璧な画像クオリティを保ちながら、1/2倍から無限遠まで撮影可能。大口径を活かした風景・ポートレイト・接写など、様々なモチーフに対応する万能レンズ。それがMakro Planar T* 2/100 ZEです。
精緻なフォーカシングの操作感から導かれる鮮明な画質は、映画撮影用レンズARRI/ZEISS マスタープライムの技術を活用することで実現しました。 |
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Nikon Fマウントおすすめマクロレンズ | ||||
ブランド | 焦点距離 | F値 | AF/MF | レンズ名 |
Nikon | 100mm | F2.8 | AF | AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED |
VR機構(手ブレ補正効果3.0段/CIPA規格準拠)を搭載した、手持ちのクローズアップ撮影も容易な望遠マイクロレンズ。
細部までシャープに再現しながら硬質なだけではない味わいのある描写が、クローズアップ撮影はもちろん、105mmの焦点距離を活かしたポートレート撮影にもピッタリです。ゴーストやフレアを軽減するナノクリスタルコートを採用しています。 |
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Tamron | 90mm | F2.8 | AF | SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD |
高級特殊硝材「XLD(Extra Low Dispersion)」レンズを2枚、「LD(異常低分散)」レンズを1枚使用し、諸収差を徹底的に補正しました。
また、先進の光学設計と円形絞りの採用により、美しいボケ味を実現。ピント位置のシャープな描写と、アウトフォーカス部のやわらかく自然なボケ味によって、美しい立体感を表現できるマクロレンズです。 |
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PENTAX Kマウントおすすめマクロレンズ | ||||
ブランド | 焦点距離 | F値 | AF/MF | レンズ名 |
PENTAX | 100mm | F2.8 | AF | smc PENTAX-D FA マクロ 100mm F2.8 WR |
レンズ先端から被写体まで13cmの距離で等倍の撮影が可能です。簡易防滴構造を備えた高品位アルミ合金ボディは、絞りリングを省略し小型軽量化を実現しています。
ゴーストやフレアーの発生を抑え、全撮影距離でシャープでコントラストの高い描写性能を発揮。円形絞りの採用により、背景のボケ味を美しく描写します。 |
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Tamron | 90mm | F2.8 | AF | SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 |
クローズアップ撮影はもちろん、風景写真やポートレート(人物写真)まで、幅広い用途にご使用いただけるのが、タムロン90mmマクロレンズです。 美しいボケ味と、手持ちでも撮影できるような身軽さが魅力です。 |
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SONY Eマウントおすすめマクロレンズ | ||||
ブランド | 焦点距離 | F値 | AF/MF | レンズ名 |
SONY | 90mm | F2.8 | AF | FE 90mm F2.8 Macro G OSS |
光学式手ブレ補正機能の搭載により、手持ちで高精度な等倍撮影ができるEマウントレンズ初の中望遠マクロレンズです。球面収差などの諸収差をバランスよく補正し、Gレンズならではの柔らかく美しいぼけ味を実現。
遠距離から至近距離までピントが合った被写体を鮮明に描写するために、フォーカス方式には撮影距離による収差変動を抑制するフローティング機構を採用。ナノARコーティングやスーパーED(特殊低分散)ガラスなど、ソニーの先進技術も惜しみなく投入しています。 2つのフォーカスレンズ群の駆動には、停止位置精度と静粛性に優れた「ダイレクトドライブSSM(DDSSM)」を採用。静止画、動画を問わずシビアなピント合わせに応えます。 さらに、フォーカスリングを前後にスライドさせるだけで、AF/MFを素早く切り替えられる「リングスライドスイッチ」や全長固定でレンズの繰り出しのない「インターナルフォーカシング」、フォーカスロックを迅速に行える「フォーカスホールドボタン」など、マクロ撮影に求められる操作性を備えています。また、防塵防滴に配慮した設計も施しています。 |
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マイクロフォーサーズマウントおすすめマクロレンズ | ||||
ブランド | 焦点距離 | F値 | AF/MF | レンズ名 |
OLYMPUS | 60mm | F2.8 | AF | M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro |
解像力とコントラストの高さに秀でた防塵・防滴性能の等倍*マクロレンズです。遠方から1:1等倍のマクロ撮影まで、また画面中心から周辺まで高解像・高コントラストを維持し、絞り開放から鮮鋭な描写力を実現。ネイチャーマクロはもちろん風景やポートレートなど幅広い用途で活躍します。 | ||||
Panasonic | 45mm | F2.8 | AF | LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S. |
ライカの厳しい性能評価基準をクリアし、歪曲収差・ゴースト・フレア・周辺解像度の低下を極限までおさえたマクロレンズです。
光学式手ブレ補正(MEGA O.I.S. )を搭載し、マクロ撮影はもちろんのこと、通常の中望遠域レンズとしてポートレート、望遠スナップ、風景撮影など、幅広く使うことができます。 また、フォーカススイッチによる最短撮影距離の切り換え(15cm⇔50cm)機能を搭載し、撮影する被写体に応じて快適なフォーカシングを選択できます。 |
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FUJIFILM Xマウントおすすめマクロレンズ | ||||
ブランド | 焦点距離 | F値 | AF/MF | レンズ名 |
FUJIFILM | 60mm | F2.4 | AF | XF60mmF2.4 R Macro |
コンパクトなサイズながらもF2.4という明るいF値を持つ中望遠レンズです。
第7レンズにガラスモールド非球面レンズを使用し像面湾曲を防ぎ、第6レンズにED(異常分散)ガラスレンズを使用して色収差を抑えています。 美しいボケ味と高精細な描写を両立するこのレンズは、ポートレート撮影で威力を発揮します。また、最短撮影距離26.7cmを利用した、最大撮影倍率0.5倍のマクロ撮影も特徴です。 |
■美しい花には棘があるもの
花のマクロ撮影は仕上がった写真とは裏腹に意外にも肉体的な負担が大きく、精神的にも消耗する撮影ジャンルです。というのも屋外という状況で、揺れ動く花をわずか数ミリの被写界深度のなか構図をとらなければならないからです。まるで米粒に文字を書くような集中力と忍耐を必要とします。
本格的に花のマクロ撮影をするカメラマンは、花畑の無数の花の中からベストな花を探し、この花と決めたら、一つの花の前で風が収まるのを待ち、ベストな光線になるのを待ち、実に数時間にわたって撮影に挑むこともしばしばです。
美しい花写真は決して優雅に撮影されたものではなく、努力と執念の賜物です。
撮れた時の達成感もまた大きく、心地よい充足感に満たされるでしょう。ぜひ皆さんも、「本気の」花マクロ撮影に挑戦してみてください。きっと楽しいですよ!ではまた次回!
画像:ひらはらあい,Gitzo,Velbon,SLIK,Nikon,Canon
Reported by 正隆