寒くなってくると被写体が減りますね。撮影地に行くのも億劫です。そんなときこそイルミネーションです。
まずもって期間さえ間違えなければ必ず撮れる、天候に左右されにくい、都市部なのでお出かけが楽、冬はイルミネーションと野鳥の季節、今日はクリスマスイルミネーション撮影のコツをご紹介します。
■ポイント1 センサーサイズの大きなカメラを使おう
イルミネーション撮影では三脚も積極的に使いますが場合によっては手持ちで撮影するシーンもあります。そのため暗所に強い、つまり高感度耐性の高いカメラが理想的で、高感度撮影に強いセンサーサイズが大きいカメラがオススメです。
また点光源を大きくボカす撮り方も定番のためセンサーサイズが大きいカメラの方が有利です。
コンパクトカメラ、ミラーレス、一眼レフいずれでも撮影可能ですが、出来るだけ大きなセンサーを使っているもの、フィルターやマニュアルフォーカスでの使用が多くなるイルミネーション撮影ではできれば一眼レフを選びましょう。
■ポイント2 明るいレンズを使おう
F値の小さい明るいレンズであればより大きくボカせるのでインパクトをあるイルミネーションを撮影できます。また手持ちでのイルミネーション撮影でも感度をある程度抑える事が出来るので画質を維持できます。
焦点距離に関してはイルミネーション撮影であれば標準ズームがオススメです。F2.8の明るいズームレンズが理想です。また単焦点という方法もあります。
単焦点の場合、並木道のイルミネーションなどの全景を撮りたい場合は35mm判換算で24〜35mm、ボケを生かした写真を撮りたい場合は50mm〜135mm程度の単焦点が使いやすいでしょう。
イルミネーションの撮影で前ボケに点光源の玉ボケを散りばめたような写真がありますが、ああいった玉ボケを簡単に作る方法としてクリスマスツリーなどに使う装飾用LEDを使う方法があります。
電池式のタイプを携帯しカメラの前にかざしながら遠くの被写体にピントを合わせると、手前側の装飾用LEDは大きくボケるため玉ボケを作りやすいというわけです。
実際のイルミネーションでも位置関係を上手く行えば手前に玉ボケを作ることは可能ですが、ちょうど撮りたい構図に都合よくイルミネーションがあるとは限りません。
そこで電池で稼働する装飾用LEDを携帯しておくとどこでも玉ボケを作ることが出来るというわけです。
■ポイント3 三脚を使おう
やはり画質やシビアな構図を求めるなら三脚は必須。感度の上昇を防ぐとともに、夜は光源以外は暗いため水平出しが困難になるのでなるべく三脚を使って撮影しましょう。
三脚は屋外で使うならしっかりしたものが良いですが、イルミネーション撮影では混雑する場合もあり、使用するレンズも標準域が中心になるため、カメラとレンズによって変わりますが、おおむね脚径25mm〜32mm程度の中型三脚が使いやすいでしょう。また冬場の撮影になるためアルミほど冷たくならないカーボン三脚がオススメです。
雲台は3way雲台でも自由雲台でも構いません。脚だけしっかりしていても雲台が弱いと三脚は意味を成しません。脚に見合ったしっかりした雲台を使いましょう。
レリーズは出来る限り使用してください。イルミネーション撮影ではギリギリの精細さは重要ではありませんが、使うに越した事はありません。また待機中手袋やポケットの中からでもシャッターが切れるので、防寒としてのメリットもあります。
■ポイント4 ホワイトバランスと露出に気をつけよう
ホワイトバランスしだいで印象が大きく変わります。イルミネーションの撮影ではオートだけでなく、プリセットなら「蛍光灯」や「電球色」も積極的に試してみましょう。
機種によってはホワイトバランスプリセットの「蛍光灯」の中にいくつか種類がありますから、いくつか試してみるとイメージに近い色が見つかりやすいのでオススメです。
露出に関しては、ツリーや街路樹のイルミネーションのようなLED点光源は通常白飛びしてしまいますがそれは構いません。
イルミネーションの強い点光源は白飛びするのは当たり前で、それを無理に露出を下げても全体が暗いイルミネーションになってしまうだけで写真としては良くなりにくいというのが現実です。
光源をボカすような場合はある程度薄まっている方が綺麗に見えることもあるため露出補正で好みの明るさに仕上げましょう。
イルミネーションの場合はハイライトの飛びやシャドーの潰れを抑えるよりも、イルミネーションの景色として画面全体の明るさをどの程度にしたいのかで露出を決定します。
HDRを使用することでハイライト部とシャドー部の露出さを埋められれますが、やり過ぎると不自然な写真になることもあるので段階的に調整出来る機種ではHDRの効果を調整してみると良いでしょう。
■ポイント5 予備バッテリーを忘れずに
寒いとバッテリーの持ちが悪くなります。その上三脚を立ててのライブビュー撮影では、よりバッテリーの消費が激しく短時間でバッテリーがなくなることもしばしば。
機種によって極端に電池持ちの長い機種や短い機種がありますが、可能な限りバッテリーの予備を用意しておきましょう。
バッテリーはお出かけ前に充電残量の確認をお忘れなく。ちなみに現在のリチウムイオン充電池は継ぎ足し充電しても問題ないため、充電量が中途半端だった場合は撮影前にフル充電しておきましょう。
■ポイント6 フィルターワークを駆使しよう
フィルターを使用することで一味違ったイルミネーション撮影が可能です。使う機会の少ないアクセサリーですがぜひ用意して撮影にのぞみましょう。
イルミネーション撮影で代表的なフィルターとしては一つはクロスフィルターがあります。クロスフィルターには種類があり、十字架のように4本の光条(光芒)が出るクロスフィルター、雪の結晶のような6本の光条が出るスノーフィルター、8本の光条が出るサニーフィルターがあります。加えて光条の角度を調節できるバリクロスフィルターなどもあります。
イルミネーションの場合、点光源が密集していることが多く、スノーフィルター(光条6本)やサニーフィルター(光条8本)では画面がギラギラし過ぎてしまいうるさくなりがちです。そのため4本の光条が出るクロスフィルターがオススメです。
絞りを絞り込むことでも光条は発生しますがクロスフィルターほど大きな光条ではないため、出したい光条の大きさなどでクロスフィルターにするべきか絞り込んでの光条にするべきかを判断しましょう。
絞りを絞っての光条は当然シャッタースピードが遅くなりがちですから三脚を使用するのがオススメです。
絞り羽根で出る光条は、
- 絞り羽根の枚数が奇数であれば、絞り羽根の枚数×2=光条の数
- 絞り羽根の枚数が偶数であれば、絞り羽根の枚数=光条の数
となります。つまり仮にお使いのレンズが、
- 5枚羽根絞り=光条10本
- 6枚羽根絞り=光条6本
- 7枚羽根絞り=光条14本
- 8枚羽根絞り=光条8本
- 9枚羽根絞り=光条18本
となります。せっかくの機会ですから、なぜ絞り羽根が奇数枚と偶数枚で光条の発生本数に差が出るか?ということをご説明します。
絞り羽根による光条は、絞り羽根が重なる部分で回折現象(光が物体にぶつかった際、光が物体を回り込もうとする現象)が発生するために起こる現象で、絞り羽根の重なる部分で2方向に発生します。
その時羽根同士が重なる箇所は絞り羽根の枚数と同数になるため、各箇所で2方向、仮に7枚羽根絞りであれば各箇所2方向の合計14方向に広がるため14本の光条が発生します。
では絞り羽根が偶数枚だった場合はなぜ倍の本数にならないのかということですが、実は絞り羽根が偶数枚でも光条は各箇所2方向に、絞り羽根の枚数の2倍発生しているのです。
ただ偶数枚の絞り羽根の場合、光条の発生箇所である絞り羽根が重なる位置の対角線上にちょうど別の絞り羽根の重なりがあります。
そのために2方向に分離しても光条同士が重なるため、つながった一本として見えるので、偶数枚の羽根絞りでは光条が2倍に見えないというわけです。
またイルミネーションで使うと面白いフィルターにボケフィルターというものがあります。光源のボケをさまざまな形に変形させるもので、「☆」や「♡」などが代表的ですが、「♪」やミッキーのような複雑な形も可能です。
ボケフィルターは自作も出来ますが市販品でもありますので作るのが面倒なかたはそちらを使ってみましょう。
ボケフィルターは理屈としては変えたい形の絞りをレンズの前側にもう一つ作っているようなもので、レンズによっては上手くいかない場合もあります。
標準域の単焦点レンズなどではやりやすいのでお持ちであれば挑戦してみはいかがでしょうか。
■ポイント7 防寒をしっかりしよう
寒い中長時間の撮影になります。しかも動きの少ない撮影は体力をどんどん奪っていきます。可能な限りの防寒を行い、快適な撮影を続けられるように準備しましょう。
防寒のポイントとしては、一部だけ厚着するよりも、頭・首・上半身・手・下半身・足など満遍なく肌の露出をなるべく減らすように心がけましょう。防寒着としては、ニット帽、ネックゲーター、ダウンジャケット、撮影用手袋、化繊入りパンツ、厚手の靴下などをしっかり着込んでください。
ダウンジャケットは軽くて保温性が高いもの、撮影用手袋は指先がオープンにできて滑りにくいものがオススメです。私のおすすめダウンジャケットは、ノースフェイスのビレイヤーパーカ、撮影用フォトグローブはFreehandのフォトグローブです。
また、ハクキンカイロやZippo ハンディウォーマーのような熱量の多いカイロを使用することもオススメです。冬の夜景撮影は寒い中で動きが少ない撮影になりますから、想像以上に体が冷えるため油断しないことが大切です。
■ポイント8 一人ぼっちの撮影でも折れない心を身につけよう
イルミネーションの季節はきらびやかな場所ほどリア充カップルがいっぱい。その中であなたは一人孤独に耐えながら撮影しなければなりません。
折れない心、それが一番大切です。
■イルミネーション撮影にオススメの撮影機材
必ずしもこの組み合わせである必要はありませんが、これからイルミネーション撮影を一から始めたいかた向けにオススメの組み合わせをご紹介します。
既にお持ちの機材に不足している物だけ加えるもよし、一から揃えるもよし、参考になればと思います。
■強く儚い者たち
冬の撮影の定番、イルミネーション。恋人たちは語らい、我々は寒さと孤独に耐えながら最高の一枚の目指すのです。孤独と戦うあなたのそばにはきっと三脚を携えた別のカメラマン、いいえ、戦友の姿があるでしょう。
言葉は交わさずとも、時に場所取りで殺伐としようとも、同じ志を持っています。
イルミネーションという戦場で戦う者たちに祝福あれ!
画像:PICTURECORRECT,TERU TERU BOUZU,THE NORTH FACE,freehands
Reported by 正隆