というわけで、今日はギア雲台です。これは風景写真や静物写真愛好家には是非とも使っていただきたい雲台です。素敵ですよ。ええロマンティック雲台です。
■ギア雲台のメリット
一般的な3ウェイ雲台や自由雲台は、ロックを緩める→動かして構図をとる→再びロックするという動作を行いながら構図を決めていきます。対してギア雲台は、前後ティルトと左右ティルト、パン方向を別々に動かすという点では3ウェイ雲台と同じですが、ノブを回すと少しずつギアが動いて離したところで止まります。
つまり、ロックを解除したり再びロックして固定する必要がなく、ノブを回せば少しずつ動き、回すのをやめればそこでガッチリと固定されるのが大きな特徴で、締め込む動作そのものが無いため3ウェイ雲台でパン棒を締め込んだり、自由雲台でノブを締め込んだ時に起こる構図のズレがありません。
また微妙な構図調整が可能なため、シビアなフレーミングを求められる風景撮影やブツ撮りなどで細かい構図変更を繰り返す際に非常に楽に行うことが出来るのも大きな魅力となっています。
■ギア雲台のデメリット
ギア雲台は非常に優れた雲台ですが、幾つかの欠点ももっています。一つは重いこと。最近では軽量なモデルも少しずつ出てきていますが、雲台自体の構造が複雑であるため同じ程度の耐荷重をもつ同クラスの3ウェイ雲台や自由雲台と比べると重くなってしまいます。また値段も高くなりがちというのも欠点の一つと言えるでしょう。
しかしながらそれらを補って余りある圧倒的な操作性の良さがあるため、風景写真家や特に商品撮影をするようなブツ撮りのカメラマンには圧倒的な人気を誇るのがギア雲台です。
逆にギア雲台が向かない被写体として、ギア雲台はわずかな微妙な構図調整をすることに特化されているため、大きな動きを連続して行うような被写体には向きません。
多くのギア雲台はギアをフリーにすることが出来るため3ウェイ雲台のように使うことも出来ますが、野鳥や飛行機、スポーツ撮影のようなレンズを大きく振ることが多い撮影ではあえて使う意味がありません。
風景や静物などゆっくりとシビアな構図で撮りたい被写体にこそその威力を最大限発揮します。
■ギア雲台を発売しているメーカー
構造的に複雑であるため、数多ある雲台メーカーでもギア雲台を出しているメーカーは非常に限られます。最も有名なのがManfrotto、次にArcaswissです。他には大判カメラで有名なLinhofや三脚のBenroなども発売しています。
Manfrottoは現在4機種、Arcaswissは2機種、Benroが1機種が現在発売中です。Manfrottoは小型の物から大型の物まで取り揃えており最も人気があります。
ArcaswissはデフォルトでArcaswiss互換プレートが使え品質にも定評がありますが価格が高価な物しかありません。一般的にはManfrotto、値段を度外視するならArcaswissがオススメと言えます。
■オススメのギア雲台
オススメのギア雲台としては小型の物ではManfrotto 410とArcaswiss D4、重くなっても良いからより良い物をということであればManfrotto 405とArcaswiss C-1 Cubeです。
Manfrotto ギア付きジュニア雲台 410
Manfrotto 410 | |
クイックリリース | あり |
ハンドル1回転ごとの回転角度 | 7.2 ° |
水準器(個数) | 1 |
パン回転角度 | 360 ° |
フロントティルト | -30° / +90° |
横ティルト | -90° / +30° |
使用時高さ | 13cm |
耐荷重 | 5kg |
自重 | 1.4kg |
ManfrottoにはMHXPRO-3WGというより小型軽量でミラーレス一眼などに向いたギア雲台もありますが、一眼レフで使うならこちらの410の方が向いています。
しっかりとしたクイックシューとギア雲台としては小型軽量に収められており、一般的な3ウェイ雲台よりは重くなりますが、携帯性を極力損なわずにしっかりとした安定性と精密な動きを実現しています。
また価格的にもこなれたギア雲台で、ギア雲台を使ってみたい、なるべくお手頃な価格でギア雲台を使ってみたいという方には最もオススメできるモデルと言えます。
ギアのロックを外して大きく動かしたいという場合、ノブの根元の手裏剣のような部分を回すことでロックが外れますが、その部分小こともありやや硬いという欠点がありますが、必要にして十分なギア雲台と言えるでしょう。
Arcaswiss D4
Arcaswiss D4 | |
クイックリリース | あり |
ハンドル1回転ごとの回転角度 | ー |
水準器(個数) | 2 |
パン回転角度 | 360 ° |
フロントティルト | -95° / +105° |
横ティルト | -35° / +30° |
使用時高さ | 10cm |
耐荷重 | 30kg |
自重 | 0.97kg |
水平方向のティルト軸と垂直方向のティルト軸が同一で、カメラを回転させるパンニングの中心軸もX軸Y軸の基本の真上 に位置しているため、カメラ位置の動きを最小限に抑え向きを精密に調整するこ とができます。
ギアヘッドのティルト調整は微調整ギアを動か すノブとロックフリーボタンを備えており、ロックフリーボタンの解除 でボールヘッドのように自由にカメラの向きを変えられるため、撮影開始時に大まかなカメラの位置を決めた後、ギア微調整ティルトに切り替 えて精密なカメラ位置の調整を行えます。
風景撮影やブツ撮りでの細かい構図調整で威力を発揮しながらも携帯性を考慮したバランスの良いギア雲台と言えるでしょう。
Manfrotto ギア付きプロ雲台 405
Manfrotto 405 | |
クイックリリース | あり |
ハンドル1回転ごとの回転角度 | 6.55 ° |
水準器(個数) | 3 |
パン回転角度 | 360 ° |
フロントティルト | -30° / +90° |
横ティルト | -90° / +30° |
使用時高さ | 16cm |
耐荷重 | 7.5kg |
自重 | 2.25kg |
中判または35mm判のデジタルカメラを使用するプロカメラマンの過酷なニーズに対応するように設計された本格的なギア雲台です。迅速で非常に正確な位置決めと高い保持力を誇ります。
耐荷重は7.5kg。大きな使いやすいノブにより滑らかで確実なギアコントロールで360°のパン、+90°-30°の前方向と横方向ティルトが可能です。
そのギア雲台としての機能に加え、即座にギアを外してカメラを手で大まかに位置決めし、再び即座にギアを働かせて厳密な最終の位置決めができる機能も備えています。この際もギアの解除ノブが大きく力を込めやすいこともあり、ギア雲台にありがちな硬さや重さをかなり軽減してくれます。
本体そのものの大きさや重さはありますが、一旦設置してしまえばあとは非常に快適な操作感が得られる、ブツ撮りカメラマンの定番雲台となっています。もちろん風景や建築物にもその威力を遺憾無く発揮することでしょう。
Arcaswiss C-1 Cube
Arcaswiss C-1 Cube | |
クイックリリース | あり |
ハンドル1回転ごとの回転角度 | ー |
水準器(個数) | 2 |
パン回転角度 | 360 ° |
フロントティルト | -28° / +28° |
横ティルト | -28° / +28° |
使用時高さ | 11cm |
耐荷重 | 100kg |
自重 | 0.994kg |
独自の設計を持つC-1 Cubeは重量994g。雲台の2つのノブで機材をミリ単位で動かすことが可能、カメラはその弧形内部で位置を変えるだけなので、被写体までの距離や全体像はほとんど変化がありません。
また雲台直上にカメラが位置し重心軸がズレないため非常に安定して使える、ギア雲台の最高峰と呼ぶに相応しい雲台です。
雲台底部のパノラマ はカメラ機材を被写体方向に向けるために装備されています。方向と水平を 決定したら、上部にある第2パノラマベースで、縦方向を変えることなく360 度回転することができます。
世界屈指の高価な雲台でもあるC-1 Cubeですが、これ以上に精密な動作が可能なスチールカメラ用雲台は地球上に存在しないのではないかと思えるほど完成度の高い雲台となっています。
■人も街も雲台も、世界はギアで回ってる
ギア雲台は万物の根底。宇宙の法則。…決して風邪で力尽きてまとめ文を手を抜いているわけではありません。誤解なきようお願いします。チャオ!
画像:Amazon
Reported by 正隆