「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」の受賞作が発表!

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

世界最高峰のネイチャー写真賞のひとつ、ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016の受賞作が発表されましたのでご紹介します。

グランプリにはティム・レイマンさんのインドネシアでオランウータンを撮影した写真が選ばれました。インドネシアのボルネオ島で3日間にわたってロープを登り降りしながら複数台のGoProを使って撮影したとのこと。



■ナショナルジオグラフィックの撮影の実際


グランプリを受賞したティム・レイマンさんが2012年に極楽鳥全種の撮影の成功させた際、インタビューでナショナルジオグラフィック誌の撮影について応えています。

Q1:ナショナルジオグラフィックの写真家は一年のうちどのくらい取材に出ている?
A1:一年のうち4〜6ヶ月程度。一回の取材は1〜1ヶ月半程度。

Q2:一回の取材で写真を何枚くらい撮影して、そのうち何枚がナショナルジオグラフィックに掲載される?
A2:1ヶ月間で約1万〜4万枚程度撮影し、その中で4枚程度がナショナルジオグラフィック誌に掲載されます。1週間に1枚ナショナルジオグラフィックに載せられるような良い写真が撮れれば満足。

Q3:極楽鳥の取材は8年がかりだったが、取材費はどの程度かかった?
A3:ナショナルジオグラフィックの通常の撮影では取材費は3ヶ月分程度をもらいます。極楽鳥の取材は困難であったため当初4ヶ月分を貰いましたが、その後資金集めを行い8年間がかりで18回の取材を行い、合計で約200,000ドル(日本円換算:約2,000万円)以上の費用がかかりました。

世界トップクラスのワイルドライフ・フォトグラファー(野生動物写真家)の撮影のスケールを感じさせるインタビューとなっています。

ちなみにティム・レイマンさんは18歳まで日本に暮らしていたとのことで、流暢な日本語でインタビューに答えてくれています。

■ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016


ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤーは世界中のプロ・アマ写真家が応募することが可能で、2016年は95カ国から約5万点もの作品が寄せられたとのこと。

「生物多様性を維持し、人間は自然と調和して生きられるのか?」という社会や環境に関する問いかけを重視して選考が行われるとのことで、グランプリに選ばれたティム・レイマンさんが撮影したオランウータンは近絶滅種に指定されているとのこと。

■グランプリ以外の受賞作品(画像・解説引用元:ナショナルジオグラフィック)


ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

インプレッション賞受賞(Photograph by Luis Javier Sandoval)

メキシコのカリフォルニア湾で、エスピリトゥ・サント島沖の海に潜ったルイス・ハビエル・サンドバル氏に近寄ってきたのは、好奇心旺盛な若いカリフォルニアアシカたち。1頭のアシカが、海底からヒトデを拾って投げつけてきた。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

モノクロ部門受賞(Photograph by Mats Andersson)

スズメフクロウは秋につがいとなり、春まで一緒に暮らす。スウェーデン南部のロスフルトで、そんなフクロウ夫婦の観察を楽しんでいたマッツ・アンデション氏はある日、つがいの1羽が森の地面で死んでいるのを見つけた。「残された1羽が樹上にたたずむ姿は、私自身の悲しみも映しています」。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

ディテール部門受賞(Photograph by Rudi Sebastian)

ブラジルのレンソイス・マラニャンセス国立公園では、雨期になると砂丘の谷に水がたまり、無数の湖が出現する。ルディ・セバスチャン氏はこの一時的な現象をとらえようと、かなり前から準備して撮影に臨んだ。この風景は、数週間後には消えてしまった。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

都市の自然部門受賞(Photograph by Nayan Khanolkar)

インドのサンジャイ・ガンジー国立公園に隣接するムンバイの郊外では、夜になると、ヒョウが食べ物を探して路地をうろつく。インドでヒョウがニュースになるのは、通常は人が襲われたときだが、それとは違う姿をとらえたいと考えたナヤン・カノルカール氏は、4カ月がかりでこの一枚をものにした。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

水中部門受賞(Photograph by Tony Wu)

西太平洋のパラオ周辺の海には毎月、満月の前後の数日間、バラフエダイの群れが産卵のために大集合する。雌が卵を産み、雄が放精する躍動感にあふれる光景を、長年にわたり水中撮影に取り組んできたトニー・ウー氏がとらえた。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

地域部門受賞(Photograph by Stefano Untertheiner)

イタリアのアオスタ渓谷を2年にわたり撮影してきたステファノ・ウンターティナーは、山々が低い雲に覆われるタイミングを心得ていた。ある日、ハゲワシが小鳥の群れの上空を旋回した瞬間にウンターティナーはシャッターを切り、「野生に満ちた素晴らしい地域」の魅力をとらえた。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

ヤング・ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 受賞(Photograph by Gideon Knight)

木の枝に止まるカラスは、英国ロンドン在住のギデオン・ナイト氏が自宅近くのバレンタイン・パークでよく目にする光景だ。ナイト氏はユニークなアングルを求めて、カラスの向かい側にある坂からこの一枚を撮影した。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

単写真部門受賞(Photograph by Paul Hilton)

インドネシア・スマトラ島のベラワン港で押収された、約4000匹の冷凍されたセンザンコウ。記録上で最大規模の押収劇に偶然遭遇した写真家のポール・ヒルトン氏が撮影した。センザンコウのうろこは万病に効く薬になると信じられ、伝統薬の材料として中国やベトナムに運ばれる予定だった。

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 2016

鳥部門受賞(Photograph by Ganesh H Shankar)

インドのケオラデオ国立公園(別名バラトプル鳥類保護区)で、樹上の巣穴に戻ってきたワカケホンセイインコが、ベンガルオオトカゲと鉢合わせした瞬間。逆光の中、ガネーシュ・H・シャンカール氏はわずか数秒のチャンスをものにした。

■「世界一の動物写真」(2015年発刊)写真集のご案内


世界一の動物写真

2016年の受賞作は掲載されていないもの、2015年に「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」の50周年を記念した写真集「世界一の動物写真」が発刊されていますのでご紹介します。

内容紹介

「世界一の動物写真」は世界最高峰のネイチャー写真賞「ワイルドライフフォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」50周年を記念し受賞作の中から選りすぐりの163枚を厳選して掲載した写真集です。

それぞれの時代を代表する多くの偉大な写真家たちに焦点を当て、ネイチャー写真がどのように発展してきたかを解説しています。

黎明期の大判カメラから1960年代のカラーフィルムの台頭を経て、今日では動物写真の撮影技術はますます洗練され、誰も見ることのなかった未開の地までが被写体となっており、世界を代表する写真家たちのビジョンや才能、情熱、撮影技術を伝えています。

構成

記録から芸術へ/写真の起源/コンテストの始まり/被写体を「見る」技術/被写体の目線で撮る/場に漂う雰囲気/そして光が現れた/決定的瞬間/野生の風景/自然のデザイン/白いキャンバス/より速く、もっと速く/ポートレートとポーズ/遠隔撮影の構図/ 小さな生き物たち/夜を撮る/物語のある写真/モノクロへの回帰/空中撮影/水中写真の革命/若者の熱意/最後のメッセージ/写真家索引

参考:NATIONAL GEOGRAPHIC,Amazon
画像:NATIONAL GEOGRAPHIC,Amazon

Reported by 正隆