カメラの良し悪しは底面を見ればすぐ分かる。

D5

皆さんこんにちは。

突然ですが、「作りの良いカメラ」を見抜くにはどうすれば良いのでしょうか?

仕様表を見比べる?カタログを読み込む?

しかし、仕様表から分かるのはカメラのスペックであって、カメラの本質的な作りの良し悪しではありませんし、カタログを読み込んだとしても、どのメーカーも高品位なボディであることのアピールに余念がないため、本当のところは分かりません。

そこで今回は「カメラの作りの良し悪しを一目で判断する方法」をご紹介します。



■カメラの底面には品質が出る


作りの良いカメラは外装の接合部やネジが目立たない

昔からカメラ業界では、

「作りの悪いカメラはパッチワークのようにつぎはぎだらけでやたらと外装にネジが多く、逆に作りの良いカメラはつなぎ目が少なく外装にネジが少ない」

と言われています。

しかし「作りの良いカメラは接合部が目立たず外装のネジが少ない」と言っても、そこはカメラメーカーも分かったもので、目立ちやすい上面・前面・背面・側面などは、

  • 張り革の下にネジ止めがくるようにする
  • ビスキャップでネジを目立たないようにする
  • アイカップなど外装パーツでネジが隠れるようにする

といったさまざまな工夫を施すことで、接合部やネジが目立たないように工夫しています。

最も品質が出るのがカメラの底面

しかしながらカメラ底面は展示機でも下になって隠れる上に、開発者も「どうせカメラマニアも底面までは見ていないだろう」となめてかかっているので、カメラ底面は手を抜いたかそうでないかが現れやすく、カメラの作りの良し悪しが出やすいのです。

例えばキヤノンの最も安価な一眼レフであるEOS Kiss X70と、フラッグシップ機であるEOS-1D Xの底面を比較してみましょう。

EOS Kiss X70は底面に確認できるネジは7本、EOS-1D Xは4本となっているのが分かります。ボディの大柄なEOS-1D Xの方がネジが少ないというわけです。

またEOS Kiss X70の底面はパーツのつなぎ目やネジが目立つのに対して、EOS-1D Xの底面は非常にスッキリとまとまっていて、つなぎ目やネジが目立たないのがお分かり頂けると思います。

EOS Kiss X70

EOS Kiss 70

EOS-1D X

EOS-1D X

 

■良いカメラはネジもネジ穴も違う


ネジ穴の座ぐり加工と皿もみ加工

作りの良いカメラとそうで無いカメラでは、ネジの本数だけでなくネジやネジ穴にも違いがあります。

EOS Kiss X70の方が頭が丸い丸ネジを使用しているのに対して、EOS-1D Xの方はネジの頭が平らな皿小ネジが使われています。

EOS-1D Xのように金属のボディで皿小ねじを使用するためには、部材に開けるネジ穴にネジの頭部がピッタリと嵌るように、「皿もみ加工」という加工を部材側(カメラボディ側)に施す必要があります。

EOS Kiss X70のネジ穴もネジ頭が出っ張らないように「座ぐり加工」というネジ頭が飛び出さないための加工自体はなされているのですが、単にネジが飛び出さなければ良いという簡単な作りのもので単純にまっすぐな落とし穴のような穴を開けているものだと思ってください。

そのため、EOS Kiss X70の方はEOS-1D Xに見られるようなネジ頭がピッタリとボディに埋め込まれているように見えるような精度の高い加工にはなっていません。

ザグリ加工と皿もみ加工
引用元:筐体ファクトリー(http://www.kyoutai-factory.com/chassis/5803.html)

EOS-1D Xに施されているような皿もみ加工は、斜めにネジ穴をあけるためより高い加工精度が必要になりますが、その分ネジ頭とネジ穴の密着面を広くできるため、ネジが緩みにくくできるというメリットがあります。

実際、単純にネジの本数が少ないだけでなく、ネジの色・形状・面一に近い精度でネジ穴が開けられているために、EOS-1D Xの底面はほとんどネジが目立ちません。

ライバルであるニコンも同様に、エントリーモデルD3400は見える底面の見える部分のネジは6本であるのに対し、フラッグシップ機であるD5は2本と少なく抑えており、やはりネジもEOS-1D Xと同様に、D5にも皿小ネジと皿もみ加工の組み合わせが使われているのがわかります。ちなみにアイキャッチに使われているのがD5の底面の画像です。

 

■作りの良いカメラとは?


価格と比例するとは限らないカメラの作り

勿論このEOS Kiss X70EOS-1D Xや、D3400D5の差は、かけられるコストが異なることから生まれるものであるということも忘れてはいけません。

安価なカメラと非常に高価なカメラを比較して作りに差があるのは当然ですから、EOS Kiss X70D3400がダメなカメラというわけではありません。

しかし言い換えれば、「高価なカメラなのに、底面が継ぎ目だらけネジだらけ」というようなカメラは、幾らカタログスペックが高くても考えものというわけです。

良いカメラはネジの音も違う

またネジの数や見た目だけでなく、「ネジを外す時の音でも」カメラの作りの良し悪しが分かるもので、良いカメラは分解するときネジを回すと「パチン!」と小気味良い音がすると言われています。

実はこの音も皿小ネジと精度の高い皿もみ加工が施されたネジ穴によるもので、先に述べたように、ネジ頭と皿もみ加工された部材との密着度が高いために、ネジを緩める瞬間にパチン!という指を鳴らすような音がするのです(※何度も分解・組み立てを繰り返して接合部が摩耗したり緩んでいるような個体は別です)。

そうした精度の高いネジとネジ穴の組み合わせの場合、ネジが緩みにくいというメリットがある反面、カメラを分解するためにネジを緩めようとすると最初は強い力が必要なのですが、一旦緩むと後はほとんど力を入れることなく指でもスルスルと回す事が出来ます。

逆に作りの悪いカメラの場合、分解しようとネジを緩めても、外装と内部パーツのネジ穴の位置がピッタリ一致しておらず、外装と内部パーツのズレたネジ穴同士でネジが違う方向に引っ張られているため、いつまで回してもギシギシとした外れているのか外れていないのか分からないような感触が続き、最後までドライバーでネジを回し続けなければいけない場合があります。

カメラの分解を経験されたことがある方は少ないとしても、PCの部品や家具などのネジの組み立てなどで、精度の悪い位置のズレたネジ穴を経験され方は多いのではないでしょうか?

つまり作りの悪いカメラは、ネジ穴自体の精度だけでなくネジ穴同士の位置も正確にあけられていないのです。

そしてネジ穴同士を無理やりネジで縫い止めるようなズレを許容しているということは、他の部分の作りも推して知るべしというわけです。

座ぐりや皿もみ加工をジャストサイズではなく大きめに作っておけば、穴あけ位置の精度が低くてもネジで帳尻を合わせられるのですが、そうするとネジが緩みやすくなってしまったり、そこから水や埃が染み込みやすくなってしまうわけです。

つまり、座ぐりや皿もみ加工を必要最小限の大きさに抑えて、ネジ頭がピッタリと埋まるようになっているということは、それだけ高い精度でネジ穴の位置も決められているということの証明なのです。

 

■各メーカーの底面を比較してみる


フラッグシップ機の底面比較

では各メーカーを代表する現在のフラッグシップ機の底面を比較してみましょう。

Canon:EOS-1D X Mark II:ネジ4本/つなぎ目は目立たない
EOS-1D X Mark II
Nikon:D5:ネジ2本/つなぎ目は目立たない
D5
SONY:α9:ネジ9本/つなぎ目は少し目立つ
α9
OLYMPUS:OM-D E-M1 Mark II:ネジ10本/つなぎ目は目立つ
OM-D E-M1 Mark II
FUJIFILM:GFX100:ネジ4本/つなぎ目は目立たない
FUJIFILM GFX100
Panasonic:LUMIX GH5S:ネジ9本/つなぎ目は目立つ
LUMIX GH5
RICOH:PENTAX K-1 Mark II:ネジ13本/つなぎ目は目立たない
K-1 Mark II

各社を代表するマウントのフラッグシップ機を比較してみると、EOS-1D X Mark IID5は底面が大きなカメラでありながら、見えているネジの本数が圧倒的に少なく、つなぎ目も少ないことからとても洗練されていることが分かります。

ネジの本数自体は多少増えても問題ないのですが、バラバラの部材をパズルのようにつなぎ合わされた「見た目に汚い」底面であるということは防塵・防滴性や剛性の面で不利なのです。

これは剛性や防塵・防滴性の面で不利になり「やすい」というだけの話であって、見た目で100%それが分かるという話ではありませんし、実際にネジや継ぎ目が多いカメラであっても、しっかりとしたシーリング等が施されていれば防塵・防滴性や剛性感を十分に確保することは可能です。

とは言ってもやはり、ボディ底面は作り手の意識の高さやカタログスペックに現れないコストのかけ方が現れやすい箇所であるということです。

底面を見る時に注意すべきは以下のような点です。

  • つなぎ目の数は多くないか?つなぎ目が目立たないか?
  • ネジはどんなネジが何本使われているか?
  • ネジ穴の加工は座ぐりか皿もみか?
  • ネジとネジ穴のサイズはピッタリと一致しているか?

などの点に注意してみましょう。その結果として、

  • ボディパネル同士のつなぎ目が少なく目立たない
  • ネジの本数がなるべく抑えられボディと面一になっている
  • 緩み難い皿ネジと皿もみ加工の組み合わせになっている
  • ネジとネジ穴のサイズが一致し最小限のネジ穴になっている

といったカメラであれば、作り手が精度に拘って作っているということが見て取れるわけです。

 

■目立たない部分にこそ、カメラ作りの本質がある


カメラの底面を見れば作り手の拘りが分かる

例えば同価格帯のカメラと比較して性能面では評価されることの少ないライカのカメラは、おそらく世界で最も底面を美しく仕上げているメーカーです。

このあたりの「カタログスペックに現れない作りの良さ」が、世界中にライカファンがいる理由の一つなのかも知れません。

ちなみにM型ライカは底面に何もないわけではなく蓋によってカバーされているわけですが、結局カメラの細部に対する意識が高いことに変わりはありません。

LEICA M10
引用元:LEICA(https://leicastoremiami.com/)
LEICA TL2
引用元:LEICA(https://leicastoremiami.com/)
LEICA SL2
引用元:LEICA(https://leicastoremiami.com/)

ご覧頂ければわかるように、ライカのカメラ(OEMモデル除く)の多くは、底面に表記はあるものの、ネジや繋ぎ目を極力減らしてスッキリと仕上げられていることがわかります。

勿論ライカに限らず、高品位な作りがなされたカメラボディは見た目に美しいだけでなく、実際にカメラを手に取った際にも高い剛性感を感じさせる作りとなっています。

もし今度カメラ店などに行かれた際には、カメラの底面を見比べてみて、どのようなネジが何本使われているのか?つなぎ目が目立つか?片手で持っても剛性感を感じるか?などに注目して頂ければと思います。

カタログスペックには現れない、本当のカメラの作りの良し悪しを感じ取る事が出来るかも知れません。

 

画像:LEICA,KRISTIAN DOWLING,Amazon,GANREF,筐体ファクトリー,my news desk

Reported by 山﨑将方