東京で星空撮影に挑戦するっ!星野・星景撮影のテクニック教えます!

今日は東京で天体撮影をする方法についてまとめてみたいと思います。

星空撮影

天体撮影は本来、光害の少ない場所に超したことはありません。しかし星を撮りたいからと言って、山の上や砂漠のど真ん中やウユニ塩湖や宇宙空間に行くのは大変ですよね?

そこで今回は世界有数の大都市、東京で星野(星空だけ)写真や星景(星空+地上風景)写真に挑戦する際の、天体観測のおすすめスポット、カメラ選び、レンズ選び、三脚での撮影、赤道儀を使用しての本格撮影、更にはコンポジット撮影(比較明合成)まで、あらゆるノウハウをお伝えしたいと思います。

今回のメニューはこちら

1.東京で星空撮影をするためのおすすめスポット
2.天候や季節の注意事項
3.コンパクトから一眼レフまでカメラの選び方
4.各社おすすめ星空撮影用レンズ
5.天体撮影向きの三脚と雲台
6.赤道儀の役割と選び方
7.あると便利な撮影アクセサリー
8.カメラの設定と撮影方法
9.赤道儀の使い方
10.コンポジット撮影(比較明合成)
11.最後に…



■1.東京で星空撮影をするためのおすすめスポット


まずは場所の選定が重要です。これを間違うと幾ら腕があっても天体撮影は失敗してしまいます。

では、光害だらけの東京のどこで撮影するためのおすすめスポットをご紹介していきます。

1位 奥多摩湖/東京都西多摩郡奥多摩町

東京の西の果て、奥多摩です。都内と言っても近い方は殆どおられないのではないでしょうか。また公共交通機関を利用して行く場合、駅からもバスが必要でアクセスは良いとは言えません。

しかしそれだけに都内一と言われる天体観測スポットとなっています。車で行くのがオススメですが、天候さえ恵まれれば東京都は思えない満天の星空に出会えることでしょう。

2位 高尾山/東京都八王子市高尾町

東京都内の超有名登山スポット、高尾山。圧倒的に整備された登山道でロープウェイもあるため登山そのものはどなたでも容易です。

登山というプラスアルファが必要なため、多少の労力が必要ですが、開放的な山頂からは天候に恵まれれば広い星野と朝焼けを撮影できます。

3位 武蔵野の森公園/東京都府中市朝日町3-5-12

電車と徒歩で行ける公共交通機関だけで行ける天体観測の名スポットがこちら。国立天文台が近いことからも天体観測向きの場所であることが伺えます。

奥多摩や高尾山ほど派手な星野が見える訳ではありませんが、まさに歩いて行ける天体観測スポットです。

4位 砧公園/東京都世田谷区砧公園1-1

東京のど真ん中、世田谷区にある大きな公園です。都心のため光害の影響がない訳ではありませんが、電車とバスで行ける東京都内で星を見に行くには非常に楽に見に行ける場所にあります。

世田谷美術館裏手になりますので、美術鑑賞のあと星を見にいくのも悪くないでしょう。

■2.天候や季節での注意事項


まず星は季節ごとに見える星座がことなります。観察したい星座が決まっている場合は季節と時間帯を考慮しましょう。

時間がズレていると星は出ていても地平に近い低い位置にあるために、建物などに邪魔されて見えない場合があります。

また、満月や光害の影響を受けやすい平日夜の早い時間帯はオススメではありません。

sky-m

星見表を見るも良し、スマートフォンのアプリで確認するも良し、国立天文台のサイトで下調べするのも良いでしょう。

夏場は虫対策、冬場は防寒対策を忘れずに行いましょう。天体撮影どころではなくなってしまいます。また、安全に配慮して行動するように心がけましょう。自分が夜空のお星様になってしまっては天体観測は出来ませんからね。

■3.コンパクトから一眼レフまでカメラの選び方


大きさや重量だけで選ぶと失敗の原因になりますので、現場での使い勝手を重視してお選び頂ければと思います。

現在はミラーレス一眼やコンパクトカメラの中にさえフルサイズセンサーを搭載したものがあり、一眼レフが画質的に最高という事ではありませんが、実用性を考えると一眼レフ→ミラーレス→高級コンパクトの順で携帯できる範囲でお選び頂くのが良いでしょう。

カメラ選びの際の重要なポイントとしては、

・高感度性能
・チルトorバリアングル液晶
・レンズラインアップ

などが挙げられます。

マウントアダプターを使用する事でミラーレスでもレンズ選択の幅は広がりますが、長秒露光や赤道儀のことを考えると、可能な限りシンプルで安心感のある構成で撮影が行える機種をご紹介していきたいと思います。

より本格的な撮影をしたい方のために天体撮影用の冷却CCDカメラや市販のカメラに天体用の改造を施す事方法などもありますが、専門的な知識やメーカー保証が受けられなくなるなどのリスクもありますので、ここではもう少し手軽に、最初から天体撮影に適したカメラを具体的な機種を挙げながらご紹介していこうと思います。

オススメのカメラは2015年8月現在発売中のものです。今後より良い機種が出てきた際にはまた別の機会にご紹介させて頂ければと思います。

■一眼レフおすすめ機種


最高の星空写真を目指すあなたに:D810A

D810A

Nikonの天体撮影用カメラで、天体撮影用改造カメラのようにIRカットフィルターを天体撮影用に変更されています。一般的なデジタル一眼レフカメラでは淡くしか写せないHα線の波長で光る星雲を、期待どおりに赤く写せます。

その他にも天体撮影向けに長秒露光やインターバル撮影も強化されています。

天体用の改造カメラもありますが、メーカーサポートや修理が非対応になることを考えると、改造による不安のなさは大きな利点と言えるでしょう。

またフルサイズセンサーによる高感度性能、電子先幕シャッターによる機構ブレの軽減、解像力などを考えると予算さえ許せば、画質、操作性、撮影の容易さ、レンズラインナップなど、本格的な天体撮影を始めたい初心者から天体撮影のハイアマチュアまでベストチョイスの一台と言えます。

天体撮影用の専用機となりますので、一般的な撮影の場合はカラーバランスが崩れる可能性あり、普段用と兼用は出来ませんのでその点にはお気をつけ下さい。
D750

同じく上のD750もオススメ機種となります。こちらはD810Aと違って一般撮影にも使用できますので、普通の写真も撮りたいという方にはこちらが適しています。

フルサイズセンサーによる高感度の強さ、フルサイズ一眼レフで唯一のチルト液晶搭載機で天体撮影を無理のない体勢で撮影可能、豊富なレンズラインナップと、非常に使い易いモデルになっています。


赤道儀?要りません。PENTAXならね!:K-3II

K-3II

K-3IIも天体撮影に非常におすすめ出来る機種となっています。

PENTAXはNikonやCanonとほど一眼レフメーカーとして知名度があるとは言えないかも知れません。しかしながら過去には本格的な天体望遠鏡なども販売しており、天体撮影にかける意気込みは一眼レフ2大メーカー(Nikon,Canon)に決して引けをとりませんん。

特にこちらのK-3IIは、シャッターショックの少なさに加えて、アストロトレーサーという機能があります。

内蔵GPSによって測位し、ボディ内の手振れ補正機構SRと連動させることで、簡易的な赤道儀として利用できます。

赤道儀なしで追尾撮影が出来る一眼レフというのはPENTAX独自の技術であり、非常に優れた携帯性を実現しています。
メーカーに拘りがなく、手軽に天体の追尾撮影をやってみたい方には非常におすすめ出来る一台となっています。


楽で簡単、普段も使えるオールラウンダー:EOS 70D

EOS 70D

Canonの中級機EOS 70Dも天体撮影に適した一眼レフとして非常にオススメ出来る機種です。

バリアングル液晶と使い易い操作性、豊富なレンズラインナップがあり、天体撮影にこれから挑戦してみたい初心者〜中級者まで満足のいくモデルだと思います。

性能的にはフルサイズのD810AD750ほどではありませんが、価格面ではずっと安価であり、差額をレンズや三脚などに割り振るという意味では現実的な選択として有力だと思います。

■ミラーレスおすすめ機種


手持ちも可能な超絶高感度性能:α7S

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SONYが誇るミラーレス機の中でも屈指の高感度性能を誇るのがこちらのα7Sです。

高感度に強いということは、同じ画質で露光量を得るのでに短い露光時間で良いということです。それはすなわち、撮影の負担の軽減につながり、また赤道儀を使わずに三脚だけで星を点像に写したいといった場合にも活きてきます。

更にチルト液晶も搭載していることも魅力でしょう。
また、フルサイズセンサー搭載機でありながら一眼レフと比較して小型軽量な点も魅力となっています。


PC要らずのコンポジット撮影機:OM-D E-M1

001_s

OLYMPUSのOM-D E-M1にはライブコンポジットという機能が付いており、これを利用することで比較明合成写真が簡単に行えます。

防塵防滴も冬の撮影時に室内に戻った際に起こる結露に対する安心感があります。勿論チルト液晶も搭載していますので撮影時にも無理のない姿勢で撮影できます。

センサーがマイクロフォーサーズということで高感度に特別強いとは言えませんが、その分明るいレンズが割と安価に発売されていますのでそちらと組み合わせて頂くのが良いと思います。


お手軽星空撮影向け:EOS M3

EOS M3

性能的に天体撮影にベストチョイスという機種ではありませんが、手軽に軽くということであればEOS M3もオススメの1台と言えます。

チルト液晶、APS-Cセンサーで高感度もそこそこ強く、撮影も容易です。また広角レンズが手頃な価格で、EFレンズをお持ちであればそちらの広角レンズも純正マウントアダプターで使用できるのも魅力でしょう。

その他にはX-T1X-A2なども気軽な天体撮影に使いやすい機種としておすすめです。

■高級コンパクトおすすめ機種


星野写真最強コンパクト機:RX1R

RX1R

フルサイズセンサーによる高い高感度性能、F2.0の明るいレンズ、レリーズ使用可能と、星野・星景撮影には類まれなる高画質が期待できます。

デメリットしてはズームが無いため構図の自由度に制限がかかりますが、構図がはまればコンパクトカメラの中で最高の機種と言えるでしょう。

似たコンセプトの機種にLeica Qがありますが、そちらはケーブルレリーズが使えないなどの問題があり、高感度性能もRX1Rに多少見劣りする部分があるため、35mmはRX1R、28mmはGRIIがオススメです。


高倍率星空写真向けコンパクト:RX10M2

RX10

1.0型センサーとF2.8通しのレンズ、更にチルト液晶とケーブルレリーズ対応で撮りやすいコンパクトカメラとなっています。またそれなりのズーム倍率と24mm広角にも対応していますので、天体撮影における自由度の高いカメラとなっています。


ポケットに入る幸せ:GRII

GR_II

APS-Cセンサー搭載でF2.8レンズと相まってコンパクトで高画質な星野写真のシステムをお考えであれば最有力かも知れません。

収差が少なく周辺の星が流れにくいのも特徴で、スナップに星野・星景写真にと幅広く使える機種となっています。

■4.各社おすすめ星空撮影用レンズ


一眼レフで天体撮影のシステムをお考えの方に、Nikon FマウントとCanon EFマウント、PENTAX Kマウントのおすすめレンズをご紹介します。

高額なレンズもありますが、投資に見合った写りが期待出来ますから、本格的な星野・星景写真をお考えの方は御一考いただければと思います。

また天体や星雲などの撮影の場合は写真用レンズではなく天体望遠鏡にカメラを接続する事が多く、その場合はボディ側のマウントをアダプターでTマウント(天体望遠鏡のマウント)に変換して接続するわけですが、天体望遠鏡メーカーが純正でカメラ⇄Tマウントの変換用に出しているアダプターは、多くのメーカーがNikon FマウントとCanon EFマウント用はラインアップしています。

装着出来ない訳ではありませんが、更にアダプターが必要になると複雑で接続にもガタつきが出る可能性があるため、天体望遠鏡をつなげる天体撮影まで想定されている方は、最初からNikon FマウントかCanon EFマウントの一眼レフで選ばれた方が後々楽だと思います。

■Nikon Fマウントおすすめレンズ


星野星景写真の最強レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

14-24mm

Nikonが誇る広角レンズの最高峰で、画質・明るさなど天体撮影に申し分ない性能を持っています。本格的な撮影をお考えであれば是非。


コストパフォーマンスの高い大口径ズーム:SP 15-30mm F2.8 Di VC USD

Tamron-SP-15-30mm-f2.8-Di-VC-USD-full-frame-zoom-lens

レンズメーカーTAMRONが出している広角ズームレンズです。画質・明るさ共に十分で、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDには画質面で一歩及びませんが、遜色ない性能を半額で購入できると考えれば非常にコストパフォーマンスの高い機種と言えるでしょう。


周辺の星まで完璧な高級単焦点:AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED

24mm

Nikon広角単焦点レンズの上位モデルで、画質・明るさ共に画角さえ合えば最高のレンズと言えます。星野写真の最高の友となるでしょう。

■Canon EFマウントおすすめレンズ


見たこともない映像をあなたに:EF11-24mm F4L USM

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Canon広角ズームレンズの最高峰で、フルサイズ用レンズとしては驚異的な画角を実現しています。見たこともない星野・星景写真が狙えるおすすめの一本です。


高次元でバランスのとれた高級レンズ: EF16-35mm F2.8L II USM

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Canon広角ズームレンズの高級ラインで、画角・写り・明るさ共に非常に高いレベルでバランスが取れており、星野・星景写真にうってつけの一本です。


コンパクトに、高画質に、星野写真向け単焦点:EF24mm F1.4L II USM

ef_24mm_f14

Canonの広角単焦点レンズのフラグシップレンズとなっており、単焦点でお考えの方はいずれ欲しくなるレンズです。いずれ買うならステップアップなど考えずに最初から一番いいものはいかがですか?

■PENTAX Kマウントおすすめレンズ


PENTAXならではの広角ズーム:DA12-24mm F4 ED AL

SMC DA 12-24

PENTAX広角ズームレンズでは最も広い画角のレンズです。また星野写真に使い易い画角をカバーしつつ高すぎない価格も魅力です。


魚眼で星景写真を狙うならおすすめ:DA FISH-EYE 10-17mm F3.5-4.5ED

10-17

魚眼レンズでありながらズームというユニークなレンズです。特別明るい訳ではありませんが、星野・星景撮影では魚眼レンズは定番であり面白い写真が撮れますので是非。


何と言ってもコンパクト、そして手頃!:HD PENTAX DA 15mm F4ED AL Limited

15mmf4

歪曲収差や色収差を丁寧に補正しています。円偏光フィルターに対応しており、スライド伸縮式の花形フードを内蔵しています。コンパクトで星野写真向けの一本です。

■5.天体撮影向きの三脚と雲台


三脚選びは非常に重要になります。これがダメだと、上に載せる機材がどれほど高価でも天体撮影は失敗してしまいます。

持っていける範囲で可能な限り頑丈な物をお選びください。軽いから楽だからという理由で携帯性ばかり考えると選ぶと必ず失敗します。設置の際は脚はなるべく短めに設置したほうが風の影響を受けずに済みます。

赤道儀を取り付けることも出来ますが、その際はポータブルタイプの赤道儀でご使用ください。天体望遠鏡専用の赤道儀はそのままではカメラ用三脚にはご使用になれません。

赤道儀を使わない場合には雲台付き三脚を、ポータブル赤道儀を使う場合には三脚+ギア雲台が理想です。

赤道儀を使用する際には「極軸合わせ」という操作が必要になりますが、その際極軸望遠鏡の中で北極星の導入という操作が必要になります。極軸合わせには繊細な操作が必要になるため、一般的な自由雲台や3way雲台では動きが大きくなり、神経を使います。

また、本格的な天体撮影で赤道儀を動かす際には、大型の赤道儀や微動装置という物を使用しますが、「気楽に星空撮影」という今回のコンセプトとは外れてしまいます。

普段の撮影にも使用できる一般的な三脚を使用して撮影する場合、

・赤道儀を使わない→フリクションコントロール付き自由雲台
・赤道儀を使う→ギア式雲台

がオススメです。

と言うのも、3way雲台は仰角をとるのが難しく、天頂付近にカメラを向けようとするとパン棒が三脚にぶつかってしまいそのままでは真上に向けられません。

カメラを逆向き(自分に向かって)付け奥側に倒すことで真上に向けられますが、パン棒の締め付け方向が逆になるなど操作にはある程度慣れが必要です。

3way雲台で撮影が出来ないという事ではありませんが、水平が重要でない星野撮影をお手軽にということであれば、一般的に自由雲台が向いていると言えるでしょう。

赤道儀の極軸合わせをする場合、微動装置と呼ばれる天体撮影用の器具が無い場合、ギア雲台のように少しずつずらすように動くカメラ用雲台がありますのでそちらを使うのがおすすめです。

三脚→ギア式雲台→赤道儀という順で載せるわけですが、多くのポータブル赤道儀はその上に更に自由雲台を乗せて使います。

最終的には、三脚→ギア式雲台→赤道儀→自由雲台という順になります。

カメラを載せる自由雲台は機材を長時間支えられるのであればそれほど大きな自由雲台でなくても構いませんが、三脚の上に載せる雲台は赤道儀+自由雲台+カメラ+レンズを支える必要があるためしっかりした物を選びましょう。

ギア式雲台は携帯性が自由雲台と比較して悪いため、どうしても一般的な撮影と雲台を併用したいという方は、フリクションコントロール機能付きの自由雲台を使用するのが良いでしょう。

極軸合わせの際、赤道儀は雲台に載せた状態で動かしますから、緩めた途端にグラグラになってしまう一般的な自由雲台は使い辛い部分があります。

フリクションコントロールとはノブを緩めて向きを変える際にも手を離しても一定の抵抗をもって静止した状態を保ちつつ、力を入れるとジワッと動くという機能で、重量物を載せたまま向きを変える際にうっかり手を離してバタンと雲台が傾くという事がありません。

また傾けた際にも赤道儀の重さその物をある程度支えてくれるので、支える力も軽減し少しだけ向きを変えることも容易にしてくれます。

赤道儀や大きなカメラ・レンズを載せる場合には、フリクションコントロール機能付きの自由雲台を選ぶようにしましょう。

今回は天体撮影に適した写真用三脚のおすすめを表にしてご紹介します。雲台と組み合わせてご使用ください。

赤道儀や大きめのカメラ、レンズを載せてもしっかりとしていることを重視して選んでいます。重量は重めになっていますが、長秒の露光が必要な星の撮影では軽い三脚は使い物になりません。

幾ら持ち運びが楽でもブレてしまう三脚では持っていく意味その物が無くなってしまいます。重くてもしっかりした物を選びましょう。


天体撮影用おすすめ三脚(脚のみ雲台なし)
ブランド 型番 重量 脚径 縮長 伸長 全伸高
Gitzo GT5532S 2.8kg 41mm 62cm 132cm
Manfrotto MT057C3-G 3.0kg 39mm 62cm 132cm 157cm
SLIK CF-3 SP 2.9kg 36mm 57cm 121cm 149cm
Velbon N840S 3.0kg 36mm 59cm 144cm 165cm
Fotopro T73C 1.95kg 32mm 64.5cm 144cm 168cm
天体撮影用おすすめ雲台
ブランド 型番 タイプ 耐荷重 重量
Arcaswiss Cube C1 ギア式 10kg 0.9kg
Manfrotto 405 ギア式 7.5kg 1.6kg
Manfrotto 410 ギア式 5kg 1.2kg
Arcaswiss Z1 自由雲台 0.58kg 59kg
Manfrotto MH057M0-Q6 自由雲台 0.7kg 10kg
SLIK PBH-525 自由雲台 0.52kg 6kg

■6.赤道儀の役割と選び方


星空は日周運動で動いています。星を流れさせず、且つ明るく写すには星空の動きを追尾してくれる赤道儀と呼ばれる機材が必要になります。

赤道儀選びは大きくて重い赤道儀ほど長時間正確に動作する、と覚えておけば大体大丈夫です。つまりより大きなカメラやレンズを長秒露光する場合はしっかりした物をお選びください。

ここで紹介する赤道儀は所謂ポータブル赤道儀という持ち運びを重視したタイプで、天体望遠鏡などを付ける用途に向いているものではなく、コンパクトカメラ~一眼レフなどにお使い頂く用途に適しています。

■おすすめ赤道儀


脅威の小ささ:New ナノ・トラッカー

nanotracker

何と言っても脅威の小ささ、本体の質量は何と400g。コントローラーを含めても480gの軽量設計です。

また、大きさも片手に載るくらいの大きさですので、登山や海外旅行の際にも気軽に持参することができます。特に登山ではできるだけ荷物を少なくしたいもの。

その軽量コンパクトなボディから、発売以来多くの登山者に愛用されています。ただし、重量のある機材、望遠レンズ、長時間の露光などは苦手であるため、ミラーレス機やコンパクトカメラと広角~標準レンズで数分までの露光でお使いください。


ポータブル赤道儀を世に広めた立役者:ポラリエ

polarie

かつて赤道儀は天体撮影マニアの為のニッチな機材でした。持ち運びは大変で操作は難しく、一般の人がちょっと星が綺麗な場所に行くから撮ってみたいという軽い気持ちではとても手が出せない代物でした。

ポータブル赤道儀が出始め、携帯性は大幅に改善されましたが、それでも一般の人にまで認知されていたかというと相変わらず縁遠いものでした。ポータブル赤道儀という存在を一気に写真趣味の人、一般の人にまで広めた大ヒット機がこのポラリエです。

程よい大きさ、豊富なアクセサリーによる使い易さ、ある程度の拡張性を兼ね備え、価格も手が出しやすいということで大ヒットしました。


小型本格ポータブル赤道儀:スカイメモS

スカイメモS

充実の機能を多数搭載。ポータブル赤道儀に必須な極軸望遠鏡・明視野照明装置は標準装備。簡単なセッティングで追尾撮影を開始できます。

また別売のシャッターケーブル使用で、タイムラプス撮影やインターバル撮影など、ワンランク上を行く撮影が可能です。

これから星野撮影をはじめたい初心者の方から、手軽に撮影したい上級者のサブ機として、多くの皆様に利用いただけます。

■7.あると便利な撮影アクセサリー


アクセサリーについてですが、あると便利なモノが幾つかありますのでご紹介します。

レリーズケーブル

無線のリモコンタイプではなくケーブルのタイプを選びましょう。確実にシャッターが切れることと暗い中で無くし難いメリットがあります。

赤道儀で回す場合はケーブルを処置する必要がありますから無線タイプもしくはリモコン本体をどこかに止めておけるようにベルクロやバンドを用意しておくと良いでしょう。

懐中電灯

暗い中を行動することになりますので、強力な懐中電灯と予備電池、弱い懐中電灯などを容易します。強力な懐中電灯は移動中に使用し、弱い懐中電灯は撮影場所に着いてから使用します。

明るい懐中電灯を撮影場所で使うと目が眩んでしまい星がよく見えなくなります。また周りに他の撮影者がいた場合には迷惑になりますので、弱めのライトを一つ携帯します。

そちらは操作や設置用ですので小さく軽く発光量は弱くて構いません。天体観測用の赤色ライトもありますが、本格的に使うのでなければ小さめのネックライトが両手が空いて良いでしょう。ライトの本体は暗い中でも見つけやすい色が良いでしょう。

光害カットフィルター

東京で星野星景写真を撮ろうとした際最大の敵は光害です。空が快晴、星は出ているのに撮影すると空が白っぽくなる、それは街の灯りが明るすぎる為です。

可能な限り光害の影響が少ない場所に行くのは当然ですが、空と星のコントラストを出す際に役に立つのが光害カットフィルターです。

光害の原因となる水銀灯やナトリウム灯など人工光をカットし、大部分の天体からの光は透過させるフィルターです。天体観測や撮影の妨げとなる光害を除去し、クリアな像を実現します。

また、光害のみを選択して除去しますので、カラーバランスの変化が極力抑えられ、撮影時の画像処理が容易になります。

400nm~700nmあたりの可視光線のうち、光害の元となる人工光源の波長をカットしています。

astro_type2_img01

光害カットフィルターなし

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光害カットフィルターあり

Filter_04_Type2Filter

結構違いますね。価格は高めですが、都市部で天体撮影をお考えの方には是非おすすめです。

■8.カメラの設定と撮影方法


カメラの設定に関しては空の明るさ、星の明るさ、コンポジット撮影か否かなど様々な要因で変化します。再生画面で確認して調整を加えて下さい。

赤道儀を使用する場合は赤道儀のセッティングを行い、赤道儀にカメラを取り付けてから以下の操作を行います。終わったら赤道儀の追尾を開始してレリーズを使ってカメラのシャッターを切り露光を開始します。

撮影モード/M(マニュアル)モード

撮影モードはマニュアルモードに設定して下さい。星空撮影は絞りを固定してシャッタースピードを調整して撮影しますので、マニュアルモードを使います。

フォーカス/MF(マニュアルフォーカス)に設定

AF(オートフォーカス)は切ってマニュアルフォーカスモードで撮影します。星は暗いためオートフォーカスでピントを合わせるのは難しく、マニュアルフォーカスで無限遠にピント合わせをした後パーマセルテープなどで固定します。

ライブビューで星を拡大したり遠くの街の灯りなどを目安にMFでピント合わせを行い、その後ピントがズレないように固定します。

絞り/開放~1段絞る程度

通常風景撮影では絞るのがセオリーですが、星空撮影では絞りません。露光時間が掛かり過ぎるために撮影が難しくなります。周辺の星が流れるような場合は1段程度絞っても構いませんが、基本的に開放付近で撮影します。

長秒時ノイズ低減処理(ノイズリダクション)もOFFで構いません。

シャッタースピード/数秒~数分

シャッタースピードは空の明るさによって大きく変化します。真っ暗な空であれば相当長い時間露光しても大丈夫ですが、東京の空ではほんの数秒で空が白くなってしまう場合があります。

まずは10秒程度の露光から始めて、撮影結果を確認しながら露光時間に調整を加えていきます。

その際は仮に10秒で撮って暗ければ20秒、40秒という風に倍々で増やしたり、5秒、2.5秒といった風に1/2の時間にしたりと言うふうに調整しながら当たりをつけていくと良いでしょう。

赤道儀を使わない場合にはわずか数秒で星は流れ始めます。点像で写したい場合は露光時間は最大でも30秒程度までに押さえて、後は感度を上げて露光量を増やします。

赤道儀を使用する場合は感度を抑えめにして露光時間を増やすことで、より高画質な点像の星空を写し込むことが出来ます。

ISO感度/ISO400~3200程度

感度も空や星の明るさ、また赤道儀の使用などによって違いますが、東京では空が明るく写りすぎることが多く、感度は低めから試してみて下さい。

星を点像で写したいが赤道儀がない場合など、シャッタースピードは動かしたくないといった場合には露光量をISO感度を変えることで調整します。

むやみに上げると画質劣化を起こしますが露光時間は短い方がより星のブレが少なくなります。画質劣化のない範囲で高めに設定するのが良いでしょう。

ホワイトバランス/オートホワイトバランス

ホワイトバランスの設定は好みで構いません。オートでカメラに任せても殆どの場合自然な色合いに仕上げてくれますが、環境によっては空が赤っぽくなる場合があります。

クールな印象に仕上げたい場合は、ホワイトバランスを電球色もしくはケルビンを指定して3,000K~4,000Kの間にしてみても良いでしょう。ホワイトバランスは正解がある訳ではなく好みで構いません。

■9.赤道儀の使い方


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星空の撮影において大きな武器となるのが赤道儀です。

まず始めに赤道儀とはどういうものかと言うと、淡い星の光を写真に写しこむには、その光を集めるために長めの露出時間が必要になります。

しかし、カメラを三脚と雲台で固定したままで長時間露出した場合、星は地球の日周運動(地球の自転)のために、相対的に星が動いているため星が線を引いたように写ってしまいます。

赤道儀とは、星の動きに合わせて動くモーター駆動の雲台です。赤道儀が星を追いかけるようにピッタリと追尾してくれますから、長い時間の露光を行っても、星が流れずに点として写し込むことが出来るわけです。

さてここで問題になるのが、赤道儀の設定です。赤道儀は一部の高価な物をのぞいて、手動で真北に向けてあげなければなりません。その行程を極軸合わせと言います。

この章では人気のポータブル赤道儀「ポラリエ」を例に挙げて、極軸合わせの方法をご説明します。

赤道儀の機種によって極軸合わせの方法は若干異なる場合もありますが、ポータブル赤道儀の場合は殆ど同じ用語、同じ手順で行いますので参考にして頂ければと思います。


赤道儀操作手順

1.本体付属のコンパスを使用し、北の方向を確認する。

2.本体付属の緯度計を使用し、東京なら35度に合わせて北極星を見つける。

3.雲台を操作して本体の北極星のぞき穴かオプションの極軸望遠鏡を使用して北極星を導入する。

4.赤道儀に自由雲台を取り付けて、自由雲台にカメラを取り付ける。

5.カメラ側でピント、絞り、シャッタースピード、感度、ホワイトバランスなどのセッティングを行う。

6.カメラを取り付けたことで極軸がズレていないか再度赤道儀の北極星のぞき穴確認する。

7.赤道儀本体のダイヤルを恒星追尾モードに設定し追尾を開始する。

8.リモコンやレリーズケーブルを使ってシャッターを切り、露光を開始する。


赤道儀のセッティングはそれほど難しいものではありませんが、実際は暗い状態でセッティングを行いますので、自宅などで十分練習してから撮影に臨みましょう。

懐中電灯などを使いながら灯りを消した部屋で練習すると本番の撮影に望んだ時に楽にセッティングが行えます。

■10.コンポジット撮影(比較明合成)


Q1.コンポジット撮影とは?

A1.コンポジットとは合成のことで、画像合成には様々な方法がありますが、天体撮影で使われるのは比較明合成と呼ばれるものです。

比較明合成を簡単に説明しますと、「複数回に分けて撮影した写真の明るく写っている部分だけを合成する」撮影方法です。


Q2.なぜコンポジット撮影が必要なの?

A2.星空の写真を撮った場合に、空が白っぽくなってしまう問題があります。これは空が明るすぎる為に、星を明るく写し込もうと露光時間を長くすると空まで明るく写ってしまうのが原因です。

天体撮影では、星だけ明るく写したい、それ以外の夜空の背景は黒くなって欲しい訳です。そこで必要になるのがコンポジット撮影になります。


Q3.レタッチでコントラスト調整してはダメなの?

A3.レタッチによってコントラストを上げることである程度明暗差を出すことは出来ますし、比較明合成を行った後に仕上げにコントラスト調整を行うこともままあります。

しかしながら、星を写しこんだ時点では星と夜空との明暗差はそれほど大きくないため、コントラストを調節しただけでは、露光時間を長めに撮った場合には空も白くなっているのでコントラストを上げると全部明るくなってしまったり、逆に露光時間を短くすると暗い星は微かに写っているだけなのでコントラストを上げると暗い側と認識されて黒く塗りつぶされてしまったりと、上手くいかない場合が多いのです。

コンポジット撮影とは、短い時間の露光を何度も行い、それを合成して一枚にします。

それによって何故星だけが明るく写るかと言いますと、短い露光時間なので、一枚あたりに写っている星は薄く写っている程度になります。その代わり空も暗い状態で写ります。

そういった画像を何枚も撮影し比較明合成の処理を行うのですが、比較明合成とは「明るい部分だけを重ね合わせる合成」であるため、微かに写った星の部分は輝度のあるものとして次々と重ね合わされてどんどん明るくなっていきます。

対して露光時間の短い状態での夜空の闇の部分は暗い画像ですから、比較明合成を行っても重ね合わせを行いません。ゆえに闇の部分は重ね合わを行いません。

その結果、星が写っている部分は合成を重ねてどんどん明るくなり、闇の部分は重ね合わせを行わないため一枚目と同じ暗いままという、星空のイメージ通りの写真に仕上げる事が出来るわけです。


Q4.コンポジット撮影を行うには何が必要なの?

A4.コンポジット撮影は、数十枚から時に百枚を超える撮影を行いその画像を重ね合わせるため、撮影中に星が動いてしまっては星がズレて合成が上手くいきません。

そのために必要になってくるのが赤道儀です。
星を追尾して画面上の同じ位置に写るように維持してくれるため、何枚もの画像を重ね合わせることが可能になります。

また、画像合成は一部のモデルではカメラ内の機能として付いていますが、殆どの機種では撮影後にPCで合成作業を行うことになります。その為に比較明合成ソフト、あるいは比較明合成の機能が付いた画像編集ソフトが必要になります。


Q5.比較明合成が出来るソフトウェアは?

A5.多くの有名な画像編集ソフトが対応しています。

・Nikon Capture NX-D
・Canon Digital Photo Professional
・PENTAX Digital Camera Utility

といったカメラメーカー純正の画像編集ソフトでも比較明合成の機能がありますし、カメラ内でも比較明合成を行えるものが増えてきています。

Adobe Photoshop CCのような高機能な有料画像編集ソフトでは当然のように比較明合成機能があります(※Lightroom CCには比較明合成機能はありません2015/08/28時点)。

またフリーソフトでは、

・SiriusComp(Windows用)
・StarStaX(Mac用)

などに代表されるような無料の比較明合成ソフトが幾つかあります。


Q6.画像編集ソフトで比較明合成って難しくないの?

A6.操作は難しくありません。殆どの画像編集ソフトでは、比較明合成を行うだけなら合成を行う画像やフォルダーを選択して比較明合成のメニューを選択するだけです。後は自動的に合成して一枚の写真に仕上げてくれます。


比較明合成は本格的な天体撮影を目指すには避けては通れない画像編集であり、しかも難しい操作も必要ありません。

ちょっとした手間をかけることで星空写真は劇的に美しい仕上がりを得ることが出来ます。赤道儀が必要という部分はありますが、赤道儀を使った撮影を始めた際には是非挑戦してみてください。

また、比較明合成や比較暗合成といったコンポジット撮影は天体撮影に限らず写真表現の幅を大きく広げる技術の一つですので、趣味として写真を撮られる方なら覚えておいて損はありません。

11.最後に…


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星野写真や星景写真、ロマン溢れる憧れの被写体の一つですよね?でも実際撮るとなると億劫な被写体でもあります。天体撮影の世界にはこういう言葉があります。

一に天候、二に機材、三四がなくて、五に知識

天候は運の問題、機材は経済力の問題、しかし知識は情熱さえあれば誰でも手に入ります。頑張っていきましょう!

皆さんの頭上に満点の星が輝きますように…☆

画像:Kenko,Vixen,Nikon,Canon,SONY,OLYMPUS,PENTAX,TAMRON,SIGHTRON japan,NASA

Reported by 正隆