今さら聞けないレンズの収差ってなんだ!?<色収差編>

こんにちは、ひらりんですケロ。

レンズ収差_色収差編

写真の画質低下を招く、レンズ収差。いろいろな原因があり、回避の仕方もさまざまです。

デジタル化により、写真を等倍で鑑賞することも一般的な楽しみ方となった今、私たちは知らず知らずのうちに画質に対する評価を厳しく下しているもの。

撮影中はあまり細かいところまで気が回らないという方も、収差を軽減したり、後から補正する方法を頭に入れておき、写真のさらなる満足度UPを目指してみませんか?

今回は、前編として「色収差」編をお送りします。
きっと、モニターでゆっくり写真鑑賞するのが楽しくなりますよ!



■レンズ収差とはなにか?


収差は画質の低下という悪影響をもたらします。具体的には、色のにじみ、像の流れ、歪み等です。

img-02-02

本来◯の形であってほしいボケが、流れて崩れた形になっていますね。特に画面の周辺部に影響があります。

こうした影響を最小限に抑えるため、メーカーはレンズのコーティングや形に工夫をし、技術を尽くしてレンズを設計しています。
普通は「収差が少なければ少ないほど良いレンズ」なのですが、それでも出てしまうのが収差です。
では今からレンズ収差の種類を見ていき、その軽減法にも迫っていきましょう!

■レンズ収差の種類


レンズの収差は、大きく分けて「色収差」の2つ(軸上色収差、倍率色収差)と、「単色収差(ザイデル五収差)」の5つ(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差)に分けることができます。

わかんな~い

…と言っても、名前だけでは何が何やらわかりませんよね。これから収差それぞれの特徴を解説します。

■色収差について


色収差は、簡単にいえば色のにじみやズレの出る現象です。
下記の写真は屋根の右側に存在しない青色が出ています。

Chromatic_aberration_(comparison)

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
太陽光は、さまざまな色(波長)の光が集まったものですが、レンズを通った光は波長ごとに屈折率が異なります。そのため、1点に集まらず異なった点に到達し、画像上では色収差として現れるのです。
そう、色収差は光学的に避けられない問題なのです。

pic_03

pic_04

そんな色収差をできる限り低減するため、レンズ設計ではさまざまな技術で問題に取り組んでいます。色収差の目立ちやすいレンズは、ズームレンズや焦点距離の長いレンズです。

ご存知のように、通常一つの写真用レンズの内部は複数枚のレンズで構成されています。10枚以上ものレンズで構成される超望遠レンズでは、より高度な技術を駆使して色収差を補正しています。

色収差には2種類あります。

(1)軸上色収差

画面中央部から周辺部で生じる色のにじみ。

先ほどの図を見ると、赤い光はゆるやかに屈折しているのに比べ、青い光はもっと角度がついて屈折しています。その結果、赤い光はより奥側に結像し、青い光はそれより手前側に結像します。そうすると、色によってピント位置が異なるために色が滲んで見えます。このように光軸の上で結像位置がズレることにより発生するのが「軸上色収差」です。

特に明るいレンズを開放付近で撮影していると、等倍で見た時「フチの色が緑や紫に滲んでいる…」ということ、皆さんも経験があるのではないでしょうか?

この収差に対しては、収差の原因であるレンズ周辺部の光線をカットし、被写界深度を深くすることが効果的なので、絞ることで大きく抑えられます。

(2)倍率色収差

画面周辺部で生じる色のにじみ。

色による屈折率の違いが、斜めに入射した光の場合は「像の倍率の違い」となって現れます。その結果、色により像の大きさが異なってしまうのが「倍率色収差」です。被写体のフチに赤や青紫の色ズレが見えます。

レンズの中央を通った光線でも発生しているため、絞ることでは抑えられません。

むずかし~い

…難しいですね。とにかく、絞れば直る=軸上色収差!
絞っても直らない=倍率色収差 なのです!

番外:パープルフリンジとは?

明暗差の大きい部分…例えば、明るい空(高輝度部分)と暗い木(低輝度部分)の間などに、紫やマゼンタの偽色(本来は存在しない色)が出る現象のことです。

軸上色収差である場合が多く、その場合絞れば軽減されますが、他にも撮像素子などの要因もあり一概には言えないようです。

■色収差を抑える技術


レンズには高分散ガラスと低分散ガラスがあり、その両方を組み合わせることで色収差を補正しています。それ以外にも色収差を補正するためいろいろな素材が使われており、例えばこのようなものがあります。

異常分散ガラス

先ほど、赤い光と青い光では屈折の角度が違うことを説明しましたが、異常分散ガラスは色の屈折率が通常の逆になっていることで、通常のガラスと組み合わせて効果を打ち消し合い、色収差を補正します。

特殊低分散ガラス

光の色によって屈折率が異なり、ゆるやかな屈折の赤い光は遠くに、急な屈折の青い光は近くに結像してしまいますが、この差を縮めたのが特殊低分散ガラスです。

蛍石(ほたるいし)

蛍石はガラスではありませんが、異常分散ガラスと同じような性能を持っており、しかも異常分散ガラスの2倍の効果があります。天然素材なのにスゴいですね!

蛍石は光学ガラスに比べて軽いため、超望遠レンズの軽量化のためにも使用されています。

すごいね~

本当に。レンズ設計者は頭がいいんですね。
他にもアクロマートレンズやアポクロマートレンズというものがあり、凸レンズと凹レンズを組み合わせることで色収差を補正しています。

■色収差をレタッチで補正する


色収差は画像編集ソフトでも、後からある程度補正ができます。

Adobeの「Camera raw」を開き、「レンズ補正」をクリックします。

レンズ補正_カラー

「カラー」タブの中にある「色収差を除去」にチェックを入れると、倍率色収差を補正してくれます。

「フリンジ軽減」はそれぞれ紫と緑のフリンジを低減することができるので、画像を見ながらほどよい効果の得られる適用量と色相にスライダーを調整してみましょう。(やりすぎると画面にある同じ色系統のものが薄くなってしまいます)
とっても簡単ですね!

■色収差を消してスッキリ


今回は収差の中でも「色収差」に注目してみました。

わかった~

コントラストの強い写真を撮った時など、その場では気付かなくても後になって「あれ?変な色が滲んでいる…」ということ、案外多いものです。

せっかくのイイ写真もなんだかクオリティが下がったように感じてしまいますが、そんな気になる色収差は意外と簡単な方法で補正ができるのでした。

細かいところまで気を配ってレタッチした1枚は、愛着のわく作品になること間違いなし!ぜひ試してみてくださいね。

さて、「今さら聞けないレンズの収差ってなんだ!?」次回は後編の「ザイデル五収差」編をお送りする予定ですので、お楽しみに♪

画像:Wikipedia,Canon

Reported by ひらはらあい