こんにちは。クリスマスが楽しみなひらりんです。
写真の画質低下を招くレンズ収差。今回は「ザイデル5収差」編をお送りします!前回の「色収差」編はこちらをご覧ください。
収差を改善して、レンズの最高画質を目指そう!
■レンズ収差の種類
まずは前回のおさらいから。
レンズの収差は、大きく分けて「色収差」の2つ(軸上色収差、倍率色収差)と、「単色収差(ザイデル五収差)」の5つ(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差)に分けることができます。
では、さっそく本題へ!
■ザイデル収差について
収差のうち、色収差ではない単一の波長の光でも生じる5つの収差を、研究者のルートヴィヒ・ザイデルにちなんで、ザイデルの5収差と呼びます。
(1)球面収差
レンズの中心を通った光と周辺を通った光が同じ位置に焦点を結ばず、前後にばらつく収差。画面上では下記のようになります。
この収差が多く残っていると、像が劣化し解像力を低下させます。
星を撮るとピントを合わせても星が鮮明にならず、ボケて見えてしまうので注意。
球面収差がよく補正されたレンズを選びましょう!
もしくは少し絞っても効果があります。
(2)コマ収差
光軸外の1点を光源とする光が、像面において1点に集束しない収差。画面上では下記のようになります。
コマとは頭髪のギリシア語で、頭髪や彗星(英語のコメットも同じギリシア語由来)のように尾を引いた非対称の像になることが名称の由来です。
少し絞ることで解消されます。
(3)非点収差
光軸外の1点を光源とする光が、レンズに対して同心円方向と直径方向で焦点距離がズレる収差。
非点収差があると、フォーカス位置の前後で縦、横に点像のボケ方が変わります。
(4)像面湾曲
平面にピントを合わせた際、像面が平面にならず湾曲した像面に結像してしまう収差。
画面中心部でピントを合わせると周辺部がボケてしまい、逆に周辺部でピントを合わせると中心部がボケてしまうことになります。
(5)歪曲収差(ディストーション)
例えば格子状の窓枠などを写すと、外側に膨らんだように見えたり、内側にへこんだように見える収差。
歪曲収差の中でも、外側に膨らんだように見えるものを「樽型収差」、内側にへこんだように見えるものを「糸巻き型収差」と言います。
その両方が現れた複雑な「陣笠収差」もありますが、単純な樽型・糸巻き型収差と違い、後からの補正が難しくなります。
■絞りと収差の関係
前回、「軸上色収差は絞ることで改善される」と説明しましたが、その他の収差も絞ることで改善が見られる場合があります。
画質低下の要因 | 画面上で影響する部分 | 絞り込みによる改善 |
軸上色収差 | 中央~周辺部 | 効果あり |
倍率色収差 | 周辺部 | 効果なし |
球面収差 | 中央~周辺部 | 効果あり |
コマ収差 | 周辺部 | 効果あり |
非点収差 | 周辺部 | やや効果あり |
像面湾曲 | 周辺部 | やや効果あり |
歪曲収差 | 周辺部 | 効果なし |
参考:デジタルカメラマガジン 2014年09月号
絞ることが効果的な収差は、結像距離が関係しているもので、絞ることで距離を制限するため改善されます。逆に、絞っても全く効果がないのは倍率色収差、歪曲収差です。
■収差をあえて残したレンズ?
最初に「収差が少なければ少ないほど良いレンズ」と書きましたが、収差のうちいくつかはボケ味に関係しているので、実はわざと収差を残したレンズもあります。
例えばソフトフォーカスレンズは、故意に球面収差を残すことによって、ピントの芯はありながらも周辺に滲みが現れて印象的な像になるように設計されています。
収差を残したソフトレンズの記事は、下記も合わせてご覧頂ければ幸いです!
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■収差の解決方法
1.絞って軽減する
先ほどの表にあるように、絞ると改善される収差は多いです。
多くのレンズは開放から2~3段絞った状態が、収差が抑えられそのレンズの最高画質になります。
2.画像編集ソフトで補正する
色収差の補正については前回の記事をご覧ください。
他には、歪曲収差もPhotoshopもしくはCameraRawで比較的簡単に補正ができます。
3.収差ができるだけ補正されたレンズを選ぶ
後からレタッチで補正できるとしても、解像力の観点から見てレンズの光学系で収差が補正されているに超したことはありません。
今後はレンズ購入の際に、収差の補正力も比較対象にしてみてはいかがでしょうか?
■あなたのレンズの性能は?
このように、レンズにはさまざまな収差がつきものであることがわかりました。これからは上手に収差を補正したレンズを選びたいですよね。
そんなあなたにピッタリのサイトが、「photozone」です。海外サイトで英語ですが、ほとんど図や作例でレンズの性能が表されているので大丈夫。
例えば私の使っているNikkor AF-S 24-120mm f/4G ED VRだと、こんな感じです。
今持っているレンズとこれから欲しいと思っているレンズの性能を、客観的に比べてみると面白いですよ!
■教えるは学ぶの半ば
収差のお話はこれで完結です。難しかったですね。わかりました?
光学系など絡んでくるので調べるとどこまでも深くなってしまう話ですが、今回は簡単にご紹介しました。
細かい部分でも写真を撮っていると収差が気になることもあるはず。補正できる部分は補正して、写真のさらなる洗練を目指しましょう!ではまた次回!
Reported by ひらはらあい