Shuffleに鹿野宏氏による一眼動画の画質比較レビューが掲載されていましたのでご紹介します。
比較する機種は、α7R II、D810、EOS 5Ds、OM-D E-M5 Mark II、LUMIX GH4というラインアップとなっています。
ダイナミックレンジ特性、実写比較、動体撮影、log、スロー動画、高感度耐性、手振れ補正など様々な角度からテストされています。それらの要点のまとめてみました。スチールカメラで動画撮影も当たり前となった今、果たして一眼動画最強モデルはどれなのか!?
■テスト5機種
- Canon:EOS 5Ds
- Nikon:D810
- SONY:α7R II
- Panasonic:LUMIX GH4
- OLYMPUS:OM-D E-M5 Mark II
■機種紹介
EOS 5Ds
フルサイズセンサーを搭載し、大きくボカした動画や高感度撮影に強い。1920 × 1080のFull HD記録が可能でEFレンズの豊富な選択肢も魅力。
D810
1920 × 1080:60p記録に対応。IPBを用いたH.264圧縮によりコンパクトなファイルサイズながら高画質が得られます。
D810は撮像素子からの読み出し方式をさらに最適化することで有効に活用し、解像感を上げながらモアレやジャギー、偽色の少ない動画を撮影可能です。
α7R II
フルサイズならではの浅い被写界深度や高感度撮影をもちつつ高解像な4K動画を記録できます。また表現や用途に合わせてSuper 35mmと35mmフルサイズを選択することが可能です。
Super 35mm(APS-Cサイズ相当16:9)時は画素加算のない全画素読み出しにより、モアレやジャギーの少ない解像感の高い4K動画を記録できます。
LUMIX GH4
All-Intra圧縮方式では最大200Mbps(FHD記録時)での高ビットレート記録が可能で、加えてIPB圧縮方式でも最大100Mbps(4K/Full HD記録時)での記録が可能です。
またオプションでVLog記録にも対応し、プロレベルでの本格的な動画撮影が可能です。
OM-D E-M5 Mark II
OM-D E-M5 Mark IIに搭載されているボディー内5軸手ぶれ補正は、撮像センサーを磁力で常時動かすVCM方式なので、ブレを抑えた滑らかな動画を手持ちで撮影できます。
マルチフレームレート(60p/50p/30p/25p/24p)、50Mbpsを超える高ビットレート撮影に対応しています。
■ダイナミックレンジ特性比較
動画時のダイナミックレンジは映像の仕上がり及び、撮影後の調整を考えた際にも影響が大きく、鹿野宏氏も動画の評価において非常に重要な要素と定義しています。
ダイナミックレンジの評価方法としては、濃度評価用チャートを撮影し、そのトーンカーブ変化を判別しています。
EOS 5Ds(スタンダード)
- EOS 5Dsのスタンダードは中間トーンの変化が大きく、動画では調整しにくい。
EOS 5Ds(ニュートラル)
- EOS 5Dsのニュートラルはバランスが良く、使い易い画質。
- EOS 5DsとEOS 5D Mark IIIの動画での違いは動画サーボAF。動体撮影に非常に使い易い。
D810(フラット)
- D810のフラットは画像処理に耐えるとても扱いやすい動画。
α7R II(スタンダード)
- α7R IIのスタンダードはハイライトが飛びやすく、シャドウが潰れやすく動画では扱い難い。
α7R II(ニュートラル)
- α7R IIのニュートラルはハイライトの変化がなだらかになり、それなりに扱い易い。
α7R II(S-Log2)
- α7R IIのS-Log2は階調カーブの変化はなだらかでダイナミックレンジも広い。
- プロ向けで非常に使いやすいカメラプロファイルだが、そのままでは眠いため初心者には使い難い。
OM-D E-M5 Mark II(フラット)
- OM-D E-M5 Mark IIの場合、動画を選択すると自動的にフラットが選択される。
- ISO3200以上ではシャドウにノイズが残る。
- ISO800〜ISO1600程度で撮影可能な通常の明るさであれば、優秀なトーンカーブ。
LUMIX GH4(スタンダード)
- LUMIX GH4のスタンダードはシャドウからハイライトにつながるこの階調変化が均等で、撮影後の調整が非常に行い易い。
LUMIX GH4(ナチュラル)
- LUMIX GH4のカメラプロファイルのナチュラルを選択した場合、ハイライトとシャドウの変化が詰まっておらず、よりなだらかにトーンが変化していく。
LUMIX GH4(Vlog)
- LUMIX GH4にオプションで追加して設定できるVLogは階調は滑らかだがかなりアンダー。ハイライトからシャドウへの変化は非常に均等でLogの特性がよく出ている。
■実写比較
実写撮影ではスタジオに5台のカメラを持ち込んで撮影。ハイライトがややきつい光が入ってくる環境。
EOS 5Ds
- EOS 5Dsの実写映像はメリハリが効いている。そのままで使用出来る完成度が難い。
D810
- D810(フラット)の実写映像はシャドウがほとんど潰れていない。後処理を行う場合でも非常に使いやすいデータ。
α7R II
- α7R IIの実写映像は中間調は仕上がりが良く、このままでも使用出来る。
- シャドウも完全には潰れておらず後工程にも対応可能で、そのままでも後処理にも対応出来る良く出来た特性と言える。
LUMIX GH4
- LUMIX GH4のプロファイルにはシネライクDを選択。中間のトーンを伸ばさなければより良いが、logを使わずとも後工程で扱いやすい映像。
OM-D E-M5 Mark II
- OM-D E-M5 Mark IIの実写映像はかなり軟調でバランスが良いがハイライトが飛んでいる。
■動体撮影比較
動体撮影ではブレやAFでの挙動を確認し、どの機種も全く問題なく動く被写体を捉えることが出来たとのことで、現在の一眼動画は動体撮影にも問題なく使用出来るレベルになってきているとのことです。
■4K動画のメリットとは?
4Kで撮影するメリットしては、4Kで撮影してFull HDや720Pにダウンコンバートすることで、最初からFull HDで撮影するよりも質感の高い映像になるというのが一つ。
更に高解像で撮影しておくことで動画の切り出しに対応出来るため、4Kで全体の様子を広く押さえておいて、後からその一部を切り出してFull HD映像として使うことが出来るというメリットがあるとのこと。
■log撮影について
α7R IIでlog形式で録画テストを行ったところ、log形式のデータはダイナミックレンジが広く、ハイライトが飛びにくくシャドウが潰れにくいため後処理によって高画質を得られるが、そのままでは眠い仕上がり。
- 複数のカメラマンが撮影した映像を一人で編集する
- 屋外で天気が刻々と変わる中で撮影したデータを編集する
など後工程で色合わせが必須になるケースではlog撮影は欠かせない機能だがその一方で上手くやらないとかえって画を壊してしまう可能性もある。
鹿野宏氏によると、logよりもリニアな階調を持ったプロファイルで撮影をしておく方が、後々上手くいくことが多いとのこと。
■スロー撮影について
今回扱ったカメラでは、α7R IIが720pながら120fps、LUMIX GH4が96fpsでのスロー撮影をすることが可能。ただしα7R IIの方はバッテリーや熱の問題などがあって、長時間の撮影は難しい。
LUMIX GH4はバッテリーと容量がある限り延々と撮れるため、スロー撮影を長く撮ることがあるのかは別として便利に使えるとのこと。
■高感度耐性比較
今回テストした全てのカメラでISO1600までは問題なく使えたが、それ以上の高ISOでの動画も検証。
EOS 5Ds
- ISO1600は暗部にムラもなくとても良い。
- ISO3200もOK。ただしEOS 5DsはEOS 5D Mark II、EOS 5D Mark IIIと比べて動画で高感度はやや落ちるという印象。
- ISO6400でもそれなりに撮れている。
D810
- ISO1600はまったく問題ない。とても質のいい画像が撮れる。
- ISO3200も許容範囲。
- ISO6400も今回テストした機種中で出来が良い。
α7R II
- ISO3200は問題ない。
- ISO6400はちょっと厳しいが他のカメラに比べればかなり良い。ちなみに静止画ではISO6400は問題ない。
- 静止画と動画では高ISOに対する印象が違う。
LUMIX GH4
- ISO6400は少し厳しい。やはりイメージセンサーが大きいカメラの方がダイナミックレンジが広い。
OM-D E-M5 Mark II
- OM-D E-M5 Mark IIもLUMIX GH4と同様の印象。
- センサーサイズが小さいこともあってISO1600が限度。
- ISO3200はやや厳しい。
- ISO6400ではコントラストが落ちてしまう。
■手振れ補正比較
カメラを持って歩きながら撮影するような場合や、狭い場所でカメラを動かす場合には手振れ補正機能が役立つ。
5軸手振れ補正を搭載しているα7R IIとOM-D E-M5 Mark IIをテスト。2台を同一のプレートの上に乗せ一体に固定してから撮影テスト。
両者を比較してみるとα7R IIの方が効果は強いが、OM-D E-M5 Mark IIは気持ち悪いブレをうまく抑えてくれる。
スタビライザーと機械式の手振れ補正の比較では、5軸手振れ補正よりもスタビライザーの方が圧倒的に優れていたとのこと。
■一眼動画のベストチョイスは?
テストの結論(鹿野宏氏の印象)
D810の動画がとても良く出来ていると感じたとのこと。トーンカーブやプロファイルの出来が良く、ファイル容量が小さいにも関わらずレタッチに強い映像を撮ってくれるとのこと。
キヤノンのEOS 5Dsは撮影してすぐに納品出来る画作りで、そういう撮影をするならベストではないかとのこと。
α7R II・LUMIX GH4は4K映像が撮れ、加えてlogでの録画も出来る飛び道具を持ったカメラという印象。
OM-D E-M5 Mark IIは5軸手振れ補正が魅力で、歩きながらの撮影、移動しながらの撮影では選択肢になり得るとのこと。
Reported by 正隆