プロカメラマンの年収は?151人のフォトグラファーの年収が明らかに!

コマーシャル・フォト フォトグラファー白書

私も年間購読しているコマーシャル・フォト 2017年02月号にて、恒例のカメラマン版国勢調査とも言える「フォトグラファー白書 2017」が発表されました。

151人のフォトグラファー(主にコマーシャルフォトグラファー)を対象にさまざまなアンケートが行われています。今回私もこのアンケートに回答させていただきました。

雑誌「コマーシャル・フォト」は、広告写真業界で働く人に向けて発刊されている月刊誌で、多くのフォトグラファーにとって有益な情報を毎号掲載しています。

果たしてフォトグラファー(主に広告カメラマン)の収入はどう変化しているのでしょうか?そしてフォトグラファーの未来やいかに!?今回は現代のカメラマンの年収のお話です。



■フォトグラファーの年収分布


調査は151人を対象に調査した年収の分布を見てみましょう。

単位は(万円)
200未満 200-400 400-600 600-800 800-1000 1000-1500 1500-2000 2000以上
8% 19% 23% 14% 12% 9% 9% 6%

年収200万円未満:8%(前回5%)

200万円未満は8%ということで、前回よりも増えています。年収200万円未満ということは機材費なども考えるとかなり厳しい生活を強いられているのではないかという気はします。

コマーシャル・フォトですからアンケートに答えているのはほとんどが広告カメラマンであることが想定され、回答者所属分布を見ても70%が個人事務所となっています。フリーカメラマンは撮影技術だけでなく営業力も重要になってきます。

年収200-400万円未満:19%(前回19%)

次に200-400万円未満のゾーンですが、こちらは前回と同じ比率となっています。

ちなみに平成27年の民間給与所得者の平均年収は正規雇用が485万円、非正規雇用も含めると420万円とのことです。また今回の調査ではアンケートに答えた91%が男性であったとのこと。

民間給与所得者のうち男性の正規雇用の平均年収は521万円であることを考えると、カメラマンの厳しい現実が見えてきます。

とはいえ国税庁が行っている民間給与実態統計調査そのものが「一部の高額所得者が平均値を引き上げており実態と乖離している」という指摘も多いことを考えれば、400万円程度稼げていればカメラマンとして生活は可能かと思います。

年収400-600万円未満:23%(前回16%)

400-600万円未満は今回の調査で最大のボリュームゾーンとなっています。もっと華やかな世界を期待されていた方もおられるでしょうが、カメラマンは少なくとも収入面では一般的な商業と大差ないことがわかります。

400-600万円程度稼げていればカメラマンとして収入面では悪くありませんし、また自分の生活を自分の力で支えられるのなら、それは年収に関わらず立派なことだと思います。

400-600万円の年収になると仕事はコンスタントに入っていると思われますから、もしもこれ以上を目指すのであれば件数よりも単価を上げるための技術の習得や営業努力が必要になってきます。

年収600-800万円未満:14%(前回16%)

600-800万円未満のゾーンは前回よりも減少しています。600-800万円未満は民間企業でいうと、証券・銀行など平均給与の高いことで知られる職種と同程度になります。

生活にも余裕が出てくるため、フリーのカメラマンとしても充実していると感じられることでしょう。一般的な社カメの場合このあたりが年収の上限になってくるかと思います。

年収800-1000万円未満:12%(前回16%)

カメラマンとしてその撮影ジャンルではそれなりに名前が知られるようになります。十分な機材を揃えられ、場合によっては専属アシスタントを雇う方が良い場合もあります。

しかし現在はインターネットの普及によって、必要な時だけアウトソーシングでアシスタントを雇うというカメラマンも多く、専属アシスタントを雇っているカメラマンは17%とそれほど多くはないようです。そのためカメラマンの業界でも徒弟制度的なものはなくなっていく傾向にあります。

言い換えれば撮影技術と商才さえがあれば、「写真の専門学校」「大学の写真学科」「専属アシスタント」などの経験はなくてもプロとしてやっていくことが十分可能で、今回のフォトグラファー白書 2017でも、回答したフォトグラファーの45%はそうした経験をせずにプロになっているとのことでした。

結局カメラマンは独学で成長していけないようでは未来はないと思いますし、またフリーのカメラマンとしてやっていくのであれば、撮影技術だけなく「商売」というものを学ぶことも重要になるでしょう。

年収1000-1500万円未満:9%(前回17%)

年収1000-1500万円となると勤務医並の年収で、潤沢な機材を揃え大掛かりな撮影をコンスタントにこなしていくことになります。

こちらも前回の17%から9%と大幅に減少していますが、1500万円以上の年収帯は逆に増加しているため、ここでも二極化が進んでいることが見て取れます。

このあたりの年収ゾーンになると法人化している人も増えてきますが、法人化すると手間も増えるため法人化するメリットとデメリットを総合的に判断して決めると良いでしょう。

年収1500-2000万円未満:9%(前回5%)

1500-2000万円というカメラマンとしてはトップクラスの年収ですが、前回と比較すると9%と向上しています。

このあたりにくると法人化のメリットが大きくなるため、積極的に法人化していくカメラマンが増えてきます。撮影だけで稼ぎ出す場合、大掛かりな撮影がほとんどになるため現場ではスタッフを取り仕切る手腕も求められるようになります。

カメラマンの場合、

  • 写真学校講師
  • 写真教室講師
  • セミナー講師
  • 写真館経営
  • 執筆活動(著書や機材ライター業)
  • スタジオ経営
  • 写真集販売
  • オリジナルプリント販売
  • ストックフォト
  • レタッチャー
  • 動画撮影

など直接的なスチールの撮影業務以外にも仕事があり、こうした部分で高い売り上げを出しているカメラマンは意外と多く、今回の調査でも約半数となる47%のカメラマンがこうした直接的な撮影以外の収入を得ているとの結果でした。

年収2000万円以上:6%(前回5%)

年収2000万円超となると開業医並の年収となりますが、全体の約半数はスタジオ経営や写真館経営、執筆活動などの副業を行っており、年収2000万円となるとそうした活動も必要になってくるのかもしれません。いずれにしても羨ましい限りです。

■カメラマンの未来やいかに!?


全体では、以下のような傾向が見られます。

  • 0〜600万円未満のゾーンが(2015年)40%→50%へ増加
  • 600〜1500万円未満のゾーンが(2015年)49%→35%へ減少
  • 1500万円以上のゾーンが(2015年)10%→15%へ増加

今回の調査ではカメラマンの年収そのものは減少しているわけではなく、全体の年収は微増傾向にあるものの、昨年に引き続き二極化が進んでいる様子が見て取れます。

数十年後といった将来、果たしてプロカメラマンという業種はあるのでしょうか?それは誰にも分かりません。

ちなみにコマーシャル・フォト 2017年02月号「フォトグラファー白書 2017」には、年収だけでなくコマーシャル・フォトグラファーのさまざまなアンケートが掲載されておりプロカメラマンの生態が良くわかります。広告写真の業界で働いてみたいという方には是非ご一読を。

2月号の素敵な表紙を撮影したのはフォトグラファーの「てんてん」さん、モデルは「吉岡里帆」さんです。

参考:コマーシャル・フォト
画像:Amazon

Reported by 正隆