皆さん色かぶりしてますか?
写真撮影では色かぶりに悩まされることも多いもの。色合わせにはカメラのホワイトバランス調整機能を使用しますが、どうやっても色が合わないと言う場合があります。
そうした場合、環境光やライティング光の演色性が低いために、色再現が上手くできないことが原因である可能性があります。そこで今回は、光源の演色性について考えてみたいと思います。
■演色性とは?
光は全ての色を表現できない?
太陽であれストロボのような人口光源であれ、物体が反射した光を我々は見ているわけですが、その際の色の見え方は光源の質によって異なります。
その光源が放つ光の波長ごとの成分の割合によって、その光源下でどの色を再現できるかが左右されるため、言い換えれば、その光源に含まれない波長は照らされた物体が反射することが出来ないため再現が出来ません。
つまり被写体の色というのは、被写体を照らしている光を被写体が跳ね返し、それを我々が見ているため、例えば太陽光の下では赤色に見えるボールであっても、青色の波長しか持たない人口光源のみで照らしている環境下では、ボールは青色の光しか反射出来ませんからボールは赤色には見えないというわけです。
分光分布によって異なる色の再現性
光源から出ている光の波長ごとの成分の割合のことを「分光分布」と読んでおり、この分光分布の偏りを「分光特性」と呼んでいます。そしてこの分光特性が太陽光に近いものほど演色性(色の再現性)が高くなります。
つまりその色の見え方に関して、
- 太陽光と比較して色の再現性が近いもの=演色性が高い
- 太陽光と比較して色の再現性が悪いもの=演色性が低い
と表現されます。
ストロボやビデオライト、室内照明などの人口光源は演色性が良いものもあれば悪いものもあるため、撮影時に演色性が低い光源でライティングを組んでしまうと、一部の色は再現できていません。
そのために「幾らホワイトバランスを調整しても本来の色が出ない」とか、「ある部分の色かぶりを直すと他のところがズレてしまう」といったことが起きてしまい、なかなか適切な色を再現することが出来ません。
演色評価数について
この演色性に関してですが、「演色性が高い」「演色性が低い」という表現だけでは、どの程度の演色性か、またどういった偏りがあるのかを的確に表現することが出来ないため、「演色評価数」という指数で表現します。
この演色評価数には「平均演色評価数」と「特殊演色評価数」と呼ばれる2つの基準があります。
「平均演色評価数」はRa(average of Rendering index)という単位で表され、これは試験色と呼ばれる各色のうち、R1〜R8までの演色評価数の平均値を表したもので、このRa値が100に近いほど演色性が高く、自然光(色温度6774Kの平均昼光)に近いと言われています。
もう一つの演色評価数に「特殊演色評価数」と呼ばれる指数があります。この特殊演色評価数は演色評価数うちのR1〜R8までの試験色に含まれないR9〜R15までを使用するもので、これは「平均演色評価数」と異なり、平均値ではなくR9が85、R10が90、R11が89といったように個別に評価します。
まとめると、
- 演色性の評価は「演色評価数」という指数で表す
- 演色評価数はR1〜R15までの試験色を元に、「平均演色評価数」と「特殊演色評価数」の2つの指標がある
- 平均演色評価数:試験色R1〜R8までの演色評価数を平均した数値で0〜100までのRa値で表したもの
- 特殊演色評価数:試験色R9〜R15までを個別に0〜100までの数値で表したもの
となっています。
つまり平均演色評価数であるRa値と特殊演色評価数の各色の評価数が100に近いほど演色性が高く、適切な色再現が行えるライティング光源であると言えます。
■演色性の高い光源を調べる方法
演色性のおさらい
さて、光によって演色性が異なり、演色性が高い光ほど色再現性が高く、写真用ライティング光源として適切であることをご説明しました。
また、この演色性の評価には、平均演色評価数と特殊演色評価数という2つの評価があり、平均演色評価数はRaという100までの数値で、特殊演色評価数は各色を100までの数字で評価します。
どうやって演色性を計測するか?
では問題はどうやって演色性を判断するかということになります。極端に演色性が悪い光源であれば「見れば演色性が悪いのが分かる」という場合もありますが、撮影用ライティング機材の場合、基本的に演色性の高い光源となっていることが多く、目視では判別が難しいケースが多々あります。また演色性が悪いことは分かるものの、どう悪いのかまで光源だけを見て正確に判断するのは非常に難しい問題です。
そこで光源の演色性を判別する際に使用する機器、それがカラーメーターです。
カラーメーターとしても最も有名な物として、露出計メーターとしても有名なセコニックから発売されているスペクトロマスターC-7000があります。
- フラッシュ光
- タングステン光
- 蛍光灯
- HMI
- LED
など、ストロボ光源だけでなく、蛍光灯やLEDなど近年使われる機会が多い光源も正確に測定することができるカラーメーターです。
演色性の計測方法
スペクトロマスターC-7000は非常に高精度・高機能なカラーメーターであるため多彩なモードを搭載してはいますが、基本的な使い方は単体露出計と似ており、被写体の近くからカメラに向けて計測ボタンを押すだけで測定することが可能です。
光源の分光分布をグラフィカルに表示する「スペクトルモード」や、Ra(平均演色評価数)とR1〜R15までの各色の演色性を表示する「演色評価モード」など様々な表示方式を選べるのもスペクトロマスターC-7000の魅力といえるでしょう。
計測した後は何をすればいいの?
カラーメーターで光源を測定した後は、カラーメーターに表示された色温度(ケルビン)の表示にしたがって、カメラ側も同じ色温度に設定することで適切なホワイトバランス設定を行うことが可能です。
例えばスペクトロマスターC-7000側の色温度が5600Kと表示されていれば、カメラ側のホワイトバランス設定も5600Kに設定するというわけです。
しかし、もちろん光源の演色性が高くない場合は、ホワイトバランスを適切に設定しても再現できていない色が存在するため、
- 使っているライティング機材は十分な演色性をもっているのか?
- 多灯ライティングであれば機材ごとに色のバラつきがないか?
などを確認することもカラーメーターの重要な役割となります。また使用しているストロボや定常光の演色性が低い場合、カラーメーターによる測定結果は機材を変えるべきかの有力な判断材料にもなるというわけです。
■演色性を見極めて、あるがままの色を表現しよう!
一生懸命ホワイトバランスを設定したつもりでも、本来の色が再現出来ない場合があります。そしてその原因はライティング機材や環境光の演色性にあるかもしれません。
正しい色を得るためには光源の演色性も大切なポイントなのです。演色性までこだわり抜いて、色かぶりのない写真をあなたの手に!
画像:SEKONIC
Reported by 正隆