PLフィルターやサーキュラーPLフィルターといった偏光フィルターは、レンズフィルターの中でも特殊なフィルターで、さまざまな不思議な特性を持っています。
<目次>
- 偏光フィルターは時計回りと反時計回りどちらに回す?
- 偏光フィルターの〇や△のマークはどういう意味がある?
- 偏光フィルターはなぜ鏡や金属の反射にはなぜ効果がないの?
- 偏光フィルターの劣化はなにが原因で起きる?
- 偏光フィルターは反射を目立たせてしまう場合もある?
- ミラーレスでも円偏光フィルターを使うべき?
今回はこれら偏光フィルターのトリビアをご紹介します。
■偏光フィルターは時計回りと反時計回りどちらに回す?
偏光フィルター、時計回りに回すか?反時計回りに回すか?
偏光フィルターは回転枠を回して反射をコントロールしながら使用しますが、この時フィルターをどちらに回せば良いのでしょうか?
必ずこうしなければいけないというわけではないものの、通常偏光フィルターの回転枠は「カメラを構えた状態で反時計回り」に回すと良いとされています。
カメラを構えた状態で反時計回りということは、カメラ正面から見ると時計回りになるわけですが、これは回転枠を回しているうちにフィルターそのものが緩むことを防ぐためです。
カメラを構えた状態で回転枠を時計回りに回していると、フィルターの取り付けねじが緩む方向に力が加わっているため、徐々に緩んでいき、ある時フィルター本体がポロっと外れてしまうことが起こります。
外れたときに上手くキャッチ出来れば良いですが、高価なC-PLフィルターを落っことして傷つけたりしたら大変です。
カメラを構えた状態から反時計回りに回転させていくと、フィルター本体が締まったいく方向に力が加わるために、フィルターが不用意に外れて落下させるといった事故を減らすことが可能です。
■偏光フィルターの〇や△のマークはどういう意味がある?
PLフィルターやサーキュラーPLフィルターの〇や△のマークは偏光膜の方向を表している
PLフィルターやサーキュラーPLフィルターの回転枠にある△や○のマークは、フィルターに使用されている偏光膜の方向を表しています。
このマークを太陽などの光源の方向に向けると、物体に反射して偏光した光の振動の方向と偏光膜のスリットが直交する状態になるため、PLフィルターの効果が最大に発揮されます。
ちなみにこの偏光膜の方向はフィルター枠を180°回転させると同じスリットの方向になるわけですから、マークを太陽の方向に向けても、真逆の位置に持ってきても同じ効果となります。
フィルターのマークはPLファインダーと併用する時にも使う
またこのマークは、PLファインダーとPL(C-PL)フィルターを併用する際、偏光膜の向きを合わせるためにも使用します。
レンジファインダーカメラなどの撮影レンズとファインダーの映像が異なるようなカメラの場合、PLファインダーで効果を確認しながら回転させ、そのマークの位置に併せてレンズの偏光フィルターのマーク位置を設定するというわけです。
■偏光フィルターはなぜ鏡や金属の反射にはなぜ効果がないの?
PLフィルターは金属や鏡の反射には無効
PLフィルターやサーキュラーPLフィルターはガラス面の反射や水面の反射など様々な反射光を取り除くことが出来ます。しかしなぜ金属や鏡の反射には偏光フィルターの効果がないのでしょうか?
偏光フィルターは鉄格子の隙間のような部分を、物体に反射して一定の方向に振動した光(偏光)を通したり通さなかったりすることで反射をコントロールします。
しかし、金属面や鏡面では光は偏光にならず、さまざまな方向に振動したままの光となります。
そのために金属や鏡の反射光は、偏光フィルターの偏光膜の向きをどのように動かしても、偏光膜のスリットを透過してしまうために効果がありません。
■偏光フィルターの劣化はなにが原因で起きる?
偏光フィルターは熱や紫外線に弱い
PLフィルターやサーキュラーPLフィルターはガラス板に偏光膜を挟んだ構造になっていますが、この偏光膜は熱や紫外線に弱いという弱点があります。
正常な状態の偏光フィルターは薄いグレーの見た目をしていますが、劣化が進むと変色したりグレーが抜けて透明な状態になります。
これは例えばドライヤーなどの熱風を当てると数十分で偏光フィルターはダメになってしまいます。
偏光フィルターにわざわざドライヤーを当てる人はいないでしょうが、約60℃以上の環境では変質していまうとのことで、夏の車内など高温になる環境下に放置していたりすると、撮影から帰ってきたら偏光フィルターがダメになっていたということも起こりうるというわけです。
また偏光膜に使われている染料は紫外線にも弱いため、偏光フィルターを「反射も取り除ける便利な保護フィルター」といった感覚で常用してしまうと、撮影中ずっと紫外線を受けてしまうために偏光フィルターの劣化を早めてしまいます。
ですから偏光フィルターは必要なときだけ使用し、使用していない時は冷暗所で保管することで長持ちさせることが可能です。
偏光フィルターの買い換え時
適切な管理をしても偏光フィルターはいずれは経年劣化していきますから、目安としては概ね7-8年ごとに買い換えると良いと言われています。
また偏光フィルターは劣化が進むと本来のグレーからわずかに赤みがかったり、黄色みがかってきます。もし偏光フィルターにそうした変化が見られたら買い換え時です。
■偏光フィルターは反射を目立たせてしまう場合もある?
PLフィルターは反射を目立たせてしまう場合がある
一般的にPLフィルターやサーキュラーPLフィルターは反射を取り除くために使用されますが、実は逆に反射を目立たせてしまう場合があります。
この現象は実際に撮影しなくても、PLフィルターを通して反射している部分を見ながら、フィルターを回転させ「反射が目立つ状態に回転させた時」と「フィルターなしで見た時」を比較していただければ、肉眼でも確認することが可能です。
反射光が強まるというよりは、フィルターを使用しない場合と比較して、「反射光とそれ以外の部分の差」がフィルターを使用していない状態よりも大きくなることがお分かりいただけると思います。
反射を目立たせて虹の撮影などに活用しよう
PLフィルターと言うと反射を取り除くフィルターというイメージが強いですが、この反射が目立つことを利用した代表的な使い方に虹の撮影があります。
虹は太陽の光が空気中の水滴によって屈折や反射されることで光が分解されて見える現象で、そのためPLフィルターが効果があります。
虹はそのまま撮影すると見た目の印象よりも薄く写ってしまうことが多いのですが、だからといってレタッチで単純に彩度を上げてしまうと、全体が鮮やかになりすぎて不自然な写真になってしまいます。
そこでPLフィルターを使用してみましょう。PLフィルターを使用し、回転枠を回して虹が目立つ状態に回して撮影することで、通常の撮影よりも虹を鮮明に撮影することが出来るというわけです。
そのため虹が出ることが期待できる滝の撮影などでは、水面の反射や濡れた岩の反射を取り除くだけでなく、滝壺に虹が架かるような幸運に恵まれた時なども、PLフィルターを使用して虹を強調してみるのも良いでしょう。
■ミラーレスでも円偏光フィルターを使うべき?
なぜ円偏光(サーキュラーPL)フィルターが必要なのか?
一眼レフでは、レンズを通った光はハーフミラーによってファインダーに導かれる光とピント合わせに使われる光とに分岐されます。
この機構を持つカメラに通常のPLフィルターを使用すると、ハーフミラーの光を分岐させる機能に干渉してしまい、AFセンサーが適切に作動しないケースがあると言われています。
実際はそうした事が起こる「可能性がある」というだけで、必ずしもAF一眼レフでPLフィルターを使うとピントが合わないといったことではありません。
しかし、そうしたリスクを避けるため、サーキュラーPLフィルターは通常の偏光膜に1/4λ位相差板を組み合わせることで、一眼レフのハーフミラーとの干渉を避けるように作られています。
ミラーレスの場合はどうなのか?
ミラーレスカメラやレンジファインダーカメラでは、ハーフミラーとの干渉が起こらないわけですから通常のPLフィルターでも良いように思います。
しかし、デジタルカメラの場合はローパスフィルターと干渉してしまいローパスフィルターの効果に影響があるといった意見や、ローパスフィルターと干渉して焦点位置がわずかにズレるという意見もあります。
ただしこれもやはり「可能性がある」というレベルの話で、フィルターメーカーも画質に何らかの影響を受ける「恐れがある」という表現をしており、具体的にどの程度影響があるのか明確なところは分かっていません。
さらに、昨今ではローパスフィルターレスのミラーレスカメラも増えており、そうした場合はどうなのか?といった話になると話はさらにややこしくなります。
しかし古いタイプのPLフィルターと比較して、最近のサーキュラーPLフィルターはより高品質なコーティングが施されていることで効果的にフレアやゴーストの発生を抑制したり、高透過率偏光膜の採用によって光量ロスを抑えられるというメリットがあります。
そうした理由からも、偏光フィルターとローパスフィルターの干渉による画質への影響がどの程度あるのかはともかく、予算が許せばより現代的で高品質なサーキュラーPLフィルターの使用がおすすめと言えるでしょう。
Reported by 正隆