ニコンファンの皆さんこんにちは。
正式発表が近づくにつれ、非常に期待が高まっているニコンフルサイズミラーレス機ですが、現在までに出ているティザー広告の画像からさまざまな事が推察されています。
フルスペックの発表は8月中が予想されており、リークされている画像の完成度などから見て、発売も秋から遅くとも年内の発売が期待できると思っています。
【目次】
- ニコンフルサイズミラーレスのボディについての考察
- 競合機とのサイズ比較
- 従来のミラーレスのホールディング性の問題を改善
- 上面液晶やフォーカスセレクターレバーも搭載
- 注目のEVFはチルト機構搭載の可能性?
- 最も気になるのはスペックに表されない見え味
- 新マウントについての考察
- 既存のフルサイズカメラを大幅に上回るマウント口径
- 巨大なマウント径は中判イメージセンサーさえも搭載可能
- レンズ設計の自由度やイメージセンサー関連技術にも有利
- 正方形センサーなどは可能性薄
- バヨネットはライカと同じく4本爪
- 反時計回りのレンズ取り付け方向はFマウントを踏襲
- ニコンらしい質実剛健さと実用的な操作性に期待
- ニコンのテイストとミラーレスらしさの融合
そこで今回は、Nikon Rumorsに掲載されている現時点での画像から、来たるニコンのフルサイズミラーレスカメラについて考察したいと思います。
■ニコンフルサイズミラーレスのボディ
競合機とのサイズ比較
ニコンのフルサイズミラーレスを同社のフルサイズ一眼レフであるD850、さらにソニーのフルサイズミラーレスα7Rと比較してみると、ニコンのフルサイズミラーレスはその二つの丁度中間のようなサイズ感であるようです。
モデルの女性との対比で見て見ると、極端に小さい訳では無いものの、それほど大きくもなく携帯性もある程度確保されているようです。
従来のミラーレスのホールディング性の問題を改善
またペンタ部(実際にはEVF)を除いたボディラインよりもグリップ部が高く作られているため、実際のボディサイズよりもグリップ長が確保されており、ミラーレスカメラにありがちないわゆる「小指余り問題」はかなり低減されるでしょうから、大きめのレンズを使用した際にもしっかりとホールド出来そうです。
※画像の女性モデルはカメラを見せるためか(あるいは単にモデルがカメラの扱いに不慣れなためか)、シャッターボタンから指を外して、グリップ部分を4本の指で握る不自然なホールディングのために小指が余っていますが、実際には人差し指はシャッターボタンの位置にきますし、ニコン機の場合中指で前面ダイヤルを回転させるため中指もグリップ上部に来るため、実際のグリップには十分な余裕がありそうです。
従来の小型ミラーレスカメラでも、別売りのグリップを追加するような方法でホールディングの向上に対応してきましたが、そうしたグリップだけ延長する方法ではボタンやダイヤル類まで大きくなってはくれません。
ですから、高度な操作をするような機種で適正な操作性を確保するためには、どうしてもグリップ部だけではないカメラ自体の大きさもある程度必要になってきます。
つまり、カメラは大は小を兼ねませんし、小も大を兼ねません。
ですからカメラはクラスやコンセプトに応じて、携帯性と機能性の比率を考えながら、もっとシンプルで小さなフルサイズミラーレス機も、逆に過酷な環境での使用を想定した大きなフルサイズミラーレス機も必要なのだろうと思います。
上面液晶やフォーカスセレクターレバーも搭載
このニコンのフルサイズミラーレス機は現時点で、ティザー広告の映像やリーク画像から、
- フルサイズカメラとして非常に大きなマウント径
- 上面表示パネル(肩液晶)
- フロントとリアの(最低でも)2ダイヤル操作
- サブセレクター(フォーカスセレクターレバー)
- ロック機構付きモードダイヤル
- チルト可動式液晶モニター
- チルト機構などのEVFに関する何らかのギミック
- シャッターボタン周辺部の電源レバーや設定ボタン
などの可能性が有力視されています。
逆に内蔵ストロボは(恐らくは)非搭載であり、防塵防滴は採用されていると思いますが、ボディ内手ぶれ補正なども現時点では不明です。
フロント側のダイヤルは一眼レフDシリーズを踏襲した位置にあり、背面ダイヤルは昨今のミラーレスで採用されることの多い、ボディ上面と面一となっている比較的高い位置に配置されているようです。
見た目的には背面ダイヤルもDシリーズ同様にもっと下でも良いように思いますが、一眼レフボディよりもボディの高さが抑えられているために、背面ダイヤルは少し高い位置にある方が良い、あるいは背面のスペースの有効活用というような意味があるのかも知れません。
この辺りは明瞭な背面画像が出てくれば判明してくるでしょう。
注目のEVFはチルト機構搭載の可能性?
またファインダー部はかなり大きくなっており、正面から見てペンタ部の左側に視度調節用としては大き過ぎるノブが付いています。
ペンタ部の大きさや、向かって左側の視度調節ノブとしては大き目のノブを見ると、もしかすると、EVFに何らかのギミックが搭載されている可能性はありそうです。
例えば「EVFチルト機構」のようなものであれば、ファインダーを覗きながらのローポジションの撮影というだけでなく、普段ファインダーを見ながら撮影する際に、完全に目の位置までカメラを持ち上げなくても、首くらいまでの高さまで持ち上げればEVFを覗きながら撮影が出来るかも知れません。
重いカメラやレンズをアイレベルまで頻繁に持ち上げるのは、長時間の撮影では疲労感も馬鹿にならないため、90°チルトのような極端なものではなく、微妙なチルト調整出来るEVFというのは、ローポジション撮影よりも「普段のアイレベルでの撮影」が楽になるというメリットがあるのではないか?という気がします。
ただし単純な前後ティルトのEVFは、稼働のための機構によってファインダー部が大型化したり、縦位置撮影ではメリットが殆どないという弱点もあります。
現時点ではこのノブの役割は正確には分かりませんから、実際には全く違う意味を持つのかも知れませんし、そもそも単なる視度調節だけの役割の可能性もあります。
最も気になるのはスペックに表されない見え味
ファインダーはマイクロディスプレイのスペックだけでなく、接眼レンズの光学系でも見え方がかなり変わりますし、現在のEVFは(ブラックアウトフリーを謳うEVFであっても)微妙なカクツキが感じられます。
ですからニコンフルサイズミラーレスには、ギミックよりもまず第一に可能な限りEVFであることを意識させない自然な見え味のファインダーを期待したいところです。
リーク画像を見るとかなり大きな目のファインダーとなっているため、複雑なギミックでもない限り接眼レンズの作りには大きな期待が持てそうです。
■新マウントについて考える
既存のフルサイズカメラのマウントを大幅に上回るマウント口径
ニコンのフルサイズミラーレスのマウント口径は非常に大きく、FマウントやEマウント、EF-Mマウントなどよりも大幅に大きな開口部を取っています。
ホットシューのサイズとの比較から推察されているニコンフルサイズミラーレスのマウント内径は59-62mm程度もの大きさがあるのではないかという見方もあり、その場合マウント径が広いことで有名なキヤノンEFマウントの内径(54mm)よりも明確に大きいものとなります。
巨大なマウント径は中判イメージセンサーさえも搭載可能
ニコンのフルサイズミラーレスのマウント径がもし実際に60mm前後あるとするならば、これは36.0×24.0mmのフルサイズイメージセンサーは勿論のこと、なんと富士フイルムのGFX 50S(43.8mm×32.9mm)やペンタックス645Z(43.8mm×32.8mm)に使用されているような、比較的小型の中判イメージセンサーまで十分に搭載できることになります。
ニコンが中判ミラーレス機を近いうちにラインナップするとは考えていませんが、もしもそうした中判ミラーレス機のラインナップが求められる時が来たとしても、(レンズのイメージサークルの都合上別途レンズラインナップが必要であるにせよ)マウントそのものはある程度の中判センサーまで対応出来るというわけです。
とは言え、いずれあるであろう開発者インタビューで「将来的には中判センサーの搭載も視野に入れていますか?」というような質問をされても、「はい、その通りです」とは答えないと思います。
また、「新規に中判用のレンズが必要であればマウントだけ中判まで対応しても意味がないのではないか?」というご指摘もあろうと思いますが、フルサイズ用のレンズをクロップとはいえ一応使用できること、一部共用出来るアクセサリー類があるであろうこと、また何より中判カメラを出す際、既に実績があるマウントの方が、中判用に更に新規マウントを立ち上げるよりもユーザーにとっての「心理的な」障壁を低く出来るというメリットがあります。
とは言え、立ち上げ時点ではフルサイズ用のレンズラインナップやアクセサリーなど優先するべき課題は多いため、今の時点で中判のイメージセンサーの搭載を語ることは時期尚早だろうと思います。
レンズ設計の自由度やイメージセンサー関連技術にも有利
ニコンは基本設計の古いFマウントをそれぞれの時代に対応させるために、これまで多大な苦労をし、時に批判されながらも長い間非常に上手く切り盛りしてきました。
実際Fマウント以上のシェアを持つレンズマウントは現在キヤノンのEFマウントのみであり、31年もの歴史を持つEFマウントさえも大幅に上回る、59年の歴史をFマウントは持っています。
ライカMマウントも非常に長い歴史を持っていますが、逆に市場シェアでニコンFマウントには遠く及びません。
たとえ細かな仕様変更を加えることによる機能制限や、そのための知識を必要としたとしても、ニコンでなければこれだけ長い間、同じマウントを第一線で活躍させ続けることは難しかったでしょう。
そしてニコンの新世代となるこのフルサイズミラーレス用のマウントでは、Fマウントの制限から解放され、より自由度の高いレンズ設計や大口径レンズの採用、ボディ内手ぶれ補正などイメージセンサー周辺の機能強化なども容易になりますから、そうした面でも期待が高まります。
正方形センサーなどは可能性薄
ただし幾らマウント径に余裕があると言っても、リークされている画像のレンズフードが花形レンズフードであることやティザー広告のイメージから、普通に考えると縦位置と横位置の持ち替えを必要としない完全なマルチアスペクト比を実現するような正方形センサーの可能性は低く、一般的な3:2の比率を持つイメージセンサーであることはほぼ確実でしょう。
仮に一辺が33-36mm程度の正方形イメージセンサーの搭載が物理的に可能であったとしても、そもそもイメージセンサーのコストがかなり上がってしまいます。
また正方形センサーに対応するためには、コストだけなく機能的な制約も増えてしまうため、純粋な中判ミラーレスカメラならなら兎も角、汎用性を必要とするフルサイズミラーレスカメラのコンセプトとは合致しないものとなってしまうでしょう。
バヨネットの爪は ライカと同じく4本爪
これまでニコンFマウントバヨネットは一般的な3点で固定するタイプのものでしたが、今回のフルサイズミラーレスでは4本爪が採用されています。
これは現代では珍しいものですが、ライカではMマウント、Sマウント、Tマウントなど4本爪のバヨネット基本に採用しており、これはこれで既に実績のあるものですから、4本爪にしたのにもニコンなりの考えがあるのだろうと思います。
反時計回りのレンズ取り付け方向はFマウントを踏襲
また、レンズの固定にはFマウントと同じく反時計回りが踏襲されており、「締め付けるのに反時計回りは違和感がある」という意見は今もあるものの、実際にニコンFマウントを使っていれば、あっという間に手が覚えると思います。
私はF、EF、E、マイクロフォーサーズ、PENTAX 645など様々なマウントを使用していますが、いずれも勝手に手が動くので迷うことは全くありません。
レンズ交換式カメラを初めて使われる方には反時計回りの取り付け方式は最初こそ違和感を感じるかも知れませんが、実際には取り付けの回転方向が時計回りでも反時計回りでも、「メリットもデメリットも大して無い」というのが私の今の考えです。
一応今回の新マウントは、他社に合わせて時計回りの取り付け方向に変えるチャンスでもあったわけですが、敢えてFマウントと同じ反時計回りを採用した理由としては、Fマウントレンズをマウントアダプターでミラーレス新マウントに使用する時に、
- Fマウントレンズをマウントアダプターに取り付ける時
- マウントアダプターをミラーレスボディに取り付ける時
この二つで取り付けの回転方向が変わるのは分かりにくいのではないか?というような事や、これまでのニコンユーザーの習慣に対する配慮なのかも知れません。
ちなみにズームリングとピントリングの回転方向に関しては、ニコンとキヤノンでは逆ですが、これはむしろニコンのようなカメラ背面から見て時計回りの回転(正面から見ると反時計回り)で、「望遠側にズームや無限遠にピントを送る」という方式の方が多数派であり、カメラ背面から見ての回転方向をメーカーで分類すると、
- 反時計回り:ニコン・ソニー・富士フイルム・パナソニック・ペンタックス・タムロン・トキナー
- 時計回り:キヤノン・オリンパス・シグマ
となっています。
個人的には望遠側へのズーミングや無限遠へのピントの送りは、ニコンの回転方向の方が感覚的に自然であると思っているため、マウント取り付け方向が反時計回りであるというのは、「ズームリングの回転方向との一貫性を持たせる」という意味で、そもそも悪くない選択であるようにも思います。
ちょっと文章では意味を説明し辛いのと、個人の感覚が影響すること、そもそもニコン方式でもキヤノン方式でも大して困らないことであるため、気にすること自体が馬鹿馬鹿しいことなのかも知れません。
■ニコンらしい質実剛健さと実用性に期待
ニコンのテイストとミラーレスらしさの融合
リークされている画像から分かるようにペンタ部は傾斜しており、垂直部分が少ないことから「NIKON」のロゴは傾斜した部分に入っています。
デザインは個人の趣味に寄るところも大きいため何とも言えませんが、個人的には「まあまあのデザイン」だと思います。
見慣れればより自然に感じるようになるでしょうから、少なくとも初号機のデザインとしては及第点であると思いますし、そもそもニコンに「超カッコいい今風のデザイン」などというものを期待しているとすれば、それ自体間違いでしょう。
むしろカメラメーカーとしてのニコンの魅力は、そういった部分とは対極のものでしょう。
ニコンの新ミラーレスは、「これまでのニコンユーザー」と「これからのニコンユーザー」の両方を見据えて、一眼レフDシリーズのテイストを踏まえながらも、ミラーレスらしい変化も加えているように見えます。
ティザー広告や様々なリーク画像から推察されるコンセプトを見るに、ニコンのフルサイズミラーレス機は少なくとも初号機としては、かなり期待の出来るカメラだと思います。
画像:Nikon Rumors
Reported by 正隆