色再現ファンの皆さんこんにちは。
PetaPixelに、EOS 5Ds Rとα7R IIIの色再現とホワイトバランスの比較が掲載されていましたのでそちらをご紹介します。ソニーはホワイトバランスや色味に関して批判されることが多いようですが、実際のところはどうなのでしょう?
■キヤノンとソニーの色再現比較
電球色室内/オートホワイトバランス(左:α7R III/右:EOS 5Ds R)
上の画像は、電球色の混合照明の室内で人物をオートホワイトバランスで撮影した際の比較ですが、左がα7R III、右がEOS 5Ds Rとなっています。
元サイトでより大きく拡大して見ることが出来ますので、大きく見たい方はそちらで比較していただければ良いと思いますが、拡大するまでもなくソニーの方は肌色にオレンジが強く色被りしていることが分かります。
またソニーの方は向かって左側の顎から首筋のあたりに不自然なグリーンのトーンも発生しており、単純にホワイトバランスが一方に転がっているわけでもないために、レタッチによる修正も手間のかかるものとなってしまっています。
電球色の下での人肌の再現は、カメラにとって非常に過酷な環境ですが、キヤノンはこの人物の本来の肌色をイメージし易い、比較的精度の高いものとなっています。
電球色室内/同一のレンズを使用しての撮影(左:α7R III/右:EOS 5Ds R)
次にレンズの影響を考慮して、同じシグマレンズを使用しての比較が掲載されていますが、ここでもやはりキヤノンの方が忠実な色再現性を見せています。
全体を見ると、肌の色に関しては同じシグマレンズを使用すると、純正レンズを使用した場合よりも差が縮まっていますが、それでもEOS 5Ds Rの方が自然な肌色であり、階調も適切に繋がっています。
拡大して見ると、額からこめかみの方向にかけてのハイライトからシャドウまでが、EOS 5Ds Rは自然な繋がりになっているのに対し、α7R IIIはトーンジャンプという程ではないにせよ、不自然な段つきのようなものが発生しています。
また、α7R IIIでは目のくぼみやこめかみ付近のシャドウ部など複数箇所にグリーンの色被りが発生し、加えてイエローの色被りもところどころ発生しているために、全体的に肌の色味に一貫性がなく、まだらな色の肌に見てしまいます。
室内の混合照明下では、コントラストやカラーバランスなど、EOS 5Ds Rの方が自然で正確な色再現を行えていると言えます。
晴天屋外/オートホワイトバランス(左:α7R III/右:EOS 5Ds R)
次は晴天屋外でのカラーチェッカーを使用してホワイトバランスを合わせた画像の比較です。
こちらの比較ではカラーチェッカーによる色合わせだけでなく、レンズによる色の影響が出ないように、レンズもシグマで統一されています。
カラーチェッカーによる色合わせの効果もあり、室内混合照明と比べてα7R IIIは遥かに良い色再現をしていますが、それでもEOS 5Ds Rには及びません。
まず、服の色再現ですが、紫や赤はデジタルカメラにとって色再現が難しい色で、青みがかったり赤みがかる場合がありますが、この比較でもα7R IIIの方は純粋な紫色ではなく青みがかってしまっています(※これは元の服の色が純粋な紫色と想定した場合の評価ですから、この服の色が実際に僅かに青みがかっているのであれば話は別です)。
また人物の肌も、α7R IIIの方は顔の(向かって)右半分の明るい部分がイエローにかぶっています。
EOS 5Ds Rもシャドウ部となる顔の左半分は青みがかっていますが、α7R IIIのように「ハイライト側とシャドウ側で顔色が明らかに変わっている」というほど大きな差ではありません。
顔の向きが異なるため、正確な比較ではないにせよ、そもそもハイライト側の肌色もα7R IIIはイエローに被っており正確に再現されていません。
■色再現性とホワイトバランスに関するソニー機の結論
簡単には直せない色の問題
この他にもより多くの条件と被写体(風景、静物など)でテストが行われており、拡大画像も見ることができるため、ご興味のある方は元サイトで確認していただければと思います。
作例に対するこの記事での評価は私の主観で書いていますが、元記事のカメラマンも似たような評価をしているように見えます。
キヤノン側はEOS 5Ds Rであるため最新機種とは多少傾向が異なる可能性もありますが、キヤノンのカラーバランスはかなり正確で、逆にソニーは少なくとも現行機に関してはホワイトバランスと色再現性に問題を抱えているようです。
純正レンズを使用してもサードパーティ製レンズ(シグマ)を使用した場合でも、ソニーは黄色と緑の色被りが発生しており、それも一様に被るわけではなく場所によって傾向が異なるために、RAW現像やレタッチによる修正は可能であるものの、求めるレベルによってはそれなりの手間がかかるでしょう。
カラーチェッカーを使用した場合には、完全ではないもののかなりの改善が見られるため、カラーチェッカーやグレーカードを使用したマニュアルホワイトバランス設定は効果的ですが、それでも尚キヤノン同等になるわけではないようです。
ソニーの肌色の再現性の向上に期待
人物撮影(屋内・屋外)とスタジオでストロボ光を使用した静物撮影の作例は、殆どの人にとってEOS 5Ds Rの方が良好な色再現に感じるはずですが、風景写真の作例比較ではα7R IIIも健闘しており、人口の建築物はEOS 5Ds Rの方が自然であるものの、街路樹などの緑はEOS 5Ds Rの方には街路樹には通常無いであろうマゼンタの色被りが見られ、α7R IIIの方が(やや緑が派手すぎるものの)実物に近い再現ができていると思います。
今回のテストでは環境を変えての人物と静物が主体であり、風景の作例が一つしかないため風景の作例比較をもっと見てみたいところです。
元記事のカメラマンは「解像度やダイナミックレンジよりも、最終的には色の方が重要である」と言っており、ソニーが色再現性の問題を解決することを願っているとのこと。
- 解像力
- ダイナミックレンジ
- 色再現性
などの要素から具体的に優先順位を決めることは難しいものの、適切な色再現がされているかどうかは写真の良し悪しに大きな影響を及ぼすことは間違いありませんから、ソニーの色再現性やホワイトバランスの向上に期待しましょう。
Reported by 正隆