レンズマウントファンの皆さんこんにちは。
レンズマウントと言えば、高い制度と強度を求められるレンズ交換式カメラにとって非常に重要な部品です。
実はそのレンズマウントで90%を超える世界シェアを誇り、多くのカメラメーカーが採用しているのがサンエツ金属株式会社製のレンズマウントです。
とうわけで今回は、世界の9割以上のレンズマウントを生産している、カメラ業界の影の立役者、サンエツ金属株式会社についてご紹介します。
■レンズマウントの材質
レンズマウントの材質による違い
ちなみにレンズマウントには主に、プラスチック、アルミ、真鍮、ステンレスなどの素材があり、
材質 | 特徴 |
プラスチック | 軽量で成型も容易だが削れやすい |
アルミ | 軽量だがやや削れやすい |
真鍮 | 削れにくく多くのカメラで採用されている |
ステンレス | 工作が難しく高コストだがとても削れにくい |
という違いがあり、下に行くほど強度は高まるものの高コストとなります。
多くのカメラでは耐久性と工作性のバランスから真鍮製が採用されていますが、プロ機など一部の高級機ではより強度の高いステンレス製が採用されています。
例えば現行のニコン製品では、
などがステンレス製のマウントを採用し、D750、D610とAPS-C機では真鍮製のマウントを採用しています。
Z7は、ショートフランジバックでも十分な強度を実現するために、ステンレス製のレンズマウントを採用しているとのこと。
■レンズマウントの役割とレンズマウント最大手のサンエツ金属
レンズ交換式カメラを支える偉大な黒子
この小さな金属の輪っかは、時に数キロにも及ぶレンズを支えなければならず、またそうしたレンズは長さがあるため、テコの原理でより大きな負荷がかかります。
加えて回転方向にはわずかな遊びがある(古いレンズとの互換性を確保するために意図的にわずかなマージンを設けています)ものの、上下左右のティルト方向のガタつきは画質に影響してしまうため、遊びがないように作る必要があります。
この細い輪に時に数キロものレンズを支えさせるのですから、カメラの構造だけでなく、マウントには非常に高い強度と工作精度、そして長期間の付け外しに耐える耐摩耗性・耐腐食性なども求められます。
このレンズマウントにはプラスチックやアルミ、高級機ではステンレス製のものがありますが、現在の主流は銅と亜鉛の合金でできた黄銅(真鍮)製のものとなっています。
サンエツ金属株式会社ってどんな企業?
このレンズマウントで世界シェア90%以上を誇るサンエツ金属株式会社は、富山県砺波市にあります。
レンズマウント製造の工程は、
- 黄銅(真鍮)の素材をプレス機で加工して穴の空いた黄銅菅を作る
- 黄銅管を切断機で薄く切断
- カメラメーカー各社の仕様に合わせて鍛造
- マウント金具にカメラやレンズに固定するビス用の穴を開ける
- 面加工を擦って成型
- 形が仕上がったのち耐食性を持たせるために外注でニッケルクロムメッキを施す
- 再び自社で検査をして完成
このようになっているそうです。
日経新聞のサンエツ金属株式会社の釣谷宏行社長のインタビュー記事によると、競合他社が切断した黄銅棒の中をくり抜いてマウント形状を作っているのに対して、サンエツ金属の専用のプレス機で黄銅菅を作る方法では、
- 手間のかかるくり抜き作業が不要になるため、歩留まり率が格段に上がる
- それによって低コスト化が可能で、また安定した品質を実現できる
といった優位点があるそうです。
これによってサンエツ金属株式会社は1982年5月からレンズマウント製造を開始し、参入後わずか6年で国内市場の9割近くのシェアを獲得しました。
現在ではサンエツ金属株式会社のレンズマウント世界シェアは9割りを超え、砺波市の工場で多い時には月230万個のマウントを生産しているそうです。
(写ルンですのような)使い捨てのレンズ付フィルムが登場した1980年代後半には、マウントの需要が激減した時期もあったそうですが、最近のフルサイズミラーレス市場への各社の参入から、新規マウント登場で再び引き合いが強まりつつあるようです。
参考:DPREVIEW,日本経済新聞
画像:DPREVIEW
Reported by 正隆