梅雨の時期は撮るものがない?いえいえ、そんなことはありません。
雨の多い季節だからこそ、色とりどりの魅力的な姿で私たちを楽しませてくれる「紫陽花(あじさい)」は、撮影に出かけるのがおっくうな梅雨でも撮りたい被写体ナンバーワン!
とはいえ案外、構図やフレーミングなどワンパターンになりがちで、印象的な撮り方ができない!という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回、紫陽花の魅力を伝える印象的な撮り方を考えてみたいと思います。今からポイントを押さえて、梅雨時の「いいね!」を独り占めしちゃいましょう!
■紫陽花(あじさい)撮影の基本
撮影する場所
紫陽花は身近な花なので、あなたの近所の公園や神社の境内にも植えられているかもしれません。
でもせっかくなら、たくさんの品種が見られたり株数の多い全国の「あじさい祭り」や、あじさいの名所に出かけてみるのも楽しそうです。
ここに都内の有名なあじさい祭りとあじさいの名所をまとめてみました。意外なスポットがとても株数が多かったりしますが、写真を撮るだけならそれほど多く咲いている必要はありません。アクセスの良さで選んでみてもいいでしょう。
東京サマーランド あじさい園 | 約150,000株 | 6月初旬~7月初旬 |
国営昭和記念公園 | 約11,000株 | 6月中旬~7月上旬 |
としまえん あじさい祭り | 約10,000株 | 5月下旬~ |
高幡不動尊金剛寺 あじさいまつり | 約7,500株 | 6月初旬~7月初旬 |
文京あじさいまつり | 約3,000株 | 6月上旬 |
上野恩賜公園 不忍池 | 不明 | 6月中旬~7月上旬 |
多摩川台公園 あじさい祭り | 約3,000株 | 6月初旬~ |
六義園 | 約1,000株 | 6月中旬~ |
撮影する時期
紫陽花にはさまざまな品種があり、開花時期も異なります。一般的にヤマアジサイは開花が早く5月下旬、セイヨウアジサイやガクアジサイは6月上旬から開花するようです。
紫陽花の色の変化の要因は土の成分もその一つですが、花色は開花から日を経るにつれて徐々に変化します。咲き初めのころは色が白っぽく、次第に赤や青に移り変わるので「七変化」とも呼ばれます。
たくさんの品種がある場所に撮影に行けば、梅雨の間はずっと撮影が楽しめそうですね。
撮影する天気
梅雨の時期の花である紫陽花は、雨に濡れて水滴がついた状態もとってもフォトジェニック。雨の日でもぜひ撮影したい被写体です。
もちろん天気のいい日でも撮影できるのですが、その場合は眩しいほどの快晴だと、コントラストが強すぎて紫陽花のしっとりしたイメージに似合わず、撮るのが難しく感じる場合もあります。そこで、薄曇りの日や、晴れでも日陰に咲いている紫陽花を撮影するのがオススメです。
晴れの日は早朝や夕方の光を狙うのもいいでしょう。鎌倉の長谷寺など一部の人気のスポットでは朝から大混雑という例外もありますが、一般的に人が少ない早朝は三脚を立ててじっくりと撮影したい人にもオススメです。場所によっては三脚禁止の場合もあるので事前に確認しておきましょう。
■紫陽花(あじさい)撮影のカメラ設定
露出補正
紫陽花にはさまざまな色の品種があり、もともと白い花もあります。そうした紫陽花を撮りたいとき、白っぽい花が画面いっぱいにあると、カメラの露出計は「明るすぎる」と判断して、露出を抑えて(暗めに)写してしまいます。そこで白い花をアップで撮る場合は、露出補正を0.3EV~1EVほどプラスに設定するのが基本です。逆光など場合によってはもっと大胆なプラス補正が効果的です。
ホワイトバランス
ホワイトバランスをオートや太陽にしていると、紫陽花の繊細な色味が表現できていないと感じる場合があります。色温度を指定できるカメラなら数値を少しずつずらして寒色-暖色の具合を調整し、見た目のイメージに近い設定を探してみましょう。また、ホワイトバランスの微調整で色合いを変更することも効果的です。
ピクチャースタイル
普段はピクチャースタイルなどの描写の設定を「スタンダード」にしている方が多いかと思いますが、メリハリのある描写なら「風景」、紫陽花の鮮やかさをより強調するなら「ビビット」など、使い分けてみるとより印象的な作品に仕上がります。
ふんわり感を出すなら
より柔らかく優しい印象を強調したいなら、ピクチャースタイルの詳細設定で「明瞭度」を低く設定してみましょう。レタッチで加工するようにふわっと幻想的な印象になりますが、撮影後もとに戻すことはできないのでスタンダードなデータの記録も忘れないでくださいね。
■まずはよく観察しよう
紫陽花に限らず花の撮影で大切なのは、いきなりカメラを構えて目についた花を撮るのではなく、まずはよく観察することです。
鑑賞して美しい物を写真としてキレイに見せるのは、写真ならではのテクニックが必要です。まず第一歩としてよく観察して、たくさんの紫陽花の中から撮影するに相応しいベストな紫陽花を、そのときの光線状態も含めて吟味しましょう。
観察の中からその被写体の魅力を引き出すアングルやフレーミングが見えてきます。
■遠景の紫陽花(あじさい)を撮る!
圧縮効果を利用する
焦点距離の長いレンズを使用することで、奥にある物が近くに迫って見える効果があります。圧縮効果についてはこちらの記事でも解説しています。
これを活かせば紫陽花同士の距離が縮まって見え、紫陽花に密集感が生まれます。広角レンズで撮るとスカスカになって寂しい時でも、ゴージャスな雰囲気を演出できる方法です。
■アップの紫陽花(あじさい)を撮る!
前ボケを利用する
ピントを合わせるメインの花びらを奥に、他の花びらがレンズの近くになるようカメラを寄せて絞りは開放に。ふわっとした紫陽花の前ボケが出来上がります。紫陽花を魅力的に演出する撮り方で特別な機材も必要ありませんので、ぜひ試してください。
水滴のついた紫陽花を撮る
紫陽花ほど水滴が似合う花も珍しいもの。撮る際はやはり水滴がわかりやすい、クローズアップ撮影が良いでしょう。この時期にしか撮影できない、みずみずしい紫陽花をぜひ写真に収めてみてください。
背景の色にこだわる
白や水色の紫陽花を引き立てるには、紫陽花の葉の黄緑色を背景に持ってくるのがオススメです。メインの花と背景の距離を取ることができれば、背景を大きくぼかすことで一つの花をより印象的に撮影することができます。
地面や木の幹の茶色を背景に持ってきても、淡い色の紫陽花を引き立てることができていいですね。その場合、背景が中途半端な明るさになるよりは、少しマイナス補正して暗めに落とした背景の方がスッキリするでしょう。
また公園や都市に咲く紫陽花なら、夕暮れ時に周囲の街灯を利用して大きな玉ボケを背景に持ってくるのも素敵です。一味違った幻想的な一枚が撮れるはず。
かたつむりと一緒に撮る
紫陽花のイラストには、よくかたつむりやカエルが一緒に描かれています。現実にはなかなか一緒に見つけるのは難しいかもしれませんが、よく周囲を観察して紫陽花の葉にいるかたつむりを見つけることができたら嬉しいですね。
その場合かたつむりはあくまで紫陽花を引き立てる脇役としたいので、彼を中心にする日の丸構図よりは、かたつむりの進行方向に空間を空けて左右どちらかに寄せたフレーミングのほうがスマートです。
■紫陽花(あじさい)と人物のポートレートを撮る!
女性を撮る
紫陽花は背の高さより低い位置に咲いていることが多いもの。少ししゃがんでもらって花に顔を近づけてもらったり、花に軽く触れるポーズがよく行われます。
ただそれだけではつまらないので、紫陽花のきれいなロケーションでありつつも、花を意識しないポージングを取ってもらうのも素敵です。紫陽花が脇役となって、女性とそのポーズを引き立ててくれるはず。
また、紫陽花の前に立ってもらうだけではなく、紫陽花越しに人物をフレーミングし、積極的に前ボケとして取り入れるのもオススメです。せっかく紫陽花がまとまってたくさん咲いている場所なら、前ボケ~後ボケと距離に変化を付けて、奥行き感を表現したいですね。
このときも曇りの日や日陰ならベストですが、どうしても日差しが強いなら、「透過レフ」を使うのがオススメです。直射日光を遮るように大きめの透過レフをかざせば、モデルさんに落ちるコントラストの強い影を和らげ、驚くほどフラットな表現ができます。人物撮影では一枚あるととても便利ですよ。
一般的なポートレートのセオリーとして、できるだけ余計な人工物は排除して、被写体の女性には腕時計など生活感のあるものを外してもらったほうが、ファンタジックな雰囲気を演出できます。
ちょっぴり非現実的なムードも漂う紫陽花の魅力を、ぜひポートレート撮影にも活かしてみてくださいね。
子供を撮る
傘を差したり、長靴を履いている子供を紫陽花と一緒に撮影するのも可愛らしいと思います。ぜひお子さんに協力してもらいながら撮影を楽しんでください。もしストロボを焚く場合は、自然光に溶け込むよう弱めに発光させるのがオススメです。
■まとめ 〜梅雨時のマドンナ〜
紫陽花の美しい時期はあっという間です。その一時を逃さないよう、いまから入念に下調べして撮影に臨みましょう!
写真撮影に夢中になっているうちに、じめじめした梅雨も楽しく過ごせるかもしれませんね♪
Reported by ひらはらあい