圧縮効果を知識として知っていても、あまり意識していない方もいるかもしれません。意外な場所で面白い効果が生まれる場合があります。覚えておくと表現の幅が広がるので、ぜひ試してみてくださいね!
下の写真は、同じ位置から焦点距離を変えて撮影したものです。右の手すりに注目してください。望遠で撮ったほうは、手すりのゆるやかなカーブが圧縮されて、ジグザグの手すりに見えます。
なだらかな曲線の多い穏やかな雰囲気から一転、カクカクした迫力ある空間に変わってしまいました。今日はこのトリックの種明かしをしてみましょう。
27mmで撮影(APS-C機の35mm判換算)
ここで、「圧縮効果とは何か?」おさらいです。圧縮効果とは、被写体に近づいた時とくらべて離れて撮影する場合に、手前の被写体と後ろの被写体の距離が縮まって見えることをいいます。
わかりやすく実感するには、同じ被写体を撮る際に、今より離れた所から望遠レンズで同じくらいの範囲が写るような画角を狙って撮影し、比較するとよくわかります。
例えば、ゆるやかな坂道や階段を撮って比べてみると、急激な坂道・階段に見えるので、そういったものを強調するときは便利です。
逆に、強調したくないんだけど…という場合は、被写体から離れずに広角レンズで撮影してください。ちょっとややこしいですが、実感できれば思うように使い分けられるようになるハズです。
圧縮効果は、観光ポスターの写真にもよく使われます。例えば、手前に桜の木があって、湖が広がり、さらに神社仏閣まで見えて、奥に富士山がどーんとある、ダイナミックな構図。
眺めのいい展望台をいろいろ探しても、同じように見える場所がありません。これは、かなり離れた場所から超望遠のレンズで撮影していると見て間違いないでしょう。
そうやって撮影すれば、その途中途中にある肉眼ではこじんまりとしか見えないものが、ひとつの狭い構図の中にギュっと押し込められ、「桜もあれば湖もあり神社仏閣も見える富士山のある景色」という、実際にはなかなかお目にかかれない、賑やかな写真となるのです。
世の中に情報が溢れかえっているからこそ、人の目を引くために広告写真は様々な工夫をしています。写真は事実を映すという概念があるので、「実際にはそう見えない」演出をすると、「なんだか気になる」作品になります。
こういった視点を持つことが、大勢のカメラマンが応募する写真コンテストで受賞を狙う際にもポイントになるかもしれませんね!
Reported by ひらはらあい