皆さんは撮影時の背景紙やトレペ(トレーシングペーパー)のカットに何をお使いでしょうか?カッター?ハサミ?いやいや、カメラマンたるもの道具にはこだわり抜きたいもの。
また撮影中にクマに襲われたり、街がゾンビで溢れてスタジオになだれ込んできたらどうしますか?そのカッターで戦いますか?ちょっと心許ないでしょう。そんな状況を考えると、やはりスタジオでは本格的なナイフを使いたいもの。
今回はそんな本格派の皆さんにオススメのバークリバーナイフをご紹介します。
■バークリバーナイフの魅力
バークリバーナイフの分類
バークリバーには非常に多くのモデルがあり、用途や大きさで使い分けられます。
- ブレードの長さ
- ブレードの形状
- ブレードの厚み
- ブレードの金属の材質
- グリップの材質
- グリップの厚み
- グリップのピンの違い
- グリップデザイン
など一つのモデルでも無数のバリエーションがあるため、その種類は膨大です。
サバイバルやハンティング、ブッシュクラフトなどさまざまな用途に使われるバークリバーナイフですが、そのバリエーションの多さや生涯保証、素晴らしい切れ味と高級感、普遍的なデザインなどによって非常に人気がある高級ナイフブランドとなっています。
日本での使いやすいサイズは?
ブレードの長さですが銃刀法の非常に厳しい日本ですから、おいそれと刃渡の長いナイフを持ち歩いたりできません。またスタジオで背景紙やトレペをカットするという趣旨ですから、あまり大きすぎるものも考えもの。刃渡は10cm程度、全長も20cm前後までのものが使いやすいでしょう。
モデルによっては刃厚を選べます。スタジオで背景紙やトレペをカットするだけであれば薄いものが使いやすく、サバイバルやゾンビが街にあふれた場合も使いたいという場合は厚みがある方が頼り甲斐があるでしょう。
■バークリバーの大定番、ブラボー1
バークリバーの定番、ブラボー1
バークリバーの定番中の定番、それがブラボー1です。ブラボー1はバークリバーの代表作で、アメリカ海軍偵察隊のオーダーによって開発されたナイフです。
ブラボー1はわずかに刃先がドロップして刃先を細かく操作するような場合の取り回しに配慮されていますが、基本的にはストレートラインのサバイバルナイフで、背景紙やトレペのカットはもちろんのこと、ブッシュクラフトやハンティング、さまざまなシチュエーションで活躍するナイフです。
ブラボー1の鋼材と刃厚の選び方
研ぎやすく粘りがあるA2、固く切れるが研ぎにくさもあるCPM-3Vなど複数の鋼材から選ぶこともできます。より現代的な性能と言えるのはCPM-3Vですが、鋼材が非常に硬いためシャプトン刃の黒幕のような高性能砥石でないと研ぎにくいという面もあります。
ブラボー1には刃の厚みの違いで分厚い(6.0mm)ノーマルのタイプと、刃の薄いLT(4.0mm)があります。薄いと言ってもサバイバルやハンティングに使われるナイフですし、背景紙やトレペをカットするには切れ味抜群です。
よりタフでワイルドな使い方を想定される方は6.0mm厚のノーマルタイプを、一般的な用途や携帯性を重視される方は軽く取り回しの良い4.0mm厚のLTを選ぶと良いでしょう。
魅力的なハンドルが逆に悩ませるハンドル選び
グリップは数多の種類があります。見た目や手触り、滑りやすい滑りにくい、寒冷地で冷たく感じる冷たく感じないなど好みに応じて色々なものが選べます。
このあたりはあまりにタイプが多いため全てをご紹介することはできませんが、最もスタンダードなタイプというか普及しているのがブラックキャンパスマイカルタと呼ばれる黒のキャンパス地のものです。ただグリップに関しては所有欲にも大きく影響する部分ですから、好みでお選びいただければ良いでしょう。
一回り小さいガニーもおすすめ
ブラボー1は優れたナイフですが、全長が23cm前後、刃渡が10cm程度ある結構大きなナイフです。背景紙やトレペを切るだけだからちょっと大きすぎるなという方には、ブラボー1と非常に似ており、一回り小さいモデルである「ガニー」がオススメです。
■刃先が先行する使いやすいフォックスリバー
ハンティングの定番ナイフ、フォックスリバー
大定番のブラボー1がバークリバーのサバイバルナイフの大定番とすると、こちらのフォックスリバーはバークリバーハンティングナイフの定番モデルとなっています。
先端に向かって刃先が下がっているため、ストレートラインのナイフよりも刃先が先行しやすく手首を大きく曲げなくても刃が鋭角に当たります。
軽作業に適したフォックスリバーのグリップ
ブラボー1やガニーはサバイバルナイフとしてブッシュクラフトや突き刺す動作にも対応する必要があるため、しっかりと力を入れられるように複雑なフィンガーグルーブ(グリップの指掛り形状)を持っています。
それに対しフォックスリバーはフィンガーグルーブがほとんどなく細身に作られています。そのため決まった位置でギュッと握るブラボー1やガニーと異なり、手の中で自在にハンドルを持ち替えることができ、刃が対象物に当たる角度や向きを細かく変えることが可能になっています。
ブラボー1やガニーにするべきか、それともフォックスリバーか?
思い切り力を入れて使うような用途ではブラボー1やガニーの方が力がしっかりと握れるためオススメですが、背景紙やトレペのカットではそれほど強い力は要りませんし、細かい刃先の操作を必要とする場合にはフォックスリバーの方が使いやすいかと思います。
Amazonから届いた箱のテープをカットするような場合も、刃先が下を向いているフォックスリバーの方が手首の角度をあまり変えずに刃を立てることができます。
ブッシュクラフトやサバイバル、もしくは街にゾンビがあふれるといったシチュエーションまで想定されるならブラボー1か一回り小さいガニー、スタジオでの軽作業やハンティングにはフォックスリバーがオススメです。
■オススメの本格砥石、シャプトン刃の黒幕
砥石の重要性
いくら優れた切れ味と耐久性を誇るバークリバーのナイフでも、永遠に切れ続けるわけではありません。頻繁に使えばやがて刃は丸まってしまいますし、ゾンビを何体も倒したりすれば刃こぼれも起こすこともあるでしょう。
そうした際、刃こぼれを直したり、丸まってしまった刃を研ぎ直すのに必要なのが砥石です。砥石には様々なものがありますが、高級ナイフであるバークリバーナイフにオススメの定番と言えばシャプトン製砥石、「刃の黒幕」シリーズです。
砥石にも高いもの安いものがありますが、高級砥石は研磨力が高く、硬い鋼材でも砥ぐのが容易といったメリットがあります。シャプトン「刃の黒幕」シリーズは非常に研磨力が高く、硬い鋼材を使用した高級ナイフや高級包丁などを頻繁に砥ぐ方にオススメです。
番手の選び方
砥石には大きく分けて荒砥石、中砥石、仕上砥石といったものがあり、刃こぼれなどを直す際には荒砥石で刃こぼれを取り、中砥石で鋭い刃を付け、仕上げ砥石で磨き上げるといったように段階的に砥石の番手(番手の数字が大きいほど目が細かい)を上げていくことでより鋭く美しい刃を付けることができます。
刃の黒幕は様々な番手があります。
- 刃の黒幕 #120
- 刃の黒幕 #220
- 刃の黒幕 #320
- 刃の黒幕 #1000
- 刃の黒幕 #1500
- 刃の黒幕 #2000
- 刃の黒幕 #5000
- 刃の黒幕 #8000
- 刃の黒幕 #12000
- 刃の黒幕 #30000
これだけあるとどれを選べばいいのか悩ましいところですし、全てを使う必要はありません。このうちの幾つかを組み合わせて使うのがオススメですが、あまりにも多くの砥石を使い分けるのは大変でしょうから、
- さっさと終わらせたい:#320 + #1000
- 綺麗に研ぎたい:#320 + #1000 + #5000
- 砥ぎを極めたい:#320 + #1000 + #2000 + #5000 + #8000 +#12000 + #30000
などが一例です。番手の小さい荒い砥石から徐々に番手の大きい目の細かいものに移りながら砥ぎ上げていきます。
ピカピカの鏡のように鏡面仕上げを行いたい場合は#8000以上、できれば#12000以上を使用すると良いでしょう。
砥石の平面出しも重要
砥石は満遍なく使うように心がける必要がありますが、角の方はどうしても使いづらいため長期間使用していくうちに良く使われる中央部が凹んでいきます。
砥石の平面が失われてしまうと、刃の方も砥石との角度が適切に保たれなくなるため上手く砥げなくなってきます。そこで砥石も凹んでくると定期的に削り直して平滑性を取り戻す必要があります。
そうした時には「砥石を砥ぐための砥石」が必要になります。SK11 両面ダイヤモンド砥石 #150やシャプトンなおるのような面直し用の砥石を使用します。面直し用の砥石を使用する際は手に擦り傷ができやすいため、手袋をつけて使用すると良いでしょう。
■気楽に砥げる革砥(レザーストロップ)
ササっと砥げる革砥
本格的に砥ぎあげる場合は先にご紹介したようなシャプトン刃の黒幕のような砥石が必要になりますが、いつもいつも砥石で砥ぐのは大変です。
そこでちょっとした刃の手入れをしたい時にオススメなのが革砥です。昔ながらの理容室などでカミソリを擦り付けるようにしている革のベルトのような物を見たことがありませんか?あれが革砥です。
革砥はレザーの起毛とコンパウンドと呼ばれる研磨剤を利用して刃を砥ぐもので、ナイフ用の革砥もあります。革砥は水を使うことがなくテーブルなどで手軽に砥げるため、ナイフのちょっとしたメンテナンスには非常に便利です。
また砥石を使用しての砥ぎの後の細かいバリ取りなどにも革砥はオススメです。いつもいつも砥石を使って本格的に砥ぎ直すのは大変ですから、普段のメンテナンスは革砥で行い、革砥では修正不可能なほど刃こぼれしたりエッジが丸まってしまった場合には砥石でしっかりと砥ぎ直すというのが楽でしょう。
革砥は細かいバリ取り程度であればそのまま撫でてもある程度効果があるかと思いますが、通常はコンパウンドと呼ばれるチョークのような研磨剤を革砥に塗って使用します。
■長期保管時は刃物用の油を塗って保管
保管にオススメの椿油
こうした本格的なナイフはステンレス包丁などと違い、切れ味は優れているものの錆びやすい鋼材を使用していることが多いため、長期保管や濡れた後は水分を拭き取り刃物用の油を塗って保管します。
定番としては刃物用の椿油がオススメです。片面1滴ずつ程度ほんの少しの量をティッシュのようなもので構わないので塗り伸ばしておけば長期間使わない時も錆びにくくなります。
■バークリバーナイフでより快適なスタジオライフを!
皆さんいかがだったでしょうか?バークリバーナイフは背景紙やトレーシングペーパーのカットなどスタジオワークにオススメの本格ナイフとなっています。
本当はカッターナイフで十分ですが、そこは本物志向の皆さんにオススメしたい一品となっています。愛着のわく道具があれば、皆さんのスタジオライフが充実すること請け合いです。さあ皆さんもレッツ・コンベックスグラインド!
画像:Amazon,Bark River
Reported by 正隆