現代のハイスピードレンズとしては、ライカのノクティルックスM F0.95/50mm ASPH.などがあります。また過去にはツァイスのPlanar 50mm f/0.7などの50mm/F0.7といったレンズも存在しました。
しかし世界は広いもの。なんと歴史上最も明るいレンズとしては、40mm/F0.33という桁外れのレンズが存在したというのです。
そこで今回はこのZEISS Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33をご紹介したいと思います。
■歴史的なハイスピードレンズたち
ハイスピードレンズとは?
開放F値の小さい明るいレンズは、速いシャッタースピードで撮影できることから「ハイスピードレンズ」と呼ばれます。
現代のデジタルカメラは高感度撮影が容易であるためそれほど極端な明るさを求めない傾向にありますが、かつて低感度フィルムが一般的であった時代には、「大口径時代」と呼ばれる各社がハイスピードレンズの開発に躍起になっていた時代がありました。
ハイスピードレンズにはどのようなものがある?
これまで市販されたフルサイズ用ハイスピードレンズとしては、
- ライカ:NOCTILUX-M F0.95/50mm ASPH.
- キヤノン:50mm F0.95
などF0.95程度のものがあり、特注品としては、
- ツァイス:Planar 50mm f/0.7
- 東京工学:TOKO 5cm f0.7
- 東京工学:Simlar 5cm f0.7
などがありました。
「Planar 50mm f/0.7」は元々はアポロ計画用に設計されたもので、映画監督のをスタンリー・キューブリックがそれを手に入れ、映画「バリー・リンドン」でろうそくの明かりで撮影するシーンに使用しました。
「TOKO 5cm f0.7」は、東京工学(現トプコン)が旧日本軍用に設計したもので、「Simlar 5cm f0.7」は同じく東京工学がTOKO 5cm f0.7を基に戦後再設計したレンズで、毎日新聞社の南極探検隊が使用しました。
■歴史上最も明るいレンズ、ツァイス「Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33」
驚異のF0.33!Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33
先にご紹介した「Planar 50mm f/0.7」たちも驚異的なハイスピードレンズでしたが、今回ご紹介するツァイスのSuper-Q-Gigantar 40mm f/0.33はなんと驚愕のF0.33という桁外れの明るさを誇っています。
Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33は1966年のフォトキナで、カール・ツァイスが技術アピールのために制作・発表したレンズと言われており、2011年有名なオークションに出品され60,000ユーロ(約774万円)の値段がつきました。
そしてこのツァイスの「Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33」は、史上最も明るいレンズと言われています。
ZEISS Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33外観
Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33はナンセンス!?
このZEISS Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33はコンタレックスブルズアイ用のレンズとなっています。コンタレックスブルズアイは面白いカメラですから、また違う機会にご紹介出来ればと思います。
Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33の「Q」はドイツ語で「ナンセンス」を意味する「Quatsch」から来ているとのこと。つまり、「Super-Q-Gigantar 40mm f/0.33」は、「とてもナンセンスで巨大なレンズ」といった意味になるのかも知れません。
しかしこのレンズが存在していたことは確実であるものの、このレンズで撮影した写真作例は出回っておらず、このレンズの写りや、それどころか実際に撮影に使えるかどうかさえ良く分かっていないという、まさに幻の逸品となっています。
画像:PetaPixel
Reported by 正隆