皆さんこんにちは。
遂にニコンのフルサイズミラーレス機、Z 9が正式発表されました。
ここ数年「ニコンは落ち目」などと散々言われてきて、またネット上のコミュニティだけでなく一般のニュースメディアですら、そうした論調に便乗する形でニコンの業績不振を報道してきました。
しかしニコンのカメラが駄目かというとそんなことは全くありません。むしろ今のZマウント機の写りは非常に高品質でおすすめですし、個人的にはニコンは今最も過小評価されているメーカーだと思っています。
目次
- Z 9のここが残念!
- 上面右側はもっと有効に使って欲しかった
- フロントファンクションボタンの数に見える負の遺産
- Z 9の印象まとめ
- 本当に残念だったのは画質に関して語られていないこと
- 新しい攻めの姿勢が見られるカメラ
そんな中で出てきたこのフラッグシップ機Z 9ですが、良いところを挙げているときりがないくらい素晴らしい機種なので、今回は敢えてZ 9の少しだけ残念に感じた部分についてお話ししていこうと思います。
■Z 9のここが残念!
上面右側はもっと有効に使って欲しかった
てっきりGPSユニットをシャッター側の上面(Z 9のロゴがあるところ)に移動させたために、そこが空き地になってしまったのかと思っていましたがそうではないようです。
GPSの測位アンテナ部は従来通りペンタ部に搭載されており、デザインの妙で樹脂部分とのつなぎ目が目立たないようになっています。
ペンタ部の樹脂部分の境目がほとんどわからないようになっているのは素晴らしいと思いますが、それならなぜ右肩のZ 9のロゴの部分は何もないのかは不思議です。
上面表示パネルのとなりの部分は操作系を搭載するのに有用なスペースであると思いますから、なぜそこがなぜ空き地にしてしまったのかは疑問で、もちろんそうせざるを得なかった理由はあるのでしょうが少し勿体なく思います。価格が上がってでもせめて上面情報パネルを大型のものにしておけば、より高級感が出たように思います。
フロントファンクションボタンの数に見える負の遺産
もう一点残念に思ったのは、フロントのファンクションボタンの数で、横位置撮影の場合はフロントファンクションボタンが3つも使えるにも関わらず、縦位置撮影時にはFn1とFn2は縦位置撮影では押し難いでしょうから、使えるのは事実上一番下のFn3だけで、1つしか使えずとても勿体無い状態になります。
ちなみにキヤノンのEOS R3では、縦位置横位置共に2つずつのFnボタンが使えるようになっています。
Z 9がなぜ横位置では3つも配置したファンクションボタンを、縦位置では1つしか使えないような作りになっているかというと、恐らくはFマウントレンズをZマウントに付けるためのマウントアダプター FTZの下側の出っ張りと干渉してしまい、縦位置グリップ側にフロントファンクションボタンを配置しても押せない状態になってしまうからなのだろうと思います。
折角ニコンがZマウントに移行し、Fマウントのニコンマニア以外には覚えられないような古いレンズを付けた時の機能制限や干渉問題から解放されたにも関わらず、マウントアダプター FTZに配慮してボディ側に制限がかかるのはダメだと思います。
しかも出っ張りのないマウントアダプター FTZ IIを発表したわけですから、ここは開き直って、
「マウントアダプター FTZはZ 9ではお使いになれません。マウントアダプター FTZ IIをお使いください」
で良いので、縦位置グリップ用のフロントファンクションボタンも2つは搭載するべきだったでしょう。
もちろん私はFマウントは偉大なマウントだったと思っていますが、マウントを変えた以上はもうZマウント機の利便性を優先するべきです。
■Z 9の印象まとめ
本当に残念だったのは画質に関して語られていないこと
今回敢えて細かい不満点を挙げてみましたが、Z 9は現時点のニコンが持てる技術の全てを搭載、かつフルサイズミラーレスの最先端と言える機種です。
ただ実は本当に一番残念だったのは「Z 9は画質に対するアピールがない」という点でした。
機能のアピールと動画性能のアピールは凄いのですが、スチールカメラの命とも言うべき「画質」に関してほとんどアピールがないというのは駄目だと思います。
最近はカメラマニアの方が機能や動画のスペックばかり語ることが多く、「画質をアピールをしても響かない」というのが影響しているのでしょうが、Z 9の「製品特長」の項目には、
- 様々な被写体を確実に捉えるAF性能
- 決定的瞬間をより確実に捉える力
- 決定的瞬間を撮り逃さない高性能な動画機能
- 過酷な状況でも多様なアングルで存分に撮影できる操作性・信頼性
- ワークフロー
となっており、画質に関する項目は一つもありません。これは今まではなかったことで、ニコンもソニー的なセールスの手法に毒されてきているのかなと思います。
画質をアピールしないと言うのは、これまでのニコン機ではあり得なかったことで、一眼レフのフラッグシップ機であるD6でも、逆にライトなミラーレス機であるZfcでも「製品特長」のところではこれまでは必ず画質をアピールする項目がありました。
競合機であるキヤノンのEOS R3も製品の「特長」の項目の一番目に書かれているのは「高画質×高速」で、画質を一番最初にアピールしています。
そういう精神はニコンにも絶対に忘れないでいて欲しいと思います。
実際はZ 9が画質をないがしろにして作られているわけではないでしょうが、画質なんて関係なくカメラが売れるとしたら、それはカメラ業界とカメラファンが狂っている状態なのですから、ニコンともあろう歴史あるカメラメーカーが「売れれば画質なんてどうでもいいと思っている」という姿勢を見せるのはいけません(思っていないでしょうし)。
またカメラマニアの方もZ 9の発表に対して、画質に関する話題はほとんど上がっているようには見えず、多くが機能やスペックの話に終始しているように思います。
ニコンには「我々はカタログスペックではなく、実用性にこだわっている」という姿勢を見せて欲しいと思います。実際Z 9は実用性にも凄いこだわりを見せているわけですから。
そうした質実剛健さこそニコンらしさではないでしょうか?
新しい攻めの姿勢が見られる機種
とは言っても、Z 9はスポーツフォトグラファーからコマーシャルフォトグラファーまで、あらゆるジャンルのプロフォトグラファーに加えて、ハイアマチュアにもお勧めできるオールラウンダーであることも事実であり、素晴らしい機種であることに疑いの余地はありません。
多くの人が期待以上の使い勝手を得られるのではないかと思います。
Z 9と事実上競合するのはEOS R3だけですが(私はα1をこの2機種と同じ土俵のカメラとは認めていませんので)、スポーツや野生動物のような激しい動きのある動体撮影がメインの人ならEOS R3の方が良いと思います。
(プロモーション動画ではない)リアルなレビュー動画のAF速度や追随性を見るに、EOS R3のAF性能はZ 9以上に見えます。また視線入力も人によっては代わりの効かない機能になり得るでしょう。
ただ動体と言ってもAFや連写の速度だけじゃないので、そのあたりは使ってみないと分からない部分もあります。ファインダー性能やレリーズタイムラグなども影響しますから。
どちらにせよZ 9もスポーツ撮影にも強い機種ですから、「動体撮影に関しては」EOS R3には及んでいない印象を受けたとは言え、Z 9もオリンピックのようなハイレベルなスポーツフォトの使用にも十分対応できる機種だと思います。
また静物撮影や動画性能に関してはZ 9の方が優っているでしょう。ただそれも動体=AFと連写速度だけではないように、静物だからといってスペック表でわかる部分で決まるわけじゃないので断定はできません。
なので、
- EOS R3→動体撮影に驚異的に強く他の撮影にも対応できる機種
- Z 9→様々なスチール撮影とムービー撮影にプロレベルで対応できる機種
このような感じだろうとは思いますが、実際は比較してもわずかな差だと思います。
2機種とも非常にハイレベルな領域での話であり、どちらの機種でも多様な撮影に対応できると思いますが、高いレベルで若干キャラクターの異なる機種だとは思います。
またニコンの良いところはカタログスペックではなく「実写で強い」という点です。
他社ユーザーは一度Zシリーズのフルサイズ機とS-LineのNIKKOR Zをレンタルして撮影してみれば、その写りの良さに驚かされると思いますし、「ニコンはオワコン」というようなウルトラ馬鹿なことを言っているのは、ろくに写真を撮っていない人ばかりだということがすぐに分かるでしょう。
ニコンは今でもカメラ業界の一流ブランドです。
フォトグラファーの中には「ミラーレス時代はソニーの方がいいのかな…」と思ってニコンからソニーに移った人もいるわけですが、もう少し待っていればこんなに素晴らしい機種が出たのに彼らは選択を失敗したと思います。まあ今からでもニコンに戻れば良いだけです。
それにしてもAP通信は本当に愚かな選択をしました。スポーツや報道用なら何も考えずにキヤノンかニコンで選んでおけばいいんですよ。
そしてZ 9が買いかどうかですが、
- フルサイズミラーレスとして最高峰の性能と高い完成度
- 内容を考えればバーゲンプライスと言える価格設定
これらを考えると、
- ニコンユーザーでフラッグシップ機が欲しい人
- 特にメーカーにこだわりがなく様々な被写体を撮影したい人
- ミラーレスへの切り替えを考えていたニコン系のプロフォトグラファー
このいずれかに該当するなら、Z 9は予算さえ許せばすぐに予約するべき機種です。間違いなく品薄になるので。
この記事の締めの言葉はこれしかないと思うので、木村拓哉さんに代弁してもらいましょう…
Reported by 正隆