今日は風景撮影を成功させるための実践的な10のコツをご紹介します。
これらのことに注意しながら撮影すれば、風景写真が今までよりも一段も二段もクオリティアップすること間違いなし!?
■ポイント1/事前にロケハンをしておく
風景撮影では撮影地にいきなり行っても良いスポットはなかなか見つかりません。
探し回るのも撮影の一つの楽しみであり、自分だけの構図をものにするという意味では良いことですが、撮影地が遠方の場合何度も通うのは難しく、この一回で良い写真を撮りたいという場合には事前の下調べが必須になります。
現代ではネットの画像検索や写真投稿サイトを利用することで、撮影地の定番の構図は簡単に調べることが出来ます。Google画像検索やFlickr、GANREFやPHOTOHITOなどの写真投稿サイトなどでこれから行く撮影地で上手い人たちがどんな写真を撮っているのか下調べしておきましょう。
そんなことしたら人と同じ写真しか撮れないのではないか?と思われるかも知れませんが、仮に人の写真をそっくり真似するつもりで撮影したとしても、同じ写真にはまずなりません。
それは撮影地の気象条件や時間帯、撮影機材や撮影技術、レタッチのテクニックなど人それぞれだからです。
また上手い人の写真を真似てみることは決して悪いことではなく、「学ぶは真似ぶ」と言われるように、写真の上達法として非常に有効な方法ですから、いきなり独創的な撮り方に挑戦するのも良いですが、その撮影地での定番の撮り方もおさえておきたいものです。
もちろん撮影地の場所や交通手段、どの程度時間がかかるのかなどもしっかりと調べて撮影に臨みましょう。
■ポイント2/撮影時の時期や時間を考える
風景撮影では、季節や時間帯の選択が作品に大きな影響を与えます。同じ撮影スポットであっても、早朝・日中・夕方・夜では様々な表情を見せます。更にそこに天候や季節が加わるため同じ撮影地であっても同じ条件にはなりません。
撮影に行くのが大変な季節や時間帯ほど往々にして良い写真が撮れたりするもの。早朝や夕刻のマジックアワー、夜景などもぜひ狙ってみましょう。また雪や朝もやなども風景を幻想的に引き立たせる要素となります。
■ポイント3/表現にあったレンズを使う
レンズの選択も写真表現を大きく変える要素の一つです。レンズ選択は単に画角を選択するというだけではありません。
画角を揃えて同じ範囲を写した場合、広角レンズでは被写体に寄って撮影しますし、望遠レンズでは離れて撮影することなります。それによって被写体は同じ大きさであっても、その前後にあるものの写り方が違ってきます。これがいわゆる圧縮効果と呼ばれるものです。
広角レンズではパースペクティブ(遠近感)が付きますし、望遠レンズでは圧縮効果が生まれます。もちろん自然な見た目にするために標準レンズを使うという手もあります。
レンズ選びは画角(写す範囲)も重要ですが、パースペクティブやアオリレンズのような特殊なレンズ、ボケ味重視のレンズや解像力重視のレンズと色々あるため、それぞれのレンズの特性を生かすことも必要になってきます。
■ポイント4/絞り値を適切に選ぶ
風景撮影で絞り値の設定が一つ大きなポイントとなります。ご存知のように、絞りを絞れば被写界深度(ピントが合う範囲)が広がりパンフォーカス気味になりますし、絞りを開放にすれば被写界深度が狭まり、ピント位置から離れた背景や手前はボケやすくなります。
仮に大きくボカしたいとした場合、絞りを開いてF値を小さくするのですが、多くのレンズは開放付近では収差が増大し、画質が甘くなります。
そのためボカす際にも1,2段絞るという判断もあり得ます。また絞ってパンフォーカスで写す場合も絞りすぎると回折現象(小絞りボケ)が発生し、これもまた画質を劣化させてしまいます。
単純に画質だけをピークに持ってくるのであれば、最新レンズはF5.6〜8.0あたりが画質のピークになることが多いのですが、もちろん高画質な写真=良い写真ではありません。
写真表現としてその方が作品のコンセプトとあっていると思えば、絞りを開放にしたり、小絞りボケを覚悟で大幅に絞り込むことも必要になるでしょう。本当の適切な絞り値というのは、目指す表現にあった絞り値を選ぶということです。
■ポイント5/シャッタースピードで表現を変える
風景写真愛好家にとって絞り優先モードは慣れ親しんだ撮影モードかとかと思いますが、風景撮影でもシャッタースピード優先を使用することでさまざまな効果を生むことが出来ます。
滝が流れているような表現や、花畑の花を風に揺らしたり、船や車の光跡を残したり、あるいは木立をわざと縦にブラすことで抽象画のような表現をすることも出来ます。
シャッタースピード優先は、見たままとは違う表現をするのに非常に有効な撮影モードで、動体撮影だけでなく、風景撮影に使用することで一味違った効果を生むことが出来ます。
■ポイント6/ISO感度を適切に選ぶ
ISO感度は上げれば速いシャッターが切れますが、当然画質は上げるほどに劣化していきます。風景写真の場合三脚を使うことも多く、どうせ三脚を使うなら画質面を考えて低感度で撮りたくなるのが人情です。
しかし三脚はカメラブレは抑えることが出来ても、被写体ブレまでは止められません。自然の風景は風の影響などで常に揺らいでいます。三脚を使うからといってむやみに感度を下げてしまうと、シャッタースピードも落ちてしまうため、状況によっては被写体ブレによって精細感が落ちてしまう場合があります。
適切な感度設定とは一概に低感度高感度という事ではなく、被写体や撮影環境、撮影条件で変わってしまうため、その見極めを行いましょう。もちろんISOオートも明るさが変わりやすい場所や手持ちでのスナップ撮影では有効であるため、ピンポイントでISO◯◯に設定するという事ではなく、ISOオートが有効であるケースも多くあります。
また機種によってはISO感度設定のメニューの中に、ISOオートの上限を設定できるものや、シャッタースピードの低速限界を設定できるものがあります。有効に活用する事で撮影時のミスを防ぎ、労力を減らす事にも繋がります。
■ポイント7/露出補正を使いこなす
多くの撮影モードでは、露出(写真の明るさ)はカメラ側で自動的に調整されますが、写真として考えた場合、必ずしもカメラの自動露出が最適な明るさとは限りません。ハイキーな写真、ローキーな写真、あるいはピンポイントで特定の部分の露出を適正にしたい場合などさまざまです。
そこで自動露出に対してプラス(明るく)や、マイナス(暗く)の補正を与える露出補正をということを行います。露出補正は撮影者の意図によって、この写真をどう表現したいのか?明るめにしたいのか暗めにしたいのかによって決めていただいて構いません。
注意点としては、明るく露出補正すればどこかしらが白飛びしやすく、暗めにすれば黒つぶれしやすくなってしまいます。現在はダイナミックレンジ(明暗の幅)を拡大することで白飛びや黒潰れを起こりにくくする技術もありますが、それもやはり限界がありますからその点は気をつけましょう。
■ポイント8/ホワイトバランスで表現を変える
露出(明るさ)と共に、写真の印象を大きく変える要素としてホワイトバランスの設定があります。ホワイトバランスを変えることで色味が変わるのはご存知かと思います。
デジタルカメラはRGB(レッド・グリーン・ブルー)の光の三原色によって色を構成していますが、オートホワイトバランスで撮影した場合、カメラ側の判断で白いものを白く写そうとします。もちろん撮影環境によっては完全にその通りになるわけではありません。
そこでホワイトバランスを撮影者自身が変更することで、本来の見た目に近い色味にするのがホワイトバランス設定の目的の一つです。写真撮影を始めて間もない頃戸惑うのが、ホワイトバランス設定と色の変化の関係性です。例えばプリセット(最初から用意されている)ホワイトバランスで「電球色」を選んだとします。普段見かける電球色はオレンジ色の暖色系の光であるため写真も暖色系の色味になるのかと思いきや、実際は青みがかります。
カメラでいうホワイトバランスの設定とは、選んだホワイトバランスの色に画像の色が変わるのではなく、撮影環境を選ぶことで、「その環境の色かぶりを打ち消すように働く」ということなのです。
具体的に例を上がると、例えば皆さんが電球色(暖色系の色)の照明の居酒屋のような飲食店で写真を撮ったとします。そのまま撮影すると、写真はかなりオレンジ色に色かぶりして写されてしまいます。
そこでホワイトバランスの設定を「電球色」を選択してみましょう。すると写真はオレンジ色の色かぶりが軽減され見た目に近い色合いに変わります。
カメラのプリセットホワイトバランス設定は、撮影している環境に合わせて選ぶことで、その環境で起こる色かぶりを打ち消す方向に働き、見た目に近い色を再現するというわけです。これがホワイトバランス設定の最大の役割である、見た目に近い色再現をするということです。
写真表現としてみた場合、ホワイトバランス設定にはもう一つの側面があります。それは色味を誇張したり、あるいは本来の見た目とは違うものに変えるということです。
例えばあなたが夕日のある風景を撮影していたとしましょう。カメラのホワイトバランス設定をオートのままで撮ると、カメラ側が補正してしまうために夕日の赤が十分に再現されない場合があります。
現在のデジタルカメラは機種によっては夕焼けモードのように夕日や夕焼けの赤みを強調してくれるモードもありますが、このような専用のモードは一眼レフ上位機になるとまずありません。
ではどうやって意図する撮影を行うかというと、プリセットホワイトバランスの設定を「曇り」や「日陰」に設定します。曇りや日陰では本来色温度が高くなってしまうため、オートホワイトバランスで撮影すると写真は寒色系に青みがかってしまいます。
プリセットホワイトバランスの「曇り」や「日陰」を使うとそれを打ち消すように写真を暖色系にシフトしてくれます。
それを利用して、夕焼けをホワイトバランス「曇り」や「日陰」で撮影してみましょう。するとカメラはより暖色系に色味をシフトしてくれるため、夕焼けの赤みをより強調して写してくれます。
写真表現において色味は、「忠実に再現させること」「色味を強調すること」「見た目と変えてみること」などさまざまなバリエーションがあると言って良いでしょう。そのためにホワイトバランスの設定が必要になります。
■ポイント9/被写体を生かす構図を考える
撮影において最大のポイントと言っても良いでしょう。それはやはり構図です。世には沢山の構図論があります。
・日の丸構図
・シンメトリー構図
・黄金分割構図
・三分割構図
・放射構図
・S字構図
果たして本当でしょうか?その構図の通りにすれば良い写真になり、それから外れれば駄作ということでしょうか?違うと私は思います。そもそもこの構図論そのものが眉唾のような気がしており、良い写真に対して後付けで構図パターンを当てはめているだけのように見えてしまうのです。
構図論通りに被写体を当てはめれば傑作になるのであれば写真は非常に簡単なのですが、現実にはそう上手くはいきません。また数多ある構図論を考えれば、いい加減に撮ったとしてもいずれかの構図パターンには当てはまるわけですから、どのような構図であったとしても構わないとも言えます。
構図で私が気をつけているのは、その被写体の造形を生かすように考えるという位のもので、それもまた所詮曖昧なものです。結局構図とはその風景や被写体をよく見て、その被写体の魅力や自分が心惹かれた部分が最も伝わるようなポイントをその都度探していくしかないのだろうと思います。
被写体に適した構図を素早く見つけられるようになるとしたら、それは同じような被写体の写真を沢山見たり自身で撮影することで身につく経験則によるもので、さてどう撮ろうかと構えたときに、パターン図のようなものが頭に浮かんでいるわけではないということです。結局、その場その場で試行錯誤をしてみるということに尽きるのではないかと思います。
■ポイント10/アクセサリーを使ってクオリティをあげる
さて最後のポイントですが、風景撮影ではさまざまなアクセサリーを利用することで作品のクオリティを更に上げることが出来ます。
その1つが三脚です。三脚を使用することで低感度で撮影できたり、絞り込んでもシャッタースピードが落ちても手ブレを起こしにくい、ミラーアップ撮影によってミラーショックを軽減できるといったことが挙げられますが、三脚の利点はなにも画質面だけではありません。
三脚を使用するメリットは構図をしっかりととれるようになるという事にあります。その分一度設置すると動く事が億劫になる部分もあり、機動性が落ちる場合もあるので事前にしっかりと動き回って構図を探す必要がありますが、ここからこう撮るというのが決まれば三脚は手持ち撮影よりも正確に構図をとることができます。
水平出しや光線を待つような長い待機時間であっても三脚は文句一つ言わずにカメラを止めてくれます。またわずかな構図の調整もやりやすく、中腰や地面すれすれから撮影するような構図では、より一層威力を発揮します。
風景撮影に使用するメジャーなアクセサリーとしては反射を取り除くPLフィルターなどもあります。大気の反射を取り除いてコントラストの高い遠景を写したり、水面の反射を取り除き水底を写す、ショーウィンドウや植物の葉の表面の反射を取り除くなどさまざまな使い方が出来るフィルターです。
その他にもNDフィルターやハーフNDフィルターといったさまざまなフィルターワークがあり、これらを利用することで風景写真のクオリティはより一層上がります。
■おまけ/RAWで撮影してレタッチする
おまけとなりますが、現代の写真表現のテクニックにおいて効果が高いのがレタッチです。もちろん元々の撮影がしっかりされていなければいけませんが、レタッチを行うことでより一層クオリティの高い写真となります。
レタッチはカメラ付属のRAW現像ソフトやカメラメーカーが用意しているRAW現像ソフトでもある程度可能ですが、本格的にレタッチを行うのであれば、AdobeのフォトグラフィプランでLightroomもしくはPhotoshopを利用するのがオススメです。
プロカメラマンの多くはBrige(画像取り込みと選択)→Camera Raw(RAW現像)→Photoshop(画像レタッチ)という流れでレタッチを行いますが、これもまたフォトグラフィープランに契約していれば可能です。
より高いクオリティを目指すのであれば是非レタッチにも挑戦してみてください。
■風景、それは心の鏡
風景撮影は楽しいのでぜひ楽しみながらじっくり撮影してみてくださいね。
目を三角にして必死で撮るのも良いですが、写真だけでなく、その場の景色を楽しみながら撮影するのも良いものです。
Reported by 正隆