治らぬ企業体質。オリンパス深セン疑惑、内部告発者の弁護士が記者会見。

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オリンパス企業体質ファンの皆さんこんにちは。

オリンパスといえばかつての粉飾決算を多くの方がまだ記憶していると思いますが、オリンパスの深セン工場に関する疑惑で、内部告発者である社内弁護士である榊原拓紀氏(30)に対し、オリンパスが報復人事を行ったことで、榊原拓紀氏がオリンパス及び同社の人事部長・法務部長らに対して訴訟を起こしています。

この「深セン疑惑」に関し、榊原拓紀氏は11月21日午後1時に東京都千代田区の外国特派員協会で記者会見を行いました。

そこで今回はオリンパスの深セン工場閉鎖とも深い関わりがあるとされている、この「深セン疑惑」と、内部告発に関する一連流れをご説明したいと思います。



■深セン疑惑と社内弁護士による内部告発とは?


深セン疑惑の始まり

榊原拓紀弁護士が訴訟を起こすに至った今回の問題はどのように始まったのでしょうか?

この訴訟の最初のきっかけとなった事件は2006年に始まります。2006年、オリンパスの中国・深センの子会社は、実際の在庫と理論上の在庫が大き食い違うことを中国当局から指摘され、数百億円の罰金を命じられる可能性が発生しました。

その時オリンパスは現地の経営コンサルタントにその問題の解決を依頼して、罰金を免れました。

しかしその後、その経営コンサルタントというのが、実際には深センマフィアであり、そのルートを経由して税関関係者に賄賂を贈り、問題を処理したとの疑いが強まったのです。

つまり、中国マフィアを通じて関係者に賄賂を贈ることで、会計上の問題を闇に葬った可能性があるというわけです。

社内弁護士が法的問題を指摘

この「深セン疑惑」について、当時の深セン法務部担当弁護士であった榊原拓紀弁護士から、重大な法的問題があるという指摘が入ります。

榊原拓紀氏は海外の複数の法律事務所に見解を求めたところ、米国から今回のオリンパスの行動は、「海外腐敗行為防止法(FCPA)」に違反する可能性が高いという回答を得ます。

榊原拓紀氏は、「数百億円にのぼる多額の罰金の支払いを求められる恐れがあるため、正しく対応するべきである」という提言をオリンパスに対して行います。これは社員であれば、ましてや法務部の社内弁護士としては当然の行動でしょう。

オリンパスが行った報復人事と榊原拓紀氏の抵抗

しかしこの榊原拓紀弁護士の指摘に対し、オリンパスは驚きの対応を行います。

オリンパスは、深セン疑惑に問題ありと声をあげた、榊原拓紀氏及び深センの法務責任者A氏に対し、異動命令を出します。つまり一般に「報復人事」と呼ばれる左遷です。

このオリンパスの報復人事は、パワハラであると共に、公益通報者保護法違反(内部告発者を保護する法律)に違反している疑いが強いため、榊原拓紀氏は異動の撤回を求め、深セン疑惑についての正式な通知書を作成し、社外取締役全員に送付します。

さらに後日、榊原拓紀氏はこの問題を社内で公にするために、オリンパス幹部とのやり取りを記録したメールを関係社員約300名に転送します。

続くオリンパスの報復措置

それに対しオリンパスは、人事部長が榊原拓紀氏に対して「個室で話をしたい」と持ちかけますが、榊原拓紀氏は個室での話し合いには応じられないこと、また榊原拓紀氏と共に異動を命じられた法務責任者A氏を同席させることを条件に挙げます。

その結果、オリンパス本社15階のオープンスペースにて、

  • 人事部長
  • 法務部長
  • 榊原拓紀弁護士
  • 深セン法務責任者A氏

以上の4人で話し合いが行われることになります。

一見するとオープンスペースでの2対2の話し合いであるように見えますが、実際にはオリンパス本社15階は、人事部と法務部があり、人事部長と法務部長にとってのホームといえます。

そこで人事部長らは、榊原拓紀氏が社員にまでメールを送ったことを咎め、「秘匿性の高い情報の漏洩ではないか?」と詰め寄ります。

しかし、榊原拓紀氏はこれは重要なリスクに関して社内での情報共有を行っただけであり、情報漏洩には当たらないという反論。

それに対して、法務部長はあろうことかメールサーバーへのアクセスを禁止する警告書を突きつけます。

オリンパスのシステムでは、メールサーバーへのアクセスを禁じられれば、社内メールの利用だけでなく、

  • 出退勤の管理
  • 出張費の精算
  • 全社向けの掲示板の閲覧

などもできなくなってしまうとのことで、これは事実上社員としての資格を剥奪するに等しい措置です。

そのため、榊原拓紀氏はその場の多くの社員に対して聞こえるように、「メールを停止するんですよ、この人!」と大声を上げてアピールします。

その後榊原拓紀氏は、法務部長とは会話をせず、証拠が残るよう全てのやり取りを書面で行っているとのこと。

2018年訴訟を起こした榊原拓紀氏の今

2018年の年明け早々、榊原拓紀氏は、オリンパスと法務部長と人事部長、及びバックオフィス部門の担当者を相手取って、パワハラと公益通報者保護法違反の2点で東京地裁に訴えを起こしました。

バックオフィス部門の担当者を含めた明確には理由はわかりませんが、おそらくはメールサーバーへのアクセス禁止措置に関するものだと考えられます。

これに対してオリンパスは2018年4月11日、榊原氏に自宅謹慎の懲戒処分を下し、裁判は今も東京地裁で係争中です。

オリンパスがはこの問題に対し、「係争中のため回答は控える」としており、その言い分を伺い知ることはできません。

榊原拓紀氏によると、オリンパス社員の中にも榊原拓紀氏の戦いを応援してくれる人たちがおり、メールで励ましをくれる人もいれば、たまたま乗り合わせたエレベーターで声をかけてくれる人、人事部長に掛け合ってくれた人もいたそうです。

オリンパスは深センから完全撤退することで問題を闇に葬ろうとしているのか?

この榊原拓紀氏のインタビューを掲載している週刊ポストの記者の元に、A4用紙4枚の内部資料が届いたとのことで、作成日は昨年12月22日、榊原拓紀氏がメール停止通告された日の2日後となっています。

この資料の真贋は不明ですが、榊原拓紀氏も初めて見るというこの資料の表題は「取締役会番外編」と記されており、「マル秘」の印が押してあるとのこと。

その内容はオリンパスが中国・深センから電撃的な完全撤退を目論んでいるという内容であり、中国人従業員の反発を招かないよう、彼らの目をごまかすための「表計画」と、外部には明かさずに水面下で遂行する「裏計画」の2種類が進んでいることを取締役会で説明するものとなっています。

オリンパスは現在深セン問題に関わる社員に対し、秘密保持契約書まで書かせ内部告発を封じているとのことで、もしこの資料が本物であるとすれば、オリンパスは社員からも企業としての信頼を失いつつあることを示していると言えると週刊ポストは伝えています。

治らないオリンパスの企業体質

果たして深センの問題対応は、オリンパスが正当性があると確固たる自信を持って行ったものなのか、それとも粉飾決算事件のときと同じ不正であったのでしょうか?

榊原拓紀氏によると、問題の発端となった「在庫の理論値と実在庫のズレ」に関しては、単なるミスである可能性が高いとのこと。

しかしオリンパスに業務上の過ちを受け入れる胆力がなく、嘘に嘘を重ねることによって問題が大きくなってしまったのだろうとのこと。

榊原拓紀氏の行動は、社内に一斉メールを送ったことや、早い段階で海外の複数の法律事務所に見解を求めたことなど、一部では確かに性急過ぎたと思いますし、リスク回避のための情報共有というには対象が曖昧であるように思います。

しかし当然ながら、真の問題は内部告発者の手順などではなく、(事実であれば)オリンパスが深センマフィアを通じて当局担当者に賄賂を贈り、会計上のミスのもみ消し行ったことであり、またあろうことか内部告発者に対して報復人事を行ったことでしょう。

もしこれが事実であるならば、オリンパスは複数の法律に違反している可能性があり、また粉飾決算事件の後も社外取締役は機能しておらず、オリンパスには自浄能力が無いと見られても仕方がないのかもしれません。

 

参考:週刊ポスト 2018年11月2日号
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Reported by 山﨑将方