前回はホントに分かるライティング[2]機材の種類と特徴を解説しましたが、今回はそれらのライティング機材に合わせて使うさまざまなアクセサリーについて解説していきたいと思います。
まず今回ご紹介するライティングアクセサリーのメニューはこちら!
・レフ板
・アンブレラ
・ソフトボックス
・グリッド
・リフレクター
・バーンドア
・カットレフスクリーン/ディフューズパネル
・トレペ/アートレ(ユポ)/乳白アクリル
・カポック
・バックグラウンドボックス
ライティングアクセサリーはあまりに多岐にわたる為、全てをご紹介するのは難しいですが、代表的なタイプの特徴を解説出来ればと思います。
さあ、違いが分かりそうで分からないアクセサリーの実態はいかに!?
■レフ板
レフ板は皆さんご存知だと思います。レフ板には色や形や大きさがさまざまあり、
・色→白、銀、金が代表的ですが、それらの中間色もあります。
・形→丸、三角、四角が代表的ですが、それ以外の物もあります。
・大きさ→丸レフは直径30~120cm程度、角レフでは長辺2mx短辺1.5m近い物もあります。
銀レフは光を硬くするために、色付きの物は肌の色を調整したり環境光と合わせる為に用いるのが一般的です。
長所
安い、軽い、という携帯性がまず大きなメリットです。しかし最も大きな特徴は人工光源が要らないという事です。
多くのスタジオアクセサリーはライティング機材ありきです。ストロボやバンクライトのような人工光源に対して効果を与えるものとなっているため、アクセサリー単体では意味を成しません。
勿論レフ板もライティング機材と組み合わせて使うことも多々ありますし、真っ暗闇では使い物になりませんが、自然光でも使えるアクセサリーとして外ロケなどでも重宝します。
効果としては光を跳ね返してシャドー部を持ち上げる(明るくする)事で柔らかく光を回す為に使うのが一番多い使い方ですが、銀レフなどでは敢えて硬い光を作ることも可能です。
ライティング機材と組み合わせた場合には、一灯の光を反射させて簡易的なフィルライト代わりにすることや、キャッチライトを作り出すことも出来ます。
短所
立てかける事も可能ですが、その場合角度調整が難しく、それほどコシのある素材でもないため、基本的にはアシスタントに持ってもらう事になります。つまり二人体制が必要で、その他のアクセサリーと違って1人では使いづらいことが欠点です。
また反射させる為のアクセサリーですので、外ロケの場合天候によっては効果が見込めません。
■アンブレラ
クリップオンストロボ、モノブロック、フラッシュヘッドなど様々なライティング機材に取り付けられ、傘の種類によって柔らかくしたり硬くしたりと自在な使い方が出来ます。
スタジオ撮影や出張撮影、外ロケなどでも使われる定番アイテムです。
サイズは60cm程度の物から、2m程度の物まで様々です。人物の全身撮影で柔らかく光を回したい場合には150cm以上の物がオススメです。
アンブレラには、白、銀、透過などの種類があり、
白→反射させて柔らかい光を当てます。
銀→反射させて硬い光を当てます。
透過→半透明の傘に当てた光を透過させて被写体に向かって発光させます
といった種類があり、いずれもストロボ単体の直射と比べて拡散効果がありますが、
(硬い光)銀傘→白傘→透過傘(柔らかい光)
となります。
深さも種類があり、ソフトボックも同様ですが深いタイプの方が光源からデフューズされる面までの距離が遠くなるためより柔らかい光になります。
長所
発光面の大きさの割にコンパクトに収まる為、運搬性に優れています。大型のアンブレラでも収納時はさほど大きくなりません。
また、設置の手間が容易で、ソフトボックスのような組み立て作業が必要ないので、雨傘を広げるのと同じ要領であっという間に設置できることも大きな魅力です。それは逆に撤収時の片付けも早いということにつながります。
スタジオ備え付けの機材としても使えますが、出張撮影や外ロケでディフューズさせたい場合には最高のラィティングアクセサリーとなるでしょう。
クリップオンストロボでも使えますから、クリップオン+アンブレラで出張撮影や外ロケの強力な味方となってくれることでしょう。
短所
ディフューズ効果がソフトボックス程強くない為、そのまま使うと意外に硬い光になってしまう場合があります。
また円形に拡散する為、単体ではラィティングの当たる範囲に自由度があまりありません。向きを変えることで一方向の光を制限する方法もありますが、その場合は制限した方向の逆方向に余分に光が回ってしまったり、パネルでカットする方法ではパネルを携帯するため急に機動性が落ちてしまいます。
■ソフトボックス
ソフトボックスはスタジオラィテングのメイン照明となることが多く、スタジオ撮影を多くこなす方には必須のアイテムとなります。小型の物から大型の物、正方形、長方形、オクタ(8角形)など形も様々です。
長所
一口にソフトボックスと言ってもさまざまな大きさと形があり、それぞれに被写体の大きさや光の当て方に変化をつけられるので、同じライティング機材で多様な光を作り出すことが出来るのが魅力です。
ソフトボックスの代表的なアクセサリーとしては、ソフトグリッド(光に指向性を与えて硬い光を作り立体感を出す)や、ストリップマスク(スリット状に光を制限しハイライト部分を作る)ものなどがあります。
物撮りから人物ライティング、自動車のような大きな被写体まで対応でき、特に柔らかい光を回したいという場合には最強のアクセサリーとなるでしょう。
短所
一つには組み立ての煩わしさがあります。ライティング機材本体にソフトボックスを取り付けるためのリングアダプターの取り付けと、ソフトボックス本体の組み立てと取り付けが必要です。
最近のものは取り付けが大分容易になりましたが、以前は腕力が無いと付けられないような物も多く、慣れればある程度素早く設置することは可能ですが、設置の容易さや速さではアンブレラには到底敵いません。
そのため外ロケや出張撮影では可搬性や設置性の問題で使いづらく、スタジオ撮影など据え置きでの使用がメインとなります。
■グリッド
光を柔らかくするのではなく硬くするためのアクセサリーです。グリッド状に穴が空いており、光が直進するために光が回り込みにくくなり硬い光になります。
言葉で説明するのは難しいのですが、集光性を高めるアクセサリーとしてスヌートと呼ばれるものがあるのですが、スヌートよりも光が当たっている周辺部が柔らかく自然な集光効果があります。
集光効果だけではなく、光を硬くするためソフトボックスで一旦拡散し、ソフトグリッド(ソフトボックスに装着するグリッド)などで硬質の光にすることで、ある程度の範囲に光を広げながら硬い光を作ることが出来ます。そうすることで被写体の立体感を出す効果もあります。
人物や料理撮影で立体感を出したり陰影を付けるために使われることが多いアクセサリーです。
長所
グリッドそのものはリフレクターに装着する場合は薄い金属の格子、ソフトボックスに装着する場合は布状です。そのため収納性は悪くありません。
立体感を出したりスタイリッシュなライティングにも出来るため、柔らかいライティングの次に挑戦するならグリッドでしょう。
短所
インパクトのあるライティングが出来るためプロっぽさは出るのですが印象が強いがゆえにこれ一辺倒というわけにはいきません。
ライティングのアクセントして使われることが多く、アンブレラやソフトボックスのようなライティングアクセサリーにプラスして使う方が良いでしょう。
■リフレクター
リフレクターはモノブロックストロボやフラッシュヘッドに取り付けることで様々な効果を発揮します。
リフレクターには種類があり、
・リフレクター→拡散しようとする光源の光を無駄なく前方に照射するタイプ。
・ソフトリフレクター→内部のディフューズパネルによって反射させ二度の反射によって前方に柔らかい光を照射するタイプ。別名ビューティーデッシュもしくはオパライトと呼ばれます。
・グリッドリフレクター→グリッドを取り付けるためのアダプタータイプ。
・ディスクリフレクター→光の広がり方や光の性質を変えることなく、迷光を軽減するように設計され光の性質を変えずにアンブレラなどから溢れる光を抑えるために使うタイプ。
などがあります。
長所
光に様々な変化を与えたり光を効率的に使うという意味では非常に効果的なアクセサリーです。
また頑丈で破損したり劣化したりし難い点もハードな使用が想定されるスタジオ業務などでは心強いことでしょう。
短所
基本的に金属の製品ですし嵩張るため出張撮影やロケでは可搬性が良いとは言えません。
また単体で柔らかい光を出すことは難しく、アクセントとして使用される場合や、他のアクセサリーを補助する役割で使用されます。
■バーンドア
バーン!そう、バーンドアです。
見ての通り板状のドアが付いています。なんのために使うかというと、光が右側照らしたい、しかし左側には出て欲しく無い。もしくは上には出て欲しい、しかし下側には光が溢れて欲しく無い。といったような、光の照射方向を制限したい場合に使用します。
ライティング機材本体の向きを変えたらダメなの?と思われるかも知れません。
ライティング機材本体の向きを変えても円形に光は拡散しているため、完全に一定方向の光を制限するほど向きを変えてしまうと被写体に当たって欲しい光までそっぽを向いてしまって必要な光が得られません。
欲しい光をきちんと当たるようにして、その後バーンドアで当たって欲しく無い部分だけカットする方が楽でキッチリとした光の指向性を得られます。
長所
上下左右自在に光をカットするという意味ではもっとも手軽なアクセサリーと言えるでしょう。
カットレフスクリーンやカポックなどで遮断する方法もありますが、スペースが必要で風にも弱いためスタジオ用になります。
バーンドアは手軽に特定方向の光を出したり遮断でき、畳めるため収納性にも優れます。
短所
モノブロックストロボやフラッシュヘッドに取り付けて使うため、ディフューズされた光をコントロールするわけではありません。ソフトボックスが付かなくなるため硬い光で使うことが前提になります。
バーンドアから出た光をディフューズすることも可能ではありますが、ディフューズパネルなどを使用することになるため、それであればソフトボックスで柔らかな光を作ってからカットレフスクリーンで照射範囲をコントロールした方が良いでしょう。
■カットレフスクリーン/ディフューズパネル
カットレフスクリーンとディフューズパネルは、
・カットレフスクリーン→光を遮断する
・ディフューズパネル→光を透過させ拡散させる
ために使用します。
カットレフスクリーンは光の当たり方を制限するため、またはハレ切り(有害光がレンズに当たることを防ぐ)用途などにも使います。
ディフューズパネルはライティング機材から照射された光をディフューズ(拡散)させるために使用します。
長所
・ディフューズパネル
ソフトボックスでも同じような効果が得られますが、物撮りや料理など、動きの少ない被写体の場合、定点で撮影する事が多くなりますのでソフトボックスよりもディフューズパネルの方が設置が容易です。
・カットレフスクリーン
光を作った後不要な光をカット出来るため、最初から光の当たり方に制限をかけるよりも拡散した光を使う事が出来ます。
被写体に柔らかい光を当てたい、被写体以外の背景に光が漏れて欲しくない場合などに使用します。
また、代表的な使い方の一つにハレ切り用途があります。ライティングを組んだのち、ライティング機材からくる撮影外の有害光がレンズに当たるとハレーションやフレア、ゴーストなどが発生します。それを防ぐためにも使用されます。
短所
・ディフューズパネル
可搬性が悪く、折りたためるタイプもありますが人物撮影などに使う大きなタイプの場合はソフトボックスの方が携帯性に優れます。
スタジオ撮影以外では、出張撮影などで小物や料理(一品ずつ)の撮影などでは活躍するでしょう。
・カットレフスクリーン
スタジオ機材としてはさまざまな使い方が出来るため重宝しますが、こちらもディフューズパネルと同じく携帯性が悪いため出張撮影などには向きません。
またこれ自体は光源やレフ版として使えないためライティング機材やその他アクセサリーにプラスして使用するためその分機材が増える要素になりますが、スタジオ据え置きの機材としては重宝しますのでオススメです。
ディフューズパネルやカットレフスクリーンは倒れやすいため移動には注意を払いましょう。
■トレぺ/アートレ(ユポ)/乳白アクリル
トレペ(トレーシングペーパー)、アートレ(アートトレーシングペーパー)、乳白アクリルはいずれもディフューズを行うためのものですが、素材表面や厚さが違うため使用環境で使い分けられます。
長所
・トレペ
トレッシングペーパーは薄い半透明の紙で皆さんもよくご覧になられた事があると思います。薄く軽く切ったりすることも容易なので、トレペを貼り付けてアンブレラをソフトボックスのようにしたりという加工に適しています。
・アートレ(ユポ)
トレペよりも拡散効果が強く、ポリエチレンフィルムで紙の目がないためハイライトの映り込みに紙の目が出ません。ロール状にして運搬できシワがよりにくい事も特徴です。
・乳白アクリル
アートレよりも更に拡散効果が強く、また板であるため商品を乗せて下からライトを当てるといったライティングにも使用出来ます。
短所
・トレペ
薄いため破れやすくシワもより易い事が欠点です。また紙の目があるため、ワインボトルにハイライトを入れるといった状況で使用すると紙の目が映ってしまうことがあります。
・アートレ(ユポ)
トレペと比較して価格が高く、また硬いために細かい加工には向きません。
・乳白アクリル
硬いアクリル板であるためロールして運ぶことが出来ず、大きなものでは重くなってしまうこと、また切って加工することも難しい素材となります。
■カポック
カポックとは、スタジオ撮影などで使われることが多い板状のレフ版ですが、素材には発泡スチロール板が使われています。
大きな立てられる角レフのようなも考えて頂ければ良いでしょう。
高品質のものは難燃性の素材が使われており、単なる発泡スチロール板よりも撮影に適しています。立てる際にはカポックホルダーというものを使います。
長所
軽量で安価なため、多くのスタジオで使われています。一人でも動かしやすく交換も容易です。
短所
汚れが付着し易いこと、汚れがついた場合に拭き取りにくいため汚れたまま放置されているケースも見受けられます。
また、発泡スチロールの板なので薄いものは撓みやすく、軽いために倒れ易いことも欠点です。
■バックグラウンドボックス
バックグラウンドボックスは背景飛ばしやバック飛ばしといった撮影でよく使われるアクセサリーです。
自立しますのでホルダーやスタンド類は特に必要ありません。
長所
背景を飛ばす際に、白背景があるスタジオであればともかく、白背景が無いロケ先や限られたスペースでの、ハイライトホワイトバック撮影が可能になります。
白地の背景自体を光らせることによって、また背景が光っているので、被写体がそのすぐ前に立っていても、影が全くない、美しい撮影が可能です。
さらに被写体を照らす大型ソフトボックスとして機能させることが出来ます。
短所
デカい、折り畳みにくい、組み立てにコツがいるなど、取り回しは角レフよりも大変になります。
■ライティングはあなたの写真を大きく変える
さて、三回に渡ってお送りしてまいりましたライティングの基本編ですが如何でしたでしょうか?
ライティングアクセサリーにはまだまだ沢山ありますが、今回はスタジオアクセサリーを中心に解説させて頂きました。
そのうちクリップオンストロボや手軽に購入し易いライティングアクセサリーもご紹介したいと思っています。
また、Amazing Graphでは、撮影関係のアクセサリー、撮影テクニックなど様々な情報を発信していきますので是非ご一読頂ければと思います!
ではまた!
画像:Profoto,LPL,Lastolite,COMET
Reported by 正隆