こんにちは、ひらりんです。キリッ。
今日は大切な、知らない方には衝撃的かもしれないお話。
「半押しでピントを合わせたあと、カメラを振ってフレーミングを行うと、ピントがズレる(甘くなる)ことがあります」この現象、プロカメラマンやカメラ雑誌の解説でも見逃されていることが多く、それによってたくさんの誤解が生まれています。
今回は、このコサイン誤差とは何か、どういう状況で起きやすいのか、回避する方法まで、図解入りで徹底解説!
皆さん、「コサイン誤差」に気を付けてー!!
■コサイン誤差ってなに?
AFでピント合わせをする際に、測距点を使ってピントを合わせ「AFロック」したあと、任意の構図になるようにカメラを動かすことがあります。
測距点のない場所に被写体を持っていきたいという場合、AFではこの方法しかないので自然に行っている方もいるでしょう。この方法はカメラの本にもよく書かれているので、何の疑問もなく行っている方も多いと思います。
ですが、その方法は「コサイン誤差」の影響によって場合によってはピントのズレを起こしてしまう、注意すべきテクニックなのです…!!
実は私も、カメラを始めたばかりの頃コサイン誤差を知らず、ずっと勘違いしたまま近距離のポートレートを撮影して「まつげにピントが合わない…なんで~」「下手だからかなぁ…」とすごく落ち込んでいました。
「でも、カメラの向きを変えてるだけで、被写体までの距離は変えてないよ!!」
と主張したい向きもあるでしょう。私もそうでした。ところが、距離が変わっていてもいなくても、角度が変わるとピント面は変化してしまうのです。
なぜなら、「ピント面は撮像面と平行に発生する」からなのです。分かりやすく図で見ていきましょう。
この図では、最初にピントを合わせた位置からフォーカスロックをして、カメラの角度を変えてフレーミングを行っています。
すると、撮影距離は変わりませんが、ピント面の発生位置が変わってしまい、コサイン誤差が生まれるというわけです。
特に大口径のレンズを開放付近で使うようなポートレートでは、カメラの微ブレや被写体ブレにいくら気をつけても、コサイン誤差を考えずうっかりカメラを振ってしまうとピンが甘くなる恐れあり!ぜひ覚えておいてくださいね。
■こんなに違う!コサイン誤差ありとなし
こちらの写真をご覧ください。クリックで拡大します。
実験01(元の画像) | 実験02(コサイン誤差あり) | 実験03(コサイン誤差なし) |
Amazing Graphの名刺の一部を、マクロレンズで撮影し実験したものです。
全て三脚とレリーズを使用、ライブビューで拡大しながら撮影しています。
撮影条件:Mモード、絞りF2.8、シャッタースピード1/60、感度400。電子先幕シャッター使用。
実験01は、MFでピント合わせを行い撮影しました。
それを三脚のパンで角度だけ変えて写したものが実験02、その後MFで正しくピント合わせを行ったのが実験03です。
違いがおわかり頂けたでしょうか?
もしかしたらあなたの「ピントが甘い!」の原因は、コサイン誤差かも…!?
■こういう場合に気を付けて
お花畑でバストアップを撮りたい女の子です。
観覧車と並んで、体を少し斜めにしていますね。
人物撮影のセオリーとして、カメラに近い方の目にピントを合わせたいので、この場合は左目(向かって右の目)に合わせたいのですが…。測距点が届いていません!どうしよう?
カメラの角度を変えて、左目に近い測距点を選択し、シャッターを半押しして目にピントを合わせました。ピピッ。
そして先ほどの撮りたい構図になるよう、カメラを戻します。
すると、無事にシャッターが切れました。でも、プレビューで等倍まで拡大して確認すると…左目に合わせたはずのピントがズレています!
ちなみに、中央の測距点で合わせてカメラを戻すとよりいっそうズレてしまいます。
周辺をよく確認すると、どうやら胸の当たりにピントが来ているようです。これがコサイン誤差の影響で、ピントを合わせたい範囲より後にピント面が来てしまった「後ピン」です。
■こういう場合は大丈夫
広い海にヨットが浮かんでいます。
右にヨットを寄せた、こういう構図でシャッターが切りたいとします。
測距点のイメージはD810の51点AFですが、それでも右端までは測距点がなく、ヨットに届きません。そこで…。
カメラの角度を変えて、中央の測距点を選択し、シャッターを半押ししてピントを合わせました。ピピッ。
そして先ほどの撮りたい構図になるよう、カメラを戻します。
すると、無事にシャッターが切れました。プレビューで等倍まで拡大して確認しても、ピントは合っています。
これは、遠景であり被写体との距離が離れているため、カメラを振ってもヨットが無限遠に収まっており、コサイン誤差が問題とならない例です。
コサイン誤差が発生していない訳ではありませんが、「距離があるため無限遠に入っている」もしくは「十分に絞っている」などの理由でどっちみち被写界深度内に入る場合は、気にせずカメラを振っても構わないということです。
■コサイン誤差を回避する方法
では、そんな厄介なコサイン誤差を回避する方法はないのでしょうか?
もちろんあります。思いつく限り挙げてみました!この方法を意識して明日からジャスピン率を上げよう☆
1.フォーカスエリアの範囲内で測距点を選択し、構図を修正せずそのままシャッターを切る
メリット→確実性が高く、手ブレと被写体ブレにさえ気をつければ、ピントを外すリスクを最小限に押さえられます。
デメリット→構図に制限があり、先ほど上げた例のように、場合によっては撮りたい構図で撮ることができません。
測距点を選択するのが面倒で、ついつい被写体を中央に置く「日の丸構図」ばかりになってしまうことも。
2.主要被写体がフォーカスエリア内に入るよう、あらかじめ広めに構図を決定し、測距点を選択して撮る
さっきはこのように、観覧車と女の子をアップで撮りたかったのですが…
諦めて、少し広めに撮ります。
少しインパクトに欠けて残念ですね。でも撮影後ひと回り小さくトリミングをすれば、最初に撮りたかった画角に近づけることができます。
3.絞りを絞り込んで撮る
本当は赤いマトリョーシカにピントを合わせたいのですが、その場所には測距点がありません。
代わりに、緑のマトリョーシカに合わせてうんと絞ります。
測距点が届かない位置に被写体があっても、近い位置の測距点を選択し、絞って被写界深度を深くすることでピントを合わせます。
メリット→撮りたい構図で、比較的素早い撮影ができます。
デメリット→ボケ具合など、表現が犠牲になってしまいます。
また、絞り過ぎると回折現象が起き画質の低下を招いたり、マクロ撮影ではいくら絞り込んでも被写界深度内に入らないケースが考えられます。
4.マニュアルフォーカスで撮影する
AFを使わず、マニュアルでピント合わせを行います。よく見て確認することが大事ですが、ライブビューなら表示を拡大して、正確なピント合わせが行われているか確認しながらシャッターをきることができます。
メリット→フォーカスエリア外でもピント合わせが行えます。構図に制限がなく、自由な画角でシャッターを切ることができます。つまり撮りたいものが画面の端っこにあっても大丈夫。
デメリット→急いでいる時、決定的な瞬間を撮りたいときはMFでは間に合わないこともあります。
5.カメラを平行に動かす
ピント面は、撮像面と平行に発生しています。カメラの角度が変わらないよう、上下左右のいずれかに「平行にカメラを動かした場合」は、ピント面が変わらず、コサイン誤差は起こりません。
このように、平行に動かすことで被写体との距離が離れようとも、ピント面が同じなので、ピントのズレは起こらないのです。
極端な話、ピント面と平行に1km先にカメラを移動しようが、ピント面の位置は変わらずそこにあるのです。
ですが、現実的にはカメラの角度を変えず、手持ちで正確に平行移動させるのは困難です。ピントの差が顕著に現れるようなシーンでコサイン誤差を回避する方法としては、理屈上の話と考えたほうがいいかもしれません。
■ブレない人生をあなたに
コサイン誤差にだけ気を付ければピンボケ写真にならないというわけではありません。しかし逆に言えばコサイン誤差を知らなければどんなに他の要素に注意を払っていても、僅かなピンボケを発生させてしまう危険があるのです!恐ろしい!
どうぞ、一人でも多くの人がコサイン誤差の危機から救われ、ジャスピン写真を手に入れられますように…!
Reported by ひらはらあい