さて今日は写真の基本、構図の考え方について、作例を踏まえて詳しく解説させて頂きたいと思います。
皆さんは普段被写体に向き合った時どのように撮ろうか悩んだことはありませんか?
写真撮影では美しいもの、撮りたいものを見つけた際に、それをどう表現すれば自分がその被写体を見つけた時の感動やイメージを伝えられるかは写真撮影の上で常に悩ましい部分です。
- この被写体にはどういった構図が適しているのか?
- こう表現したい場合にはどの構図を選べばいいのか?
などを知ることが出来ます。今回ご紹介するのは、以上の基本&主要な構図10パターンです。これであなたも構図マスター!
■これだけ覚えれば大丈夫、主要構図10パターン!
今回解説する10の構図パターン
- 力強に、シンプルに…「日の丸構図」
- 余白を生かす…「三分割構図」
- 美意識の極み…「シンメトリー構図」
- 奥行きを演出し視線を集める…「放射構図」
- 二つの被写体、不思議なまとまり…「二分割構図」
- 遠近感を感じさせる…「三角構図」
- 絵画のように引き立てる…「額縁構図」
- 画面を目一杯使う…「対角線構図」
- 全体でひとつの主役…「平面構図」
- 楽しさ一杯…「円構図」
■力強く、シンプルに…「日の丸構図」
日の丸構図はダメな構図?
日の丸構図は皆さん良くご存知かと思います。画面の中央に被写体を置いた構図で、特に工夫なく撮影してしまうと日の丸構図になることから、得てして否定的に言われることも多い構図です。しかし決して、「日の丸構図=ダメな構図」ということではありません。
むしろ日の丸構図は最もシンプルに被写体を見せられる構図で、無駄を省いて力強く被写体を見せたい場合には最適の構図と言えるでしょう。
日の丸構図はシンプルに
日の丸構図を魅力的に見せるには、中央部に印象的な被写体を配置し、周辺部はシンプルに処理することです。中央に配置された主題に対して、周辺部にも被写体となりうる物があると散漫な印象になってしまいます。
日の丸構図では、シンプルさとインパクトを心がけましょう。
日の丸構図のポイント
日の丸構図では中央以外の部分は余白としてボカすのが一般的ですが、この作例では火花でなるべく均一に埋めています。
日の丸構図では周辺部に抑揚があったのでは、中央の主題がボケてしまいますから、周辺部はシンプルに抑えることが求められます。
手持ち花火撮影の注意点
この作例は線香花火をマクロレンズで撮影しています。マクロレンズには火花が散る可能性を考慮し保護フィルターを取り付け、火花が風になびかないようにスタジオで室内撮影しています。
また、火災には細心の注意を払い、床に鉄板を引いた状態で、水の入ったバケツと消火器を用意して撮影に臨みました。
構図としては花火の芯が中央になるよう花火を吊り下げて位置決めし、画面全体に火花が散るように何度も撮影しています。
■余白を生かす、画面のバランスをとる…「三分割構図」
三分割構図は余白に重要な意味がある
三分割構図は代表的な構図の一つで、画面の縦横を三分割してその交点に被写体を配置します。
主題(メインとなる被写体)のみの場合、余白が重要になりますが、三分割構図は被写体と背景のバランスをどの程度の分量で画面に言えるべきか迷った際にその最適な配分を決める際に参考になります。
上下左右の1/3の位置に主題を配置することで適度な余白を持たせることが出来ます。
どちらに空間を開ければいいか分からない時は?
余白を持たせる場合のコツとして、ポートレートや動物など撮影では、被写体の視線の先に余白を持たせます。
つまり人物が右を向いていれば右側に余白を、人物が左を向いていれば左側に余白を持たせます。
また、風景撮影などでは、明るい方向にスペースを空け余白を作るのが基本的な三分割構図のセオリーと考えて頂ければと思います。
複数の被写体を取り入れる場合の考え方
上の作例ではマジックアワーの空のグラデーションを十分に表現するために、三分割構図の右下に主題となる木を配置し、先ほどの余白の考え方に従って、やや空が明るくなっている左側に空間を空けています。
また三分割構図は、主題と副題のような複数の被写体が画面に混在する撮影にも適しています。
その場合は、まず主題となる被写体をベストな交点に配置し、副題がその対角の交点にくるようにしましょう。例えば、主題を左上に配置するなら、副題は右下。主題を左下に配置するなら、副題は右上といった感じです。
写真が棒の上に乗っているようにイメージする
なぜこうするかと言うと、三分割構図は、画面全体のバランスを取ることが重要で、例えば主題を左上に配置したのに副題を左下に配置してしまうと、画面全体では左側にウェイトがかかり過ぎてしまいバランスが取れなくなってしまうからです。
三分割構図は、画面全体がやじろべえのように中央の細い棒で支えられていて、被写体を載せる事にとちらに傾いてしまうというイメージで被写体を配置すると良いでしょう。
交点のどれかに被写体を配置したらそちらに画面は傾くので、次はその対角側の交点に副題を配置することで画面全体のバランスを取るというわけです。
マジックアワーはマメに通える場所がオススメ
ちなみに上の作例のようなマジックアワーによる空のグラデーションは、天候に左右されることが多く、曇が厚すぎたり快晴では綺麗なグラデーションが出ません。
皆さんが住んでいる町の撮影可能な高台や開けている場所を把握しておき、綺麗な空になりそうな日にちょこちょこ寄ってみるのが良いでしょう。
■美意識の極み…「シンメトリー構図」
シンメトリー構図は神秘性
シンメトリー構図は左右もしくは上下対象形の構図となります。代表的なものでは風景写真での水面への写りこみや建築物などもあります。
シンメトリー構図はその美しさもさることながら、神秘的な雰囲気や静謐な印象を与えることの出来る構図でもあります。
シンメトリー構図は人間の美意識に語りかける構図ですが、わずかな画面の緊張感の緩みで台無しになってしまう構図でもあります。
丁寧な撮影と露出の均一化が成功の秘訣
画面上での被写体の配分や水平垂直をしっかり意識して撮影に挑むことポイントです。また写り込みを利用したシンメトリー構図では、被写体と写り込み部分の明るさの違いにも配慮する必要があります。
通常被写体の方が明るく写り込みはそれよりも暗くなるため、そのままでは写り込みの印象が弱まってしまいますから、場合によってはレタッチやハーフNDフィルターを使って露出差を埋める必要があります。
ガラスの写り込みを利用して水鏡のような効果を得る
この作例は印象的な建築物の天井部分を撮影したものですが、流石に天井だけでは写真としてのインパクトに欠けます。
そこで建物内を散策し、ガラスの手すりを見つけたため、そのガラスに映り込んだ像と合わせて、天井とのシンメトリー構図を実現しています。
丁寧に撮影する事が成功のポイント
先ほどお話したように、こうした建築物のシンメトリー構図では、水平垂直をしっかりと取ることがポイントになります。
また天井との露出差を埋めるようにレタッチすることで、より神秘的な雰囲気を出しています。こうした場合、レタッチでも可能ですが、ハーフNDフィルターを使用することで露出を平均化することも可能です。
■奥行きを演出し視線を集める…「放射構図」
一石二鳥の効果をもつ放射構図
放射構図は奥行きや視線を集中させるのに最適の構図です。放射構図を強調するためには、広角のレンズであればあるほどパースペクティブが強調され遠近感を表現することが可能です。
マンガの集中線のような構図が放射構図ですが、放射構図の焦点は画面上の中央でも周辺部でも構いません。
放射構図は奥行き感だけでなく、視線を一箇所に誘導することも可能です。そのため焦点に被写体を置くことで、一枚の写真にストーリーを与えます。
放射構図は平面の写真に遠近感を与える構図です。また主役となる被写体を大きく写すことで逆に飛び出してくる印象を与えるという使い方もあります。
様々なシチュエーションに対応できる放射構図
この作例は大きな桟橋の通路を撮影したものですが、放射構図を利用することで、通路の奥行き感を表現しています。焦点は左下に配置し、殺風景な左側の壁の分量を減らし、逆に大型客船が見える右側を大きくしています。
放射構図の場合、中央に焦点を持ってきても構いませんが、周辺部に焦点を持ってくることでより画面に広がりと奥行きを持たせることが可能です。
長く真っ直ぐ続く道や吊り橋、またビルの谷間や並木道など、放射構図は奥行きを演出するのにはうってつけの構図です。
また別のパターンとしては列車のような長い車両では斜め前から撮影することで、列車の飛び出し感や車両の長さを奥行きとして表現することも可能です。
■二つの被写体、不思議なまとまり…「二分割構図」
二分割構図は画面比率のことだけではない
二分割構図は二つの被写体をどうチョイスするかがポイントの構図法となります。二分割構図というと海と空、大地と空といった印象があるかも知れません。
そういった画面面積を2つに分割する事も二分割構図と考えて間違いではありませんが、二分割構図というのは必ずしも画面比率の事ではありません。
二分割構図の本来の意味は、画面上に主題となる被写体を二つ配置する構図を意味します。
二分割構図では、画面上の被写体は主題のみ、あるいは主題と副題といった関係ではなく、2つの主題を共存させ、かつ1つの調和を感じさせることがポイントになります。
二分割構図では異なるもを掛け合わせて相乗効果を狙う
この作例は赤レンガ倉庫と花火という2つの主題を1つの画面に共存させています。二分割構図のポイントとしては、二つの主題は出来れば形や印象が異なるものの方が写真が面白くなるということです。
例えば画面下半分には人工的な道路、上半分には一面の海が広がっているなど、人工物と自然物、また曲線の造形と直線の造形など、対照的な印象を持つ2つの被写体を画面内に入れることがポイントです。
この作例では直線的で単色の赤レンガ倉庫と、円形でカラフルな花火という異なる印象を持つ2つの主題を二分割構図で写すことで、1枚の写真に仕上げています。
二分割構図は、一見印象の違う2つの被写体が不思議な調和を生む面白い構図法と言えるでしょう。
■遠近感を感じさせる…「三角構図」
日常に隠れている三角構図
三角構図は一風変わった形であるためあまり意識的に使うことは少ないでしょう。しかし三角構図は生活の中の様々なシチュエーションの中に存在します。
長く続く道、建築物など、気づかずに構図をなかに三角形を取り込む混んでいることも多いのですが、意図的に三角構図を使うことで画面にメリハリをつけることが出来るのが三角構図の魅力です。
三角構図がもっとも使われるシチュエーションは、長い被写体です。構造ビルや道路など、長い構造物にパースペクティブ(遠近感)を付けることで高層ビルの高さや道の長さが強調されます。
意外な使い方がある三角構図
しかし実は三角構図はそれだけはありません。
三角構図は画面を三角形に分割し、マンガのコマ割りのように画面にリズムを与えながら複数の被写体やシチュエーションを混在させたり、複数の被写体を三角形に配置することで画面に調和を与える際にも活躍します。
使い方次第で様々な表現が可能な三角構図
この作例では高層ビルを下から広角レンズで撮影することでパースペクティブ(遠近感)を強調し、高層ビルの高さを表現しています。
また三角構図は複数の大きな被写体を組み合わせるのにも適した構図です。
一つの大きな三角形を配置すると、四角い画面上には更に二つの三角形が逆向きに発生するため、複数の三角形で画面を構成することも可能です。これを利用してマンガのコマ割りのように画面構成を作り上げるわけです。
■絵画のように引き立てる…「額縁構図」
曲線でも出来る額縁構図
額縁構図は主題となる被写体の周辺を額縁のように別の被写体で囲む構図です。
そうすることで主題となる被写体を強調し、より印象的に見せることが出来るようになるわけです。また額縁構図の周辺の被写体は必ずしも直線である必要はありません。
例えば人物の周りを花が取り囲んでいるようなポートレートなども額縁構図となります。いずれにせよ額縁構図は副題となる被写体でを使って額縁状に主題を取り囲むことにより、主題を引き立たせ、時には相乗効果を持たせます。
額縁構図を発見してみよう
上の作例では典型的な額縁構図を再現しています。主題となる松ぼっくりを中央に配置し、その周辺を灯篭が取り囲んでいます。額縁構図によって、主題である松ぼっくりの存在感を増すとともに、背景の緑を切り取られた窓辺のように見せています。
単体ではインパクトの弱い被写体も、額縁構図で撮影する事で主題をより印象的に写す事が出来る構図です。日常の中に隠れた景色の中から額縁構図として撮影出来るものを見つけてみましょう。
■画面を目一杯使う…「対角線構図」
対角線構図は画面を大きく使うのがポイント
対角線構図は四角い画面を斜めに使う構図で、画面全体を大きく使った表現に適しています。対角線構図は縦位置や横位置で入りきらない大きな構造物を画面いっぱいに収めたい場合や、被写体のダイナミックな動感表現に最適な構図です。
向かう場所によって印象が変わる対角線構図
対角線構図では、左上・左下・右上・右下の4ヵ所のいずれかから、その対角に向かう流れを作るわけですが、対角線構図のポイントとして、
- 画面下の角(左下・右下)から画面上の角(左上・右上)に向かって流れる対角線構図は、見ている者に被写体が離れていく印象を与える
- 対画面上の角(左上・右上)から画面下の角(左下・右下)に向かって被写体が流れる対角線構図は、見ている者にとって被写体が自分に向かってくる印象を与える
という違いがあります。そこを意識して画面を構成する事で、被写体をより印象的に見せる事が出来ます。
パースペクティブを強調させることで迫力を出す
この作例はクジラのモニュメントをHDR撮影し、右上から左下に向かってクジラがこちらに迫ってくるようにフレーミングしています。
広角レンズで寄ってパースペクティブ(遠近感)を強調し、上方から下方に向かう対角線構図にする事で、見る者に向かってクジラが迫ってくる印象を与えています。
また対角線構図はこうした動感表現だけでなく、視線を誘導するのにも有効な構図です。
■全体でひとつの主役…「平面構図」
ポイントは被写体の統一
もっともシンプルな画面構成法に平面構図があります。これは画面全体を均一感のある被写体で埋め尽くしてしまう構図で、他の構図法のように被写体の配置位置に気を使う必要はありません。
平面構図は必ずしも同じ被写体で埋め尽くす必要はありませんが、写っている物には全体としてある程度の統一感がある方が適しています。
画面全体で色や形など何かしらの共通項をもって統一させるのが平面構図のポイントとなります。
工夫を見せずに工夫する
この作例では、透過光で輝く新緑の葉の輝きを表現するために平面構図で撮影しています。平面構図で統一感が重要ですが、色や明るさの濃淡はある程度ある方が画面に表情を与える事が出来ます。
平面構図は自然風景などの、微妙な色やグラデーション、明るさの濃淡など、シンプルな美しさを表現するのに適した構図法です。
■楽しさ一杯…「円構図」
はみ出させることが円構図のポイント
円構図はその名の通り円形を利用した構図で、画面に面白さを出す事に適した構図です。
円構図のポイントは円をはみ出させる事で、円の全てを入れていますとこじんまりとまとまり過ぎてしまい面白みが減ってしまいます。円をはみ出させる事で画面外の部分を想像させ、構図にダイナミズムを与える事が出来るようになります。
円構図は必ずしも円形の被写体である必要はありません。四角い被写体であっても配置が円形であれば円構図として成り立つことを覚えておくと良いでしょう。
円構図は画面を楽しくする
上の作例では大きな観覧車を表現するために、画面から大きくはみ出させています。円構図では建築物でも料理撮影における皿も、円全体を入れるより、画面からはみ出した方が上手くいく場合が多いと覚えておくと良いでしょう。
直線はクールな印象を与え、曲線は柔らかいイメージを与えます。円構図は、画面内に効果的に取り入れる事で、写真全体の雰囲気に影響を与え、より楽しいイメージを与えます。
■構図は感性を裏付けるもの
ここまで代表的なさまざまな構図を解説させて頂きましたが、全ての構図法は絶対ではありません。
構図法通りに撮影すれば必ず良い写真になる訳ではありませんし、逆に構図論から外れれば必ずダメということでもありません。構図論に撮らされてしまったのでは本末転倒です。
ではどういった時に構図法が有効なのかと言うと、
- 何となくこう撮れば良いのかなと感じた時に感性の裏付けとなる
- どう撮れば良いのか分からない時のヒントになる
といったように、構図論はあくまで撮影のアドバイザーであり、撮影の主役はあなた自身の感性です。構図法を上手く活用してあなたのステップアップに役立てましょう!
Reported by 正隆