写真技能士検定の受験を考えられている皆さんこんにちは。
当サイトではフォトマスター検定の予想問題を多数掲載しており、フォトマスター検定の勉強法など様々な情報を掲載していますが、写真業界にはフォトマスター検定以外にも、営業写真館で働く人たちに向けた、「写真技能士検定」というものがあります。
目次
- 写真技能士ってなに?
- そもそも技能士とは?
- 写真技能士とは?
- 技能検定の受験資格
- 写真技能士の技能検定試験内容
- 技能検定試験内容
- 写真技能士1級実技内容
- 写真技能士2級実技内容
- 実技試験の難易度
- 実技試験の難易度は?
- 実技試験の特徴
- レタッチ&画像修復作業の注意点、PCと画像編集ソフトについて
- 実技試験に必要な機材
- 撮影機材、何があって何を持って行くべきか?
- レンズは標準ズームレンズがオススメ
- 筆記試験の難易度
- 筆記試験の傾向と対策
- 難易度は?
- 技能検定の筆記試験は過去問題そのままなので実は楽勝
- 写真技能士は受ける意味はある?メリットは?
- 写真技能士を所得する意味はあるのか?
- 受験者の傾向と写真技能士検定の未来
- 写真館で働く人にとっては?
- 写真技能士検定の将来性
- 写真技能士検定の問題点
- 写真館関係者で埋め尽くされ非常に排他的な試験会場
- 写真技能士検定の将来性
今回は写真技能士検定について、なるべく詳しくご説明させて頂こうと思います。
■写真技能士ってなに?
そもそも技能士とは?
技能検定とは、中央職業能力開発協会が行っている技能認定試験で、技能の程度を検定し、これを公証する日本の国家検定制度です。
労働者の技能と地位の向上を図ることを目的に、職業能力開発促進法に基づき、1959年(昭和34年)度より実施されています。
写真技能士とは?
写真の用途も、広告写真、報道写真、肖像写真、芸術写真と様々なものがありますが、技能検定の「写真職種」は、いわゆる営業写真館での肖像写真の撮影・製作をする人を対象としています。
そのため、日本の伝統衣装である和装の撮影方法や知識、デジタルカメラによる撮影とコンピュータによる画像処理を含め、肖像写真を製作するのに必要な技能・知識を実技及び筆記テストにて判定します。
技能検定の受験資格
受験にはプロカメラマンとしての実務経験が必要で、
- 3級で実務経験があること
- 2級では実務経験2年以上
- 1級では実務経験7年以上
が必要条件となっています。
■写真技能士の技能検定試験内容
技能検定試験内容
試験内容に関してですが、実技試験はスタジオでの肖像写真撮影とレタッチ作業となります。
写真技能士1級実技内容
- 肖像写真制作:モデル(A:背広姿の男性、B:振袖姿の女性、C:羽織袴姿の男性)をそれぞれデジタルカメラで撮影し、画像の選択及び画像処理を行い、カラーポートレート写真を制作する(試験時間:2時間15分)
- 画像修復:支給される画像データの傷などを修復する(試験時間:45分)
- 筆記試験:カメラや写真、及び写真館業務に関する問題を25問(試験時間:120分)
写真技能士2級実技内容
- 肖像写真制作:モデル(A:背広姿の男性、B:洋服姿の女性)をそれぞれデジタルカメラで撮影し、画像の選択及び画像処理を行い、カラーの証明用写真及び、カラーポートレート写真を制作する(試験時間 1時間45分)
- 画像修復:支給される画像データを修復(色補正)する(試験時間 15分)
- 筆記試験:カメラや写真、及び写真館業務に関する問題を25問(試験時間:120分)
ちなみに写真技能士検定の1級に関して詳しく説明すると、
・背広七分身肖像写真撮影(男性)
・羽織袴全身肖像写真撮影(男性)
・振袖立ち全身肖像写真撮影(女性)
・振袖座り七分身肖像写真撮影(女性)
・振袖後ろ座り七分身肖像写真撮影(女性)
・肖像写真レタッチ5枚
・肖像写真修復1枚
・筆記試験
といった内容になっています。
■実技試験の難易度
実技試験の難易度は?
難易度に関しては「人による」というのが実際のところです。
それは写真技能士検定は写真館協会が主催しているため、試験内容的が「写真館業務に極端に偏っている」ことに起因します。
実技試験は写真館業務そのものなので、日頃写真館で働いている方にとっては技術的には難しいものではありません。
逆に写真館業務に携わっていない、あるいは写真館での経験が無いカメラマンでは、相当高い技術を持つカメラマンであっても合格はかなり厳しい内容となっています。
そのため営業写真館での経験がない場合、難易度は極端に高くなりますが、逆に営業写真館で成人式など和装の撮影などしているカメラマンにとっては日常業務そのままですから非常に有利と言えます。
実技試験の特徴
先に書いたように、写真技能士の実技試験、特に1級は「振袖や羽織袴を撮る」ということに特化されています。
もっとも大きな理由は、振袖など和装の着付けや扱いなどが求められるため、営業写真館の経験がほぼ必須となります。
- 和装の着付けや扱い+ポートレート撮影
この2つが出来て、かつ営業写真館の撮り方を知らないといけません。
成人式の振袖や七五三、婚礼写真撮影を主な生業としている写真館にとって、そうした着物の撮影が最も重要であるためです。
試験内容は振袖や羽織袴を着たモデルをレンブラントライティングで撮影するというもので、ライティング自体は難易度の高いものではありませんが、着物を整えたり、着物特有のポージングでの撮影となります。
綺麗に撮れていれば良いというわけではなく、厳密に決められた各ポーズを撮っていきます。
フィギアスケートのショートプログラムのようなものと考えて頂ければと思いますが、着物の形の作り方、座る位置や手足の置く位置、袖の垂らす形など、さまざまな決まりごとがあり、このあたりが畑違いのカメラマンにとって難易度を上げている要因です。
なので、ポートレート撮影が上手いかどうかは関係がありません。
私はこれが逆に写真技能士の価値を落としてしまっている要因だと思うのですが、残念ながらそれは写真館協会が主催している限り変わらないでしょう。
レタッチ&画像修復作業の注意点、PCと画像編集ソフトについて
写真技能士の実技試験には、以下の二つの作業が含まれます。
- 撮影画像をレタッチして納品
- 傷が入った画像の修復
この二つの作業での注意点ですが、使用するPCがiMac、ソフトウェアはPhotoshop(Bridge・Camera Raw・Photoshop)であるということです。
私は普段仕事でMacとWindows PCを併用し、Photoshopを使用しているため問題ありませんでしたが、今時のプロカメラマンは普段Windows PCをメインで作業をされている方も多いと思いますし、またソフトウェアもAdobe系でないものをメインに使用している方もおられるでしょう。
WindowsやCapture Oneとか使っているカメラマンはどうするんでしょうか?全く操作が分からないのではないかと思います。
しかし、PCはMacのみしか選択出来ないため、受験を考えられている方は、Mac+Photoshop(Bridge→Camera Raw→Photoshop)でのレタッチや修復作業に慣れておく必要があります。
また、Lightroomは使用出来ませんのでお気をつけ下さい。
- Bridge:画像セレクトソフト
- Camera Raw:RAW現像ソフト
- Photoshop:レタッチソフト
なのですが、私がこの組み合わせを使っていたのはスタジオ時代にたまたまそうであっただけで、今のカメラマンはCaptuer Oneを使っている人も一定数いますし、Windowsの人も多いでしょう。
しかし「MacとAdobe以外は使わせない」といったところが、写真技能検定の凝り固まった体質というか、自分たちの仕事と同じやりかた以外認めないという体質が現れてしまっていると思います。
■実技試験に必要な機材
撮影機材、何があって何を持って行くべきか?
実技試験の機材ですが、
- ジェネレーター × 1台(1200Ws)
- フラッシュヘッド × 3灯(400Wsまで)
- ハレ切り用カットレフスクリーン&ライトスタンド×1
- カポック × 1枚
- シンクロケーブル × 1本
などが会場に用意されています。カメラ・レンズ・メモリーカード・露出計は自分で用意していく必要があります。会場によってライティング機材のメーカーや出力は多少異なるそうです。
- メインライトとフィルインライトの2灯でレンブラントライティングを組む
- カポックでシャドーを持ち上る
- 背景紙にもう1灯でバックグラウンドライトを当てる
という、「いかにも営業写真館」な3灯ライティングを組みます。
その上で先に申し上げたように、規定のポージングを撮影していきます。
また愚痴っぽくなってしまいますが、正直そんな古臭いライティング今時のポートレートカメラマンがするか大いに疑問ですが、それ以外のライティングは認められませんので、他のライティングを組むと一発アウトです。どれだけ綺麗に撮れていたとしても。
レンズは標準ズームレンズがオススメ
カメラとレンズですが、シンクロケーブルが付けられれば何でも構いませんが、受験者は全員、フルサイズ機+ズームレンズを使用していました。
単焦点レンズがダメということではありませんが、試験会場は広さや背景紙がそれほど大きくないですし、レンズ交換の時間もないため、単焦点レンズで試験に挑むのはお勧めできません。
フルサイズ機である規定はありませんが、私が受験した際は受験者全員がフルサイズ機でした。
■筆記試験の難易度
筆記試験の傾向と対策
筆記試験問題に関しては実技試験ほど写真館業務に偏ってはいませんが、それでも写真館にしか関係のない問題が多数あります。
中には「着物の生地の夏生地と冬生地の名称の区別」といった、やはり一般的な写真・カメラの知識とはかなりかけ離れた内容の問題があるのも事実です。
私は写真技能士1級とフォトマスター検定EXの両方を合格していますが、問題の傾向は結構違います。
- フォトマスター検定:カメラ・レンズ・フィルム・写真文化に関するもの
- 写真技能士:着物や写真や写真館業務に関するもの
おおよそこのようにカテゴライズされています。
勉強に関しては、「写真文化」という雑誌に写真技能士検定の過去問が掲載されていますから、そちらを勉強されるのが良いでしょう。
難易度は?
写真技能士1級に関しては、合格通知に正答率などは記載されておらず、合格ラインが80%以上となっており、私自身の正答率は自己採点では94%程度だったように記憶しています。
写真技能士検定の筆記試験の難易度に関してですが、写真やカメラに関する問題の難易度はフォトマスター検定1級と同程度であると思います。
ただし、写真館特有の「着物」や「写真館で撮影した写真の著作権」の取り扱いなどの問題があり、カメラや写真とは直接関係がない問題がある分、クセがあるといった印象でした。
技能検定の筆記試験は過去問題そのままなので楽勝
写真技能士の技能検定は問題数が25問と少なく、時間も100分もあります。つまり1問につき4分かけられます。
それに対してフォトマスター検定の1級は問題数80問で時間も80分しかないため、1問につき1分というスピード感も必要になることと、出題の幅が広いため、試験時間も考慮すると難易度としてはフォトマスター検定1級の方が高いかと思います。
何よりも写真技能士の筆記試験問題は、過去問題からそのまま出題されます。
日本写真文化協会発刊の冊子「写真文化」に、技能検定の過去問題が掲載されていますから、過去問題が掲載されている号のバックナンバーを過去3年分(3冊)程度取り寄せて勉強すれば楽々と合格することが可能です。
何月号に過去問題が掲載されているかは年度によって微妙に変わるため、日本写真文化協会に問い合わせて過去問題が掲載されているバックナンバーを聞いて購入すると良いでしょう。
いずれにせよ筆記試験に関しては、フォトマスター検定1級を合格出来るような方であれば、写真技能士1級も問題なく合格することが出来るでしょう。
■写真技能士は受ける意味はある?メリットは?
写真技能士を所得する意味はあるのか?
写真技能士を取得するメリットがあるかと聞かれると、「営業写真館以外のカメラマンには全くない」と思います。
その理由としては、
- 営業写真館の関係者にしかその存在を知られていないこと
- 技術や知識を証明するには内容が写真館業務に特化され過ぎていること
- 受験料金が異常に高いこと(事前講習会も含めると4-5万円程度かかります)
- そもそも写真技能士検定そのものの廃止が検討されていること
などです。
受験者の傾向と写真技能士検定の未来
私が受けた時は、写真技能士検定の受験者は最も受験者が多い東京会場でも全級合わせてわずか30名程度でした。
対してフォトマスター検定の昨年2015年度受験者が全国で5,961名であったことを考えると、写真技能士検定とフォトマスター検定ではその規模にかなりの差があることがお分かり頂けると思います。
また写真技能士の受験者数は年々減少しており、写真技能検定を取り仕切る写真館協会の理事長自ら、「このままでは廃止の可能性が高い」という話をされていました(※技能検定は受験者数の少ないものは順次廃止されていくのがルールとなっています)。
写真館で働く人にとっては?
現在写真館のカメラマンで「一生写真館で働いていきたい」または「将来写真館を開業したい」というような方であれば、思い出として取っておくのも良いでしょう。
自身の写真館に写真技能士の証明書を発行して飾ってもいいかもしれません(お客さんは誰も知らないと思いますが)。
また、営業写真館業界限定ではありますが、ある程度の箔は付くと思いますから、
- 違う写真館に移りたいという場合に有利に働く
- 写真館によっては技能士を所得していると給料に若干の手当(私が聞いた話では月5千円程度)が付く所もある
というメリットは一応あります。
■写真技能士検定の将来性
写真技能士検定の問題点
基本的に私はこの写真技能士の資格に対して、あまりポジティブな印象を持っていないことはここまで読んで頂いた方なら感じられていると思います。
写真技能士検定の問題点としては、
- 試験内容が営業写真館に偏り過ぎている
- 受験費用がこの手の資格試験としては非常に高い
- 知名度が極端に低い
- 審査員も営業写真館関係者であり排他的な雰囲気が凄い
といったことが挙げられます。
一口に「プロカメラマン」とか「フォトグラファー」と言っても、ポートレート・風景・建築・スクール・ブライダル・報道・スポーツ・鉄道・航空・ファッション・ビューティー・コマーシャルなど、撮影ジャンルは様々です。
しかし現状写真技能士の試験内容は、写真館協会が取り仕切っていることもあり、写真館での肖像写真撮影にのみに特化されています。
この辺りは国家検定であるはずの写真技能士を写真館協会が事実上私物化しているわけで、この事が写真技能士検定の衰退に繋がっている最大の原因であることは間違いありません。
営業写真館以外の多くのカメラマン(ポートレートカメラマン含む)にとって、写真技能士の試験内容は実務と大幅にかけ離れているため、「知識や技術の証明にならない上、資格検定としての知名度が極端に低いという問題があります。
写真館関係者で埋め尽くされ非常に排他的な試験会場
私が受験した際は、私以外の受験者の全員が営業写真館の従業員でした。
そして、
- 受験時に所属写真館名を書かされ
- 審査員も営業写真館関係者ばかり
- 審査員と受験者がお互い顔見知り
という、写真館以外の人間に対して非常に排他的な雰囲気であったことも事実です。私は完全に無視されていました(笑)。向こうからすれば「あれどこの人?」という感じだったのでしょう。
試験官と受験者が知り合いばかりでプライベートの雑談をしているような会場です。そんな国家検定おかしいでしょう?
これでは「写真技能士検定」ではなく「営業写真館検定」と言われても仕方がないでしょう。
また、プロとしての活動年数を受験資格に入れるのは意味がないので、その点も改められるべきとも思います。
活動年数とカメラマンとしての実力が比例するわけではないというのは、プロカメラマンのような技術者こそ心に留めておくべきことで、技術や知識は情熱の総量に比例する、年齢や年数とは関係がないというのが私の考えです。
写真技能士検定の将来性
こうした様々な問題が改善され、より多くのジャンルのカメラマンにとって公平性が担保されれば、受験者数も増え、価値ある資格となっていくのではないかと期待しています。
ただ正直なところ、フォトマスター検定の登場によって写真技能士検定はその役割をすでに終えているのかも知れません。
Reported by 正隆