ひらりんです。
最近のデジタル一眼レフ・ミラーレス・高級コンパクトカメラでは、「JPEG」と「RAW」と呼ばれるファイル形式を保存することが可能です。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、今回は「RAW現像の全て」と題してじっくりご紹介していきたいと思います。
■RAWとは何か?
デジタルカメラは「RAW」と呼ばれる形式で画像を記録します。RAWは英語で生の、手を加えていないという意味です。
RAW記録は、イメージセンサーが捉えた光の生の情報(RAWデータ)をそのまま記録します。プレビュー用のJPEGが一緒に記録されているので画像を確認することはできますが、必要に応じてパラメーターを調整して現像と呼ばれる「書き出し」をしない限り、基本的にはただの情報です。現像することでJPEG画像などを生成し、さまざまな環境で鑑賞できる写真データとなります。
対してJPEG記録は、その生の情報(RAWデータ)を画像処理エンジンが露出・ホワイトバランス・コントラストなどの調整をして、JPEGファイルを生成します。カメラ内であらかじめ現像を行うわけです。
「RAWは高画質」と表現されることも多いですが、やや語弊があり、単純にJPEGと比べて撮影結果の画質が優れているわけではありません。
■JPEGとRAWの違い
JPEGは写真データにおいて一般的な形式で、コンパクトカメラから一眼レフまで、通常のデジタルカメラはこちらの形式に対応しています。
専用ソフトがなくても多くのデバイスで再生可能な形式であり、スマートフォンにも手軽に送信して表示することができます。
その点、RAW形式を表示するには、専用のビューソフトまたは画像編集ソフトが必要です。同じRAWでもカメラメーカーごとに異なる拡張子であるため、AdobeのBridgeなどの汎用のビューソフトなら一般的なメーカーのRAW形式を扱えるものの、カメラメーカー純正の現像ソフトは基本的にそのメーカーのRAW形式しか扱えないので注意する必要があります。
カメラ内で保存形式を「JPEG」にした場合、デジタルカメラ内でRAW形式のデータをJPEG形式に現像処理して保存されますが、「RAW」を選んだ時との違いは、RAWは保存されずJPEGのみ保存されるということです。
カメラ任せのRAW現像にせず後から自分でRAW現像したいという場合は、あらかじめ「RAW」を選んで記録するか、「JPEG」と「RAW」の同時記録を選ぶ必要があります。
あとでじっくりRAW現像もしたいけど、すぐに友達にも送信したいという場合などに、手軽な「JPEG」と生データである「RAW」の同時記録が重宝するというわけです。
保存形式を「RAW」だけにした場合でも、液晶モニターでのプレビュー表示に使われるJPEGは記録されています。多くのビューソフトではこのRAW形式のファイルに入っているJPEGを使い、サムネイル画像を表示しています。
■RAW形式の特長
カメラ内のアルゴリズムによって現像処理するJPEGとは違い、RAWは現像するソフトウェアによって、またどういう調整をするかによって、現像結果が異なります。
JPEGでも調整(レタッチ)はできるものの、RAWは全ての情報が含まれた生データである分、レタッチによって調整できる幅が広くなります。
RAWは調整幅が広い
例えば一見白飛びしたハイライト、黒つぶれしたシャドーも情報が残ってさえいれば適正な露出に調整できるのはJPEGでもRAWでも同じなのですが、その調整幅がより大きいのがRAWということです。
ホワイトバランスが適正でなく色かぶりがひどい場合も、RAWで記録しておけば適正な色温度に調整できる可能性は高くなります。
また、JPEGで調整した結果を保存し、再度調整を重ねると、その度にどんどん画質は劣化してしまいます。その点、RAWデータは何度調整を重ねようとも、レタッチや現像を繰り返すことによって画質が劣化することはありません。どのような環境でも最高の品質で作品を残したいという場合、その可能性により近づけるのがRAWでの記録と言えます。
しかし、適正に調整しようという意図や知識を持って現像しない限り、画像としての美しさがカメラ内のJPEG記録に劣ってしまう可能性は十分に考えられます。
JPEG記録はカメラメーカーの絵作り、ピクチャースタイル(ピクチャーコントロール)などの設定が反映された結果である判明、RAWは画像エンジンの処理が施されていない情報だからです。
もし具体的な調整イメージがないようなら、JPEG記録でカメラ内のアルゴリズムに現像を任せたほうが無難で、十分美しい結果が得られるでしょう。
RAWの容量について
JPEGは8bitで記録しているのに対し、多くのRAWは14bitで記録している関係上、RAW形式のデータの容量はJPEGの約3~4倍程度になりますので、容量の小さい記録媒体を圧迫したり、低スペックなパソコンでは処理が重くなる可能性があります。
RAWではバッファメモリーを圧迫してしまい、カメラの機種やメモリーカードの性能によっては、JPEG記録と比べ連射枚数が少なくなることもあります。
そのため撮影に応じて、普段の撮影はJPEG、作品として仕上げたい写真はRAWで記録するというように使い分けることがお勧めです。RAWで記録する場合はメモリーカードはできる限り大容量で高速なものを選びましょう。
■RAWとJPEGのメリット・デメリット
RAWのメリット
- 白飛び、黒潰れ、ホワイトバランスの調整に強い
- ノイズ除去の結果に優れている、増感処理した際にノイズが出にくい
- 何度調整を繰り返しても、画質が劣化しない
JPEGのメリット
- どのようなデバイス・環境でも閲覧しやすい
- あらかじめカメラ内で補正した、バランスの良い画像を得られる
- JPEGは容量が小さい
RAWのデメリット
- 基本的に互換性がなく、対応ビューアが必要
- 自分で調整しながら適正な現像をしなければ、補正の面でJPEG記録に劣る画像になってしまう
- RAWデータは容量が大きい
- 連射枚数が制限されてしまう場合がある
JPEGのデメリット
- 白飛び、黒潰れ、ホワイトバランスの調整幅が狭い
- 増感処理した際にノイズが出やすい
- 画像を調整して保存したのちレタッチを繰り返すと、画質が劣化する
■RAWならホワイトバランスは関係ない?
ホワイトバランスが崩れると中間色から明るい部分への影響が大きく、白に近づくほどJPEGでは補正しずらくなります。暗すぎる部分、明るすぎる部分はJPEGにする際削られてしまうので、そういった使わない部分のデータを保有していないJPEGでは、色が完全に飽和してしまい、調整で本来の色に戻せないことがあります。
RAWでは使わない部分のデータも保有しているため、白飛びや黒潰れ、色被りがあったとしても、調整で本来の色が戻ってくる確率が高くなるのです。
例えばRAW現像する際、カメラ内のプリセットを選択するように、「昼光」「曇天」「日陰」などホワイトバランスを選んだり、色温度で指定することができ、これによってJPEGよりも広い調整幅で補正できます。
ですが、だからといって撮影時に適当でいいというわけではありません。
やはり極端な色かぶりで全く情報がなければ、元の色をホワイトバランスの調整によって取り戻すことはできないのです(真っ赤な照明など、極端な光源下で本来の色を再現するには、あらかじめフィルターで色を補正した後、さらにホワイトバランスの調整を行うと良いとされています)。
RAW現像は完璧ではなく、調整範囲が広いといえど限界がある点はJPEGと同じです。JPEGにしろRAWにしろ、撮影現場でできる工夫はきちんと行い、完成時のイメージに近づけた記録をしておくのが調整後のクオリティをより高めるポイントです。
■RAW現像のテクノロジーについて
現像ソフトによっては、独自のアルゴリズムによってRAW現像時に高品質なノイズ除去処理を実現するなど、現像処理にそれぞれの特徴があります。
また、RAW現像のテクノロジーは日々進化していますので、昔撮影したRAWデータを最新のRAW現像ソフトで現像した場合、当時と比べて高品質な現像結果が得られる場合もあります。そのようなアップデートを見越して、将来により良い現像結果を得るためにRAWで記録しておくメリットはあると言えます。
今見るとがっかりな失敗写真も、もしかすると将来に使える写真になるかもしれないのです。日進月歩な技術の進化が楽しみですね。
Reported by ひらはらあい