野鳥撮影や自然風景撮影の友と言えば双眼鏡。そこで今日は有名双眼鏡メーカーの中でも飛び切りの性能を誇るハイエンド双眼鏡のオススメモデルをご紹介したいと思います。
撮影の下見などでも良く使われる双眼鏡ですが、素晴らしい双眼鏡は裸眼以上に世界を美しく見せ、世界をより深く観察するきっかけを与えてくれることでしょう。
■高価な双眼鏡は何が違うのか?
高級双眼鏡は何が違う?
双眼鏡は手持ちタイプの双眼鏡でも数十万円クラスのものまであります。まずは数百円の双眼鏡と数十万円の双眼鏡で何が違うのか?ということですが、
- 解像感が高い
- 良像範囲が広い
- 明るい
- 歪曲が少ない
- コントラストが高い
- 持ちやすい
などさまざまな点で違いがあります。同じ倍率・同じ対物レンズ有効径(対物側レンズの内径のことで、例えば「8×42」と表示されていれば、対物レンズの有効径は42mmとなります。同じ倍率であれば、対物レンズ有効径が大きいほど集光力があり明るいレンズとなります)でも、安価な双眼鏡と高価な双眼鏡では見え味がかなり異なります。
双眼鏡によって大きく異なる見え味
- 5,000円の双眼鏡と30,000円程度の双眼鏡
- 30,000円と100,000円程度の双眼鏡
- 100,000円と200,000円以上の双眼鏡
私は多くの場合これらはそれぞれ見え味が違うと感じます。設計の古い機種と新しい機種の比較では価格と性能が比例しない場合もありますが、同世代の双眼鏡同士の比較であれば双眼鏡を見慣れていない方でも、30,000円の双眼鏡と200,000円の双眼鏡の差は感じられると思います。5,000円の双眼鏡と200,000円の双眼鏡の比較であれば、これはもう全く別の道具と思えるほどの差があります。
まず良い双眼鏡は細部まで良く見え、色にじみが少ないこともあり対象物がよりシャープに見えます。また安価な双眼鏡は霞がかかったようにコントラストが低い物が多く、良い双眼鏡ではコントラストが高くクリアな視界を実現しており、良像範囲も広い傾向にあります。
■双眼鏡の選び方
双眼鏡の選び方ですが、双眼鏡も非常に奥が深いためここでは双眼鏡の選び方の基準となるスペックの見方を簡単にご説明したいと思います。
ポロプリズムとダハプリズム
プリズムを使用する双眼鏡には主にポロプリズム双眼鏡とダハプリズム双眼鏡があります。
ポロプリズムはイタリア人のポロが発明したもので、価格を抑えつつ光学性能を上げることが出来るというメリットを持つ反面、双眼鏡本体が大きく重くなりやすいというデメリットがあります。
対してダハプリズムはアッベ・ケーニッヒ型とシュミット・ペシャン型がありシュミット・ペシャン型は双眼鏡を大変小型化することができることもあり多くの双眼鏡に採用されています。
しかし全反射しない面を持つため、銀コートや近年では誘電体コートなどのコーティング技術を向上によって透過率を上げる工夫がなされています。
現在では多くの手持ちタイプのハイエンド双眼鏡がダハプリズムを採用しています。
原理としてポロプリズム双眼鏡が見え味でダハプリズム双眼鏡に劣るわけではありませんが、携帯性や持ちやすさの点から高級双眼鏡はほぼダハプリズムとなっており、最新の設計の手持ち用高級双眼鏡を求める場合、必然的にダハプリズム双眼鏡となるというわけです。
倍率
倍率は双眼鏡で覗いた像がどれだけ大きく見えるかを表します。例えば「8×42」と書かれた双眼鏡の倍率は8倍となりますが、この8倍の双眼鏡ならば、100m離れたものが裸眼で12.5mの距離から見るのと同じ大きさで見えることになります。
つまり倍率8倍の双眼鏡というのは「対象物を見る距離を裸眼の8分の1まで縮めて見た場合と同じ大きさに見える双眼鏡」というわけです。
単純に倍率が高ければ良い双眼鏡というわけではありません。用途や見る対象によって適切な倍率は変わります。見る対象物によっては大きく見えすぎる周辺環境が見えない・全体像が見えないということが起こり見づらい双眼鏡となる場合があります。
また、双眼鏡の倍率が高いほど手ブレしやすくなるため像が揺れやすくなる、また双眼鏡が暗くなるといった問題も起こるため、像がブレるために良く見えない、暗くて良くわからないといったことにつながるケースもあります。
手持ちで使うことを想定した場合、なるべく大きく対象物を見たいといった場合でも、倍率は8〜10倍程度までがオススメです。
対物レンズ有効径
対物レンズの内径を「対物レンズ有効径」と呼びます。対物レンズ有効径が大きいほど集光力があり、他の部分の設計が同じであれば解像力や明るさが向上しますが、同時に双眼鏡が大きく重くなるため携帯時や双眼鏡をホールドする際の負担が増大します。
双眼鏡本体やスペック表に「8×42 7.0°」と表示されている場合、42mmが対物レンズの有効径となります。
射出ひとみ径
手を伸ばして双眼鏡を少し離して持ち、接眼レンズ側から見た時に見える明るい円の直径を射出ひとみ径と呼びます。一般的にこのひとみ径の直径が大きいほど明るい双眼鏡となります。
双眼鏡を覗いて感じられる明るさは、双眼鏡のひとみ径と人間の瞳孔径の関係で決まるため、ひとみ径が瞳孔径よりも大きければ裸眼と同じ様な明るさを感じることが出来ますが、瞳孔径よりもひとみ径が小さくなってしまうと、裸眼時よりも暗く感じるというわけです。
日中など明るい場所では人間の瞳孔は2〜3mm程度となりますが、暗い場所では7mm程度まで大きくなります。そのため双眼鏡のひとみ径が仮に3mmだとすると、日中明るい場所では明るく見えるものの、薄暮時や夜間など暗い環境では視界が暗く見づらい双眼鏡となってしまいます。
ひとみ径=対物レンズの有効径÷倍率
という式で求められるため、仮に「8×42(倍率8倍・対物レンズ有効径42mm)」といった双眼鏡があった場合、
5.25mm(ひとみ径)=42mm(対物レンズ有効径)÷8(倍率)
となるため、8×42の双眼鏡のひとみ径は5.25mmになるというわけです。薄暮の時間に使うことや、夜景・星野観望などを行うことも想定される場合、ひとみ径が大きな明るい双眼鏡を使うことが効果的です。
実視界
双眼鏡を動かさずに見ることのできる範囲を対物レンズの中心から測った角度を実視界と呼びます。実視界が広いほど視野は広い範囲が見えるため、目標物を探しやすくなります。例えば双眼鏡に「8×42 7.0°」と表示されている場合、実視界が7.0°となります。
実視界は倍率が低いほど広くなるため、倍率の違う双眼鏡同士を比較する際にはあまり適しません。
見掛け視界
実視界に倍率をかけたものを見かけ視界と呼びます。双眼鏡をのぞいた時、その視野がどの位の角度に広がって見えるかを表します。見掛け視界が大きいと高倍率でも実視界が広くなるため、迫力ある見えを楽しめます。
見掛け視界は倍率の違う双眼鏡同士でも参考にすることが可能です。
1000m視界
1000m先の物体を、双眼鏡を動かさないで見ることが出来る範囲をm(メートル)で表したものです。海外メ-カ-に多い表記方法となります。
アイレリーフ
ケラレが発生することなく見ることができる目の位置を接眼レンズ最終面から測った長さをアイレリーフと呼び、この位置から覗けば全視野がケラれることなく観察できます。
つまり双眼鏡からどの程度目を離した状態できちんと見えるか?を表したもので、特にメガネをかけた状態では接眼レンズから目が離れるためある程度のアイレリーフが必要となります。
最短合焦距離
ピントが合う最短の距離のことを最短合焦距離といいます。この距離が長すぎると近い場所が見づらくなります。
写真用レンズの最短撮影距離と同じ様に、この最短合焦距離が短いことで、対象物との距離を気にすることなく双眼鏡を使用することが出来ます。
■オススメ双眼鏡1:LEICA NOCTIVID 8×42
NOCTIVID 8×42 | |
倍率 | 8倍 |
対物レンズ有効径 | 42mm |
射出ひとみ径 | 5.3mm |
1000m視界 | 135m |
アイレリーフ | 19mm |
最短合焦距離 | 1.9m |
防水性能 | 水深5m |
外形寸法(縦×横×高) | 150×124×58mm |
質量 | 860g |
■オススメ双眼鏡2:ZEISS VICTORY SF 8×42
VICTORY SF 8×42 | |
倍率 | 8倍 |
対物レンズ有効径 | 42mm |
射出ひとみ径 | 5.3mm |
見掛け視界 | 64° |
1000m視界 | 148m |
アイレリーフ | 18mm |
最短合焦距離 | 1.5m |
防水性能 | 水深5m |
外形寸法(縦×横) | 173×125mm |
質量 | 780g |
■オススメ双眼鏡3:SWAROVSKI EL 8.5×42SV WB
EL 8.5×42SV WB | |
倍率 | 8.5倍 |
対物レンズ有効径 | 42mm |
射出ひとみ径 | 4.9mm |
1000m視界 | 133m |
アイレリーフ | 20mm |
最短合焦距離 | 1.5m |
外形寸法(縦×横×高) | 160×131×61mm |
質量 | 800g |
■オススメ双眼鏡4:Nikon EDG 8×42
EDG 8×42 | |
倍率 | 8倍 |
対物レンズ有効径 | 42mm |
射出ひとみ径 | 5.3mm |
見掛け視界 | 56.6° |
1000m視界 | 135m |
アイレリーフ | 19.3mm |
最短合焦距離 | 3.0m |
外形寸法(縦×横×高) | 148×141×54mm |
質量 | 785g |
画像:Amazon,LEICA,ZEISS,SWAROVSKI,Nikon
Reported by 正隆