Freedom of the Press Foundation(報道の自由基金)は日本の主要なカメラメーカー(キヤノン、ニコン、ソニー、オリンパス、フジフイルム)に対し、「画像暗号化機能の搭載を求める嘆願書」を送ったと発表しました。
この嘆願書は公開(英語)されており、150名以上の報道写真家やドキュメンタリー映画製作者などの著名がされています。今回はこの「カメラに暗号化機能」のお話です。
■画像暗号化の趣旨
報道カメラマンたちが画像暗号化を求める理由
報道の自由基金の報道写真家たちはカメラの画像暗号化の要望を出した理由を「危険を伴う報道の現場でジャーナリストや機材を守るため」としており、国境警備員や警察、テロリストや犯罪者が撮影した画像を検閲したり機材や記録メディアを押収するといったケースへの対抗策としています。
署名した報道カメラマンらは、「世界の危険な場所で悪事を暴こうとしてる我々は、政府や犯罪者から撮影した画像や映像を何度も押収されてきた」と述べています。その上で撮影したコンテンツを暗号化できるようにすることでそうした検閲から保護することができると主張しています。
報道の自由基金はこの書簡をキヤノン、ニコン、ソニー、オリンパス、フジフイルムに送ったとのことですが、そこまで送るなら義理でペンタックス、パナソニック、ライカにも送ればよかったんじゃないかという気はします。
■画像暗号化の問題点
画像暗号化は報道カメラマンを守れるか?
ただしこの画像暗号化には一部のメディアで問題点も指摘されています。
- ジャーナリストのマーケットは小さく、カメラメーカーにとって暗号化技術開発のメリットがあるのかということ
- カメラマンは撮影時こまめに画像を確認するため、画像確認にパスコードなど複雑な手順を要するのはカメラマンにとってもプラスにならないのではないかということ
- 画像確認の手順をシンプルにすれば暗号化の意味がないし、複雑にすればカメラマンは結局その機能を使わなくなるであろうこと
- 指紋認証のようなシステムを搭載したとしても、力づくで認証させられる可能性が高まるだけで最悪指を切り落とされる可能性さえあること
- 記録したコンテンツを確認できなければ、記録メディアもしくは機材ごと破壊されてしまうだけであろうということ
といった様々な問題点が指摘されており、結局のところ「画像を暗号化することは(極限的な報道の現場では)意味がない」とする意見もあります。
■現在の対策
報道カメラマンたちの現在の対応策
解決策として別の(安全な)場所に暗号化された画像データをリアルタイムに送信する、あるいはクラウドへバックアップする方法はどうか?という意見もあるものの、やはり戦場や紛争地帯などの極限下でネット環境を利用できるかという問題があります。
現在そうした危険な地域での報道に携わるカメラマンたちは、小さな容量のメモリーカードで撮影したのち、
- バックアップデータをホテルや大使館などのセキュリティーの高い場所に残して次の撮影に向かう
- バックアップデータを友人に渡したり郵送するなど複数のルートから安全な場所に送る
といった方法でコンテンツを無事に持ち帰るための可能性を高めているとのことです。
参考:FREEDOM OF THE PRESS FOUNDATION,Tech Crunc
画像:Quesabesde
Reported by 正隆