皆さんは機械式カメラ使われたことありますか?再びジワジワとフィルムブームが来ているようですが、これから機械式フイルムカメラを始めたいという方のために、今回は機械式カメラのド定番にして名機の中の名機、キヤノンNew F-1とニコンF3を今さらですがご紹介したいと思います。
この2機種は35mm判一眼レフタイプの機械式フィルムカメラの歴史的名機と呼ばれており、キヤノン・ニコンの2大カメラメーカーを代表する機種として、カメラ史の中で過去・現在・未来に渡って語り継がれるであろう宿命のライバル機種です。
■キヤノンNew F-1
ここがスゴいよNew F-1!
New F-1にはマニュアル露出のアイレベルファインダーモデルと、それにマニュアル露出&絞り優先AEモードに対応したAEファインダーモデルがあります。またワインダーもしくはモータードライブを装着することでシャッタースピード優先AEを使えるようになります。
アイレベルモデルとAEモデルはボディは同じでファインダーユニットの違いのため、実はアイレベルモデルも露出計表示が見えなくなっても良ければシャッタースピードダイヤルの外周リングを一度持ち上げてAの位置に回せば絞り優先で動作するという裏技があります。
フィルムカメラではデジタルカメラのように簡単に感度設定を変えられるわけではないため、露出計が見えないと絞り優先が使えても思ったよりシャッタースピードが落ちてしまってブレてしまっていたということもあるため、露出計が確認できた方が使い勝手が良く、絞り優先が使いたい方はAEモデルを購入するのがオススメです。
デザイン的にはアイレベルモデルの方が人気があったように思いますが、個人的にはAEモデルはアイレベルモデルに負けず劣らずかっこいいと思いますし、ピント合わせも手動で行う機械式カメラでは、操作手順を少しでも簡略化でき素早く撮影できる点や、確認すべき点を一つ減らせるため撮影のミスが減るという意味で絞り優先AEが使えるAEモデルがオススメです。
私が機械式カメラで一番使っていたのがこのNew F-1で、素晴らしいファインダー、使い易い露出計表示、かっこいいデザインなど数多の魅力がありました。特にファインダーは優れており、すべての35mm判一眼レフカメラの中でも3本の指に入るものだと思います。
標準装備のフォーカシングスクリーンはニュースプリットマイクロでしたが、ピントは合わせやすいもののついつい日の丸構図になってしまいがちだったためすぐにマットのタイプに交換して使っていました。ちなみになかなか手に入りづらいブライトレーザーマットは通常の全面レーザーマットスクリーンよりも明るいのが特徴の高級スクリーンです。
ブライトレーザーマットと全面レーザーマットの両方使ったことがありますが、暗いところでよくよく見比べればという程度の差であるためもしマットタイプのフォーカシングスクリーンを使いたいと言う方も、全面レーザーマットでも十分かと思います。そもそも今からブライトレーザーマットを手に入れるのは難しいと思います。
一眼レフ史上最高峰の見え味を実現しているNew F-1ですが、ファインダー内の露出計指針も非常に美しく視認性が良い点も魅力となっています。機械式カメラではマニュアルフォーカスでピント合わせを行うため、ファインダーの良し悪しは重要な要素となります。またファインダーを覗く喜びという意味でも、35mm判一眼レフで光学ファインダーの最高峰を体験したい、そんな方にNew F-1は間違いなくオススメの名機です。
ここがダメだよNew F-1!
性能、高級感、デザインなど申し分のないNew F-1にも欠点はあります。その一つが硬い巻き上げで、巻き上げのスムーズな事で有名なライバル機であるF3と比較すると、New F-1の巻き上げ感触の悪さは更に際立ってしまいます。
F3の巻き上げが「シュルッ!」だとすると、New F-1の巻き上げは「ゴリゴリゴリゴリ…」という感じで、音も感触も硬く、フィルムが内部でジャムった際などは、フィルムが巻き上げ部分で絡まっているのか単にNew F-1の巻き上げが硬いだけなのか判別がつきにくく、巻き上げに失敗していることに気づいた時には手遅れで、撮影したはずの写真が大半できていなかったという悲惨な事態になることもありました。
New F-1のもう一つの弱点はその塗装の弱さで、前モデルのF-1での塗装は強かったのですが、New F-1のマット塗装はすぐに剥がれてしまうため、使い込んで地金が露出した感じがいいという方もおられるでしょうが、一般的な意味ではやはり塗装がすぐに削れてしまうのは残念なポイントと言えるでしょう。
自分が使い込んで削れる分には愛着も湧くのですが、中古で最初から削れているのはやや悲しく、今から入手するとなれば尚更塗装が綺麗な状態のものはほとんどないでしょう。
■ニコンF3
ここがスゴいよF3!
F3は機械式フィルム一眼レフカメラの歴史的名機で、20年間にわたって発売され、
- Nikon F3(オリジナルモデル)
- Nikon F3HP(ハイアイポイントモデル)
- Nikon F3/T(チタンモデル)
- Nikon F3AF(専用オートフォーカスレンズ対応モデル)
- Nikon F3P(報道カメラマン向けモデル)
- Nikon F3 Limited(F3Pの市販モデル)
- Nikon F3H(高速連写モデル)
- Nikon F3/T Classic(安藤カメラクラシックの限定版)
- Nikon F3 LAPITA 2000 MEMORIAL EDITION(雑誌「ラピタ」の限定版)
など実にさまざまなモデルが発売されました。ちなみにNew F-1 AEと同様に、F3も絞り優先AEを使用することが可能です。
F3の魅力はさまざまありますが、私が印象に残っているのはまずそのスムーズ極まりない巻き上げレバーの感触です。「シルキー」と表現されていたように、最初から最後まで一定の力でスムーズに巻き上がる感触は一眼レフでは匹敵するものが思い浮かびません。
F3の巻き上げはフィルムを装填した状態で最適化されているようで、通常は巻き上げレバーがややグラついているため最初はちょっとチープだなと思っていたのですが、これは遊びを作ることで壊れにくくするためだそうです。そして実際にフィルムを装填して巻き上げると、プラプラしていた巻き上げレバーが嘘のようにスムーズにグラつきもなく巻き上がる感触に驚かされます。
「F3の巻き上げには命を賭けた」と開発者は語っていますが、使用中に巻き上げ不良でフィルムがジャムることも一度もなく、また分割巻き上げをおこなってもコマ間の距離は一定で、逆巻されていくためにフィルムの巻きグセが修正されスレーブになった際にもフィルムがカールすることなくスパッと平らに仕上がってくるあたりはまさにF3の巻き上げ機構の真骨頂と呼べるものでした。
F3で私の印象に残っているもう一つの特徴はその信じられないほどの堅牢性でした。
New F-1はシャッター不良で一度壊れて買い直しましたが、F3HPは2回くらいコンクリートの上に落としたものの全く壊れず平然と動いていました。ニコンによると堅牢性を確保するために部品点数を抑えるように設計されているそうです。
3つめの特徴はFマウントレンズが現行であるというという点で、New F-1ではNew FDレンズを使用していましたが、New FDレンズの柔らかい写りも好きでしたが、これから買うとなれば状態の良いものを見つけるのは苦労することでしょう。
それに引き換えF3は現行のAi-S Nikkorが使用できるわけですから、状態が良いものを見つけやすいのはもちろんのこと、そもそも新品で購入することができるため、ボディだけ状態の良いものを見つければいいという気楽さがあります。また、F3自体発売期間が長いため非常に弾数が多いのも魅力といえます。
ここがダメだよF3!
F3はその巻き上げ感触や堅牢性、レンズラインアップなど多くの魅力がある名機ですが、そんなF3にも弱点があります。
その一つが露出計の見辛さです。F3の露出計表示はファインダー上部にあります。人間の目は上方にはあまり視野がなく、F3の露出計表示を見ようとすると下から上目遣いで覗き込むため見づらいという欠点がありました。
その上露出計表示はその時点の数値のみ表示されるため、直感的にわかりづらく、マニュアル露出ではなんとなく考えながら操作するというやり辛さがあります。
ライバル機であるキヤノンのNew F-1はシャッタースピード優先では右側に、絞り優先では下側に表示されますが、露出計指針の視認性が高くシャッタースピードと絞り値の連続性と関係が視覚的にわかりやすくなっています。
このファインダー内表示に関してはNew F-1はF3を圧倒しています。また、ファインダーも現在の一般的なデジタル一眼レフと比較すればF3のファインダーの見え味も素晴らしいものですが、35mm判一眼レフの中でも史上1、2を争うレベルを誇るNew F-1のファインダーと比較するとピントの山がややわかりづらい感じがするのは否めません。
またレリーズの感触もNew F-1の方が良好で、現在のデジタル一眼レフではニコン機の方がシャッター音やシャッターの切れ味が良好に感じられますが、F3とNew F-1を比較するとNew F-1が「バシャ!」であるのに対してF3は「パコン!」といったやや間の抜けた感じなっています。
■どちらも揺るぎない歴史的名機
キヤノンNew F-1、ニコンF3、この二機種は現代まで続く二大一眼レフメーカーのライバル関係を宿命付けたモデルで、どちらもカメラの歴史を語る上で外すことのできない名機中の名機です。
もしもこれから機械式フィルムカメラを使ってみたいということなら、「どちらを買っても後悔のない」というより「両方買うべき」と言っても過言ではない歴史的名機です。
ぜひ両方を使い比べてみてキヤノンとニコン、現代まで続くライバルメーカーの設計思想の違いなどを感じてみてはいかがでしょうか?
Reported by 正隆