ミラーレスはプロカメラマンの仕事に使える?使えない?

EOS-1D X Mark II vs D5

プロスポーツファンの皆さんこんにちは。

現在オリンピックなどの大規模プロスポーツの会場では、キヤノンやニコンのハイエンド機+大口径超望遠レンズの組み合わせによる、いわゆる「砲列」と呼ばれるような光景をテレビで見ることが多いかと思います。

一般ユーザーには完全に市民権を得たミラーレスですが、果たしてプロカメラマンの市場でも主流となっていくのでしょうか?

目次
  • スポーツカメラマンが求める機材像
    • スポーツカメラマンの市場への参入は遠い道のり?
    • スポーツカメラマンが求めるカメラ像
    • 現実のオリンピック撮影機材
  • プロスポーツカメラマンへのアピールを行うミラーレス陣営
    • プロスポーツカメラマンへの積極的なアピール
  • ミラーレスでもスポーツ写真は撮れる
    • 進化著しいミレーレスの性能
    • ハイエンド一眼レフさえ凌駕するミラーレス
  • それでもスポーツカメラマンはミラーレスを使わない?
    • 進化し続けるミラーレス、しかし…
    • 「安心感」を語りかけてくる機材
    • プロのための機材には割り切りが必要
    • なかなか埋まらないバッテリーライフの差
    • 必要不可欠なレンズラインアップの充実
    • プロサポートもまだまだ貧弱
  • 縁遠いスポーツカメラマン市場は最後に狙えばいい
    • 撮ることは可能、しかし…
    • 「撮ることが可能」というだけでは積極的に選ぶ理由にならない
    • スポーツより他のジャンルから狙う方が勝算が高い
  • ミラーレスメーカーはどこを狙うべきなのか?
    • ミラーレスメーカーが狙うべき撮影ジャンル
    • 実際のプロの撮影現場
    • その他に可能性がある撮影ジャンル
  • カメラもカメラマンも変わりゆく
    • ミラーレスが登場して早や9年
    • カメラの進化は終わらない

今回はミラーレスカメラとプロカメラマンの仕事の関係について考えてみたいと思います。



■スポーツカメラマンが求める機材像


スポーツカメラマンの市場への参入は遠い道のり?

将来のことを予想することは難しいものの、オリンピックなどの大規模なスポーツの現場でミラーレスがプロカメラマンの機材の主流になるのはかなり先だろうと思います。

いずれはミラーレスが様々なジャンルのプロカメラマンにとって一般的になると思いますが、少なくとも2020年の東京オリンピックでは一眼レフが明らかな多数派、2022年の冬季北京オリンピックでもまだ一眼レフが少し多いでしょう。

2024年のパリオリンピックあたりではミラーレスが逆転していていると思いますが、逆にいうと、スポーツのプロカメラマンのミラーレスへの移行はそれだけ時間がかかるだろうということです。

スポーツカメラマンが求めるカメラ像

まずはプロスポーツカメラマンがカメラやカメラシステムに求めることを考えてみましょう。オリンピックカメラマンのようなトップレベルのスポーツ撮影では、

  • 耐久性
  • 高感度画質
  • 連写速度
  • オートフォーカス性能
  • バッテリーライフ
  • 超望遠レンズを含めた幅広い焦点距離のレンズラインアップ
  • レスポンス
  • 高度なリモートコントロール機能
  • 会場内でのプロサポート

などが必要になります。

現実のオリンピック撮影機材

例えば2016年のリオ・デ・ジャネイロオリンピックに参加したプロスポーツカメラマンであるSimon Brutyさんの機材をご紹介しましょう。

オリンピックカメラマン機材

主要な使用機材は以下の通り。

壮観ですね。

■プロスポーツカメラマンへのアピールを行うミラーレス陣営


プロスポーツカメラマンへの積極的なアピール

ミラーレスを主力とするメーカー、特にソニーとオリンパスはα9やOM-D E-M1 Mark IIといったフラッグシップ機で超高速連写を実現し、「プロスポーツカメラマンの市場を狙う」と宣言しています。

また今後スポーツカメラマン向けのイベントやセミナーを積極的に開催していくことも予想されます。

しかしそうしたイベントでレビューを行うカメラマンは、「ミラーレス機でもスポーツ写真が撮れるという趣旨のイベント」に呼ばれて参加しているわけですから、それを明らさまに否定するようなコメントをするはずはありませんから、これらのイベントでのカメラマンの反応はあまり真に受けない方が良いかと思います。

表面上は高評価しつつ、実際にはミラーレスシステムには変えないというのが現実だろうと思います。

ボディだけ買ってもオリンピックにはいけませんし、プラス1台として試用するくらいならともかく、先にご紹介したオリンピックカメラマンの機材のような膨大な量のメインの機材を全てミラーレスのシステムに交換するというのは、現在のミラーレスのレンズラインアップの観点からも難しいでしょう。

■ミラーレスでもスポーツ写真は撮れる


進化著しいミレーレスの性能

先ほど挙げた、大規模なプロスポーツ撮影に求められる機材の要素は以下のようなものがありました。

  • 耐久性
  • 高感度画質
  • 連写速度
  • オートフォーカス性能
  • バッテリーライフ
  • 超望遠レンズを含めた幅広い焦点距離のレンズラインアップ
  • レスポンス
  • 高度なリモートコントロール機能
  • 会場内でのプロサポート

これらの条件のうち、「高感度画質」「連写速度」「オートフォーカス性能」「レスポンス」に関しては、ミラーレスの技術的進化によってほぼ解決されています。

ハイエンド一眼レフさえ凌駕するミラーレス

オートフォーカス性能や連写速度に関しては、ミラーレス機はハイエンド一眼レフさえに比肩する、あるいは凌駕する部分も多く見受けられます。また高感度画質に関しても、一部のフルサイズミラーレス機はハイエンド一眼レフにも見劣りしません。

連写速度に関しては、絞り連動の問題がありますからミラーレス&電子シャッターという組み合わせでも際限なく連写速度を上げられるということではありませんが、クイックリターンミラーが必要ないミラーレス機の連写速度はすでにハイエンド一眼レフさえも超えています。

レスポンスという部分では、プロ用一眼レフと比較して小型ゆえ操作性の面で見劣りする部分があるものの、当初問題視されることの多かったEVFとOVFの差は技術の進歩によってスポーツ撮影にも十分に対応できるものとなってきました。

リモートコントロールに関しては、現在のオリンピックでは、何台ものカメラを設置しておいて、PCによる無線リモートコントロールによって撮影を行うという手法が頻繁に行われています。

現時点でEOS-1D X Mark IIやD5ほどの無線遠隔操作に対応したミラーレス機はほとんどありませんが、メーカー側が本気でプロスポーツカメラマンの市場に参入していく気があれば、解決にそれほど長い時間は必要ないでしょう。

■それでもスポーツカメラマンはミラーレスを使わない?


進化し続けるミラーレス、しかし…

先に申し上げたようにミラーレス機は急速に進化し、スポーツ撮影そのものは十分に可能なスペックを持っています。しかしながらそれでもミラーレスカメラがプロスポーツカメラマンの主流となることはかなり先になるでしょう。

次にその理由をご説明します。

「安心感」を語りかけてくる機材

皆さん高い場所の物を取ろうとした際など、届かないのでテーブルや箱の上に乗って取ったといった経験があるかと思います。

そうした時、これは乗っても大丈夫そうとか、これは乗ったら壊れそうだからダメだといったことを、感覚的に感じ取って判断されているはずです。

プロの現場で求められる撮影機材は、この機材を信じて撮れば何事もなく撮影を終えられるといった安心感を撮影者に常に感じさせるものでなくてはなりません。

その「安心感」を感じさせるカメラの代表格が、キヤノンのEOS-1D X Mark IIやニコンのD5といった一眼レフハイエンド機であり、グリップを握った瞬間に、「これは壊れる気がしない。どんな環境でもこのカメラを信頼できる」と感じさせてくれるものとなっています。

もちろんそうしたハイエンド機種であっても実際には壊れる事はままあるのですが、やはり絶対に失敗できないオリンピックに仕事で撮影に行かなければならないとなった場合、「頑丈そう」と撮影者に感じさせるカメラでなければなりません。

このカメラの「安心感」とは、ボディの剛性感とかボタンやダイヤルの作りといった細部から感じとるもので、残念ながらミラーレス機ではLUMIX GH5に多少感じる程度で、EOS-1D X Mark IIやD5のような一眼レフハイエンド機と同等の感覚をもつミラーレスカメラは現時点ではありません。

もちろん一眼レフ上位機が全ての撮影者にとってベストということではなく、プロの現場さえミラーレスの方が向いているというケースはあります。

しかし、特にプロスポーツカメラマンといった屋外で撮影することの多いカメラマンにとって、機材の側から語りかけてくるような安心感があるかどうかは、機材選択において重要な要素となります。

また、ミラーレス機は同クラスの一眼レフよりも小型軽量であること重視して作られていることが多く、

  • 手袋を装着した状態での操作
  • タフな環境下での操作

などを想定していないとしか思えないボタンやダイヤルのサイズ・配置となっている点も、屋外での撮影が多いプロスポーツカメラマンにとっては躊躇する部分でしょう。

プロのための機材には割り切りが必要

こうしたミラーレスカメラの頼りなさの原因となっているのは、「ミラーレスは小型軽量に仕上げなければならない」というメーカー側・ユーザー側双方の先入観にあるのだろうと思います。

カメラよりもずっと重い大口径超望遠レンズを使用するハイエンドのカメラにとって軽量はそもそも優先事項ではなく、またどうせバッテリーグリップを付けるのですから、バッテリーグリップ一体型にした方がボディ剛性が上がり、大口径超望遠レンズを使うシチュエーションでもボディの軋みを低減することができます。

加えて一体型とすることで内部構造にも余裕が生まれます。実際にEOS-1D X Mark IIやD5といったハイエンド一眼レフ機はバッテリーグリップを一体構造にすることで内部スペースを確保し、排熱などの面でも有利になるよう活用しています。

勿論ミラーレスカメラの開発者も、「どうすれば頑丈なカメラになるか?」「過酷な環境に対応出来るか?」といったことは百も承知なのですが、常に「小型軽量に対する期待」との板挟みとなるミラーレス機ではハイエンド一眼レフほど割り切った作りに出来ないのでしょう。

なかなか埋まらないバッテリーライフの差

次にバッテリーライフの問題があります。バッテリーライフに関してハイエンド一眼レフのバッテリーライフは非常に長く、例えばニコンのD5では一回の充電で約3,780コマ(CIPA準拠)、プロフェッショナルの現場を想定した「連続撮影モード」(ニコン試験条件)では約8,160コマという途方もないバッテリーライフを実現しています。

試合中大量のショットを撮影するプロスポーツカメラマンにとって、その間バッテリー交換の必要がなく、バッテリー残量を気にしなくていいというのは大きなアドバンテージとなります。

もちろんミラーレス機でもバッテリー交換を行うことは可能ですし、中には外部バッテリーを繋げて使用できるものもありますが、

  • 撮影中にバッテリー交換をすればいい
  • 外部バッテリーを繋げながら使えばいい

といったエクスキューズが必要な時点でダメで、一瞬を逃せないスポーツ撮影において撮影中のバッテリー交換はしなくて済むならその方が良いですし、わざわざ外部バッテリーをつなげながら使いたいとも思うプロスポーツカメラマンは居ないでしょう。

ミラーレス機でもバッテリーライフがそれほど短くない機種もありますが、それでもスポーツカメラマンが求める、

  • 一眼レフフラッグシップ機並みの操作性
  • キヤノン、ニコン並みの超望遠レンズラインアップ
  • 一眼レフフラッグシップ機並みのバッテリーライフ

を備えたミラーレス機は現時点ではありません。

将来的にミラーレスのバッテリーライフが伸びたとしても、バッテリー容量が物をいう世界では、ミラーレスのバッテリーライフが伸びれば、より大型であることが許されるハイエンド一眼レフもバッテリーライフも伸びるわけで、一眼レフとミラーレスが撮影可能枚数で逆転する可能性は低いでしょう。

必要不可欠なレンズラインアップの充実

また超望遠レンズラインアップに関してもミラーレスは弱く、やはり購入者自身が携帯性を重視することが多いため、メーカー側も超望遠レンズの開発を後回しにする傾向にあります。

最近ミラーレスにも徐々に超望遠レンズが登場していますが、プロスポーツカメラマンは室内競技など、薄暗い場所でシャッタースピードを上げるといったシチュエーションもままあります。

そのために「フルサイズ+大口径超望遠レンズ」という組み合わせになることから、大口径超望遠レンズのラインアップが(現時点では)貧弱なミラーレス機は選択肢から外れてしまいます。

今後ソニーなど大型センサーを採用しているミラーレスメーカーが超望遠レンズをラインアップし、フルサイズ+超望遠レンズというシステムを充実させていったとしても、それによって「プロレベルでのスポーツ撮影が可能になる」ことはあっても、ハイエンド一眼レフから「システムを全て買い換えた方が良い」というほど積極的な理由を与えるまでには相当長い時間がかかることでしょう。

プロサポートもまだまだ貧弱

ニコン・キヤノンのプロサービスはオリンピックはもとより、多くのプロスポーツの現場でも長い実績がありますが、その点ミラーレスメーカーのプロサポートはまだまだ貧弱です。

オリンピックなどの大規模な会場では、会場での修理対応及び代替機の貸出しなどが必要で、さらにそれらに対するスタッフの経験値も含めて、ニコン・キヤノン以外のカメラメーカーがプロスポーツカメラマンの市場に食い込んでいくための大きな参入障壁となっています。

■縁遠いスポーツカメラマン市場は最後に狙えばいい


撮ることは可能、しかし…

現状でさえ「ミラーレスではプロスポーツが撮れない」とは思いませんし、今後さらなるミラーレスカメラの進化やレンズ・アクセサリーが充実していけばオリンピックレベルでもミラーレス機での撮影は十分に可能になるでしょう。

またスチールカメラのプロサポートに関して、ミラーレスメーカーのサポート体制は現状では貧弱ではあるもの、これは実戦経験を重ねなければノウハウが蓄積しないものですから、経験がないからといって諦めていたのではいつまでも改善されませんのでチャレンジも必要でしょう。

「撮ることが可能」というだけでは積極的に選ぶ理由にならない

しかし多くのプロカメラマンは、今使用しているメーカーで問題がないならわざわざメーカーを変えません。

メーカーが変われば、カメラボディだけでなくレンズ・ストロボ・バッテリーなど膨大な機材の変更が必要になる上に、何よりも「素早く正確に操作を行うための経験値」を新たに積むことが必要になるからです。

「ミラーレスでもスポーツが撮れる」という消極的な理由ではなく、「スポーツ撮影にはミラーレスの方がずっと向いている」となった時、初めてミラーレスへの移行してくれるでしょう。

それだけプロカメラマンは自分の手に馴染んだメーカーに対して保守的なのです。

しかし逆に言えば、「スポーツ撮影にはミラーレスの方が明確に良い」となれば、躊躇なくミラーレスへと移行していく可能性はあります。

スポーツより他のジャンルから狙う方が勝算が高い

現状ではほとんど勝ち目がないと考えられるプロスポーツカメラマン市場へのミラーレスメーカーの参入ですが、ミラーレスメーカーがスポーツカメラマンの市場を狙っていくという発言の裏側には、オリンピックカメラマンのような市場はアマチュアからの注目度が高く広告効果が高いという点と共に、「ミラーレスはスポーツが苦手」と言われ続けたことへの反骨心があるように思います。

しかし一口に「プロカメラマン」と言ってもその撮影ジャンルはさまざまであることを考えれば、もっとミラーレス陣営にとって参入しやすいジャンルがいくつもあります。

いきなりミラーレスから縁遠いスポーツの市場を狙うのは失敗する可能性が高く、一度失敗すれば「プロカメラマンの市場を狙うこと自体が間違い」であるかのような錯覚に陥る可能性があります。

また、本来他のところに原因があるにも関わらず、大口径超望遠レンズをラインアップしたのちに、プロスポーツにつ変わらなかったことを理由に、「ミラーレスで大口径の超望遠レンズは売れない」といった間違った結論に辿り着く可能性も捨て切れません。

ミラーレスメーカーがプロカメラマンの市場を狙うのは良いことであるし、ミラーレスの未来を考えれば、「積極的にチャレンジすべき」だと思っています。

しかし、だからこそ「プロスポーツは最後に回し、もっと参入しやすいジャンルから進出していくべき」とも思います。

■ミラーレスメーカーはどこを狙うべきなのか?


ミラーレスメーカーが狙うべき撮影ジャンル

プロカメラマンの市場をミラーレスメーカーが狙うのであれば、

  • ブライダル
  • スクール
  • 七五三、お宮参り
  • インタビュー撮影
  • コンサート撮影

などが良いでしょう。つまり、

  • 現場でのメーカーサポートが必要ない
  • 大掛かりなライティングが必要ない
  • 超望遠レンズやアオリレンズが必要ない
  • 移動しながらの撮影が多い
  • 音を出すのが憚れる撮影

以上のような撮影であれば、プロの現場でもミラーレスを使う積極的なメリットが生まれます。これらの撮影は超望遠レンズをほとんど使用せず、主要な機材を持ったまま撮影することが多いため、ミラーレスの携帯性や機動性生かすことが可能です。

実際のプロの撮影現場

ブライダル撮影であれば室内の撮影は概ねストロボバウンス撮影で、フルサイズミラーレス機であれば高感度性能も十分です。

また、スクールや七五三・お宮参りなどの屋外撮影では「2台のカメラに2本のレンズ(例えば標準ズームレンズと望遠ズームレンズ)を付けた状態で移動しながらの撮影する」といったスタイルも多く、機材を常に何らかの形で持ち歩かなければならないため、ミラーレス機の携帯性のメリットは大きくなります。

私は仕事では都市風景や商品撮影などの撮影を行っていますが、それらに関して、一眼レフよりミラーレスを「積極的に使いたい」とまでは思わないものの、ミラーレスは使えないか?ということなら、ミラーレスでも十分に撮れるでしょうし、実際撮影の一部はミラーレス機で撮影しています。

そうした撮影の際使用するのはほとんどが背面モニターでのライブビュー撮影かPCを接続してのテザー撮影であるため、OVFとEVFの差というのは気にしませんが、ストロボトリガーの対応や単純に操作に慣れているといった理由で多くの撮影で一眼レフを使っています。

プロのライティングと言っても撮影ジャンルやその時の現場によってまちまちです。ミラーレスがプロ市場に普及していくためには、海外製の安価なクリップオンストロボも、逆にハイエンドの大型ストロボの無線システムでも、さまざまなライティングシステムでストレスなく使用できる環境が必要になってくるでしょう。

そしてProfotoなど一部のメーカーではミラーレスメーカーにも対応したストロボトリガーを発売してきており、コマーシャルフォトなど大掛かりなライティングを使うような撮影でも本格的にミレーレスカメラが進出していくための下地が整ってきました。

その他に可能性がある撮影ジャンル

ミラーレスはポートレート撮影にも比較的向いており、フルサイズ一眼レフなどと比較すると、測距可能なエリアが広いミラーレス機は構図に関わらず目へのピントあわせが容易です。

しかしながらAPS-C機などでは一眼レフでもほとんどのエリアをオートフォーカスがカバーしている機種もあり、これはフルサイズ同士で比較した場合と言って良いでしょう。

一部の野生動物や昆虫撮影でもミラーレス機は有用です。野生動物や昆虫撮影を業務として行うプロカメラマンは全体の中で多くありませんが、メーカー側としてもプロ市場への進出をする理由は、「プロカメラマンに売って儲けたい」というより、「プロカメラマンに自社の製品を使わせることによって、アマチュアカメラマンに製品を訴求したい」ということでしょうから、ニッチなジャンルのカメラマンであってもアマチュアカメラマンに対して広告効果があるのであれば構わないわけです。

メーカー側は、「ブライダルやスクールのようなジャンルで使用されても広告効果が少ない」と考えているふしがあります。

しかし、「撮影現場で見かければ見かけるほどその機材に興味が沸く」のはプロカメラマンも同じですから、こうしたジャンルにも力を入れていくことで、「プロカメラマンの中でのミラーレスブーム」を作り上げ、派生的にさまざまなジャンルのプロカメラマンにミラーレス機を使わせることが出来るようになるかも知れません。

■カメラもカメラマンも変わりゆく


ミラーレスが登場して早や9年

2008年に初のミラーレスカメラとしてLUMIX G1が登場して以来、瞬く間にカメラ業界で市民権を得たミラーレスですが、プロカメラマンの撮影現場ではまだまだ普及しているとは言い難い部分があります。その最大の理由はプロカメラマンにとって、「敢えてミラーレスを使う積極的な理由が少ない」からでしょう。

とはいえ最近では撮影現場でミラーレスを使用しているカメラマンにも極たまにではありますが見かけるようになってきました。いつかはプロカメラマンもミラーレスが主流になる時代になるのかも知れません。

カメラの進化は終わらない

一般には十分に普及したミラーレスが、今後プロカメラマンの市場に進出していくためにも、「ミラーレスでも仕事はこなせる」ではなく、「ミラーレスでなければ仕事にならない」とカメラマンに言わしめるほどの製品の登場に期待したいところです。

そして何よりも我々は、

「一眼レフもミラーレスも永遠不変のシステムではなく、カメラの進化の過程に過ぎない」

ということを忘れてはいけません。

かつてレンジファインダーから一眼レフに、フィルムからデジタルに変わっていったように、この先もカメラが進化を続け、我々もまたその進化を楽しんでいければと思います。

参考:Simon Bruty,DPREVIEW,PetaPixel
画像:東京2020,PetaPixel

Reported by 正隆