フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。
過去の各級の予想問題のまとめ
合格目指してさっそく問題です!
難易度:1級レベル
問:世界で初めてデジタルスチルカメラを発明した(※発売ではない)メーカーはどこか?次の中から選べ。
① カシオ計算機
② 富士フイルム
③ イーストマン・コダック
正解はこのあとすぐ!
■正解は③(イーストマン・コダック)
世界初のデジタルカメラを作ったスティーブ・サッソン
1975年(昭和50年)12月、イーストマン・コダックの若き開発担当者であったスティーブ・サッソンが世界初のデジタルカメラを発明しました。
この時スティーブ・サッソンは入社わずか2年、若干24才でした。
■デジタルカメラ誕生の歴史
世界初のデジタルカメラはどのようにして発明されたのか
イーストマン・コダックに入社した当時、サッソンは数年前に発明されたCCDの実用性があるかどうかを判断するという、当時社内ではさほど重視されていなかった部署に配属されました。
サッソンは「CCDが光を電気信号に変換する性質を利用して、画像を記録する」ということを試みましたが、電気信号がすぐに消えてしまうためになかなか上手くいきませんでした。
そこで彼は画像を保持するために、電気信号を数値に変換する新しいプロセス、つまりデジタル化することを思い付きました。
そしてそれを実現するために、デジタルデータを一旦RAMに格納し、それを磁気テープに格納するという方法で成功させました。
世界初のデジタルカメラはどのようなものだったのか?
このデジタルカメラの画像サイズは100×100の10,000ピクセルで、撮影した映像をテレビに映すことも出来たとのこと。
スティーブ・サッソンが作ったこのデジタルカメラは重量が8ポンド(約3.6kg)で、撮影そのものは50ミリ秒という高速で撮影できたのですが、画像の記録には約23秒もの時間がかかっていました。
そして撮影したモノクロ画像のデータはテープに記録され、それをテレビ画面に表示して観賞するというシステムでした。
天才的発明を生かせなかったコダック幹部
サッソンはこのカメラを発明した時、イーストマン・コダックのマーケティング部門、テクニカル部門、ビジネス部門の役員グループなど多くのコダック幹部に見せました。
その際、経営幹部に「デジタルカメラがフィルムカメラと市場で競争できるか?」と尋ねられたサッソンは、ムーアの法則を引用し、「現時点では画質が悪いものの、技術の進歩に連れて解像度は急速に向上し、15〜20年後には市場で110フィルムや135フィルムカメラと競合する可能性がある」と語り、同時に電話回線を使って画像を送る事が可能になるという事についても説明しました。
しかしこの時、幹部たちの世界初のデジタルカメラに対する反応は非常に冷ややかなものでした。
特に反応が悪かったのがマーケティング部門とビジネス部門でした。それは、当時コダックはアメリカの写真業界で高いシェアを誇り、フィルムと印画紙による売上げがコダックに十分な利益をもたらす優れたビジネスモデルで、既にコダックは十分な成功を収めていた事が原因でした。
また印刷物は100年以上に渡って写真鑑賞の標準となっていたことから、多くの幹部は写真をテレビで見ることに対して拒絶反応を示したのです。
研究を続けたスティーブ・サッソンとロバート・ヒルズ
経営幹部たちから冷淡にあしらわれたサッソンですが、その後も同僚のロバート・ヒルズと共にデジタルカメラや画像圧縮技術、メモリーカードの開発を続けます。
そして「コダック ECAM 1989」と名付けられた、120万画素のイメージセンサーと画像圧縮技術、さらにメモリーカードまで採用した一眼レフを開発したと言われています。
ただし、このコダック ECAM 1989に関しては発売されなかったこともあり、不明確な点が多く、正確な資料は公開されていないようです。
いずれにせよイーストマン・コダックのマーケティング部門は当時映画事業で利益を上げていたために、コダック ECAM 1989にさえ興味を示しませんでした。
その後日本のカメラメーカーがデジタルカメラを急速に進化させ、市場の主流がデジタルカメラへと変化していくにつれイーストマン・コダックもようやくデジタルカメラに注力するようになりますが、時すでに遅く、2012年にイーストマン・コダックはフィルムカメラの衰退と共に倒産することになります。
せっかく若き天才技術者が世界初のデジタルカメラを発明していながら、それを生かす事が出来なかったのはまさにコダックの運命を変えた痛恨の経営判断ミスだったと言えるでしょう。
スティーブ・サッソンのその後
イーストマン・コダックでは報われることのなかったサッソンですが、彼が1975年に製作した世界初のデジタルカメラは現在国立アメリカ歴史博物館に展示されています。
またオバマ大統領は2009年のホワイトハウス式典で、サッソンに国家技術革新勲章を授与し、サッソンはデジタルカメラの発明者として歴史にその名を残す事になりました。
というわけで世界初のデジタルカメラを発明したのは、③の「イーストマン・コダック」でした。
■日本企業のデジタルカメラへの挑戦
日本のメーカーのデジタルカメラへの挑戦
デジタルカメラを世界で初めて発明したのはイーストマン・コダックでしたが、その後日本のカメラメーカーも努力を重ね、猛烈な勢いでデジタルカメラを進化させていきます。
年表にしてみると、
- 1975年:イーストマン・コダックが磁気テープにデジタルの画像データを記録する世界初のデジタルカメラを発明
- 1981年:ソニーがフロッピーディスクにアナログ記録する試作機「マビカ」を発表(※電子スチルビデオカメラと呼ばれ、現在のデジタルカメラとは記録方式が異なるため、いわゆる「デジタルカメラ」にはカテゴライズされていない)
- 1988年:富士写真フイルム(当時)がメモリーカードに記録するタイプとしては世界初のデジタルカメラ「FUJIX(フジックス) DS-1P」を発表(発売はされていない)
- 1989年:イーストマン・コダックが現在のデジタル一眼レフの礎ともなるカメラ「コダック ECAM 1989」(120万画素)を発表
- 1990年:富士フイルムが世界初の量産型デジタルカメラとなる「FUJIX DS-X」を発売
- 1990年: ニコンが精細静止画カラーカメラ(※電子スチルカメラ)「HQ-1500CI/1500CF」を発売
- 1990年:アメリカのDycam社が「Dycam Model 1」を発売
- 1991年:カシオがデジタルカメラ試作機「DC-90」を2台開発、その大きさと発熱から社内では「重子」「熱子」と呼ばれた
- 1994年:アップルが「QuickTake 100」を発売。35万画素
- 1995年
- 3月:カシオ計算機が「QV-10」を発売。定価6万5,000円
- 6月:リコーが「DC-1」を首都圏で先行発売
- 7月:キヤノンが「EOS DCS 3」を発売。開発はコダック・プロフェッショナルで定価198万円。総画素数130万画素
- 9月:ニコンがプロフェッショナル向けデジタル一眼レフカメラE2/E2sを発売。E2が130万画素で定価110万円。E2sが定価は140万円。富士写真フイルム株式会社(当時)と共同開発
簡潔にまとめると、このようになっています。
- デジタルカメラを発明したのがイーストマン・コダック
- 電子スチルビデオカメラ「マビカ」を作ったのがソニー
- メモリーカードに画像を記録するデジタルカメラ「FUJIX DS-1P」を発表したのが富士フイルム
- デジタル一眼レフ「コダック ECAM 1989」を作ったのがイーストマン・コダック
- コンパクトデジタルカメラを世界で初めて発売したのが富士フイルムで機種は「FUJIX DS-X」
- デジタルカメラが世に普及するきっかけとなった「QV-10」を作ったのがカシオ計算機
こうしてイーストマン・コダックの若き発明家、スティーブ・サッソンとロバート・ヒルズ、そして日本のカメラメーカー開発者たちの弛まぬ努力によって、デジタルカメラは世界に広がっていきました。
Reported by 正隆