露出計ファンの皆さんこんにちは。
現代ではスタジオ撮影でもない限り露出計が使われる機会は減りましたが、今回は露出計の役割と、反射光式や入射光式、内蔵露出計や単体露出計といった露出計の方式の違いやタイプによるメリットデメリットなど、露出計についてさまざまな角度からご紹介したいと思います。
■露出計とは何か?
露出計の役割
そもそも露出計とはなにか?ですが、カメラは主に、
- 絞り
- シャッター速度
- ISO感度
といった要素によって露出(写真の明るさ)を決めるのですが、露出計を使用することで、ある明るさの被写体を撮影しようとした場合に、絞り・シャッター速度・ISO感度をそれぞれどのように設定すれば適正な露光量を得られるか?を測ることができます。
つまり露出計というのは、カメラ用に作られた明るさを測る測定器と考えていただければと思います。
実は露出計には幾つもの種類が存在するのですが、今回は現在でも見かけることのある代表的な露出計と露出計の方式についてご紹介したいと思います。
■反射光式露出計のメリットとデメリット
反射光式露出計とは?
露出計が被写体の光を測る際、その測り方には「反射光式」と「入射光式」の2つがあります。
まず反射光式露出計とはどのようなものか?についてお話しします。
反射光式露出計とは、被写体に当たって反射してきた光を測光する方式で、現在カメラに内蔵されている露出計はこの反射光式露出計です。
反射光式露出計のメリット
反射光式露出計は離れている被写体でも測光することが可能であるため、風景などさまざまな被写体に対して使用することが可能であるメリットがあります。
反射光式露出計のデメリット
反射光式露出計には離れている被写体を測光できるというメリットがある反面、被写体の反射率によって実際の被写体よりも明るく写ったり暗く写ったりするというデメリットがあります。
そうしたことが起こる原因は、反射光式露出計は、ザックリいうと、「被写体の反射率が18%(標準的な反射率)であると仮定して測光し露出値を設定する」というものであることに起因します。
そのため、反射率が極端に18%から外れた被写体を撮影した場合、低反射の被写体は暗いと判断して露光量を増やす方向に露出値を判断し、高反射の被写体は明るいと判断して露光量を減らす方向に露出値を判断します。
そのために、反射率が18%から大きくずれている被写体を反射式露出計で測光し、指示通りの露光値で写すと暗い被写体は実際よりも明るく、明るい被写体は実際よりも暗く写してしまいます。
例えば、ダークスーツと着た男性を画面いっぱいになるように写したとします。実際に黒い礼服なのですから服は黒く写るべきなのですが、グレーっぽく写ってしまいます。
逆に純白のウェディングドレスを着た女性を画面いっぱいに写そうとすると、やはりウェディングドレスは白ではなくグレーっぽく写ってしまうというわけです。
もっとも、現在のデジタルカメラは人物の顔の露光量を重視するといった複雑なアルゴリズムによって露出値を決定しますから、こうした被写体でも意外と見た目通りに写ってしまうことも多いのです。
しかし、理屈としては反射光式露出計ではこのように標準的な反射率からはずれた被写体では、見た目の明るさとかなり外れた露出値で写ってしまう場合があるというわけです。
■入射光式露出計のメリットとデメリット
入射光式露出計とは?
入射光式露出計は、反射光式とは異なり、被写体から反射して着た光ではなく、「被写体に当たる光そのものを測定して露出値を決める」という方式です。
入射光式露出計のメリット
反射光式露出計と異なり、被写体に当たる光そのものを測るので、被写体の反射率に影響されることなく適正露出が得られるというのが反射光式露出計のメリットがあります。
つまり、黒い被写体は黒く、白い被写体は白く、見た目通りに写すことが出来るというわけです。
入射光式露出計のデメリット
入射光式露出計のデメリットですが、入射光式露出計は被写体の位置で測光するため、近づけない被写体、つまり極端に遠くにあるような被写体などは測光することができません。
また、被写体そのものが発光している場合も入射光式露出計では測れないため、例えば、太陽や月、夜景の光などはもちろん、テレビ画面やPCモニター、タブレットやスマホなど近づける被写体であっても、被写体そのものが発光しているようなものは正確な露出を測ることができません。
そのため、入射光式露出計は、ポートレートなどの人物撮影などで特に使われます。
■内蔵露出計の種類
内蔵露出計とは?
露出計にはその露出計により、「反射光式」と「入射光式」という測光の方法による違いがあるというのを先の項で御紹介させて頂きました。
内蔵露出計とは、「カメラに内蔵されている露出計」で、被写体からの反射光を測定する反射光式の露出計です。
古いカメラでは露出計をアクセサリーシューなどに装着したり、カメラボディに単に組み付けてあるというものが多くありましたが、現在の内蔵露出計はその多くが、この後紹介する「TTL測光」という方式によってレンズを通ってきた光を測定しています。
内蔵露出計の例としては、昔良くあった「セレン光電池式」や「CdS式」、また現代のデジタルカメラなどではイメージセンサーそのもので測光する方式もあります。
TTL測光方式
TTL測光方式とは、現在のカメラの主流となっている測光方式で、「Through the lens」の頭文字である「T」「T」「L」からとってTTL測光と呼んでいます。
TTL測光はその名の通り、「レンズを通して来た光」を測光するもので、カメラ内部で測光しているわけですから、TTL測光も内蔵露出計の一つといっても良いでしょう。
TTL測光方式のメリットは、例えば古いカメラにあるようなセレン光電池式の露出計のように、「ボディに露出計が内蔵されていてレンズに近い位置で測光してはいるが、レンズを通って来た撮影する光そのものではない」という方式と比較して、より高精度に測光できる点にあります。
例えばレンズの実際の透過光を表すT値(F値ではない)を気にする必要がない点や、レンズにフィルターを使用してもそのフィルターを含めて測光してくれるため、フィルターの露出倍数を気にする必要がないといったメリットがTTL測光方式にはあります。
そのため、現在の多くのカメラが、このTTL測光方式を採用しているというわけです。
■単体露出計の種類
単体露出計とは?
単体露出計はカメラのような撮影機能はなく、カメラとは別に、露出値を測るための機能を持ったアクセサリーです。
ちなみに単体露出計には、先に紹介した入射光式露出計と反射光式露出計の両方がありますが、反射光式露出計には単体露出計とカメラ内蔵露出計があるのに対して、入射光式露出計に関しては、そのほとんどが露出値を測るための専用アクセサリーとなっています。
■露出計の方式や種類のまとめ
露出計の方式と種類の特徴
つまり、
- 内蔵露出計
- カメラに内蔵されている露出計のこと
- 内蔵露出計は反射光式がほとんど
- 現代のカメラの多くはTTL測光方式を採用しており、フィルターなどは考慮しなくて良い
- 単体露出計
- 露出値を測るための専用カメラアクセサリー
- 入射光式と反射光式とその両方の機能を持つモデルがある
- レンズを通った光を測るわけではないので、フィルターの露出倍数などを考慮する必要がある
露出計の方式によるメリットデメリット
内蔵露出計 | 方式 | ほとんどが反射光式 |
メリット | 近くの被写体でも遠くの被写体でも測光出来る | |
被写体自体が発光するようなものでも測光できる | ||
TTL測光方式のものであればフィルターなどの露出倍数を気にする必要がない | ||
デメリット | 反射率が18%から大きくずれる被写体では実際の見た目と露出が大きくずれる場合がある | |
大型ストロボとシンクロコードで繋ぐような場合の測光が難しい | ||
単体露出計 | 方式 | 反射光式と入射光式とその両方を搭載したものがある |
メリット | 反射率が18%から外れている被写体でも実際の見た目に近い露出が得られる | |
大型ストロボや複数のストロボを使用するような際でも露出値を決めやすい | ||
デメリット | 入射光式の場合被写体の位置で測光するため遠景などでは使用できない | |
入射光式の場合そのものが発光するような被写体では測光できない | ||
フィルターなどを使用する場合はその露出倍数を気にする必要がある | ||
カメラと別途持って行く必要がある | ||
測光してからそれをカメラに反映させてから撮影するため素早い撮影には向かない |
内蔵露出計が主流である理由
こうしてみると分かるように、単体露出計は測光性能に関する機能は高いものの、特に入射光式の場合は使える状況が限定的であるというデメリットがあり、また携帯性や面倒であるという理由から現在多くの撮影ではカメラに内蔵されているTTL方式の反射式露出計が主流です。
単体露出計の価値
しかしながら単体露出計は複数の大型ストロボを使用しようした際の露出値を決めたり、被写体の反射率に影響されずに被写体に当たる光そのものを測光できるというメリットがあります。
それゆえにスタジオでの本格的な人物撮影や商品撮影などでは、現在でも単体露出計が使用されることは良くあります。
また、露出計を内蔵していないようなクラシックなカメラや、例えば大判カメラのようなカメラで撮影する場合なども、反射光式の単体露出計を使用して露出値を決めるといったことも行います。
このように単体露出計はそうした撮影で、現在でも活躍しているアクセサリーというわけです。
スタジオポートレートなどの本格的な人物撮影をされる方や、商品撮影をされる方は、こうした入射光式に対応した単体露出計を使用してみるのもおすすめです。
■露出計業界の巨人、セコニックの人気モデル
セコニックの単体露出計
ちなみに単体露出計のおすすめモデルとしては露出計業界の巨人、セコニックの以下のようなモデルがあります。
- フラッシュメイト L-308X(入射光式/反射光式)
- ライトマスタープロ L-478D(入射光式/別売アクセサリーで反射光式にも対応)
- スピードマスター L-858D(入射光式/反射光式)
個人的にはセコニックでも現在のタッチパネル方式ではない、物理ボタンや物理ダイヤルの多い前の型の方が操作性が好きなのですが、売っていないものは仕方ありません。
ちなみに私はフラッシュマスター L-358が好きでしたが、非常に人気があり評価の高かったデジタルマスター L-758D(最上位機種の前モデル)だけはアマゾンでもなんとか今のところ取り扱いがあるようです。
ただしデジタルマスター L-758Dは現在プレミア価格となっており、むしろ新型のスピードマスター L-858Dの方が安くなっています。
というわけで、今回は露出計のお話でした。
画像:Amazon
Reported by 正隆