フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。
過去の各級の予想問題のまとめ
合格目指してさっそく問題です!
難易度:準1級レベル
問:レンズの絞り値であるF値は「F1.0→F1.4→F2.0→F2.8→F4.0→F5.6→F8.0」というように√2倍ごとに変化していきます。
ではなぜF値は、「F1→F2→F3→F4→F5→F6→F7」というような切りの良い数字ではなく、√2倍ごとの変化であるのか?その理由として「最も関係が深い」と思われる要素を、次の中から選べ。
① 絞りの直径
② 絞り羽根の枚数
③ 被写体までの距離
正解はこのあとすぐ!
■正解は①(絞りの直径)
原始的な絞りはどのようなものであったか?
F値は、以下の式で求められます。
F値=焦点距離/レンズ有効口径
この事は良く知られているため、何となく①が正解ではないか?と分かった方もおられると思います。
しかし、F値と絞りの直径が具体的にどう関係しているのか?についてはあまり知られていないように思いますので、今回はその点を解説させて頂ければと思います。
今回前置きがちょっと長くなりますが、まずは、絞りとはそもそもどのようなものであったのか?という点からご説明させて頂ければと思います。
皆さんご存知のように、現在のレンズ交換式カメラの交換レンズの多くは「絞り羽根」を内蔵し、その複数枚の絞り羽根を絞り込んだり開放したりすることで、露光量や被写界深度をコントロールしています。
このような絞り羽根を使った絞りの方式を「虹彩絞り」と呼びますが、こうした虹彩絞りは実はカメラの発明以前に顕微鏡などで使用されていました。
また、ニセフォール・ニエプスがカメラ・オブスキュラを発明した際にも、既に簡素な虹彩絞りが付けられているものがありました。
しかし基本的に黎明期のカメラでは、露光量のコントロールに虹彩絞りのような複雑な機構ではなく、もっと原始的な形式の絞りを使っていたのです。
この頃の絞りは、「取り外し式固定絞り」や「取り外し交換式固定絞り」と呼ばれるもので、形状としてはワッシャー状の円板や円筒を使用したものでした。
その後、1858年7月1日にイギリスのジョン・ウォーターハウスによってイギリス写真協会に提案された、「差込絞り」という絞りの方式が登場します。
このウォーターハウスが提唱した「差込絞り」は、ドロップインフィルターのようにレンズに差し込む方式の絞りで、別名「板絞り」、または「水門絞り」とも呼ばれ、現在では「水門絞り(Waterhouse stop)」という呼称が最も一般的であるように思います。
この水門絞りは、近年ロモジャパンから発売された復刻版のペッツバールレンズでも採用されたことで再び知られるようになりました。
■なぜ絞り値は切りの良い数値でなく、√2倍(約1.41倍)ずつ変化するのか?
円は直径が√2倍になると円の面積は2倍になる
さて、ようやく本題です。
先ほどご説明したように昔のカメラ用レンズは、現代のような複雑な虹彩絞りではなく、水門絞りのように、「穴の大きさを変えた板を差し替えてレンズに装着する」というような単純な方法で露光量を変えていました。
では光量を変えるのに、この「絞りの円の大きさ」はどのように設定すれば良いでしょうか?
ここで皆さんも学生時代に習った、「円の面積の求め方」が出てきます。
円の面積を求める公式は、
- 円の面積=半径×半径×円周率(約3.14)
であることを覚えておられると思います。
つまり、例えば、絞りが直径が2cmの円であれば、半径は1cmとなるわけですから、
- 1cm×1cm×3.14=3.14㎠
となります。
そこで、もしもこの絞りの円の面積が2倍になれば、絞りを通る光の量も2倍になり、逆にこの円の面積が1/2倍(半分)になれば、絞りを通る光の量も1/2倍になるわけです。
では、「円の直径」が何倍になれば、円の面積が2倍になるでしょう?
ここがポイントで、「円の面積が2倍になるのは、円の直径が√2倍(約1.41倍)になった時」ということなのです。
では、√2を約1.41として実際に計算してみましょう。
円の直径が1.41倍になるということは、半径も1.41倍になるわけですから、先ほどの半径1cm(直径2cm)の円の絞りだとすると、その半径も1.41倍の1.41cmになり、
- 1.41cm×1.41cm≒1.99㎠
となって、円の面積が1.99倍、つまり約2倍になったことが分かります。
そして逆に、円の直径が1/1.41倍(約0.709倍)になったとして計算すると、
- 0.709cm×0.709cm≒0.50㎠
となり、今度は円の面積が1/2倍になることが分かりました。
つまり、
- 絞りの直径が√2倍(約1.41倍)になると、絞りの面積が2倍になる
- 絞りの直径が1/√2倍(約1/1.41倍)になると、絞りの面積が1/2倍になる
ということなのです。
ですから、この絞り値が√2倍(約1.41倍)もしくは1/√2倍(約0.70倍)ずつ変わるというのは、「絞りの直径がこの比率で変わると、絞りの開口部の面積も2倍に増えたり、1/2倍に減ったりする」ということなのです。
つまり絞りの数値とは、「絞りの面積が倍々で変化する時の直径の比率の変化を表したもの」が元となっているわけです。
- F1.0の1/2の面積となるのは、絞りの直径を約1/1.4倍にした時
- F1.0の1/4の面積となるのは、絞りの直径を約1/2.0倍にした時
- F1.0の1/8の面積となるのは、絞りの直径を約1/2.8倍にした時
- F1.0の1/16の面積となるのは、絞りの直径を約1/4.0倍にした時
- F1.0の1/32の面積となるのは、絞りの直径を約1/5.6倍にした時
という風に、絞りの直径を√2倍(約1.41倍)ずつ大きくしたり小さくしたりした時に、面積も約2倍、もしくは約1/2倍で変化し、露光量もそれに応じて倍々で変化するわけです。
そのために、絞り値はF1→F2→F3→F4というような切りの良い数字ではなく、√2倍(約1.41倍)ずつ、F1.0→F1.4→F2.0→F2.8→F4.0→F5.6→F8.0という数値で表すことにしたというわけです。
というわけで、①の「絞りの直径」が正解となります。
ちなみに絞り値の簡単な覚え方については、以前「絞り値の簡単な覚え方を解説!F22から2段絞ると絞りはいくつになる?」という記事で解説しておりますので、そちらも参考にして頂ければと思います。
画像:全日本クラシックカメラクラブ,THE UNIVERSITY OF ARIZONA,DPREVIEW
Reported by 正隆