光学ファインダーファンの皆さんこんにちは。
レンズ交換式カメラの主流も一眼レフからミラーレスへの移行が進んでおり、それに伴って電子ビューファインダーも着実に進歩しています。
しかしやはり見え味だけに注目するのであれば、いまだ電子ビューファインダーは光学ファインダーには及んでいないのも事実です。
目次
- 最高の光学ファインダーを搭載したカメラたち
- 光学ファインダーの名機たち
- 代表モデルのファインダースペックの比較
- ファインダーの質を見る上でのポイント
- 光学ファインダーの名機たち
- キヤノンNew F-1
- ニコンF4
- ソニーα900
- ペンタックスLX
ミラーレスへの移行に伴い今後その多くが失われていくであろう光学ファインダーカメラですが、今回は去りゆく光学ファインダーを惜しみつつ、長い一眼レフの歴史の中でも最も評価の高かった最高の光学ファインダーを備えたカメラたちを4機種ご紹介したいと思います。
■最高の光学ファインダーを搭載したカメラたち
光学ファインダーの名機たち
今回光学ファインダーの名機としてご紹介するのは以下の4機種です。
今回は35mm判の一眼レフ機に限定していますが、いずれもカメラの歴史にその名を残す屈指の光学ファインダーの名機と言えるでしょう。
フィルムカメラ時代のカメラであっても低品質なファインダーはもちろん山ほどありましたが、MFレンズが主流であった時代ピント合わせは光学ファインダーを頼りに行っていたため、ファインダーの見え味に対する要求は今よりもシビアでした。
そのためファインダーの見え味だけでいうなら、現代のハイエンドカメラよりもフィルム時代のカメラの高級機の方がレベルが上ということがままありました。
その中でも光学ファインダーの名機と呼ばれたのが上の4機種です。
代表モデルのファインダースペックの比較
まずはこの4機種のファインダーの視野率と倍率をご紹介しておきましょう。
ブランド | キヤノン | ニコン | ソニー | ペンタックス |
機種 | New F-1 | F4 | α900 | LX |
視野率 | 97% | 100% | 100% | 縦98%/横95% |
倍率 | 0.80倍 | 0.75倍 | 0.74倍 | 0.90倍 |
今回とりあげた4機種のファインダーが高く評価されているのは、こうしたカタログスペック的な意味ではなく、見え味の話であるわけですが、スペック的に見てもこの4機種はかなり大きなファインダーを持っていることがわかります。
ファインダーの質を見る上でのポイント
現在のデジタルカメラはオートフォーカスによるピント合わせが一般的であるため、ファインダーの見え味といっても、明るさや収差の少なさなどがとかく重視される傾向にあります。
そのためにいわゆる「スカスカファインダー」と呼ばれるような、明るいだけでピントの山が分かりづらく、マニュアルフォーカスに向いていないファインダーも多くあります。
しかしMFが主流であった時代のこれらのカメラでは、ファインダーの見え味は単に明るいか暗いかといったものではなく、正確なピント合わせにおいて最も重要な要素であっため、ピント山の分かりやすさも重視されました。
またマニュアル露出で撮影するケースも多く、ファインダー内表示を見ながら絞りとシャッタースピードの組み合わせを行なっていたため、ファインダー内表示は単に現在の設定値を撮影者に知らせるというものではなく、シャッタースピードと絞りの組み合わせで適正露出を得る上でとても重要なものでした。
ですからファインダーには、
- 構図が確認しやすい十分な大きさがあるか?
- 歪曲収差や色収差が抑えられているか?
- ピントの山はわかりやすいか?
- シャッタースピードと絞り値を確認しやすいか?
などさまざまな要素が求められ、加えて被写体や撮影スタイルの好みに応じて多様なフォーカシングスクリーンや、ローポジション撮影に対応するための交換ファインダーなども数多くラインナップされていました。
■光学ファインダーの名機たち
キヤノンNew F-1
この4機種の中でも私が一番よく使っていたのはキヤノンのNew F-1でした。
この時代の一眼レフのファインダーが最新のデジタル一眼レフよりも見え味で勝る理由の一つが、マニュアルフォーカスを前提としたフォーカシングスクリーンのコストのかけ方にあります。
もちろん現在のデジタル一眼レフにもフォーカシングスクリーンがあるのですが、当時のフォーカシングスクリーンは現在よりも遥かにコストがかけらており、New F-1のフォーカシングスクリーンの中でも最も高価だったのがブライトレーザーマットスクリーンで、私もこれを使っていましたが単に明るいというだけでなくピントの山が非常に掴みやすいのが特徴でした。
またNew F-1は露出計の指針表示が見やすく、当時のライバルであったニコンF3と比較した場合、ファインダーに関してはNew F-1の方が明らかに使いやすい表示となっていました。
F3のファインダーも明るさピントの山の見易さは十分にハイレベルなものなのですが、露出表示がファインダー上部にあったため、上目遣いで覗き込むようにして確認する必要があったこと、またNew F-1の指針表示と異なりその時の設定値だけが表示されるデジタル的な表示であったため前後関係が直感的にわかりにくいという弱点を持っていました。
そのため機械式フィルム一眼レフ史上の金字塔とも言えるF3も、ファインダーに関しては、New F-1ほど高い評価を得ることはできませんでした。
New F-1のファインダーは、フィルム時代とデジタル時代を含めて、キヤノンのカメラ史上最も優れた光学ファインダーであり、一眼レフの歴史においても常に語られる最高峰のファインダーの一つでした。
ニコンF4
対するニコンの一眼レフ史上、最も高品質なファインダーを搭載していたのがF3の後継となったフラッグシップ機F4です。
F4といえば、カメラ自体は当時はあまり評価されておらず、プラスチックボディとNikonロゴが刻印でなくプリントであったこと、プラスチックでありながら1kg超えと重かったこと、前モデルとなるF3がフィルム一眼レフの歴史に名を残す名機中の名機であったことなどがその要因でした。
しかし実際のF4は機能的には優れたカメラで、一応オートフォーカスカメラであるがゆえにファインダーも語られることが少ないものの、その見え味と使いやすさはニコン一眼レフ史上最高峰のクオリティをもっていました。
F3では見辛かったファインダー内表示がF4では改善され、ファインダー内表示は下部に移設され、表示自体も明瞭で視認性の高いものになっています。
ちなみにF4には対応する純正フォーカシングスクリーンが全部で10種類あり、用途や好みに応じて変更することができました。
F3ノーマルモデルのファインダーは視野率100%/倍率0.80倍ですから、一見するとF4の視野率100%/倍率0.75倍はスペックダウンしているかのように見えますが、実際にはF4のファインダーの方が優れています。
特にファインダーのような人間のフィーリングに直接関わる部分というのは、カタログスペックだけでは正しい評価を行うことが難しく、「カメラはスペックでは語れない」ということを教えてくれる部分と言えるでしょう。
また、近年のニコンではD850のファインダーも非常に優れたファインダーを搭載しています。
ソニーα900
今回選出した機種のなかで唯一のデジタルカメラがこのα900です。
α900はそれまでαシリーズ最高のファインダーと呼ばれていたミノルタα-9のイメージを受け継いで登場したモデルで、現在のソニーEマウント機からは想像できないストイックな一眼レフを目指した硬派なモデルでした。
液晶は固定式、ライブビューはない、連写は秒間5コマ、画質は低感度重視いうというストイックなコンセプトで登場したα900は、何よりもその光学ファインダーに力を入れて開発され、α-9をも上回る光学ファインダーを搭載しています。
α900はα-9比で、約0.3EV明るく、歪曲収差を1/6以下、コマ収差を1/2以下に低減しており、明るく、歪みや色にじみの少ないファインダーとなっています。
また標準装備であったスフェリカルアキュートマットだけでなく、明るいレンズでのマニュアルフォーカスがやりやすいスーパースフェリカルアキュートマットなどもラインナップしていました。
テジタルカメラとしては極端に尖っていたトップのデザインも、ペンタプリズムを強くアピールするものと言えるでしょう。
ペンタックスLX
ペンタックスは元々ファインダーにはこだわりの強いメーカーではありますが、そのペンタックスの歴史の中でも35mm判で最高のファインダーを搭載したのがこのLXです。
LXは視野率は縦98%/横95%と現代のフラッグシップ機のように視野率100%ではないものの、当時はプリントするのが前提であったため、いずれにしてもプリント時にやや切れてしまうため、撮影時にファインダーで見えている範囲よりも実際の撮影範囲が微妙に広くなったとしても気にしないという人が結構いて、今ほど視野率100%に対するこだわりが強くない時代でした。
LXは見やすいファインダー内表示に加えて、他の名機たちをも圧倒するファインダー倍率0.90倍というまさに広大なファインダーを備えていました。
さらに純正フォーカシングスクリーンが9種類、ウェストレベルファインダーなど交換ファインダーが8種類もあるというこだわりようで、ファインダーを重視する写真愛好家にとって非常に魅力的な機種となっていました。
画像:Wikipedia
Reported by 正隆