皆さんこんにちは。
さて今回は2年ごとの恒例企画となっている、フォトグラファー白書 2021が発表されましたので、こちらをご紹介します。
フォトグラファー白書とは、広告写真業界の専門誌である玄光社のコマーシャル・フォトが広告業界で活動するプロフォトグラファーを対象にアンケートを行い、現在のプロフォトグラファーの状況を2年おきに調査しているものです。
アンケート内容は仕事内容に関するものを中心に、現在使用している機材といったものもあります。
- プロフォトグラファーたちが本当に使っているカメラは?
- コマーシャルフォトグラファーに使われている機種
- ミラーレスへの移行が進み始めた
- メーカー別の割合は?
- コマーシャルフォトグラファーが「今年買った」機材
- コマーシャルフォトグラファーが「今欲しい」機材
- プロフォトグラファーの現在
果たして撮影を収入のメインとしているリアルな広告業界のプロフォトグラファーたちは、どんなカメラを使っているのでしょうか?
今回はそのアンケート結果の一部とそれに対する私の個人的な感想を書いてみたいと思います。
■プロフォトグラファーたちが本当に使っているカメラは?
コマーシャルフォトグラファーに使われている機種
ここではアンケートは広告業界で活躍するコマーシャルフォトグラファー185名を対象に、「メインで使用している機種」を聞いた結果を表にしています。
プロフォトグラファー185名を対象に調査/コマーシャル・フォト | ||||
順位 | メーカー | 機種名 | 人数 | シェア |
1位 | キヤノン | EOS 5D Mark IV | 27人 | 14.6% |
2位 | ソニー | α7R III | 16人 | 8.6% |
3位 | ニコン | D850 | 15人 | 8.1% |
4位 | キヤノン | EOS 5Ds | 11人 | 5.9% |
5位 | 富士フイルム | GFX 100 | 10人 | 5.4% |
6位 | ソニー | α7R IV | 9人 | 4.9% |
7位 | キヤノン | EOS 5D Mark III | 9人 | 4.9% |
8位 | キヤノン | EOS R5 | 7人 | 3.8% |
9位 | ニコン | Z6 | 4人 | 2.2% |
その他 | ニコン | D810 | —– | —– |
その他 | ニコン | D5 | —– | —– |
その他 | ソニー | α9 | —– | —– |
その他 | ソニー | α9 II | —– | —– |
その他 | ライカ | SL2 | —– | —– |
その他 | ライカ | M10 | —– | —– |
その他 | ハッセルブラッド | 555 ELD | —– | —– |
その他 | フェーズワン | XF | —– | —– |
ミラーレスへの移行が進み始めた
最もコマーシャルフォトグラファーに使用されていたカメラは2年前の調査と同じく、現在もEOS 5D Mark IVでした。確かになんだかんだで今でも一番見かける機種だと思います。
広告写真は本当に沢山のスタッフの総合力によって作られるものですし、フォトグラファーにとってもボディ単体の画質性能より重要な要素が沢山あるため、現実のコマーシャルフォトグラファーは「秒間何十コマ」とか「DxOのセンサーレーティングで◯◯点だった」というような基準でカメラを選んだりはしません。実際に紙面やポスターになった時そんなものは全く意味を持たないからです。
もちろん画質も重要な要素の一つではあるのですが、「総合的にみて良い広告写真」という成果を目指して、影響力の強いところから優先するということです。
フォトグラファーに直接関係する部分だけで見ても、コマーシャルフォトグラファーが注力するのは大体、
- イメージ(どういう広告写真になるのかという意図と、それを全員で共有出来ていること)
- 撮影技術(構図やポージングの指示など様々)
- ライティング(ライティング技術とそのための機材)
- レンズ(被写体や撮影に合ったレンズを選択できているか)
- カメラ(使い勝手や機能面で撮影対象に適したカメラか)
- アクセサリー(撮影を効率的・効果的に行うためのアクセサリーを準備できているか)
個人差は多少あるでしょうが、大体このような順の人が多いのではないでしょうか。
この辺がカメラマニアとプロフォトグラファーの違いなんだろうと思います。求めているものが広告写真としての成果物なのか、嗜好品やコレクションとしての機材なのかで全く順位が変わってしまうということです。
少なくとも私は「いい広告写真を撮るにはカメラボディが一番大事」というコマーシャルフォトグラファーには会ったことがありません。ただの一人も。
ただ同時にアンケート結果からも見て取れるように、2020年夏に発売されたEOS R5が既に8位に、ソニーのα7R IIIやα7R IVが上位に、ニコンのZ6などもトップ10内にランクインしており、広告写真の現場でもミラーレスへの移行が確実に進んでいる様子も伺えます。
メーカー別の割合は?
メーカー別のシェアで見ると、トップはキヤノンの47%、次いで2位がニコン、3位がソニー、4位が富士フイルムであったとのことです。
1、2、3位はいつもの顔ぶれなのであれですが、4位に富士フイルムがランクインし、GFX 100の1機種で185名中10名も使っているということで一気にユーザーを獲得したという印象です。
正直フェーズワンはカメラとしての使い勝手が良いとは言えないですし、知り合いのカメラマンなどからも「(少なくとも日本では)フェーズワンのサポート体制は本当に最低」という趣旨のことを聞いていたので、幾らセンサーに魅力があってもリアルなフェーズワンユーザーたちには結構不満が蓄積していたように思います。
それでも中判デジタルカメラの選択肢が少なかったため中判を使いたいフォトグラファーたちはフェーズワンを辛抱強く使っていたのだと思いますが、富士フイルムがGFXシリーズを出してきたことで一気にそちらへ移行したのかも知れません。
私は中判センサー自体にあまり興味がないのでGFXシリーズを購入する予定はありませんが、もし中判デジタルカメラの中から仕事で使うカメラを選べとなったら、GFXシリーズから選ぶというのは妥当な選択だと思います。
コマーシャルフォトグラファーが「今年買った」機材
コマーシャルフォトグラファーに聞いた、「今年買った機材」としては、
などが上位にランクインしました。私もEOS R5を買いました。今後もまだまだ完成度を上げていく余地はあると思いますが、現時点でも十分仕事で使える良いカメラだと思います。
α7S IIIは「動画撮影に使っているカメラは?」の質問で上位にランクインしていることからも、動画性能が魅力で欲しい人が多いのかなと思います。
本格的な動画撮影は当然ムービーのカメラマンに依頼がいくのですが、スチールのカメラマンであっても近年では「自社Web用の記録的なものでいいので、ちょっとだけ動画も撮ることは可能ですか?」という依頼が増えており、そうすると専門のビデオカメラマンほどのレベルはとても無理でも、スチールカメラマンも少しは動画も撮れた方が良いということがあって、機材も多少必要になってきています。
ただそうしたおまけ的な動画撮影はあまりお金にならないですし、そもそも技術的に機材面でもスチールとムービーは異なるものですから、スチールとムービーの両方の本格的な機材を一人で持って行くというのも現実的ではありません。
そこで多くのスチールカメラマンは、スチール用のカメラで動画撮影を兼用したり、スチールとムービーでカメラを分ける場合も、ムービーの方は動画性能の高いスチールカメラによる一眼動画という方が多いように思います。
コマーシャルフォトグラファーが「今欲しい」機材
またコマーシャルフォトグラファーが「今一番欲しい機材」として挙げたのは、
などが上位にランクインしました。実際に購入した機材と同じ顔ぶれというわけです。
B10 Plusというのは、Profotoのバッテリータイプモノブロックストロボで、取り回しの良さが大きな魅力です。Profotoにはより高性能なB1Xというバッテリータイプのものブロックストロボもあるのですが、例えばB1Xを自分一人で2灯や3灯も持っていくのはかなり大変なのでしょう。実際に欲しいのはB10 Plusとなっていました。
実は私も狙っていて、私の場合はB10 Plusよりさらにコンパクトな250 WsのB10を2灯にしようかなと思っています(B10 Plusは500 Ws)。
B10だと私が使っているthinkTANKphotoのLogistics Manager 30に縦置きで余裕で入るはずなので。
B10 Plusも縦置きでもほぼピッタリの感じで入るとは思うのですが、そうすると上に軽量なものを重ね辛いとか、バッグ内側のポケットにアクセサリーなどの小物を沢山入れるとバッグの内側で機材同士が押されてしまうので、個人的には機材を入れるときはストロボやレンズは縦方向に入れるのが好きなのですが、あまりレンズやストロボ類で縦方向にパツパツにしないように心がけています。どうせ最終的には色々な機材やアクセサリーで一杯になってしまうのですが。
大抵の撮影はB10の250 Ws(Profoto A1やCanon EL-1のようなハイエンドのクリップオンストロボが76 Ws相当)で足りるので、それ以上に出力が必要な時は、結局スタジオもそれなりに大きなところになって、スタジオからライティング機材を借りられるので(もちろん多くのスタジオでは有料です)、一般的な撮影ならB10を2灯(+クリップオンストロボ)、大掛かりな撮影ならスタジオ備え付けのモノブロックやジェネレーターにB10を補助で使うのがいいのかなと目論んでいます。
まあ実際は悩ましいところで、試してみてB10 Plusでも縦置きでスペースに余裕があるようならB10 Plusにするかもしれませんが。
本当はブロンカラーのSiros 400Lとか最高なのですが、Siros 400Lを2灯にソフトボックスは持ち運びが大変すぎるのでスタジオで借りた方がいい気がします。
プロフォトグラファーの現在
コマーシャル・フォト 2021年2月号の「フォトグラファー白書 2021」では、この他にもさまざまなデータが掲載されており、広告写真家のリアルが見られるので、フォトグラファーを目指している方、またフォトグラファーの実態にご興味のある方は、ぜひ購入して読んでいただければと思います。
参考:コマーシャル・フォト 2021年2月号
画像:Amazon
Reported by 正隆