今回は、ニコンからクラシックスタイルのZマウントミラーレスカメラ、Z fcが発表されました。
- Z fcのデザインの印象
- Z fcのデザインの元となったFM2とはどんなカメラ?
- FM2とNew FM2の違い
- Z fcとFM2やDfとの違い
- 前面デザインの違い
- 上面デザインの違い
- 背面デザインの違い
- Z fcは新しい客層を取り込めるのか?
- Z fcは年配のための懐古カメラにあらず
- Z fcは新しいカメラ層を切り開くために
今回はZ fcのデザインについての印象をお話ししたいと思います。
■Z fcのデザインの印象
Z fcのデザインの元となったFM2とはどんなカメラ?
Z fcはかつてのFマウントフィルムカメラ、FM2をイメージしたとなっています。
皆さんはFM2を使ったことはありますでしょうか?ある程度の年代以上のカメラファンの方なら触ったことくらいはあると思います。そのくらい大ヒットしたカメラで、フィルムカメラ時代には写真学校の推奨機種の定番でもありました。
ちなみに多くの人がFM2として認識してきたものは、実際はNew FM2だと思います(FM2は生産台数が少なく、改良版のNew FM2がロングセラーであったため)。
FM2とNew FM2の違い
FM2もNew FM2も外観上の違いは少なく、ストロボ同調速度が違うためにシャッタースピードダイヤルの赤字になっているシャッタースピードが違うとか、背面のシリアル番号の前に小さな「N」の刻印があるかないかといった違いになります。
細かいことを言うとNew FM2にも前期と後期があって、シャッター幕がハニカム構造チタンシャッター(前期)とジュラルミンシャッター(後期)の違いなどがあります。
もっと細かいことを言うと、New FM2は20年以上にも渡って発売されていたため、前期モデルをシャッター修理に出すと後期と同じジュラルミンシャッターで返ってきたため、前期モデルなのにジュラルミンシャッター幕になっているという場合があって、シャッター幕だけでは判断が出来ない場合があります。
まあそんな話は今回の趣旨とは違うので置いておくとしましょう。とにかく、Z fcのデザインのモチーフとなったFM2はそんなとても有名な機械式カメラで、ザ・クラシックカメラという感じの美しい佇まいをしているカメラです。
Z fcとFM2やDfとの違い
前面デザインの違い
Z fcの正面のデザインは確かにFM2シリーズと似ていますが、FM2の前に存在したFMや後に発売されたFM3Aとも似ていますから、FMシリーズ全体をイメージしたと言う方が正確なのかもしれません。そもそもFMシリーズだけでなく、FEとかFE2もデザイン的に似ています。
結局その中で一番有名なのがFM2(New FM2)なので、ニコンとしてはわかりやすく「FM2をモチーフにした」という発表をしているように思います。
ちなみにFMには正面向かって左上にFMの機種名はなく、FM2やFM3Aは向かって左上にFM××という風に機種名の表記がされています。
またFマウントのDfも向かって左上に機種名が書かれていました。
なぜZ fcでは機種名の印字を向かって右上に変えたのかはわかりませんが、フロントダイヤルとデザインの兼ね合いで右上の方がいいと判断したのかもしれません。それは全体のバランスとして良かったのではないかと思います。
上面デザインの違い
上面のデザインは、よく見るとFM2とはかなり違うのですが(そもそも巻き上げレバーや巻き戻しクランクがないので)、このあたりはデジタルとフィルムの違いもありますし、上手くデジタルカメラに落とし込んだなと思います。
少し気になるのは一つはFマウントとZマウントのマウント口径の違いからくるレンズの大きさとのバランス感かと思います。正面からの見た目は割と上手くその差をごまかしていると言うか、思ったほど違和感はないのですが、上から見るとFM2での定番であったマニュアルフォーカスニッコールの標準〜広角単焦点レンズと比べると、ZマウントのZ fcはレンズの付け根がペンタ部と比較して太いなという印象は受けます。
もう一点、ペンタ部(もちろんペンタプリズムは入っていませんが)にめりこむ形でシャッタースピードダイヤルが搭載されているのは個人的には嫌なのですが、スペースを有効活用すると言う意味では合理的な設計だと思いますし、1週間も経てば気にならなくなる気がします。
背面デザインの違い
背面はFM2とは似ても似つかないのですが、これはもう我々が割り切るべき問題で、Dfの時にも「背面がデジカメ風で本物の機械式カメラと違う」とかいう不満を言う人は沢山いましたが、背面までクラカメと同じにしたら使いにくくて仕方がないと思います。
ライカレベルでニッチ層だけを相手にするならM10-Dのように背面もクラシックカメラにかなり近づけられると思いますが、このカメラはそういうマニア層をターゲットにしているわけではないと思いますので、デザインがある程度デジタルカメラ風になるのは仕方がないと思います。あえて言うならボタン表記や配置にもう一工夫欲しかったような気はします。
■Z fcは新しい客層を取り込めるのか?
Z fcは年配のための懐古カメラにあらず
FマウントのDfは懐古主義的なカメラで、動画機能をあえて非搭載にしたりと、デジカメのデザインや操作系に辟易していた人たちに向けて作られた製品で、実際年配の方に良く売れました。
しかしこのZ fcは、Dfとは違う狙いを持って作られたと思います。
- APS-Cセンサーを採用し価格を抑えた
- ポップなカラーまでバリエーションを用意した
- バリアングルモニターで動画撮影の利便性を考慮した
などの点を考えると、若者や女性層、ライトなYouTuberなど、Z fcの「c」がcasualの略であることからも、カメラマニア向けではなく「スマートフォン世代をカメラ趣味に導くためのクラシックデザイン」であることが見て取れます。
つまり同じクラシックデザインでも懐古主義で作られたDfや富士フイルムのXマウント機のデザインとはそもそもの成り立ちが異なるわけです(現在の富士フイルムは多様なニーズに応えるべく、クラシックデザインのコンセプトは守りつつも動画機能の充実や自撮りにも対応したラインナップを揃えてきています)。
ゆえに、
- 価格の割にスペックがどうだ
- 本当のクラカメはもっとこうだ
- 富士フイルムと比べてどうだ
- レンズラインナップがどうだ
といった意見はそもそも的外れでしょう。
スペックを求めるならもっと高性能なカメラが幾らでもありますし、Z fcはレンズを何本も買い揃えることを前提としたマニア層を重視していません。
Z fcがメインターゲットとしていない人が「俺の期待したカメラと違う」などと言ったところで、ニコンからすれば「そうなるように作ってますから」としか答えようがないでしょう。
また本当にガチガチのクラシックカメラのデザインが好きなら、ぬるいことは言わずフィルムカメラを一生使うか、デジタルならライカのM10-Dでも買うべきです。
M10-Dなら巻き上げレバー風サムレストまで搭載し背面液晶も廃したデジタルカメラとしてまさに極限的なクラシックデザインですし、Mマウントなのでレンズラインナップも桁違いです。
またZ fcは価格もかなり抑えられており、予約段階の現時点での価格コム最安値は、
- Z fc ボディ:116,820円
- Z fc 16-50 VR SLレンズキット:134,640円
- Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット:143,550円
と昨今のカメラとしてはかなりリーズナブルに抑えられています。
ちなみにデザイン的に比較されることの多い富士フイルムのX-T4の発売初期の最安値はボディ単体で201,915円となっており、Z fc ボディとは約85,000円の価格差があることや、Z fcの方か明らかに軽量であることからも、Z fcがX-T4よりもライトユーザーを狙っていることが分かります。
Z fc(ボディ約445g)
X-T4(ボディ約607g)
Z fcは新しいカメラ層を切り開くために
「薄型化出来るミラーレスでDf以上にリアルなクラシックデザインのカメラを…」という声はDfの発売当時からありましたが、そうした一部のカメラマニア向けにDfと同じコンセプトのカメラをZマウントで出すようでは、本当にニコンの未来は真っ暗だったと思います。
しかしZ fcはライトユーザー向けのクラシックデザインという異なるコンセプトの元に生まれた、「これまでスマートフォン以外のカメラに触れてこなかった世代」に興味を持ってもらえるように作られたカメラなのだろうと思います。
豊富なカラーバリエーションからもそれが伺えますし、ニコンには是非展示にも力を入れて、かつてペンタックスが店頭にズラッとカラバリを展示したように、Z fcのカラーバリエーションモックを全て展示して欲しいと思います。それは黒一色のカメラコーナーでさぞ映えることでしょう。
カメラ業界の裾野を広げるためにもZ fcが売れてくれることを期待していますし、アプローチの仕方は各社で違って良いので、利益重視のマニア向けハイスペックカメラばかりではなく、新しいカメラファン層の開拓を目指した機種が各メーカーから出てくることを願いたいと思います。
Reported by 正隆